2019年6月定例会

江上博之議員の議案質疑 名古屋城天守閣特別会計 補正予算について(2019年6月19日)

復元の見通しのないまま、解体を先行させ、そのうえ購入木材の保管庫を建設することは許せない(江上博之議員)

木造復元の見通しもない段階で、木材調達のみならず、木材保管庫の設置工事まで行なうなんて

【江上議員】名古屋城天守閣特別会計補正予算案は、天守閣木造復元のための木材等の保管・加工する施設を設置する工事費2か年にわたり3億1700万円を求めるものです。

 

 昨年6月議会で、2022年完成を目指す天守閣木造復元の市民合意もなく、文化庁の木造復元のための「現状変更許可」も出ていない段階で、木造復元の木材調達のための94億円余の契約が強行されました。日本共産党市議団は反対しました。その後7月、文化庁へ、「現状変更許可」のための資料提出が進められましたが、10月の段階で、申請そのものを断念しました。そして、今年4月、2022年完成に間に合わせるためとして現天守解体を先行するため文化庁に「解体許可申請」を提出しています。しかし、今日に至っても「解体許可」は出ていません。このように木造復元の見通しもない段階で、木造復元のための木材調達のみならず、木材保管庫の設置工事まで行おうというのは、市民の理解を得ることはできません。

木材の調達の中止と議案の撤回を

【江上議員】市長に質問します。2022年末完成に間に合わせようと木材の調達を急ぐから、保管庫が必要になります。しかし、復元の許可どころか、解体の許可さえ出ていない。復元の見通しがない中での木材の調達は中止すべきです。そうすれば、保管庫は必要ありません。今回の木材保管庫設置工事の議案を撤回することを求めます。

昨年6月議会で議決したことを守る。木材調達はやめられない(市長)

【市長】木材の調達は、昨年の6月市会で議決され、やらなければならないことなので、調達をやめることは出来ません。
 調達した木材の保管及び加工のための木材保管庫も技術提案書に明記がある。

市と石垣部会で石垣保存方針の認識が一致しないなか、文化庁の現天守解体許可は出ないのでは

【江上議員】4月19日の現天守解体申請にあたり、文化庁が留意事項として求めている有識者の意見としての「石垣部会の意見」として、「石垣や地下遺構の調査がまだ行われておらず、現況把握ができていないなかでの工事計画において、石垣への影響が軽微であるとの結論が導き出されているのは承服しがたい。そのような調査を実施するための職員も不足しており、現天守閣解体に関する工事計画を推し進めることは容認できない。」と申請書類に添付した、と名古屋市は概要説明で明らかにしています。


 名古屋市は、天守台北側石垣の「孕み」の保全修復後、現天守を解体し復元工事にかかるとしています。一方、「石垣部会は、『天守台石垣が深刻な状況にあり、石垣の保存について検討し必要な措置を取ることが最優先であり、市の示した石垣の保存方針では不十分』と考えていると認識している」と、昨年9月議会、私の質問に名古屋市は答弁しています。私の理解では、名古屋市は、天守台北側「孕み」石垣を修復すれば、現天守の解体にとりかかれる。一方、石垣部会の有識者は、天守台全体の保全修復が最優先であり、それをしなければ現天守の解体以降の工事で石垣に影響が出る、ということです。名古屋市と石垣部会の「石垣の保存方針」の認識は一致していません。一致していないにもかかわらず、文化庁の解体許可が出ると考えているのでしょうか。

文化庁の指導をうけ、やるべきことはやった。審議会の結果を待ちたい(局長)

【観光文化交流局長】確かに認識が一致していない部分もあるが、現天守解体の申請にあたって文化庁から5つの留意事項を示して頂き、丁寧な助言をいただいたお陰で現天守解体工事が特別史跡に及ぽす影響を極力軽微なものとなるよう、名古屋市としての考え方や計画内容を取りまとめることができ、4月19日に申請書を提出し、受理していただいた。
 その後、文化庁において文化審議会に諮られ、石垣等遺構の保存に関する確認事項をいただいたので、この間精力的に回答を作成してきた。現状変更許可申請書を提出したのち、確認事項も文化庁の指導で、やるべきことはやりきったとの思いだ。文化庁から審議会の日程は聞いてないが、良い結果を待ちたい。

解体許可申請にあたり、文化庁が求めてきた「確認したい点」とは何か

【江上議員】名古屋市は、今年4月、現天守の解体申請を文化庁に行い、文化庁の文化審議会が5月17日に開催され、諮問されたことが明らかとなりました。この申請にあたり、文化庁は、「申請内容に確認したい点がある」として追加回答を求めてきているようです。文化庁が求めてきた「確認したい点」とはどのような内容でしょうか。そして、文化庁への回答は行ったのでしょうか。

経緯や工事が石垣等遺構に与える影響の有無を判断する方法などへの回答を求められ、本日届ける(局長)

【観光文化交流局長】文化庁からの確認事項は大きく全般的事項と個別事項に分かれており、全般的事項としては、解体に係る現状変更許可申請に至る経緯や天守解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響の有無を判断する方法などについて回答を求められている。 個別事項としては、現天守閣を解体する理由や沿革、解体の具体的工事内容や工法、また解体工事が石垣等に影響を与えない工法であって、石垣の保存が確実に図られていることへの認識、さらには石垣保全の方針や石垣調査の計画、特別史跡名古屋城跡に関する事業実施体制などについて回答を求められている。
 確認事項への回答は、本日、文化庁へ届けたい。

竹中との基本協定書は破棄し、損害賠償手続きも含めて話し合いを進めるべき

【江上議員】解体申請に対する文化庁の回答は、6月21日にも出るのではないかと言われています。今までの質問にもあるように、その回答では、石垣保存方針に問題があり「現天守解体許可」が認められない回答が大きいと思われます。「解体許可」を受けて、名古屋市は、現天守解体予算をこの6月議会に採択を求めることで2022年に間に合うと言われてきました。もし、「解体許可」が認められなければ、解体予算は提出できず、2022年に完成しないことになります。竹中工務店との「名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書」第4条(事業期間)に、「天守閣の完成期限については平成34年12月31日」となっています。完成期限を守ることができません。2022年完成を目指す事業が名古屋市の都合で期限が守れないとなれば、中止ということになります。また、協定書の第18条で、事業の中止等があれば、損害賠償問題も出てきます。傷は浅いうちに手を打ち、損害を最小限にとどめるのも市長の責任です。
 6月議会中に現天守解体予算案が採択されない場合、竹中工務店との基本協定書は、破棄し、損害賠償手続きも含めて話し合いを進めるべきと考えますが、そのお考えはありますか。

基本協定書の破棄は考えていない(市長)

【市長】竹中工務店との基本協定書を破棄することは、当然全く考えておりません。

「関係者全員切腹」発言の撤回を

【江上議員】4月1日の定例記者会見で、河村市長は、「2022年に間に合わなければ、関係者全員切腹」という趣旨の発言をしています。事業責任は、2022年に完成目標と強引に進めてきた河村市長自身にあり、他の人たちはその指示をうけ、あるいは、文化財のあり方を考えて意見を言ってきたわけですから、市長以外の人まで責任をとらせる、ましてや、「切腹」という表現までするのは、市長責任放棄の極みです。「関係者全員切腹」というような発言は撤回すべきです。市長記者会見という公的な場所における発言です。発言の撤回を市長に求めます。

お城なので「切腹」を使った。みんなで一緒にやろうという気持ち(市長)

【市長】お城ということなので「切腹」という言葉をつかいましたけど、それは皆さんで、名古屋を上げて、オール名古屋で市役所で精一杯とにと、Do our best、Let‘s do togetherみんなで一緒にやろうという気持ちで言ったことです。

文化財を大切にしてこそ観光がある。(意見)

【江上議員】「文化財を保存優先から理解促進、そして活用へ」と国の政策に呼応してからそれを進めるのだ、と市長はこれまでも言ってきました。しかし私自身はその発言そのものがおかしいと思っておりました。文化財を大切にしてこそ観光があります。文化財を大切にすることが何より大切です。その姿勢が名古屋市に求められていることを指摘しておきます。名古屋市の姿勢を示すことを強調しておきます。

市長に責任があり発言は撤回を(意見)

【江上議員】発言は撤回しないと答弁されました。2022年を掲げてきた市長としての責任が問われます。改めて撤回を求めます。

木造復元のための現状変更許可の見通しはあるのか(再質問)

【江上議員】丁寧には丁寧にやってきたというが、答弁についても丁寧に丁寧にという割には一言ですます。もう少し丁寧な回答があってしかるべきです。
 事業自体に大きな影響与えるから木材調達は中止せず、木材の保管庫も必要で、議案の撤回はしないということでしょう。木材保管庫設置は、木造復元が前提です。解体許可が出ていません。たとえ出たとして、解体を強行するおつもりでしょうか。名古屋市は、木造復元のための現状変更許可申請すらしていません。解体だけして、天守閣のない名古屋城は許されません。
 そこで市長に質問します。木造復元のための現状変更許可の見通しがあるのでしょうか。

精一杯努力します(市長)

【市長】精一杯努力させて頂きます。

基本協定書を破棄しないというのは、2022年12月完成を守るということか

【江上議員】竹中工務店との基本協定書は破棄しないと回答されました。破棄しないということは2022年12月完成を守るということでしょうか。

議会との約束もある精一杯努力する(市長)

【市長】議会とお約束させて頂いておりました、精一杯できるよう努力する。

市と石垣部会の認識が一致していなのはどの点か(再質問)

【江上議員】観光文化交流局長に質問します。名古屋市と石垣部会の認識が一致していない部分というのはどの点ですかお答えください。

市は工学的な検討で影響は軽微と判断、石垣部会は考古学的な調査が必要といっている(局長)

【観光文化交流局長】市はこれまで行った石垣調査の成果に基づき、工学的な検討を行い,解体工事の石垣に与える影響が軽微であると判断している。
 一方、石垣部会では、石垣や地下遺構に対し、更に考古学的な調査を行う必要があり、これまで行った調査で結論を出すことは容認できないとしている。
 解体工事における石垣への影響を評価するにあたって、考古学的な調査がどの程度必要か、という点において認識が一致していない。

石垣の保全に関する市・竹中工務店の案と石垣部会の意見
市・竹中工務店の案
石垣部会の意見
・これまで天寺台石垣、内堀底面、御深井丸側内堀石垣で行った調査により、石垣の現況を整理した上で、石垣の保存方針を取りまとめた。
・天守閣の建設を進める一方で、石垣の経過観察を行うとともに天守台石垣の保存、修復の具体的な方針を検討し、天守閣木造復元完了後、9年間かけて保存対策及び修復を行う。
・基礎構造について、はね出し架構によって、史実に忠実に天守閣を木造復元し、その際に、穴蔵石垣を復元する。
・外堀、外堀石垣、御深井丸、御深井丸側内堀石垣、内堀底面及び天守台石垣等、特別史跡名古屋城跡にとってかけがえのない場所において調査が進展しておらず、不十分である。
・更に考古学的な調査を行い、現況を正確に把握する必要がある。
・一般論ではあるが、何らかの復元建物を造ることを先にして、石垣の修理や保全措置を後回しにするというのは、史跡の整備の考え方として適切ではない。
・石垣の修復について、十分な調査研究の上で、適切な応急措置をすることにより、石垣の保存が可能であれば、天守閣木造復元を先に行った後に、石垣を修復するということもあり得る。
・はね出し架構で石垣を壊す、あるいは天守を作ってから石垣を修復するという考え方が基本的に認められない。

解体による影響はないとは言ってない。どんな影響があるのか(再質問)

【江上議員】文化庁の留意事項では、「現天守の解体・除去工事が文化財である石垣等に影響を与えない工法」を求められています。回答では、「極力軽微なものとなるように」というだけで。影響を与えないとは言っていません。どのような影響があるのですか、お答えください。

仮設物の設置や解体で荷重がなくなる事などでの影響が想定されるが工学的解析から問題はない。振動や落下物からはブロック解体で解消できる(局長)

【観光文化交流局長】石垣等への影響としては、解体に伴う仮設物の設置、解体により建物の荷重が除かれる事などが想定される。ただし、技術的・工学的な解析を行い、石垣などへの影響は少ないと判断している。また、解体工事による振動や落下物は、切断工法によるブロック解体を行うことで影響は少ないと考えている。

文化庁からの追加質問への回答は(再質問)

【江上議員】文化庁からの追加質問で、「解体工事が石垣等に影響を与えない工法であって、石垣の保存が確実に図られていることへの認識」を求められているとありました。どのように回答されたのでしょうか。

文化審議会の審議に関わる事項なので答えられない(局長)

【観光文化交流局長】文化審議会の審議に関わる事項であるため、お答えは差し控えさせていただきます。

審議会までの期間が短く、文化庁の判断を求めること自体無理ではないか(再質問)

【江上議員】本日文化庁に追加質問の回答を行うと答えられました。文化庁から確認を求められたのは、6月3日と公表しています。今日は、19日です。そして、早ければ21日にも文化庁の何らかの回答が予想されます。そこで、お聞きします。今日の回答では21日にはとても間に合わないと思います。21日に文化審議会が開催されるとしたら、文化庁の判断を求めること自体無理ではないでしょうか。どのようにお考えでしょうか、お答えください。

事前に見てもらっているので審議に影響はない(局長)

【観光文化交流局長】文化庁からは、いつの文化審議会に諮り、いつ結果が出るのか具体的なスケジュールについて、何も伺っていません。ただし、4月 19 日に提出した、解体の現状変更許可申請書と同様、確認事項の回答も事前に何度も目を通していただき、丁寧な助言・指導をいただいた上で本日提出することとしていますので、文化審議会の審議に影響はない。

現天守の耐震化案も含め、現事業を一度中止して市民の声を聞け(意見)

【江上議員】市民合意もない、文化庁の「解体許可」どころか、木造復元の「現状変更許可」もないのに、2022年完成を目指して事業を強行してきたことが、問題を引き起こしています。市民合意のない2022年木造復元は中止を求めます。たとえ文化庁の解体許可があっても現天守解体は許されません。
 現天守は、名古屋市民の戦後復興の象徴であり、コンクリートづくりであっても外観は、実測図を使った精密なものです。調査研究体制の充実で博物館機能を充実して魅力ある天守閣の実現は十分可能です。費用も505億円の十分の一で済み、市民サービスの充実もできます。このような現天守の耐震化案も含め、いったん現事業を中止して、市民の声を聞くことを求めます。今やるべきは、天守台石垣全体の保全修復を行うことです。
 議案の撤回は認めないようですので、引き続き委員会での徹底審議にゆだねて質問を終わります。

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