名港議会 江上博之議員の一般質問 自然環境保全と名古屋港の しゅんせつについて(2019年6月7日)

名古屋港のしゅんせつ・埋立処分は環境保全の立場にたち、拡大をやめよ
                          江上博之議員

名古屋港での埋立をこれ以上行うべきではない
【江上議員】最近の気候は異常です。5月なのに真夏日が続いたかと思うと、朝夕は肌寒く、昼間は30度近くになったりしています。昨年は、40度以上にもなる猛暑続きで、地球環境の異変を感じます。地球温暖化問題が原因の一つであることはだれも否定できないと思います。これ以上自然環境を破壊しない、影響を与えないという姿勢で事業を行う必要があります。
 その中に、中部国際空港第二滑走路建設の話題があります。その埋め立て土砂に名古屋港のしゅんせつ土砂を利用するという。中部国際空港第2滑走路建設は、現在の発着便数、他の空港との関係、人口減少少子高齢化の中で今後の必要性はない、と認識していますが、本日の質問ではありませんので指摘にとどめておきます。
 今回問題とするのは、これ以上伊勢湾の自然、海流、漁業などに影響する埋め立てを行っていいのか、という点です。
 そこで、質問します。もうこれ以上、名古屋港や伊勢湾の自然破壊につながる埋め立て面積を増やす事業は行うべきでないと考えます。このような認識をお持ちでしょうか。

必要かつ最小限の範囲で埋立し、有効活用している。環境に配慮しつつ進める(室長)
【企画調整室長】公有水面の埋立ては、名古屋港の開発、利用上、必要かつ最小限の範囲において計画しており、新たに生じた土地は、臨海部に必要な物流用地や工業用地、県民・市民の憩いのための緑地を確保するなど有効に活用しています。
 埋立の実施に当たっては、関係法令に基づき、環境への影響の調査・評価の手続きを行っており、適切な措置を講じるなど、環境に十分配慮して事業を進めています。

航路維持や大水深化のために発生するしゅんせつ土砂の量はどれだけか【江上議員】名古屋港の岸壁や航路は、庄内川(国管轄)、新川(愛知県管轄)からの土砂流入で絶えず浚渫をしないと維持ができない港です。港として機能するには、維持管理のためのしゅんせつは必要です。もう一つ浚渫土砂の出る事業として、岸壁の大水深化や、航路の大水深化など施設を新たに整備するために行われる浚渫があります。名古屋港管理組合、国土交通省それぞれ、年平均で、維持管理のための土砂量、整備建設のための土砂量はどのくらいあるのでしょうか。お聞きします。

整備・建設で年48万㎥、航路維持で年15万㎥、岸壁維持で年6万㎥(部長)
【建設部長】岸壁の増探や航路の拡幅・増深など、整備・建設のためのしゅんせつは国が、港内の維持しゅんせつは国と本組合が行っています。

 

 整備・建設のためのしゅんせつでは過去5年間の平均で年間約48万立方メートルの土砂をしゅんせつ。国の維持しゅんせつでは、過去5年間の平均で年間約15万立方メートル、本組合の維持しゅんせつでは、

実績のある過去4年間の平均で年間約6万立方メートルの土砂をしゅんせつしていす。

 

ポートアイランドはあと何年使えるか、満杯後はどうするのか
【江上議員】ポートアイランドの埋め立ては、あと10年未満で満杯とお聞きしました。正確にはどのくらいと想定し、それに変わる処分方法はどう検討されているのでしょうか。国土交通省の事業ではありますが、管理組合も負担金を出す立場ですのでお聞きします。

高さ10mの計画高を超え、あと数年が限界。中空沖を候補地としている(室長)
【企画調整室長】しゅんせつ土砂を受け入れているポートアイランドは、既に埋立計画高さを最大で10mを超える状態で仮置きしており、令和一桁代前半には受入れの限界に達すると聞いています。
 このため国は、新たな土砂処分場として、中部国際空港沖を候補地として選定し、現在、環境影響評価法に基づく準備書の手続きを進めています。

大江川に埋立できないのか。JR東海からリニア残土の要請は来ていないのか
【江上議員】新たな浚渫土砂の埋め立て先として、大江川埋め立てについてお聞きします。大江川については、河口そのものを閉め切る計画があるようです。その大江川の埋め立てについて、名古屋市がJR東海の残土を利用するという話があります。また、JR東海が、岐阜県に対し、瑞浪市日吉トンネル建設に伴う残土を海域に埋め立てる、面積は11.5haと報告したという報道がありました。これらから、大江川にリニア建設に伴う残土を持ってくるのではないか、大江川の埋め立て予定面積は10.3ha、盛り土の厚さ、深さ4~5mだそうです。埋め立てる計画がもともとあるわけですから、わざわざ岐阜から持ってくるのでなく、名古屋港の浚渫土砂が使えないものだろうかと考えたのです。その際、土壌基準が問題となります。大江川の埋め立て予定地は、今、港湾区域であり、埋め立てる土砂基準は、海洋汚染防止法が適用されるようです。しかし、陸域であれば、土壌汚染対策法が適用されます。例えば、ヒ素で見ますと、海洋汚染防止法では、土壌汚染対策法より10倍緩い基準のようです。
 そこでお聞きします。名古屋港管理組合に対し、JR東海や、JR東海と協定を結んでいる自治体などから、土砂の埋め立ての相談や話し合いが今まであったのでしょうか。(しんぶん赤旗 2019年5月23日)

市と連携し、リニアの発生土の活用の可能性も打ち合わせしている(室長)
【企画調整室長】大江川の埋立ては、名古屋市と連携して事業を進めるもので、名古屋市とともに、リニア中央新幹線建設事業の発生土の活用の可能性について打ち合わせを行っています。

大江川は土壌汚染対策法の基準でしゅんせつ土砂の利活用をしてはどうか
【江上議員】大江川の埋め立ては、開橋を境に、名古屋港管理組合が1.1ha、名古屋市が9.2haと事業を分けているようです。適用される基準は、海洋汚染防止法のようですが、大江川周辺の住民のみなさんは、公害対策に大変敏感な方々です。安心安全な埋め立てのためには、土壌汚染対策法の基準で対応して、しゅんせつ土砂の利活用を図るべきでないかと考えますが、そのようなお考えはありますか。

大江川の埋立は汚染土壌が埋め立てられており液状化による流出がない方法で進める。河口部の水域は海洋汚染防止法を順守して 名古屋市と検討をすすめる(室長)
【企画調整室長】大江川では、公害防止事業で汚染土壌が封じ込められており、大規模地震発生時には液状化による流出が懸念されることから、その対策を行うものです。
 そのため、液状化しない材料で汚染土壌の封じ込め箇所を覆土する必要があります。
 水域である港湾区域を埋め立てる場合は、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」、いわゆる「海洋汚染防止法」を順守して埋め立てる必要がありますが、造成する材料の土質等の具体的条件は、今年度名古屋市と共同で実施する基本設計で検討していきます。

しゅんせつ土砂の利活用に向けた調査状況と、地盤の低い地域のかさ上げ等に利用できないか
【江上議員】自然環境を守る方針のもとで、しゅんせつ土砂についてどのような調査研究がなされているのでしょうか。また、庄内川や新川から流入したしゅんせつ土砂を利活用して、地盤の低い地域のかさ上げをするとか考えられないでしょうか。

長期安定性に課題はあるが干潟を造成する材料として可能。かさ上げはコストや強度等に課題が多い。浅場の造成に取り組みたい(室長)
【企画調整室長】中部地方整備局は、ポートアイランド東側でしゅんせつ土砂を一部活用した人工干潟の造成に関する実証実験を、2012年度から2017年度まで行い、本組合も実証実験の企画・検証を行う検討委員会に参画しました。
 実験の結果、しゅんせつ土砂は、干潟を造成する材料として適用可能であることが確認されましたが、波の高い海域における干潟の長期安定性の確保が課題とされました。
 一方、地盤の低い地域のかさ上げ等にしゅんせつ土砂を活用することについては輸送コストがかかる他、海水を多量に含む軟弱な土砂であることから、強度を上げる改良が必要となる等、多くの課題があると考えています。
 これらを踏まえ、本組合は、しゅんせつ土砂の利活用に向け、西部地区において海生生物の生息場にもなり得る浅場の造成に取り組むこととし、今年度より海生生物等の現況把握調査や基本設計を進めています。

埋め立ては自然環境破壊につながるという認識をもて(意見)
【江上議員】
地球温暖化、自然環境破壊の中で、地球は一つということから国連でもSustainable Development Goals(SDGs:持続可能な発展目標)と銘打って取り組まれています。名古屋港でもこの姿勢で自然環境保全の姿勢を求めて質問しました。しゅんせつ土砂によってもうこれ以上埋め立て面積を増やさない姿勢を求めましたが、増やさない、とは回答されませんでした。埋め立てが、自然環境破壊につながるという認識を求めます。

これ以上の整備・建設は見直しを(再質問)
【江上議員】再質問します。一つは、しゅんせつ土砂のポートアイランドへの仮置きが、港の維持しゅんせつのための土量より2倍以上の土量が、岸壁の大水深化や航路の拡幅・大水深化のために出てくることが明らかになりました。もうこれ以上の整備・建設は行わないことが、しゅんせつ土砂の土量を減らすのに有効な手段です。今行っている整備・建設は、見直しが必要ではないしょうか。

金城ふ頭と飛島ふ頭の再編改良事業を進めている。国際競争力強化に向けた

取組として必要な事業だ(部長)
【建設部長】現在、本港において岸壁の増探や航路の拡幅・増探などの整備・建設を行う事業としては、金城ふ頭と飛島ふ頭においてふ頭再編改良事業を進めています。いずれも本港の国際競争力強化に向けた取組として必要な事業です。

大江川の埋立てに用いる土砂の安全基準をどうするか(再質問)
【江上議員】大江川の埋めたてについて、計画にあたって、海洋汚染防止法のヒ素などの規制対象項目の上で、基準については、土壌汚染対策法の基準以上の土砂しか受け入れないとすべきです。いかがお考えでしょうか。また、名古屋港のしゅんせつ土砂を利用することが必要と考えますが今後検討する姿勢をお持ちでしょうか。

名古屋市と共同して液状化しない材料を採用する。汚染基準については名古屋市と協議する(室長)
【企画調整室長】大江川の埋立てでは、汚染土壌対策として液状化しない材料を採用する必要があり、今年度、名古屋市と共同で実施する基本設計において、これに求められる土質等の性能について検討します。
 「海洋汚染防止法」と「土壌汚染対策法」において、汚染物質の基準がそれぞれ異なっていることは承知しています。
 本組合としては、関係法令を順守しつつ、大江川を取り巻く環境や特殊性を十分勘案しながら、既定計画10.3ヘクタールの大江川の埋立てに用いる土砂について、名古屋市と協議していきます。

しゅんせつ土砂の多様な活用の検討を求める(再質問)
【江上議員】しゅんせつ土砂の利活用について、輸送コスト、強度を上げるための改良が必要とか多くの課題があるということですので、今年度調査等がされるようですが、もっともっといろいろ取り組む姿勢が必要です。その方向で検討しているか専任副管理者にお聞きします。

浅場造成に取り組んでいるが、さらに調査・研究を進める(副管理者)
【専任副管理者】港湾施設の整備・拡充及び港湾機能維持により、しゅんせつ土砂が発生しますが、今後も名古屋港が持続的に発展しその役割を果たしていくためには、いずれのしゅんせつも必要と考えています。発生するしゅんせつ土砂を埋立用材として有効に活用しており、現在、金城ふ頭や弥富ふ頭において、埋立事業を推進しています。
 新たに環境施策の一環として、今年度から西部地区において海域環境の改善に資するよう、しゅんせつ土砂を活用して、浅場造成に取り組んでいくことにしました。
 今後も、こうした新しい取組を含めて、先進事例の情報を収集するなど、しゅんせつ土砂の利活用について、調査・研究を進めます。

流入する土砂しゅんせつより、大水深岸壁、航路の整備・建設によるしゅんせつのほうが2倍以上多いことは理解できない。環境保護のためにも減量をすすめよ(意見)
【江上議員】異常気象であり、地球温暖化、自然環境保護は世界の海洋の課題であり、海洋国を守る取り組みでもあります。また、人口減少・少子高齢化で、たとえ、原因を克服したとしても経済状況は大変厳しい状況がさらに続きます。
 そこで、整備・建設のしゅんせつ土砂をもうこれ以上出さないこと。港湾機能維持のためのしゅんせつ土砂の利活用は、さらなる埋め立てに使わない方法を求めました。持続可能、維持可能な発展ができるかどうかが緊急課題です。そのために名古屋港として全力を尽くし、自然環境保護では先進的と言われる名古屋港になることを願っています。
 また、大江川の埋め立て問題を取り上げました。名古屋港のしゅんせつ土砂の有効利用しながら、公害問題解決に資することを願って、質問を終わります。

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