名港議会 山口清明議員の一般質問② 大水深バースの効率運用を(2016年6月7日)

国際戦略港湾政策と大水深バースの効率的運用を

水深16mの大水深コンテナターミナルの運用状況meiko yamaguti2
【山口議員】名古屋港のコンテナバースのうち水深16mの大水深バースは、国のスーパー中枢港湾政策にのっとり整備が進められ、2005年に飛島ふ頭南側埠頭で初めて整備されました。ところがその後、名古屋港は伊勢湾として2010年に国による国際コンテナ戦略港湾の選定に漏れてしまいました。名古屋港の水深16mバースは国策の上では、はしごを外されたような状態になってしまいました。
 国際コンテナ戦略港湾に京浜港(東京・川崎・横浜)と阪神港(神戸・大阪)が選定されましたが、いまだに本格稼働している水深16mバースは横浜港だけです。名古屋港の大水深バースは暫定稼働ということですが、ある面では国レベルでも貴重な存在であり、またある面では過剰な整備だったのかも知れません。
 さて、当初、国は国際コンテナ戦略港湾政策で掲げた目標は、プサン港等東アジア主要港でのトランシップ率を現行の半分にし、アジア発着貨物の国際トランシップを促進する。つまりプサン港から貨物を取り戻すことでした。そして水深16m級のバース整備は、北米・欧州の基幹航路を維持し拡大するためと説明されていました。
 ところが、わが国発着のコンテナ貨物のプサン港でのトランシップ率の推移を見ると2009年の47.9%から2014年には51.8%へとかえって増えています。北米航路のコンテナ貨物取扱個数は、京浜港では2010年の103万TEUが2014年には85万に、阪神港では同じく38万TEUから33万に、大きく減少しているのです。
 この数字を見る限り、国の国際コンテナ戦略港湾政策は破たんした、としか思えません。
 にもかかわらず、国は、国際コンテナ戦略港湾政策の目標を、欧州基幹航路は週三便に拡大、北米基幹航路はデイリーに、とする一方で、「多方面・多頻度の直行サービスの充実」をめざすと軌道修正しました。
 貨物は減り続けているのに基幹航路向けの大水探バースの整備は止められない、しかし現実には需要が拡大しているアジテ航路をはじめとした多方面・多頻度の直行サービス重視にシフトしようとしています。
 さて、国際コンテナ戦略港湾についてのこのような状況変化を踏まえて、名古屋港の大水深バースについてもよく考えていく必要があると思います。そこでまず、以下の数点うかがいます。

meiko yamaguti3大水探コンテナターミナルの全国的な稼働状況は
【山口議員】国際コンテナ戦略港湾に基づく大水探バースは横浜港だけが本格稼働中ですが全国的な整備状況はどうなっていますか。

横浜港6バースで整備完了、京浜港3バースと阪神港7バースで整備中
【企画調整室長】国土交通省によると、国際コンテナ戦略港湾における水深16m以上の大水深コンテナターミナルの整備状況は、平成27年度末現在、整備完了として横浜港で6バース、また、整備中として東京港、横浜港の京浜港で3バース、大阪港、神戸港の阪神港で7バースとなっております。

国の戦略港湾政策との関わりは
【山口議員】名古屋港はもはや国の戦略港湾政策とは無関係なのですか。国の国際コンテナ戦略港湾に関する政策目標を共有しているのですか。

国に重要性を強く認識してもらい、重点支援を求める
【企画調整室長】国際コンテナ戦略港湾政策の目的は、我が国を支える産業の国際競争力強化であり、本港は中部のものづくり産業を物流面でしっかりと支えていくものであります。今後も港湾機能の強化を図るために、国際コンテナ戦略港湾の施策を注視しつつ、引き続き国に本港の重要性を強く認識してもらい、重点支援を求めるとともに、港湾の国際競争力強化に向けて、港湾コストの縮減や利用者サービスの向上に努めてまいります。

大水探コンテナターミナルの整備理由は
【山口議員】もともと名古屋港で水深16mの大水深バースをつくったのは何のためでしたか。かかげた政策目標は達成されたのか。

外貿コンテナ貨物や基幹航路の大型コンテナ船の就航隻数の増加に対応
【企画調整室長】本港においては、港湾の国際競争力強化のため、北米・欧州の基幹航路の寄港頻度の維持や多頻度・多航路の直航サービスの充実に取り組む中、外貿コンテナ貨物の増加や基幹航路の大型コンテナ船の就航隻数の増加などへの対応として、水深16mのコンテナターミナルを整備してまいりました。

名古屋港の貨物集貨は進んだのか
【山口議員】名古屋港への集荷は進んだのでしょうか。

2%伸びており集貨は進んでいる
【企画調整室長】本港は主に、愛知、岐阜、三重、静岡、長野、富山、石川、福井及び滋賀の中部9県の貨物を対象に集貨に取り組んでおります。集貨の進捗としまして、国において5年毎に行われる「全国輸出入コンテナ貨物流動調査」をもとに、中部9県の名古屋港の利用率を算出しますと、平成20年度は約63%、平成25年度は約65%と、2%伸びており集貨は進んでいると認識しております。

北米欧州の基幹航路の維持は
【山口議員】北米欧州の基幹航路は維持できたのか。基幹航路のコンテナ貨物は増えてきたのでしょうか。 以上、まとめてお答えください。

meiko yamaguti5meiko yamaguti6

概ね維持されている
【企画調整室長】昨年の名古屋港の外貿コンテナ貨物取扱個数は、中国経済の減速に伴う世界経済の低迷などの影響もあり、前年比で4%減少したものの、リーマンショックで大きく減少した平成21年以降は、増加傾向で堅調に推移し、北米・欧州の基幹航路の便数についても概ね維持されております。

水深16mを必要とする船舶の入港実績は
【山口議員】アジア航路の比重が一層強まるなか、一般的には船舶の大型化が進んでいるとはいうものの、名古屋港に寄港する船舶のほとんどが水深16mの大水深バースを必要とはしていません。
 いま名古屋港のコンテナターミナルは基本的に航路別に編成されていますが、こんどはNCBで水深12mから15mへと掘り下げようとしています。名古屋港にとって必要なバースの整備は計画的に進めるべきと考えますが、その前提となるのは整備してきた既存バースを効率的に使いこなすことです。そこでうかがいます。
 名古屋港で、実際に水深16mを必要とする船舶はいったい何隻、入港しているのか。大水深バースを利用する船舶の何%になるのか。実績をはっきりと示してください。

平成27年は基幹航路の船舶613隻の内、120隻で約20%
【企画調整室長】平成27年において、本港に就航する基幹航路のコンテナ舶613隻の内、「港湾の施設の技術上の基準」において、水深16m以上を必要とされるコンテナ舶の入港実績は、120隻で約20%となっております。

ターミナルの一体的運営で大水深コンテナターミナルの稼働率を上げよmeiko yamaguti4
【山口議員】大水深バースの効率的な運用を図るためには、航路別のターミナル使用にとらわれずに16mバースに基幹航路以外の大型船も集中して利用させるようなターミナル群の一体的運営はできないのでしょうか。
 それこそコンテナターミナルを一元的に管理運営するという港湾運営会社の行うべき仕事ではないでしょうか。お答えください。
 以上で、第一回目の質問を終わります。

全てのコンテナターミナルにおいて柔軟に対応、効率的な運営に努める
【企画調整室長】本港には、基幹航路、東南アジア航路、中国や韓国を結ぶ近海航路など、多様なコンテナ航路が就航しております。
 水深16mの飛島ふ頭南側コンテナターミナルや水深15mの飛島ふ頭南コンテナターミナルでは、大型のコンテナ船が就航する基幹航路を中心に、飛島ふ頭北コンテナターミナル及びNCBコンテナターミナルでは、東南アジア航路を中心に、鍋田ふ頭コンテナターミナルでは、近海航路を中心に取り扱っております。
 こうした中、飛島ふ頭内のコンテナターミナルにおいても近海航路を取り扱うなど、全てのコンテナターミナルにおいて柔軟に対応しており効率的な運営に努めております。特例港湾運営会社である名古屋港埠頭株式会社が、一体的な管理を進める中で、名古屋港全体のコンテナターミナルのより一体的な運営が図れるものと考えております。

名古屋港管理組合と特例港湾運営会社の関係は(再質問)
【山口議員】特定港湾運営会社は、公共性が高い会社であり、ターミナルノの一元的運営によるスケールメリットを活かしたコストの低減を図るとの答弁でした。
 いくつか具体的な数値についても答えていただきましたので、それを踏まえて選任副管理者に再質問させていただきます。
 無利子貸付による整備費のコスト削減は1.5%とのことでした。二年前には15%と答弁していたのです。12億円のガントリークレーン、単純計算で、固定資産税が初年度は1500万円、20年間で1億1千万円以上になります。実際には優遇制度等があるとは思いますが、民の視点と言いながら公の補助や優遇制度がないと成り立たない会社では困ります。荷役機械について会社が整備する方がコストが低いと言い切れますか。はっきりさせていただきたい。
 いま無利子貸付を最大のメリットとして強調するのはいかがなものか。率直にお答えいただきたい。
 岸壁使用料も下げたと言いますが、この料金が適用されるのは五つあるコンテナバースのうち公共ターミナルだった二つだけです。名古屋港を利用するコンテナ船の何割に効果があるのか、半分以下です。
 10万トン超える最大規模の大型船では14万円コスト減との答弁でしたが、そんなサイズの船はごくわずかです。名古屋港に昨年入港したコンテナ船は約4千隻ですが10万トン以上は75隻、三万トン未満が3千隻以上です。
 「技術上の基準」で水深16mを必要とするコンテナ船は120隻、基幹航路のコンテナ船のうち20%とのことでした。しかしそのすべてが飛島ふ頭南側の大水深バースを利用しているわけではありません。もっと浅い水深のバースが利用されています。
 つまり16mバースにはまだまだ大型船を受け入れる余地があるのです。次々と港を掘るのではなく、航路や船社にとらわれず、大型船をまずこの大水深バースに集中させることはできないのでしょうか。
 特例港湾運営会社に期待するターミナルの一元的運営によるコストの低減は、ターミナルの効率的な整備とセットで始めて実現できます。
 管理組合と港湾運営会社は、コンテナターミナルの建設と運用を一体的に行う一つの公的なセクションだと私は理解しますが、認識をうかがいたい。

岸壁等の施設は国及び組合が整備、ガントリークレーン等の整備と一元的な管理運営は埠頭株式会社
【専任副管理者】コンテナターミナルにおいて、岸壁や土地等の下物施設については、これまでどおり国及び本組合が整備し、ガントリークレーンや荷さばき地等の上物施設については、名古屋港埠頭株式会社が港湾運営会社の制度メリットを活用し、低廉に施設整備に努めております。新たな整備をしなければならない上物施設は多く、今後の多額な整備費を勘案すると無利子貸付金の活用は、コストの縮減に有効であると考えます。施設整備とともに、本組合と名古屋港埠頭株式会社が、本港の利用促進に向けて連携して取り組んでおります。
 そのような中、利用者へのサービス向上などに向けたコンテナターミナルの一元的な管理運営は、民の視点を踏まえて、名古屋港埠頭株式会社が担っていくものであります。

名古屋港の立ち位置について
【山口議員】国はいまだに基幹航路のための大水深バースの整備に膨大な国費を投入しようとしています。しかし、いま必要なのはアジア各国との関係を重視した港湾整備であり航路の確保です。ある面では、名古屋港は国の政策のしがらみから解放されて、地域の必要に応じた港湾整備が行える位置にあると言えます。
 地方港の代表として、名古屋港のこの立ち位置から、国の港湾政策についても、もっと強く発言していくべきではありませんか。国の国際コンテナ戦略港湾政策と名古屋港の立ち位置についてどう考えているか、答弁を求めます。

国際産業戦略港湾としての重点支援を国に強く働きかける
【専任副管理者】本港の国際競争力強化を図るため、「国際産業戦略港湾」として、重点支援について、これまで国に強く働きかけを行ってまいりました。
 こうした中、昨年度は、地域の基幹産業を支えるため、完成自動車取扱機能の強化に資する金城ふ頭再編改良事業が新規事業採択され、更に、今年度は東南アジア航路における貨物の増加やコンテナ船の大型化への対応として、飛島ふ頭東側のNCBコンテナターミナルR1、R2の水深12mから15mへの増深・耐震化につきまして、2年連続の新規事業として採択され、早期完成に向けて取り組んでまいります。

大水探バースは日本の港にそんなに必要ないと国に言え(意見)
【山口議員】港湾運営会社に関する問題は引き続きチェックしていきたいと思います。
 名古屋港の経験からして、大水探バースは日本の港にそんなに必要ない、無駄づかいは止めた方がいいですよ、と国のコンテナ戦略にもはっきりモノを言いましょう。そのことを要望して、質問を終わります。

 

 

 

 

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