2016年2月定例会

柴田民雄議員の個人質問  市民の文化活動の稽古場不足への対策(2016年3月7日)

稽古場や練習所が不足。空き店舗や倉庫なども生かし、もっと文化活動への応援を

新しい観光文化交流局は「人寄せ」に偏重しすぎ
【柴田議員】本市の文化施策、とりわけ「市民文化の振興」の取り組みについて伺います。
 本市では、リニア開業や東京オリンピックを契機に観光と文化と国際交流に力を入れるとして、「観光文化交流局」を新設することになりました。きっかけはともかく、本市が文化施策に力を入れることは大変に歓迎すべきことです。
 しかしここで、一つ大きな懸念を表明しなければなりません。それは、この新局「観光文化交流局」の施策の重点が、「観光」すなわち、他地域や外国からの「人寄せ」に重きを置き過ぎるあまり、「市民文化の振興」を軽視しているのではないかという問題です。
 実際に、予算説明の中でも、新局の中の文化振興費そのものは増額されているものの、その中身は名フィルやトリエンナーレなど芸術鑑賞活動が主なものとなっており、市民自身が多様な文化芸術創造表現活動に主体的に参加することを保証するための、活動拠点の整備拡充や活動支援事業などの、「市民文化の振興」という視点に立った予算があまり見当たりません。
芸術文化助成と名フィル また、「街づくり」と「社会教育」と「市民文化」が、それぞれバラバラの局にされてしまうことによって、それらの統一的な課題としての「市民文化の振興」という視点に立った施策が、一層取り組みにくくなってゆくことも懸念されます。

稽古場不足、日常的な表現活動への支援強化が必要
【柴田議員】具体的に「市民文化の振興」をすすめる上で、大きく3つの分野に分類して推進する必要があると考えます。
芸術家の分類2010 一つ目は、市民の芸術鑑賞の支援です。これについては、比較的頑張っていると思います。もっともっと多くの市民が、身近に芸術鑑賞できる街になって行けるといいと思います、引き続き、期待しています。
 二つ目は、市民の創造表現の発表の場の支援です。これについては、今年の年末に15館目となる昭和文化賞劇場がオープンし、一定の整備が進んでまいりました。
 三つ目は、市民の日常の練習や準備などの場の支援です。これが決定的に不足しています。
 「松原英治・若尾正也記念演劇賞世話人会」の調査によれば、「名古屋市内に拠点をおいて活動している、アマチュアの、演劇」だけで、7年間に渡る調査の結果、年平均でおよそ900回の上演が行われています。これ以外に、様々なジャンルの活動を見渡せば、膨大な量の芸術文化創造表現活動が名古屋市で展開されているといえます。
 これだけの数の表現活動を支援するだけの、日常の活動場所が市民に提供できているでしょうか。
scd20_topimg01 市内で唯一24時まで利用できる練習施設として高い人気を誇る、中村区の演劇練習館アクテノンでは、平均利用率98.9%と、これ以上新規に借りることは事実上絶望的です。
 文化小劇場に付属する練習室は、昭和文化小劇場以外はどこも、「出入り口が独立していない」、「ステージとドア一枚でつながっていて音漏れが心配」、などステージの付随施設のような設計になっているため、とくに別団体がステージでアクテノンの利用率上演している状況では、事実上使えません。
 生涯学習センターやコミュニティセンターも、大きな音を出す練習はまず苦情が出て利用させてもらえません。いったいこれで、どこで練習せよというのでしょうか。
 まずは、この稽古場不足、日常的な活動の支援施策の不足に対して、抜本的な支援強化が必要です。

中村区や中区に練習施設を整備、柔軟な運営にも努めている
scd21_topimg01【市民経済局長】中村区の演劇練習館や中区の音楽プラザなど、練習のための施設を整備してきており、特に演劇練習館は24時まで利用できるようにするなど、柔軟な運営に努めているのでご利用いただきたい。

既存施設の防音工事、空き店舗の有効活用を
【柴田議員】私は、新局の事業として、以下の事業に取り組むことを提案します。
音楽プラザの利用率 まず既存の施設の拡充として、生涯学習センターやコミュニティセンターの既存の施設で、防音工事を追加工事で施して大きい音を出す練習も行える部屋を1部屋だけでも作ること。
 つぎに身近な場所への新規施設の拡大として、その一つ目に、「まちづくり」、「商店街活性化」、などの市民的課題と結びつけて、まずは「空き店舗」を有効活用して、地域住民の要求とも連携しながら、子どもや学生から高齢者まで、市民が気軽に集まり、防音設備も備えた部屋もある、会議から文化活動まで多目的に利用できる施設を作ること。
 新規施設の二つ目として、工業地帯や港湾地域の空き倉庫、廃業した工場の跡地などを有効活用して、大きな音で練習できる練習施設を作ること。
 また、利用可能時間の拡大として、既存施設の閉館時刻を後ろへずらし、22時以降も利用可能にしてゆくこと。
 他にも様々な取り組みが可能でしょうし、必要とされていると思います。
 この中でも、とくに商店街の活性化と結びつけたプラン、仮に「文化の薫る商店街再生プロジェクト」とでも名づけたらいいでしょうか、そのようなプランは、ニーズも高く、まちづくり、にぎわいづくりにもたらす効果も非常に高いことが期待できます。
 そこで、市民経済局長にお伺いします。新局として当然、市民文化の振興をはかってゆく方針だと思いますが、とくにこの稽古場不足の問題に対して、どのように対策をしていく考えでしょうか。考え方をお示し下さい。
 また商店街振興組合への助成制度として、稽古場不足への対策としても活用できる制度があれば、具体的に紹介して下さい。

商店街魅力アップ支援事業」を設けている
【市民経済局長】商店街の空き店舗の活用に関しては、商店街振興組合等がコミュニティの活性化を図る事業を行う場合の補助制度として「商店街魅力アップ支援事業」を設けているので、活用いただきたい。
 練習場の確保は行政だけでなく、近隣にお住まいの方や多くの市民の方々の支援と協力が必要となってくる。今後とも市民の皆様が身近に文化芸術に触れるとともに、文化芸術を応援していく機運の醸成に努めたい。

「社会教育」の事業拠点として位置づけ、市民活動の支援を
【柴田議員】これまでの論点で示したように、市民文化の振興にあたっては、市民の身近な場所での文化活動の拠点を整備することはもちろんですが、それだけでなく、その拠点を「社会教育」の事業拠点としても位置づけ、市民の自発的な活動を支援する施策が必要です。そのためには「文化」を、「観光文化交流局の管轄」と、単純化することなく、社会教育の重要な事業の一つとしても位置づけなおすという、大胆な変革も必要になるでしょう。
 新年度には、次期文化振興計画を策定することが計画されています。
 文化振興計画の策定にあたっては、「街づくり」、「社会教育」と「市民文化」を統一的に取り組む視点に立った計画立案をすることが求められます。
 とくに「文化の薫る商店街再生プロジェクト」として例示したように、稽古場不足を解決してゆくことを、商店街などの街づくりの課題と結びつけて、プランを提案したり、逆に地域の求めに応じて、商店街振興組合への助成制度や、リフォーム助成や講座の企画運営など、さまざまな形で応援し、運営も支援してゆくことが、強く求められます。
 そこは、まさに地域住民の自発的な「学び」の場であり、「文化」「芸術」の取り組みを鍵としながら、学びの意欲を引き出し、教養と能力を高め、協同の力で地域課題に取り組む能力、地域の教育力を高めてゆく、社会教育として事業そのものだと言ってもよいでしょう。
 そして、子ども、小中学生や高校生などにとっても、地域の中で活動できる拠点があることによって、親と学校の先生以外の、地域の大人との「ナナメの関係」を取り結ぶ機会を得られることが非常に重要だとも言われており、いじめや自殺問題に対する対応策の一つとして、重要な鍵を握っていると考えます。
 また、総務局の取り組む「学生タウンなごや」の取り組みとの連携も期待されるところです。

「市民文化の振興」を推進し、住民自治とまちづくりにつなげる
【柴田議員】このように、「市民文化の振興」は、「街づくり」の市民経済局、「社会教育」の教育委員会、そして、「文化」の観光文化交流局、さらに言えば総務局や健康福祉局、こども青少年局など含めた、全市的規模での局横断的な企画・政策立案・遂行能力、いわばプロデュース能力が要求される、きわめて重要な課題です。冒頭申しましたように、住民自治の根幹につながる施策であるという認識を明確に持っていただき、大局に立った、局横断的な取り組みの中で次期文化振興計画を策定してゆくとこが求められます。
芸術家の数2010 そこで、市民経済局長に伺います。
 次期文化振興計画の策定にあたって、「市民文化の振興」を住民自治とまちづくりの根幹につながる重要な施策として認識し、推進していく考えはお持ちでしょうか?
 その前提に立って、局を超え、市民も含めて全市的な叡智の結集をよびかける取り組みを行う考えはありますか?
 また、決定的に不足している練習場所の整備・提供への取り組みを、「まちづくり」「社会教育」と一体となって進めていくなど、「文化」という視点で連携を図って、局横断的に施策を進めていく取り組みを、次期文化振興計画に位置づける考えはありますか。お考えをお聞かせ下さい。

文化振興計画を策定する際、各局や市民等の意見くみとる
【市民経済局長】文化芸術が持つ、人や地域を元気にする力、人と人を結びつけていく力を活用して地域課題を解決するために、文化施策がまちづくりや地域活動等と連携していくことは重要であると認識している。
 次期文化振興計画の策定に当たっては、関係各局による庁内会議で議論するとともに、文化関係者や市民の方々と文化芸術の先進的な取り組み等について共有するトークイベントである「クリエイティブ・カフェ」を行い、様々な方々のご意見を汲み取っていくことを考えている。文化という視点で各施策が連携を図っていくようなことも含めて議論を進めたい。

社会教育事業の一つとして各局と連携を
【柴田議員】教育委員会として、「市民文化の振興」を社会教育事業の一つとして位置づけ、新局や市民経済局、総務局などと連携して知恵を寄せあい、積極的に取り組んでいこうというお考えはありますか。考えをお示し下さい。

一部は社会教育と関連するので支援している(教育長)
【教育長】教育委員会としては、社会教育としての必要性等を鑑みながら、社会教育の推進の観点からの取り組みを進めてまいりたい。

演劇練習館(アクテノン)はすでに飽和状態(意見)
【柴田議員】次期文化振興計画の策定に向けて、市民経済局長から、文化施策がいかに重要であるかの認識と、文化という視点で各施策が連携を図っていくことを含め、議論を進めてゆくという、非常に前向きなご答弁をいただきました。
また、教育長からも、市民文化について社会教育の推進の観点からの取り組みを進めていくとの、こちらも非常に前向きなご答弁をいただきました。
 ぜひ、この立場を堅持して、広範な市民の意見を取り入れながら、全庁的な議論の中で、優れた文化振興計画を作り上げていただきたいと思います。わたくしも全力で推進のお手伝いをしてまいりたいと思います。
 問題はこの4月から発足する新局です。先ほど、「アクテノンをご利用ください」というご答弁がありましたが、アクテノンはすでに稼働率98.9%です。飽和しているんです。稽古場不足対策は待ったなしの状況です。

地域コミュニティでの文化活動に支援を(意見)
【柴田議員】「市民芸術を応援してゆく機運の醸成に努める」とのご答弁もありました。
 しかし、高度成長期以降、地域コミュニティが破壊され、身近な地域から「まつり」が失われ、消費的文化のシャワーを浴びて育ち、低賃金あるいは長時間労働の過酷な実態の中で、あえぐように生きている若者たちにとって、あるいは、教育費や住宅ローンに縛られ、会社に縛られて、地域の中で活動をする時間などほとんど無いという過酷な実態の中にいる働き盛りの40代50代の世代にとって、「地域コミュニティの中での文化活動」を何の支援もなく行える余裕は無いというのが現実です。
 また、大型店舗に対する規制緩和などによって商店街も破壊され、経営が成り立たず空き店舗になる店が続出。一旦寂れた雰囲気になってしまうと、ますます客足が遠のき、という負のスパイラルに陥ってしまっているのが商店街の現状です。地域コミュニティの中核として、きわめて重要な役割を果たしてきた商店街の価値を認め、何らかの支援をして崩壊の流れを食い止めることが求められています。

観光偏重ではなく、市民文化の振興も柱にすえて(再質問)
【柴田議員】「地域コミュニティの中で市民文化の活動を行う」ということが、いかに優れた意味を持つものなのか、いかに高い価値を持つものなのかを、啓発し、励まし、促し、応援するという、丁寧な働きかけがあってこそ、初めて市民文化の振興がはかられるのだと思います。市民のみなさんに、親身になって寄り添い、本気で励まし、経済的にも後押しする制度を拡充しなくては、「市民芸術を応援してゆく機運の醸成に努める」ことにはなりません。
 やはりここでもう一度、冒頭に申し上げました懸念について、念押しの確認をさせていただきます。
 新局「観光文化交流局」は、この4月から、決して観光偏重ではなく、市民文化の振興もしっかりと柱に据えて取り組んでいかれるんですよね。市民経済局長の答弁を求めます。

市民文化の振興もしっかり取り組んでいく
【市民経済局長】「観光文化交流局」においては、市民文化の振興もしっかりと取り組んでまいる。

市民の「豊かな心」大切にし「市民文化の振興」前面に(意見)
【柴田議員】しっかりとやっていくと、力強いご答弁をいただきました。
 市民の日常的な活動の場が、本当に不足しているという現状認識の上に立ったご答弁だと理解します。その言葉通り、稽古場不足対策をはじめ、「市民文化の振興」の実効性のある施策を制度としても拡充していっていただきたいと、要望します。
 ご答弁いただきました「商店街魅力アップ支援事業」も「市民文化の振興」の視点から、さらに拡充し利用促進を図っていただきたいと思います。
 なお、生涯学習センターも女性会館も老朽化が進み、痛みが目につきます。新局の発足、そして、次期文化振興計画の策定という、大きな動きのなかで、この「市民文化の振興」という視点から、しっかりと予算の拡充を含めた計画策定を行っていただきたいと強く要望します。
 最後に、元立命館大学教授で、京都教育センター代表、カウンセラーとして長年に渡りいじめや不登校問題にとりくんでこられている高垣忠一郎氏の言葉を紹介します。「リニアは時速500km、秒速にして140m。一秒間に140m走り去ってしまう。乗っている人の心が置き去りになってしまう。心を置き去りにすることばかりやっていては、観光客をおもてなしする心も失われてしまう。」というものです。京都ならではの言葉だと感銘を受けました。
 市民の「豊かな心」を大切にする、「市民文化の振興」を前面に押し出す市政へと、根本的に方向転換をしてゆくことを強く要望して、私の質問を終わります。

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