後期高齢者医療広域連合議会 2023年2月定例会 伊藤建治議員(春日井)の議案質疑①虚偽請求で負債3億円(2023年2月14日)

債務履行を求めての民事訴訟をやめて権利放棄とした理由は

【伊藤議員】この議案は2016年6月に議員に説明があったM社による過大請求に関連する案件です。
 内容は「施術を行った施術師と異なる施術師名での保険請求」「保健所に届けた施術所や施術師所在地と異なる場所からの保険請求」「介護施設等に入所する被保険者に対し、自宅を施術場所として往療料を請求したもの」「法定の負担割合に基づく金額を被保険者から徴収しない施術の保険請求」など、悪意のある虚偽請求であり、すべて広域連合に返還されるべきものです。
 名古屋地裁では、元代表取締役に対しては虚偽請求に対して関与したことの立証が困難であると無罪判決となり、検察も控訴も断念、無罪判決が確定しましたが、虚偽請求の事実は消えるものではなく、M社が広域連合に債務があることに変わりありません。したがって債務履行を求めて民事訴訟を提起すべきですが、権利放棄すると判断した理由は何か。

刑事訴訟で無罪が確定、債務者の財産が少なかったため

【総務課長】2016年度以降、弁護士と相談しながら、民事訴訟を含め対応を検討してきたが、民事訴訟の提起は困難と判断した。
 1、刑事訴訟で元代表取締役に無罪判決が確定したことで、民事訴訟を行うことが困難と考えた。当初、詐欺罪が認められた後に民事訴訟と考えていたが、無罪判決が確定したため、今後の方針を検討した。その結果、刑事訴訟で無罪となった事案であること、民事訴訟で債権額あるいは債権の存否自体の争いとなった場合、関係者の施術当時の記憶に基づく手法では、正確な金額を立証するのは難しいかもしれないという意見もあり、民事訴訟は難しいと考えた。
 2、債務者の財産が著しく少額であり、民事訴訟に実効性がない。財産調査を弁護士へ委託したが債務者の財産が著しく少額であることが判明、民事訴訟で判決を得ても、手続きに必要な費用も保全できない。
 本広域連合としては、本債権について、民事訴訟を行わず権利を放棄することとした。

弁護士が行った財産調査はどのようなものであったか

【伊藤議員】財産調査を実施した結果、債務者の財産は著しく少額で、大半が本広域連合に対する売掛金であり、訴訟や破産申し立て等の手続きを行うことに実効性があるとは認められないとのことです。
 債権総額は3億3541万8787円と高額です。これを放棄するなら、少額と判断された債務者の財産が充分に調査されたのかどうか。弁護士が行った財産調査はどのようなものであったのかお尋ねします。

解散登記時点における決算報告書等から財産状況を把握

【総務課長】全財産を正確に把握する有効な方法は存在しないが、会社法の規定により清算人に作成・保存が義務付けられている、解散した日における貸借対照表等及び清算結了までの各清算事務年度に係る貸借対照表等の開示を求めることが可能との弁護士の助言をうけ、開示に必要な折衝等を弁護士に委託した。調査結果として、相手方から2016年度以降の清算事務年度の貸借対照表等は作成されていないとの回答があったが、解散登記時点における決算報告書等を入手し財産状況を把握した。
 相手は代表清算人と会計担当者との間で係争中で、各清算事務年度に係る貸借対照表等の作成を求めても困難が予想されるため、これ以上の調査は難しい。

以前にも同様の手口で不正が行われた可能性はないのか(再質問)

【伊藤議員】3億円を超える多額の不正請求による債権です。追える範囲での確定額だと思いますが、同社においては、これ以前にも同様の手口で不正が行われていた可能性はないのか。

過去に遡って調査したが不正はなかった

【総務課長】本広域連合もその可能性もあると考え、同社から提出された療養費支給申請書について、会社成立の2010年2月施術分まで遡って調査を行った。本債権は、その調査結果に基づいて特定したもので、これ以外の不正は認められまなかった。

再発防止の手立ての内容は(再質問)

【伊藤議員】他の広域連合において別の事業者による同様の手口による不正があったとも聞いており、このような不正請求事案が発生した一因として、マッサージ療養費の支給に関して制度的な欠陥があったのではないか。再発防止の手立てが講じられているかと思いますがその内容をお尋ねします。

代理受領制度を改善し、申請書は全数点検とした

【総務課長】本事案が発生した2010年度から2015年度当時、マッサージ療養費は被保険者の利便性確保のため、患者に替わり施術者が療養費の請求と受領を行う「代理受領」の取扱いが行われていた。しかし、代理受領では患者が請求内容を確認していない事例がある等の問題点が指摘されており、本事案もまさにそのような事例でした。本連合では再発防止策として、独自の取扱要領を制定し、施術者が代理受領を行う場合の広域連合への届出の義務付け、支給申請書への被保険者自身による署名等を行うこととし、2017年4月1日から施行した。
 愛知県国民健康保険団体連合会に委託している申請書の点検も、一部の支給申請書の抽出点検から、2017年度からは全件点検を実施している。
 2021年1月には、国において、不正対策等を図るため、それまでの代理受領に代わる取扱いとして、マッサージ療養費に係る受領委任制度が導入された。この制度への参加でマッサージ療養費の請求に対する国や都道府県の指導監督等が可能となるとして代理受領の取扱いを廃止し、この制度に参加している。
 本広域連合としては、本事案について真摯に受け止め、引き続き再発防止に努めていく。

不正が起きないように常に情報収集に努めよ(意見)

【伊藤議員】今回相手方が虚偽申請で手にしたのはあまりに巨額です。その原資は被保険者が苦しい家計の中からねん出した保険料であり、税金であり、現役世代の方からの支援金であり、それが取り戻せないことが非常に残念です。
 再発防止として、現在は不正対策を目的とする制度が導入され、国による指導監督等が可能になったとのことですが、広域連合としても類似の不正が起きないように常に情報収集や、国、県との連携に努めていただくことをお願いし、この質問を終わります。

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