山口清明議員の個人質問①健康長寿15年プラン(2018年3月7日)

健康長寿15年プランの策定で介護や医療の負担軽減を

山口清明議員

ハイリスクアプローチからポピュレー ションアプローチへの転換への提案
①口腔ケアの徹底を
【山口議員】介護保険料の値上げをくいとめる長期的総合的な戦略について、予防という観点から数点うかがいます。
 残念ながら介護保険料の値上げが提案されています。この値上げを止めるには、国の負担割合を増やし、市の一般財源からも相当額を繰入れる必要があります。あわせて、市民の健康度を高めて疾病を予防し介護費用の発生を抑える介護予防の本格的展開が求められます。
 名古屋市でも新総合事業などの介護予防にとり組んでいますが、介護保険会計では、予防にかける費用は一定の範囲に抑えられ、一般財源の施策とあわせてもできることは限定されがちです。ところで介護予防とは何か。必要な介護サービスを抑え込むことではありません。予防すべきは疾病であり、介護はしっかり保障すべきものです。
 さて、介護予防が本来の効果をあげれば、健康寿命が伸び、保険料も上げなくて済む財政効果も期待できます。しかしそのためには、予防にかける費用も限定され、3年単位となっている現在の介護保険事業計画の枠にとらわれない長期的総合的な戦略が必要ではないでしょうか。
 その戦略に盛り込むべき介護予防施策を二つ提案します。共通するのは、ハイリスクアプローチからポピュレーションアプローチへの転換です。
 ハイリスクアプローチとは、要介護になりそうな人、病気になりそうな人を選び出し、つまり健康リスクが高い人に重点的に働きかける手法です。感染症対策には効果的でしたがメタボ対策や介護予防では十分な効果があがりません。
 かわっていま予防医学で注目される考え方がポピュレーションアプローチ。リスクの高い人たちだけでなく、健康状態が良い人も含め、大勢の市民を対象にした施策で、全体の健康度をあげようとするものです。
 働きかける対象を広げ、継続的に取り組むことが成果を生む鍵です。いちばんの実例が敬老パスだと思います。多くの高齢者に活用してもらうことで大きな健康増進効果をあげています。この手法をさらに意識的に展開しましょう。
 第一は、口腔ケアの徹底です。(パネルを掲げ)国の中医協(中央社会保険医療協議会)にも、口腔機能の管理によっていずれの診療科でも在院日数の削減効果が認められたと報告しています。10年かけた調査です。在宅の要介護者を含めた多くの患者・市民に口腔ケアを徹底することが、誤嚥による肺炎や全身状態の悪化を防ぎ、介護や医療の費用を抑制します。 そこで、口腔ケアに取り組む条例をもつ名古屋市でこそ、徹底した口腔ケアによる疾病予防・介護予防に取り組むことを提案します。口腔ケアによる疾病予防効果についてどう認識していますか。まずモデル的に保健所からよびかけて市立病院などから入院患者への口腔ケア、本格的に始めてはどうでしょうか。

口腔ケアの重要性を普及啓発する(局長)
【健康福祉局長】口腔疾患が誤嚥性肺炎の原因となったり、糖尿病の発症リスクを高める等、全身の健康と深い関係を有することは広く指摘されており、口腔の健康の保持・増進が、疾病の予防につながるものです。
 保健、医療、福祉の関係機関と連携して、在宅や病院等で療養されている方の口腔ケアが十分にされるよう、その重要性について普及啓発していきたい。

②高齢者サロンの拡大を
【山口議員】提案の第二は、いまも取り組まれている高齢者サロンの抜本的拡大です。
 名古屋市ははじめて3年、現在、市が把握する高齢者サロンは昨年度で759か所となり、また共生型サロンも289か所と聞いています。そのうち本市が運営助成したものは283件、延べ実施回数9439回、延べ参加者数13万9211人となっています。がんばっていると思います。
 認知症になりそうな人、骨折などのリスクが高い人だけに参加を呼びかけても、「あなた、痴ほうになりそうだからおいで」と言われても、「私はまだ大丈夫だから」と、なかなか参加してもらえなかったが、思いきって対象を広げてみたら、気軽に集まれるようになり、来てほしい人も来てくれるようになった、こういううれしい報告も聞いています。
 この分野で注目されているのが愛知県武豊町の「憩いのサロン」の活動です。「元気な高齢者を増やし、介護予防事業の実施・充実を図る」ことを目的に、大学の協力も得て取り組み始めて10年。いま国も注目する効果が報告されています。
 地域ごとに徒歩15分以内で行ける場所に、住民主体できめ細かくサロンの開催をすすめた結果、町の65歳以上人口の約1割が参加する規模になり、目に見える成果が生じています。(パネル掲げて)
 5年間の追跡調査で、要介護認定率はサロンに参加しない人たち14%、サロン参加者7.7%と約半分に抑えられました。認知症発症もサロン参加者は3割少なくなりました。サロンの事業費に年間630万円投入したが年間1500万円程度の介護給付費が抑制できたと試算されています。こちらも10年コツコツ取り組んできた成果です。
 人と人とのつながりをつくり、広げ、孤独を防ぎ、生きがいを生み出す。健康づくり、仲間づくり、地域づくりが一体に取り組まれ、介護予防の効果を高めています。
 そこでうかがいます。名古屋市では高齢者サロンの参加規模をどこまで、どのように増やす計画でしょうか。

小学校区ごとに整備する目標で 拡充に努める(局長)
【健康福祉局長】高齢者サロンの設置は、「はつらつ長寿プランなごや2015」において、2017年度の目標を600か所と掲げ、2017年12月現在で目標を超える852か所となっていますが、まだ高齢者サロンのない小学校区があります。
 今後も、高齢者の身近な居場所となるよう小学校区ごとに整備することを目標として、拡充に努めたい。

サロン参加で要介護認定率が半減 した時の介護給付費の抑制額は
【山口議員】武豊町のようにサロン参加者の要介護認定率が半減すれば介護給付費はいくら抑制できますか。

参加者の要介護認定を把握してないので算定できない(局長)
【健康福祉局長】高齢者サロン参加者の要介護認定の状況を把握していないので、介護給付費の抑制額を算定することはできません。しかし今年度から市内5区において、高齢者サロンに参加している方と、参加していない方の要介護認定の状況を経年的に調査し、高齢者サロンの介護予防効果を検証する取り組みをモデル的に始めています。
 この調査により、要介護認定率にどのような差が出るのかなどの介護予防効果を把握できれば、介護給付費の抑制効果も把握できるのではないかと考えています。

公衆衛生行政の推進にはたす  名古屋市保健所長の役割は
【山口議員】二つの例を出しましたが、10年、15年先を見据えた戦略が必要です。すでに「健康なごやプラン」は10年計画として作られています。敬老パスも10年先まで見通した収支予測が示されました。陽子線治療は20年間、一般財源から支えます。
 効果が目に見えるまで時間がかかる介護予防こそ長期的な計画が必要ではないでしょうか。
 また、狭い意味での健康づくりだけでなく、生きがいと仲間をつくる生涯学習やバリアフリーなど外出しやすい街づくりなど、幅広い分野の取り組みが必要です。
 この総合的な取り組みこそいまの時代に必要な公衆衛生行政です。このたび16保健所が1保健所16センターとして再編されます。名古屋市の公衆衛生行政の事実上のトップとなる名古屋市保健所長が生まれます。
 新しい保健所長には、こうした課題に見識をもち、長期的総合的な戦略を立案・推進できる方が必要です。公衆衛生行政の先頭に立つ名古屋市保健所長にどんな役割を期待し、また市の行政組織内でどう位置づけるのか、答弁を求めます。

局長級の医監として健康施策を 総合的に推進(局長)
【健康福祉局長】市民の健康寿命の延伸に向けた取り組みを広範に進めることは重要な課題です。2018年度に設置する市保健所長には、その医学的知見に基づき、福祉分野との連携も視野に入れつつ、市民の健康に関する施策を長期的かつ総合的に推進するにあたって、中心的な役割が求められます。
 こうした点を踏まえ、公衆衛生行政の責任者である市保健所長は、局長級の医事職である医監として位置付け、健康施策を総合的に推進していきたい。

長期的な介護予防・健康長寿のまちづくりに積極的な投資、攻めの財政措置を
【山口議員】長期的総合的な戦略にふさわしい財政措置も必要です。介護予防の効果があがるまで、高齢者の負担が増えるのをどうくいとめるか。提案されている介護保険料の値上げは基準額で年間5,964円です。値上げによる市民負担増は年間約33億円。高齢者には重い負担です。
 そこで提案です。先日の代表質問で局長は「介護保険料を抑えるための一般財源からの繰り入れは考えていない」と答弁されました。介護保険は全国一律だから、と私たち何度も聞かされてきました。
 ところが全国一律のはずなのに、要支援へのサービスなど介護予防については保険給付から切り離して地域支援事業という市町村事業とされました。
 それならばこの介護予防にあたる地域支援事業に充てる保険料については、市町村の判断で、一般財源を投入する選択肢があっても良いのではありませんか。
 第7期計画期間では、地域支援事業費に約400億円が予定されており、その23%が第一号被保険者の保険料です。3年間で92億円、年間約30億円です。
 効果があがるまで一定の年数が必要な介護予防の分野に限って、一般財源を繰り入れ、保険料の値上げを抑えることはできませんか。
 あわせて長期的な介護予防、健康長寿のまちづくりにこそ積極的な投資、攻めの財政措置が必要ではありませんか。

健康づくりの支援は重要だが、一般財源で保険料を引き下げることは考えていない(局長)
【健康福祉局長】介護予防事業は、介護保険法の地域支援事業として実施しているので、介護給付費等を賄う財源として、国・県・市の公費による負担割合及び被保除者の保険料による負担割合が法令で定められている。
 市は、この割合を超えて一般財源を投入し、保険料を引き下げることは考えていない。
 しかし、市民が生涯にわたり健康で生き生きとした生活を送ることができるよう、元気なうちからの継続した健康づくりを支援することは行政の重要な役割であると認識しています。長期的な展望を持って、介護予防にもつながる健康づくりの施策を推進していきたい。

一般財源の投入は法律で禁じられているのか(再質問)
【山口議員】口腔ケアやサロンも思いきって展開してこそ効果が見えてきます。やれば良いこととわかっていても、費用を考えると、しり込みしてしまう。ここを思いきって突破して頂きたいと思います。
 問題は高齢者の負担です。介護保険料は、このままの制度が続けば、まだまだ上がります。介護が必要な方へは十分な介護を提供しつつ、健康度を高めて保険料の値上げを抑える。でも、その前に負担増で暮らしが成り立たなくなってはしかたがない。
 そこで健康福祉局長に再度、うかがいます。
 一般財源を投入しての保険料引き下げは考えておりません、との答弁でしたが、国民健康保険でも投入していますよね。
 「できない」という答えならわかるけど、「考えていない」という答弁の意味はなんですか。「法的にはできるんだけど、やらない」ということなのか、一般財源の投入は法律で禁じられているのか、答えてください。

地方自治法に基づく「助言又は勧告」として国から示されている(局長)
【健康福祉局長】一般財源を投入しないことは、法律で定められているのではなく、地方自治法に基づく「助言又は勧告」として国から示されている。

予防に充てる保険料については 思い切って引き下げを(意見)
【山口議員】法律で禁止されていないのです。地方自治法に基づく「助言又は勧告」は、地方公共団体の自主性及び自立性に配慮したものでなければならないし、助言又は勧告は「できる」規定で、強制的なものではありません。
 保険料をどうするか、市民の負担増をどう抑えるかどうかは名古屋市の判断でできるんです。市長さんは介護保険に批判的な意見を示し、何かというと介護特区だといいますが、国が、国が、と言っているのはあなたなのですよ。
 介護保険は、国が、ではなくて名古屋市が決められる。そして市長さんは予防に力を入れていますよね。予防に力を入れる名古屋市こそ、介護保険に関しても負担を抑える。提案したように予防に関する部分、地域支援事業にかかる部分についてはおもいきって保険料を引き下げる、こういう政治的な決断をするべきだと思います。
 高齢者の負担増を抑えましょう。30億円を超える市民税の減税も見直す時期ですから、市長には局長ともしっかり相談をしていただいて、予防のために、予防に充てる保険料については思い切って引き下げる、その決断を求めます。

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