2012年6月定例会

田口一登議員の議案外質問② 国保料の算定方式変更で大幅値上げ(2012年6月22日)

国民健康保険の制度改定について

「広域化」=都道府県単位化で市民の負担増になるのではないか
【田口議員】第一に、国保の「広域化」、都道府県単位化という国の動きについてであります。
 国保「広域化」という構想は、小泉内閣による「医療構造改革」方針で初めて打ち出され、民主党政権になってから、「広域化」の〝地ならし〟とも言うべき制度改定が次々に行われてきました。
 2010年の国保法改正では、都道府県知事に「広域化等支援方針」を策定させ、市町村国保の「財政改善」「収納率向上」「医療費適正化」などを指導する仕組みが導入されました。2011年には、国保料の所得割の算定方式を統一するための法改正が行われ、市町村国保の所得割は来年度から、「旧ただし書き方式」に一本化される見通しです。
 そして、今年4月の国保法改正では、「保険財政共同安定化事業」の対象が、「すべての医療費」に拡大され、2015年4月からの実施が予定されています。「保険財政共同安定化事業」とは、市町村国保が、保険財源から都道府県の国保連合会に拠出金を出し合って、給付費を交付していく制度です。仮に、愛知県の「安定化事業」の対象が「1円以上」になれば、実態的には国保の給付財政が県単位になります。
 保険者組織や保険料の賦課・徴収は市町村単位のままでも、給付財政が県単位になればどんな問題が生じるでしょう。給付費が多額の本市などは、徹底した給付費削減を迫られるのではないでしょうか。一般会計からの繰り入れで保険料を抑えていることにたいして圧力がかかるのではないでしょうか。一般会計からの繰り入れを解消する動きが加速すれば、高すぎる国保料がさらに高騰し、収納率の悪化をもたらすでしょう。
 国保「広域化」とは、国庫負担の削減、住民の負担増、保険料の徴収強化という方向をいっそう強化する路線にほかなりません。
 こうした国保「広域化」、都道府県単位化に向けた動きの問題点について、どのように認識されているのか、見解を求めます。

具体的な考え方については、一切示されてない
【局長】国民健康保険は、高齢者や所得の少ない方が多く加入されていることなどから、財政基盤が脆弱であるという構造的な問題がある。この問題の根本的な解決には、すべての国民を対象とする医療保険制度の一本化が必要と考え、都道府県を保険者とした国保制度の再編・統合等を、国へ要望している。
 都道府県単位化をいつから実施するか、またその際に、どのように保険料を賦課するか、市町村独自の一般会計からの繰入れをどうするかといった点など、具体的な考え方については、一切示されていない。
 従来から、「広域化が被保険者の負担増につながらないよう」国に要望しており、引き続き要望していく。

所得割算定方式の「旧ただし書き方式」への変更で値上げされる世帯の対策は
【田口議員】第二に、保険料の所得割の算定方式の「旧ただし書き方式」への変更についてであります。
 本市では現在、「住民税方式」を採用していますが、来年度からは「旧ただし書き方式」に変更されます。昨年度から「旧ただし書き方式」に変更した東京23区では、保険料が2倍以上に引き上がったケースも生じ、数万件の問い合わせや苦情が区役所に殺到したそうです。
 「住民税方式」では、住民税を所得割算定の基礎にしていますので、扶養控除や障害者控除、寡婦控除など各種控除が考慮されています。しかし、「旧ただし書き方式」では、控除されるのは基礎控除のみとなり、扶養家族や障害者などがいても考慮されません。そのため低所得者や障害者、家族の多い世帯などの保険料が、大幅に引き上がるのです。
 そこでまず、算定方式の変更による保険料の試算を示していただきたい。40歳以上の夫婦と中学生以下の子ども二人、世帯主のみ給与収入の世帯で、年収が271万円のケース、これは住民税非課税世帯の上限です。および年収が400万円のケースでお示しください。
 所得は変わらないのに、計算方式を変えただけで保険料が引き上げられたらたまりません。しかも、保険料引き上げの影響を受けるのは、低所得者や障害者、寡婦などの社会的弱者が多いのです。国は、算定方式の変更にあたって、保険者独自の保険料軽減に要する費用を保険料の賦課総額に含めることができるとしていますが、本市独自に一般会計からの繰り入れによって、保険料軽減を実施することも可能です。
 健康福祉局長、算定方式の変更によって保険料の負担増となる世帯にたいして、恒久的な軽減措置を講ずるべきではありませんか。また、そのための財源として、一般会計からの繰り入れを行う考えはありませんか。
 「旧ただし書き方式」への変更によって、今までは所得割の保険料が賦課されていなかった住民税非課税世帯で、各種控除が適用されなくなるなどの理由により、新たに所得割が賦課されるようになる世帯も生まれます。こうした世帯は推計で何%程度ですか。新たに所得割が賦課されないよう軽減措置を求めますが、いかがですか。

保険料の軽減は保険料で行うことはできるが、一般会計からの繰り入れは考えない
【局長】保険料の算定方式を「住民税方式」から「旧ただし書き方式」に変更すると、家族の多い世帯などでは保険料が増加する傾向がある。年収271万円の4人家族世帯では、17万6千円余から32万1千円余に、同年収400万円の世帯では、35万9千円余から47万3千円余に、それぞれ、国民健康保険料が増加する。しかし、保険料の総額が増加するものではないので、保険料が減少する世帯もある。
 「旧ただし書き方式」への変更により、保険料が増加する世帯のあることは認識しており、住民税非課税世帯の方に、新たに所得割が賦課されるケースもあり、その数は約3万5子世帯、加入世帯全体の約10%にあたると試算している。
 「旧ただし書き方式」への変更で保険料が増加する世帯には、保険料の軽減措置を講じることができるよう、制度改正を国に対して要望してきた結果、政令が改正され、保険料の軽減費用を賦課総額に含めることができることとされた。どう対応するのか、現在、検討を進めている。
 「旧ただし書き方式」への変更は、保険料の総額に影響を及ぼすものではないので、一般会計からの繰入れにより保険料の総額を減少させることは考えてない。

保険料の恒久的な軽減措置を(再質問)
【田口議員】家族が多い世帯だとびっくりするような値上げになる、計算方式変えただけで、271万円、住民税非課税世帯ぎりぎりの4人世帯ですね、この世帯で1.8倍、大変なことです。ですから答弁でも保険料が増加する世帯については、軽減措置を検討しているという答弁をいただきました。問題は、その軽減措置が、恒久的な措置なのか、暫定的な激変緩和措置なのかということです。激変緩和措置は今年度から川崎市もやっています。
本市ではどうするかということですが、「住民税方式」を採用してきた本市をはじめとする6市町が、国に要望書を出されていますが、その中に、こういうくだりがあります。「旧ただし書き方式は、世帯の所得が同じでも、収入のない子どもなどの扶養家族が多くなり、可処分所得が少なくなるほど保険料が高くなるという点で、激変緩和にとどまらず、子育て支援の観点から恒久的な支援措置を強く求められる」。
このように当局も、激変緩和にとどまらず、恒久的な軽減措置が必要だと認識しておられるのです。だったら、恒久的な軽減措置を講じるべきではないですか。健康福祉局長、はっきりとお答えください。

保険料の軽減措置は他の人の保険料に大きな影響を与えるので慎重に検討する
【局長】旧ただし書きの変更に伴う保険料の軽減措置は、被保険者の負担する保険料に大きな影響を与えるので慎重に検討していく。

一般会計からの繰り入れで恒久的な軽減措置を(意見)
【田口議員】保険者の保険料負担に影響を与えないようにするには、一般会計から財源を繰り入れればいいのですから、そのことも含めて検討し、恒久的な軽減措置を実施されるよう要望して、質問を終わります。

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