2023年11月議会

みつなか美由紀議員の議案外質問(11月27日)介護保険料の軽減と不登校児童生徒への支援について

介護保険料の軽減について

高齢者にとって介護保険料負担が重いという認識はあるか

【みつなか議員】通告に従い、順次質問します。まず介護保険料の負担軽減について健康福祉局長に質問します。

 介護保険制度は、3年ごとに改定され来年度は9回目の改定となります。名古屋市も第9期介護保険事業計画の策定を進めており、先日の所管事務調査では、介護保険料の基準額を月額6,600円台~6,900円台とする試算が示されました。2000年の制度発足時から現在までに介護保険料は2.3倍にまで膨れ上がり、これ以上の値上げはしないでほしいというのが、高齢者の多くの声です。

 介護保険は40才から保険料を納めますが、社会保険加入の方は、半分は事業主の負担であり、被扶養者は実質本人の負担はありません。それが65才になって、所得は大幅に減る、保険料は上がる。さらに今の物価高騰の中で、介護保険料の負担は大変重いと思いますが、どう認識されていますか。

「高齢者にとって負担が重くなっていると認識している」(局長)

【健康福祉局長】高齢者への保険料負担の認識についてお尋ねがありました。

 介護保険制度では、介護給付費のうち50%を国・県・市町村の公費で負担し、残りの50%を被保険者の保険料で賄うこととされております。65才以上の第一号被保険者の保険料は、介護給付費の23%を基準として、市町村ごとに後期高齢者の比率等による調整を加味した割合で、ご負担いただく仕組みとなっております。

 また、個別の第一号被保険者の保険料につきましては、市民税の課税状況や所得等に応じた区分により、負担能力に応じて、段階的に保険料額が設定されております。保険制度においては給付費が増えれば保険料も上がっていく仕組みとなっております。物価高騰が続き、年金額も十分に上がらない中にあっては、高齢者にとってご負担が重くなっていると認識しております。

段階区分を拡大し、より低所得者の負担を軽くすべき

【みつなか議員】これ以上保険料負担を増やすわけにはいきません。むしろ軽減するべきです。

 介護保険料はその人の負担能力に応じて保険料段階区分が決められ、保険料が決まる仕組みとなっています。いま名古屋市は、国の9段階よりも拡大して15段階にしています。段階区分が多いほど応能負担は強まり、低所得者の負担を軽くするためには効果的です。

 しかし、全国的にみると、政令市でも横浜市では16段階に、東京23区の半数以上の特別区では名古屋市よりも段階区分を増やしています。県内では津島市、高浜市が17段階にして、応能負担をさらに強める対応をしてきました。

 第9期に向けて名古屋市でもさらに段階区分を拡大し、より低所得者の負担を軽くする方向へ進めるべきだと考えますが、見解を求めます。

「国の検討状況を注視していく」(健康福祉局長)

【健康福祉局長】名古屋市におけるさらなる多段階化についてご質問をいただきました。

 現在、国の標準の保険料段階は9段階となっておりますが、市町村では必要に応じて独自に保険料段階を設定することができることとされております。議員ご指摘の通り、本市では、すでに15段階への多段階化を行っており、最低段階と最高段階の間で保険料額に10倍の差を設け、負担能力に応じてきめ細かく保険料額を設定することで、低所得者の負担軽減を図っているところでございます。

 さらなる多段階化につきましては、現在国において、第9期介護保険事業計画期間に向け、低所得者の保険料上昇抑制及び負担能力に応じた負担という観点から、さらなる多段階化等が検討されております。令和5年12月末までに結論を得ることとされておりますので、まずは国の検討状況を注視してまいります。

一般財源を投入して低所得者減免制度をつくるべき

【みつなか議員】応能負担をさらに強化した上でも、低所得者の保険料を軽減する必要があると思います。高齢で年金暮らしのご夫婦からは「国民年金で生活はぎりぎり。あらゆるものが値上がりする中で、これ以上の保険料はとても払えない」という声があります。

 横浜市では、所得金額が120万円未満の方で、さらに単身世帯では収入が150万円以下で且つ預貯金等の資産が350万円以下、居住用以外の不動産を所有していないこと、を条件にさらに保険料の減免制度を設けています。

 名古屋市でも低所得者に対する減免制度を作るべきではないでしょうか。

 その財源としては、保険財源の中だけで賄うとすれば、さらに保険料を上乗せせざるを得なくなります。そこで一般財源を投入することも考えるべきと考えますが、見解をお聞きします。

「法令上、一般財源の投入は適当でない」(健康福祉局長)

【健康福祉局長】低所得者減免の創設、一般財源の投入についてご質問をいただきました。

 先ほども申し上げました通り、本市では、減免制度ではなく、保険料を多段階化し、きめ細かく保険料額を設定する方法により、低所得者の負担軽減を図っているところでございます。

 横浜市が実施する低所得者減免は、申請日が属する年の収入見込み額が収入基準額を下回ることが減免要件の一つとなっておりますが、本市においても、失業や事業の休廃止などにより、所得見込額が前年と比べ、大きく減少した場合を対象とした、所得減少減免の制度を設けております。

 また、横浜市においても、本市においても、減免する分は、保険料算定の際に保険料賦課総額に算入し、保険制度の中で、他の被保険者の保険料で賄われるものでございます。加えて、介護給付費のうち保険料で負担すべき割合は法令で定められていることから、国は、保険料減免に対して一般財源を投入することは適当ではないとしており、本市としても、一般財源の投入は考えておりません。

一般財源の投入は禁じていない。保険料引き下げを求める(要望)

【みつなか議員】まず、介護保険料への一般財源の投入についてですが、法令上「介護給付費のうち保険料で負担すべき割合」は定められていますが、一般財源の投入を禁止する規定はありません。ペナルティが課せられることもありません。税の再分配の原則から見ても、一般財源の投入で低所得者の負担を軽くする減免は、あってしかるべきです。

 局長からの答弁にも「物価高騰が続き、年金額も十分に上がらない中にあっては、高齢者にとってご負担が重くなっていると認識しております」とありました。

 市民の方からは「保険料が高くて納められずサービスが受けられない」とか「無理して保険料を納めてきたが、サービスを利用するときにはまた利用料が高くて、サービスを受けるのを躊躇する」という声があります。

 第9期 介護保険 事業計画策定 に向けて、国にも国費のさらなる投入を要望することを求めるとともに、名古屋市としても段階区分のさらなる多段階化と、低所得者減免の制度の創設を求めます。

 2000年と比べると、老齢基礎年金の満額支給額は、年額9,000円以上減り、一方で介護保険料の基準額は年額45000円も値上がっています。これ以上の引き上げは死活問題です。介護保険料の引き下げを強く求め、この件については質問を終わります。

2.不登校児童生徒への支援について

不登校児童の増加に対する市教委の認識と対策

【みつなか議員】次に、不登校児童生徒への支援について 教育長に質問します。

 全国的に不登校児童生徒は増加しており、2022年度は約30万人と過去最多となっています。

 不登校未然防止及び不登校児童生徒支援について、文科省より2016年9月に「不登校児童生徒への支援の在り方」に関する通知が出され、不登校児童生徒への支援の視点として、「学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が、自らの進路を主体的にとらえて、社会的に自立することを目指す必要がある」ことが示されました。市教育委員会はそれを受け、2017年9月に「学校における不登校児童生徒支援マニュアル」を改訂し、方策を立てました。

 しかし不登校は増え続け、名古屋市では2022年度は、4,953人と2017年からの5年間で2倍にもなっています。その要因には、画一的な教育、学力を重視する競争的な教育があるのではないか。また、教員の不足や長時間労働、教員も評価される精神的な負担などから、子どもたちの相談にゆったりと応じてあげられないということが背景にはあるのではないかと考えます。

 「先生に相談したくても忙しそうで言えない」という生徒や、また保護者からは「子どもが不登校になりかけた時に、担任の先生と話したかったが、共働きのため遅くにしか時間が取れなくて連携が取れなかった」という声もあります。 不登校がこれだけ増えている背景をどのように認識され、どのような対策を講じていますか。

コロナ禍等が影響。子ども主体の授業への改善で未然防止(教育長)

【教育長】不登校が増えていることの背景の認識についてご質問をいただきました。

 不登校が増加した背景につきましては、児童生徒の休養の必要性を明示した、いわゆる「教育機会確保法」の趣旨が浸透したことによる意識の変化のほか、コロナ禍による生活リズムの乱れや、学校生活において様々な制限がある中で交友関係を築くことが難しかったことなど、登校する意欲がわきにくい状況にあったことなどが考えられると認識しております。

 不登校の未然防止には、魅力ある学校づくりを進めていくことが重要であることから、児童生徒一人ひとりが主体的に学びに向かい、楽しく充実した学校生活を過ごすことができるよう、ナゴヤ・スクール・イノベーション事業を通して、子ども主体の授業への改善に取り組んでおります。

 また、令和4年3月に策定いたしました「不登校未然防止及び不登校児童生徒支援の方策」に基づき、校内の教室以外の居場所づくり(写真:左)や、民間オンライン学習プログラムを活用した学習支援を導入するなど、支援の拡充に取り組んでいるところでございます。

子ども適応相談センターを市内各方面に設置すべき

【みつなか議員】不登校児童生徒が増加する中で、名古屋市では支援の一つとして、1991年に現在の子ども適応相談センターを西区に開設し、その後、鶴舞、笠寺にサテライトを開設して3施設で受け入れています。2022年度では806人が登録しており、前年度から53人増加しています。

 年々ニーズも高まっていることから来年4月には大曾根にも開設する準備が進められており、受け入れ体制が拡充することは前進です。しかし、今後も不登校児童生徒が増えることが予測される中、4か所でも手狭になると考えられます。

 また、「利用したいと思うけど、送迎が必要ということで、遠くてあきらめた」というケースも聞いており、行きたいけれどもあきらめている子どもたちが、正確な数は把握できなくても、少なからずいることは事実です。

 そうした子どもたちを一人でも多く受け入れるためには、市内バランスよく各方面につくることが求められます。

 第3サテライト以降の子ども適応相談センターの拡充についてどのように考えていますか。

「様々な取り組みを踏まえ、総合的に検討したい」(教育長)

【教育長】子ども適応相談センターの拡充についてご質問をいただきました。

 子ども適応相談センターでは、心理的な理由によって登校できない児童生徒を支援することを目的として、市内3か所にて、通所による教育相談や適応指導を行っております。定期的な教育相談を児童生徒とその保護者それぞれで実施するとともに、通所する児童生徒の自主性・自発性の育成、対人関係の改善等を図るため、それぞれのペースに合わせた様々な活動や学習の支援を行っております。

 同センターの通所者数は年々増加していることから、通所者一人一人への支援の充実を図るため、北区の市立報徳幼稚園跡地に、第3サテライトを令和6年4月の開設に向けて整備を進めているところでございます。JR・名鉄・地下鉄の大曽根駅から徒歩で通所できる利便性の高い場所に新たなサテライトを整備することで、より多くの児童生徒が子ども適応相談センターを利用できるようになると考えております。

 子ども適応相談センターのさらなる拡充につきましては、「不登校未然防止及び不登校児童生徒支援の方策」における、様々な取り組みを踏まえ、総合的に検討してまいります。

民間団体との連携の状況は

【みつなか議員】不登校児童生徒への支援は、フリースクール等民間団体も様々な形態で取り組んでおり、特徴ある運営をしています。その子にとって一番合う居場所として、子ども適応相談センターや、校内フリースクールなどと同様に、民間団体の施設も選択肢となっています。文科省からの通知でも「本人の希望を尊重したうえで、場合によっては、教育支援センターや不登校特例校、ICTを活用した学習支援、フリースクール、中学校夜間学級での受け入れなど、様々な関係機関等を活用し社会的自立への支援を行うこと」とあり、名古屋市も「民間団体との連携の取り組み」を進めるとのことです。

 民間団体との連携について、どのような取り組みがされてきましたか。

民間団体のガイドラインを策定。「連絡会」も開き意見交換した

【教育長】民間団体との連携についてご質問をいただきました。

 教育委員会では、令和4年7月に「民間団体(施設)についてのガイドライン」を策定するとともに、社会的自立に向けた児童生徒の努力を学校として評価し、出席扱いとする要件につきまして、あらためて各学校に周知いたしました。各学校長は、民間団体において相談・指導を受けている児童生徒一人一人の状況を踏まえ、指導要録上出席扱いにするかどうかを判断しているところでございます。

 また、民間団体と教育委員会が相互理解を深め、連携強化を図るため、本市では初めてとなる連絡会を令和5年8月にオンラインで開催し、意見交換を行いました。当日ご参加いただいた37団体につきましては、本市ウェブサイトに一覧を掲載し、こうした取り組みに関する情報発信を行っております。

 今後も連絡会を継続して開催することにより、民間団体との連携強化を図ってまいりたいと考えております。

【みつなか議員】不登校児童生徒への支援についてです。

 コロナが収まり通常に近い学校生活になりましたが、不登校は減っていません。子どもたちの多様性を認め、一人一人に丁寧に接することができる学校づくりが大切です。

 子ども適応相談センターについては、希望する子どもたちがより利用しやすい施設になるよう、利用者や希望者の声をしっかりきいて、さらに拡充することを求めます。

 民間団体への支援については様々な方法があります。学校との橋渡しという点では、校長によって大きな差が生じないよう、改めて周知徹底すること、また、取り組みが始まっている連絡会は、さらに回数を重ね、民間団体の要望も取り入れて進めていくことを求めます。

 民間のフリースクールに子どもさんを通わせている保護者の方からは「利用料が月に3万から4万もかかる。何とかやりくりしているけれど大変」と。また別の方からは「いいなと思うところがあっても、経済的にとても選択することはできない」などの声が届いています。学校へも行かれず、経済的な理由で民間団体を選択肢に入れられない、という子どもたちを取り残さないことこそ「教育機会確保法」主旨ではないでしょうか。すべての子どもたちの教育を受ける権利を保障する観点から、補助制度の創設を含め、様々な支援を広げることを求めてすべての質問を終わります。

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