名港議会 山口清明議員の一般質問②臨港地区の環境行政(2017年11月10日)

臨港地区の環境行政について
山口清明議員

臨港地区とはどんなところか
【山口議員】臨港地区とは、都市計画法に基づいて指定された、港湾の管理運営を円滑に行うために必要な地区とされています。
 この臨港地区は、一連の大気汚染防止法令では、環境基準も適用されず測定値も評価の対象外と位置づけられています。つまり住民が生活する地域ではないということです。
 1973年(昭和48年)6月12日付けの当時の環境庁からの「大気汚染に係る環境基準について」の通知では、環境基準の適用範囲について、「・・・環境基準は、人の健康を保護する見地から設定されたものであるので、工業専用地域、臨港地区、道路の車道部分その他埋立地、原野、火山地帯等通常住民の生活実態の考えられない地域、場所については適用されない」としています。
 同通達では「…このことは、当該地域、または場所における大気汚染の改善の目標、あるいは未然防止の指針として、本環境基準を用いないという意味であって、当該地域または場所における環境大気についてはすべて大気保全行政の対象としない趣旨ではないので念のため申し添える」と書かれてはいます。
 「念のため」にこう書かれてはいるものの、実際には臨港地区は住民が居住する地域ではなく環境基準の適用範囲外とされる扱いを受けてきました。
 しかし名古屋港の臨港地区では多くの人々が働き、暮らし、呼吸しています。私は、これまでも臨港地区の大気環境の保全について、名古屋港管理組合が自治体として一定の責任をもつべきことや、環境基準の適用範囲から臨港地区を除外している規定の見直しを求めてきました。
 現実に、港湾業務と無関係に多くの住民が暮らしている実態が臨港地区にあるならば、臨港地区の指定そのものも見直す必要があるのではないでしょうか。
 ガーデンふ頭周辺の臨港地区を見てみましょう。管理組合の庁舎跡地もそうですが、高齢者施設が二つも建設され、実際に多くの高齢者が暮らしています。港区役所で住民登録から調べてみると、臨港地区内には、少なくとも今年8月15日現在、148世帯、223人の居住者がいることがわかりました。住民票はないけれど定員105人の老人保健施設で暮らす方々も加えると、数百人規模の居住実態が臨港地区にはあるのです。
 とくに臨港地区である本庁舎跡地にわざわざ港湾の管理運営と無関係の高齢者施設の建設を特例として許可したのは管理組合自身ではありませんか。そこで3点うかがいます。

臨港地区での居住の実態をどう把握しているか
【山口議員】一つ、臨港地区とは住民が居住することを前提とした地域ですか。名古屋港の臨港地区における居住実態を管理組合としてどのように把握していますか。

居住を前提としていないが、23件の住宅を把握している(部長)
【港営部長】臨港地区は、港湾の管理運営を円滑に行うために、水域である港湾区域と一体として機能すべき陸域で、基本的に居住を前提としていない。「港湾法」及び「名古屋港臨港地区内の分区における構築物の規制に関する条例」に基づき、建築確認が必要な構築物に関して、建築確認申請書を確認検査機関に提出する前に各分区の用途に合致しているかどうかを確認し、その過程で住宅の立地件数について把握している。現在23件の住宅の立地を把握している。

高齢者施設が二つもあるガーデンふ頭周辺の臨港地区は指定の見直しを
【山口議員】二つ、定員百人規模の高齢者施設が二つ建設されたガーデンふ頭周辺地区の臨港地区の指定は見直すべきではありませんか。管理組合庁舎の跡地に高齢者施設の建設を許可した段階で指定を変更すべきだったのではありませんか。

高齢者施設は特に認めたが、ガーデンふ頭周辺は港湾関連企業などが活動しており港湾として管理運営する(室長)
【企画調整室長】臨港地区は、昭和40年に最初の指定を行って以降、埋立てによる港湾整備など、土地利用形態の変化に合わせ、適宜、指定範囲の変更を行ってきた。高齢者施設は築地ポートタウン計画に即した士地利用であり、本組合の「名古屋港臨港地区内の分区における構築物の規制に関する条例」の規定で特に立地を認めたものです。
 ガーデンふ頭周辺の地域は、同条例の制定前から立地している住宅に加え、新たに高齢者施設が立地するものの、依然として、相当程度の港湾関連企業などが活動していることから、港湾として管理運営することが必要と考えている。

居住地域を臨港地区の指定から外さないなら環境行政に責任を持て
【山口議員】三つ、居住の実態がある地域は臨港地区から外すか、外さないのなら臨港地区の大気環境行政に管理組合として責任をもつべきではありませんか。はっきりと答えてください。

大気環境の負荷の低減に努め、大気環境の測定も要望していく(室長)
【企画調整室長】大気保全行政は、愛知県及び名古屋市が担っており、 大気汚染防止法及び環境省通知に基づき、大気の常時監視も法定受託事務として、愛知県及び名古屋市が、地域の実情に応じて測定局を配置し、常時監視を行うこととされている。
 臨港地区は環境基準が適用されず、測定値は評価の対象とされてないが、 大気保全行政の対象となっており、愛知県及び名古屋市により、ばい煙の排出の規制等が行われている。
 港湾管理者として、良好な港湾環境を目指し、引き続き、緑地の整備や渋滞緩和に向けた臨港道路の改良を進め、大気環境の負荷の低減に努めます。
 臨港地区内での大気環境の測定は、平成22年に愛知県及び名古屋市に要望し、現在、毎年、大気環境測定車により臨港地区及びその隣接地で測定が行われているが、今後も、臨港地区の利用形態を踏まえ、地域の実情に応じて対応するよう、愛知県及び名古屋市に要望したい。

管理組合自らが居住者を引き込んでいる。何人住んでいるのかもわからないのか(再質問)
【山口議員】名古屋港管理組合は独立した地方自治体ではありますが、環境行政については母体である愛知県、名古屋市と一体的に取り組んでもらわないと行政機能が完結しません。大気環境でもヒアリ等の特定外来生物への対応でもそうです。
 災害対策でも避難誘導計画は基礎自治体の仕事、管理組合ではつくりません。
 臨港地区は基本的に居住を前提としない地域として港湾管理行政が組み立てられてきました。だから回答でも23件建っている、とは答えていただいたが、何人住んでいるという回答がありませんでした。
 過去はそれでよかったかもしれませんが、土地利用形態の変化や規制緩和の流れの中で、臨港地区に、管理組合が自ら多くの居住者を引き込むようになってきているのです。
 そうなってくるともう環境基準の適用範囲外ということは言えません。居住実態にふさわしい都市計画の変更や行政権限の見直しも検討すべきではないでしょうか。
 臨港地区には建物が23件建っているとしか回答がありませんでした。臨港地区の居住実態、どこにどんな人が何人住んでいるのか、管理組合は把握する必要がないのですか。臨港地区には何世帯、何人が暮らしているのか。明確に答えていただきたい。

住宅の立地件数を把握するが世帶数や人数まで把提できない(副管理者)
【専任副管理者】本組合は、市町村等基礎的地方公共団体で取り扱われている住民の世帯数等を把握する事務は行っていない。臨港地区内の構築物の建設に際して、用途を確認する手続きの過程で、住宅の立地件数を把握しているが、世帶数や人数まで把提できないのが実態です。

名古屋市・愛知県とも連携をより密にして行政運営を(再質問)
【山口議員】環境行政の全てを管理組合が担うべきだ、とまでは言いませんが、臨港地区への居住を公に認めた以上は、他の地域に比べて不利益・不公平な扱いがないように名古屋市・愛知県とも連携をより密にして行政運営を行う必要があると考えます。
 こういう性格の問題ですので、名古屋市の住宅都市局での行政経験もある専任副管理者に総括的な答弁を求めます。

まちづくりや、土地利用の展開は都市と港湾が密に連携することが重要。環境行政でも、県や市との連携を密にして取り組む(副管理者)
【専任副管理者】港湾と都市との接点におけるまちづくりや、土地利用の展開は、都市側と港湾側が密に連携することが重要。環境行政も愛知県及び名古屋市が所管しているが、 臨港地区の利用形態を踏まえ、愛知県及び名古屋市との連携を密にして取り組む。

臨港地区に環境行政の空白をつくらず、安全・安心な環境の保全改善を(意見)
【山口議員】臨港地区の居住実態について、正確な情報がないまま港湾行政が行われている実態が明らかになったと思います。もともと居住を前提にしたエリアでない環境基準の適用範囲から除外された地域に、皆さんが行った規制緩和で住民の居住を新たに認めてきた。
 それなりの重い責任がありますよ。少なくとも名古屋市に確認したら実際に、何世帯、何人が居住している、といます、という答弁くらいは欲しかった。把握しておくことは港湾管理者の責任です。
 臨港地区に観光で人を呼び込むことには力を入れるが、呼び込んで住むようになった人には無関心では困ります。とりわけ大気環境悪化の原因となった工場や大型車の通行が多い臨港地区を、暮らしの場として提供するというのですから、それなりの覚悟と対策をしっかりとっていただきたい。
あらためて名古屋市や愛知県と連携し、環境省にも臨港地区の実態をよく説明し、環境行政の空白をつくらず、臨港地区での安全・安心な環境の保全改善に力を尽くしていただくことを強く要望して、私の質問を終わります。

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