2023年11月議会

田口一登議員の議案外質疑(11月24日)「公園・道路等の維持管理」の契約に係る入札結果における最低制限価格について

除草・樹木剪定の委託契約で不自然な入札結果

平均入札額を最低制限価格にしているから?

【田口議員】通告に従い、「公園・道路等の維持管理」の契約に係る入札結果における最低制限価格について質問します。

 入札制度には、著しい低価格による入札の防止策として、最低制限価格制度が導入されています。これは、あらかじめ最低制限価格を設定し、最低制限価格に満たない入札を行ったものを落札者としない制度です。

 最低制限価格の設定方法については、国が算定基準を示していますが、本市では、予定価格の75%から92%の範囲内で、国等の基準により算定した額、または当該入札の平均入札額のうち、いずれか低い額とされています。愛知県では、最低制限価格の設定は国の算定基準に準拠しています。政令指定都市でもほとんどの自治体で国の算定基準に準拠しており、平均入札額を設定基準の一つとしている自治体はごく少数です。

 私のところに、「『公園・道路等の維持管理』に係る入札結果を見ると、公正性が疑われる入札が行われているのではないか」との声が寄せられました。そこで、上下水道局と財政局が入札を担当した「公園・道路等の維持管理」に係る入札結果を調べてみたところ、以下に述べるような不自然な点が明らかになりました。そして、その背景には、最低制限価格の設定にあたって平均入札額も基準の一つとしていることがあるのではないかと考え、質問させていただきます。

「制限」回数多数の「常連」が落札

 まず、上下水道局が入札を担当した「公園・道路等の維持管理」、すなわち同局所有施設内の除草や樹木剪定の委託契約に係る入札後資格確認型一般競争入札についてです。本年4月19日入札分および5月9日入札分の19件の入札結果を調べました。

 最低制限価格に満たない入札金額のために「制限」となった回数が、この19件中17回だった事業者が4者あり、10回以上が18者もあります。最低制限価格に満たなかった回数が10回以上の事業者を以下、「制限常連」と呼ばせていただきます。

 19件の入札のうち3つのケースを紹介します。パネルをご覧ください。お手元にも配布させていただきました。

 施設名と入札者名は伏せてありますが、ケース1の「上下水道局甲施設などの構内除草・樹木剪定委託」では、入札に20者が参加し、14者が最低制限価格に満たなかったのですが、そのすべてが「制限常連」の事業者です。この14者の入札金額は、予定価格の82.97%から83.15%のわずか0.18%の間に集中しています。落札者は「制限常連」の事業者であり、落札率は85.97%。落札者に次いで高い入札金額だった入札者も「制限常連」が2者続いています。

 ケース2の「上下水道局乙施設などの樹木剪定及び除草委託」では、入札に20者が参加し、最低制限価格に満たなかった14者のすべてが「制限常連」の事業者でした。この14者の入札金額は、予定価格の83.22%から83.33%のわずか0.11%の間に集中しています。落札者は「制限常連」の事業者であり、落札率は85.98%。落札者に次いで高い入札金額だった入札者は、やはり「制限常連」が2者続いています。

 ケース3の「上下水道局丙施設などの除草・樹木剪定委託」では、入札に26者が参加し、17者が最低制限価格に満たなかったのですが、そのうち15者が「制限常連」の事業者で、他の2者も「制限」回数が9回、7回と多い事業者です。この17者の入札金額は、予定価格の83.34%から83.50%のわずか0.16%の間に集中しています。落札者は「制限常連」の事業者であり、落札率は85.90%。落札者に次いで高い入札金額だった入札者は、こちらも「制限常連」が2者続いています。

公正性が疑われる不自然な入札結果ではないのか

 そこで上下水道局長にお尋ねします。私が紹介した3件の入札の最低制限価格は、国等の基準により算定した額なのか、それとも平均入札額なのか。この3件について、予定価格にたいする割合も含めてお示しください。

 この3件の入札結果に共通する特徴は、一つ、「制限」となった入札者が入札参加者の6~7割と多数にのぼっていること。二つ、最低制限価格に満たなかった入札者は、「制限常連」など「制限」となった回数が多い事業者であること。三つ、「制限」となった10数者の入札金額は、0.1%台の価格幅に集中していること。四つ、落札者、および落札者に続いて高い入札金額の入札者も「制限常連」の事業者ということです。

 上下水道局担当の19件の入札結果では、他にも同様のケースが少なくありません。そして、落札者は、19件のうち12件が「制限常連」の事業者であります。

 こうした入札結果には、入札の公正性が疑われるような不自然さがあると考えますが、上下水道局長はいかがお考えか、お答えください。

平均入札額を最低制限価格にしているからではないか

 次に、財政局が入札を担当した「公園・道路等の維持管理」、すなわち道路や河川など市長部局所有施設における除草・樹木剪定などの委託契約に係る入札後資格確認型一般競争入札についても、本年4月10日~5月24日入札分の24件の入札結果を調べてみました。

 「制限」となった入札者がゼロだった入札は5件で、平均落札率は90.7%。「制限」となった入札者が1者の入札は2件で、平均落札率は91.3%。同じく2者の入札は7件で、平均落札率は89.9%。3者の入札は2件で、平均落札率は90.9%。「制限」となった入札者が7者から12者の入札は8件で、平均落札率は87.9%でした。このように「制限」となった入札者が多数となった入札では、落札率が低くなっています。

 そこで、財政局長にお尋ねします。財政局が担当のこの24件の入札について、国等の基準により算定した額を最低制限価格とした件数、および平均入札額を最低制限価格とした件数は、それぞれ何件か。「制限」となった事業者が0から3者だった16件と7者以上の8件に分けてお示しください。

 この24件の入札のうち、「制限」となった入札者が7者以上と多数にのぼった8件の入札は、いずれも道路除草の管理委託であります。

 この8件の入札結果に共通する特徴は、一つ、最低制限価格に満たなかった入札者は、上下水道局担当の入札で、私が「制限常連」と呼ばせていただいた「制限」回数が多数の事業者が多いこと。二つ、落札者はすべて「制限常連」の事業者であり、落札者の次に高い入札金額の入札者も8件中5件は「制限常連」の事業者ということです。

 財政局長、道路除草の管理委託という特定の案件におけるこうした入札結果について、不自然だと思いませんか。また、「制限」となった回数の多い事業者が多数、最低制限価格を下回る金額で応札している背景には、最低制限価格の設定において平均入札額を基準の一つとしていることがあるのではないでしょうか。

 答弁を求めて、私の第1回目の質問を終わります。

「不自然な点はない」と強弁、疑問点への明確な答弁なし

【上下水道局長】

 3件の入札にかかる最低制限価格は、いずれも平均入札額によるものです。予定価格に対する割合は、ケース1、2、3の順にそれぞれ、83.8%、83.9%、84.4%となっています。上下水道局では、除草・樹木剪定委託を、入札後資格確認型一般競争入札により多数発注し、多くの事業者が入札に参加しており、最低制限価格については、入札参加者の実勢価格を入札に反映させる趣旨などから、平均入札額も用いる方式を採用しているところです。平均入札額による最低制限価格は、当該入札額の平均により算定されることから、半数近くの入札者は最低制限価格を下回る傾向となっています。

【財政局長】

 公園・道路等の維持管理に係る業務委託では、予定価格の75%から92%までの範囲において、設計金額をもとに国などの基準により算定した額と、平均から極端に乖離した入札等を除いた当該入札の平均入札額のいずれか低い額を最低制限価格としています。お尋ねのあった財政局担当の24件について、最低制限価格に満たない入札を行った事業者数が3者以下であった16件の入札のうち、最低制限価格を国等の基準により算定した額としたものは7件、平均入札額としたものは9件です。また、最低制限価格を下回った事業者数が7者以上であった8件の入札については、すべて、平均入札額を最低制限価格としたものです。平均入札額による最低制限価格については、これを採用することで、入札参加者の実勢価格を反映させることができるものと考えています。また、当該入札額の平均により最低制限価格が算定されることから、入札参加者のおおむね半数は最低制限価格を下回る傾向となっています。以上のことから、お尋ねのあった応札状況については、公正な入札の結果であり、不自然な点はないものと認識しています。なお、入札の不正を疑うに足る情報がもたらされた場合には、速やかに調査を行い、公正取引委員会や愛知県警への通報も含め、適切に対応を行っているところです。

過去の案件も含めた調査を

【田口議員】上下水道局長の答弁は、入札結果の不自然さにたいする明確な説明にはなっていません。

 もう一度、パネルをご覧ください。私は先ほど、この3件の入札結果に共通する特徴を4点指摘しました。1点目の「制限」となった入札者が多いことを、局長は答弁されただけです。あとの3点に関わる疑問にはお答えになっていません。

 上下水道局担当の19件の入札結果では、「制限」となった回数が10回以上の事業者、私が「制限常連」と呼んでいる事業者が18者もあります。一方で、「制限」回数が1回から3回と少ない事業者が17者あるのです。少なくない特定の事業者が、「制限」に引っかかる可能性のある低い金額で、どうして何度も何度も応札しているのか。さらに、この3件のように、落札者は「制限」回数が多数の「制限常連」、それに続く入札金額の入札者も「制限常連」というケースが少なくありません。不自然ではないでしょうか。

 ある業者の方からこういう話を聞きました。「平均入札額を最低制限価格の基準の一つにしていることから、複数の業者が組んで最低制限価格を調整できてしまう。最低制限価格を意図的に引き下げて、落札することが可能である」と。私が取り上げたケースがそうだとは言い切れませんが、そうではないとも言い切れないのではないでしょうか。

 そこで上下水道局長に再質問します。除草・樹木剪定の委託契約に係る入札結果について不自然な点がないのか、過去の案件も含めて調査していただきたい。調査にあたっては、財政局とも連携して行うことを求めますが、いかがですか。

 財政局長にも再質問します。財政局担当の24件の入札のうち、落札額が同額となってくじ引きで落札者を決定した入札が11件あります。この11件では、「制限」となった事業者はゼロから3者です。財政局長の答弁で示された国基準により算定した額を最低制限価格とした7件は、この11件に含まれると思われます。

 一方で、「制限」となった事業者が7者以上だった8件は、すべて平均入札額を最低制限価格としたとのことですが、この8件のうち7件では、落札額を少し上回る金額で同額の入札をした事業者があるのです。おそらく設計金額をもとに国等の基準により最低制限価格を推計して入札されたので同額となったのでしょう。しかし、低い金額の入札者が多数だったことから平均入札額が下がり、それが最低制限価格となったのです。

 この8件で「制限」となった事業者は、「制限」回数が多い事業者であり、落札者はすべて「制限常連」です。道路除草の管理委託という特定の入札案件において少なくない特定の事業者が、「制限」となる可能性のある低価格で入札しているのです。

 財政局長、複数の少なくない事業者が調整して最低制限価格を意図的に引き下げているのではないかという疑念を持たれないようにするために、最低制限価格の設定方法は、国の算定基準に準拠するだけに改めるべきではないですか。お答えください。

「不自然ではない」とくりかえし

【上下水道局長】

 重ねてになりますが、上下水道局では、除草・樹木剪定委託を、一般競争入札により多数発注しており、多くの事業者が入札に参加しています。当該委託の入札結果につきましては、入札参加者の実勢価格が入札に反映されたことで、平均入札額が、国等の基準により算定した額に比べて低い額となり、最低制限価格として採用された結果、「制限」となった事業者が多くなったものであり、不自然ではないと認識しています。なお、上下水道局が発注する契約について、入札の公正性が疑われるような情報が寄せられた場合には、財政局とも連携し、調査や公正取引委員会への通報など適切に対応しています。

平均入札額は最低制限価格の漏えい防止のため

【財政局長】

 国等の基準により算定した額と当該入札の平均入札額のいずれか低い額を最低制限価格とすることは、開札まで最低制限価格が確定せず、その価格を探ろうとする不正な動きへの抑止に有効であると考えています。また、他の自治体において、職員の最低制限価格漏えいによる逮捕事案が度々発生している中で、開札まで最低制限価格が確定しないことは、職員による最低制限価格の漏えいを防ぎ、不祥事防止にも寄与していると認識しています。本市としては、今後とも、市政への信頼が損なわれることのないよう、公正・公平な入札制度の運用に努めてまいるので、ご理解いただきたいと思います。

最低制限価格の設定方法の見直しを

【田口議員】上下水道局長は、調査するとは答弁されませんでしたが、入札の公正性が疑われるような情報が、関係者から寄せられた場合には、財政局とも連携して、しっかり対応していただきたい。

 財政局長が答弁されたことは一理ありますが、平均入札額を最低制限価格にすると、少なくない事業者がグループを組んで、国の算定基準にもとづいて推計される最低制限価格を下回る金額で入札することによって、最低制限価格を引き下げ、そのグループの事業者のいずれかが落札できるようにすることが可能になります。

 公正・公平な入札制度とするために、最低制限価格の設定方法の見直しを検討されるよう求めて、質問を終わります。

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