2012年2月定例会

山口清明議員の自公民提出議案への質疑 がん対策条例について(2012年3月7日)

 

がん対策は患者などの声をきいて、生活や治療を支える仕組みを

【山口議員】国のがん対策基本法の制定を踏まえて、いくつかの自治体で、がん対策を推進する条例が生まれています。各地の条例から学びながら、本市でもがん対策を推進する条例を制定することは必要と考えます。そのことを前提に、3点うかがいます。
「がん撲滅」が目的にふさわしい言葉か
【山口議員】第一に、条例の目的です。条例前文では、「がん撲滅」「がんに打ち勝つため」といった勇ましい言葉が並び、第一条(目的)でも、「がんの克服」という言葉が使われています。確かに「がん」は克服・撲滅すべき対象という側面もありますが、現実には、多くの患者・市民がつきあっていかざるをえない病気でもあります。
 だから例えば、愛媛県の条例は「温かみのある適切ながん対策を推進することにより、がんになってもお互いに支え合い、安心して暮らしていける地域社会を実現する」とあり、岡山市の条例では、「市民ががん患者となってもお互いに支え合い、安心して暮らすことのできる地域社会の実現」をうたっています。
 またどちらの条例でも、その目的の一つに「適切ながん医療をすべての県民・市民が受けられるようにする」と明記しています。
 これは偶然ではなく、どちらも、当事者であるがん患者・患者会やサポート団体が、深く条例づくりに関わり、つくられた成果です。
がんばっているがん患者を支え、すべての市民に適切ながん医療の提供を
 がんに罹患している方も大勢いらっしゃるなかで制定する条例です。がんに罹患しながら精一杯生きている市民を支えること、すべての市民に適切ながん医療を提供すること、この二つも条例の目的に加える必要があると考えます。いかがですか。
目的の中に包括されている
【服部議員】「目的」には「がんの克服に向け市民総ぐるみでがん対策を実施していく」とあり、市民にはがん患者や家族も含まれる。適切ながん医療についても「地域の医療水準の向上を図る」「適切ながん医療の環境整備に努める」とある。
介護保険を利用できる仕組みを
【山口議員】第二に、患者の療養環境を支えるうえでの課題についてです。
 第9条(在宅療養の充実)とありますが、介護保険の活用が大きな課題です。働き盛りの年代、40歳から65歳までのがん患者も介護保険を利用できるのですが、利用するには「もう助からない末期である」との医師の診断が必要です。これは酷な仕組みです。申請をためらい、介護保険を利用できない患者が少なくないのです。この課題をどう認識していますか。
介護保険制度の在り方には様々な課題がある
【服部議員】介護保険なので答えにくいが、H18年の介護保険改正で末期がんが追加されており、介護保険制度の在り方には様々な課題があると認識する。9条は、介護保険とは関係なく、がんの一般療養について規定したもの。
医療費負担への支援を
【山口議員】10条(がん患者等の支援)では「がんの罹患に伴う負担の軽減に資する」とあります。相談体制の充実だけが例示されていますが、医療現場でお話しをうかがうと最大の負担は、やはり経済的負担です。
 東京都日の出町は「がん医療費の助成に関する条例」をつくり、患者の医療費自己負担分を助成しています。本条例では、どんな負担を想定し、どんな支援を考えているのですか。
予算措置も必要で検討が必要となる
【服部議員】身体的苦痛、精神的苦痛、社会生活上の不安など負担の軽減のための相談体制や医療情報の提供、支え合う場の提供などを規定している。経済的支援は除外するものではないが、予算措置も必要で検討が必要となる。
日常的な当事者参加の推進組織を
【山口議員】第三に、推進体制と当事者参加についてです。
 他自治体の条例では、がん対策推進委員会などを組織し、施策の進行状況をチェックし、知事や市長に対し必要な意見を述べることができ、その構成メンバーには患者会、患者支援団体などを加えるとしている例が少なくありません。
 こうした体制をつくらないと、条例が活きたものにならないのではないか、と危惧します。なぜこの条例案では4年後の検討だけがうたわれ、日常的な推進組織を設けないのか、その理由を聞かせてください。
市長の付属機関なので遠慮した
【服部議員】市長の付属機関にあたると考えららるので、議員提案で規定することに疑義もある。
 緩和ケア病棟がある守山市民病院の廃止に反する条例になる(意見)
【山口議員】議員条例だからこそ、目的などについて議論すべきです。介護保険にこだわったのは、県の条例なら医療について書かれるが、介護・療養は市の仕事になり、市の条例だからこそしっかり考えていきたい。
 今議会に名古屋市は、緩和ケア病棟がある守山市民病院の廃止条例を提案しています。緩和ケアの充実をうたった条例案の精神と名古屋市の方針は180度ちがうのではないか、これも大いに議論をしたい課題の一つです。
 この条例を市民参加でよりよいものにするために、当事者であるがん患者の方や患者会・サポート団体の方々を交えた公聴会を開くことや、がん医療や緩和ケアの専門医を参考人として招くことなども提案したい。
 後は委員会での審議に委ねて、私からの質疑を終わります。

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