2016年2月定例会

高橋ゆうすけ議員の個人質問 学校司書について(2016年3月8日) 

学校図書館、蔵書は基準以下、専任司書も置かずに常時開館せず、子どもの読書率が全国以下でいいのか 

蔵書少ない、常時開館せず、専任司書もいない学校図書館。市内中学生の24%が読書せず(全国平均は15%)IMG_演台9140t
【高橋議員】今、日本は、情報化社会と言われ、様々な情報が氾濫する中、情報を選択する力が求められています。子どもを取り巻く生活環境は、インターネット、携帯電話などの情報メディアの著しい発達、普及により急速に変化しており、利便性が向上している半面、インターネットや携帯電話などに時間を奪われ、子どもの読書離れ・活字離れが指摘されています。
 そうした中で、子どもの読書活動の推進が大切とされており、本市においても、2012年に「第2次名古屋市子ども読書活動推進計画」が策定されました。この中では学校図書館についても触れられており、「子どもが多くの時間を過ごす学校等において、子どもの成長に応じた読書へのきっかけをつくり、多くの子どもが読書に興味、関心を持つことができるよう取り組みます。」とされています。
 では、本市の状況はどのようになっているでしょうか。2014年度、1か月の間に1冊も本を読まなかった子どもの数値を現した不読率は小学校で、全国平均の3.8%に対して名古屋市は7%、中学校の全国平均は15.0%に対して、名古屋市の中学生は23.6%と、全国平均に比べ高い不読率となっています。このような状況はなぜ起きてしまっているのでしょうか。不読率推移2(第2次読書活動推進計画より)
 学校図書館の整備については、1993年3月に文部科学省が定めた学校図書館図書標準というものがあります。これは、小中学校などの学校図書館に整備すべき蔵書の標準冊数を定めたものです。2014年度時点で名古屋市の学校図書館図書冊数の達成状況はどうでしょうか。全国57%に対して名古屋市の小中学校は47%、明らかに全国平均よりも低くなっています。
 更に、学校図書館の開館状況はどうなっているでしょうか。授業が終わっても、図書館が開いていないという小学生・中学生の声も聞こえてきます。市内の小中学校315校には司書教諭が配置されていますが、司書教諭は担任等を兼務しているため、図書館業務に専念することができません。学校図書館図書標準
 そこでお聞きします。名古屋市の子どもの不読率が高い、学校図書館に蔵書が少ない、常時開館されていない、専任の司書がいないという学校図書館の現状について、どのように認識しておられるのでしょうか。

蔵書数、国標準に近づけるよう努める(教育長)
【教育長】学校図書館図書標準に達していない学校があるのが実情ですので、今後、図書標準に近づけるように努めて参ります。
 学校図書館の開館は、小学校は98.5%、中学校は82.7%の学校が毎日開館していす。小学校では主に15分から20分の大きな休み時間と、昼休みに開館し、中学校ではほとんどの学校で昼休みに開館しています。しかし、司書教諭や図書館主任は学級担任と兼務する場合が多く、学校図書館に常駐できないため、学校司書の配置が望まれます。

求められる「居場所」機能。学校司書の役割は
【高橋議員】学校図書館はこれまで、「読書センター」「学習センター」「情報センター」となることが求められてきました。その3つの機能に加えて、現在、子どもたちの「居場所」を提供し、子どもたちが安全・安心して過ごせる場所としての機能なども求められています。
 近年、子どもの貧困、受験競争によるストレスなどによる、生活習慣の悪化が指摘されています。友だちとの付き合いでも、「嫌われたくない」という気持ちから、本音でかかわることができないということも。そんな子どもたちのストレスを受け止め、一人一人がかけがえのない存在として育つことができる、温かい人間関係が結べる場として、競争社会や効率化から切り離された学校図書館が必要となっているのです。
 学校司書をすべての小中学校に配置している岡山市では、悩みを抱えている子どもに、意識的に勇気付けられる本や心があたたかかなる本を紹介するといったことだけではなく、折り紙が得意な子どもが持ってきた作品をカウンターに飾り、それを機会に子どもが先生になって折り紙大会を開催するなど、学校司書による工夫によって学校図書館に寄りやすい雰囲気作りがされています。
 本市はどうなっているでしょうか?現在、職員としての学校司書の配置はありません。小学校2校、中学校2校の計4校において、昨年6月から有償ボランティア、それも週2日、1日5時間といった形で実施されているというのが現状です。果たしてこれで名古屋市の読書活動や子どもの「居場所」づくりを推進していくことができるのでしょうか。全国的にも遅れた学校図書館運営ですが、このままでは全国の実践からさらに遅れてしまうのではないかと危惧します。
 そこでお聞きします。子どもたちが楽しいと感じられる、学校図書館を運営するために、本市が考える、学校司書の果たすべき役割とは何ですか。その役割を果たしていくために学校司書にはどのような資格が必要と考えていますか。

学校司書活用で利用生徒が増え、学習も意欲的に(教育長)
【教育長】次期学習指導要領で重視されているアクティブ・ラーニングを進めるにあたって、学校図書館はますます活用されるようになり、学校司書の必要性も一層大きくなっていくと考えられます。学校司書は、図書館資料の管理、館内閲覧・館外貸し出し、各教科等の指導に関する支援などの役割を担っています。したがって、司書または司書教諭といった専門の資格を持った人材が相応しいと考えております。

4つの学校では、学校司書の活用してどんな取り組みを行ったか
【高橋議員】また、今年度約1年、4つの学校において、学校司書を活用して、どんな取り組みを行い、どんな変化があったのでしょうか。

利用する子どもの数も増え調べ学習等に意欲的に取り組むようになった(教育長)
【教育長】実践校4校では、学校司書が子どもにわかりやすい図書の配架をし、本を紹介するポスターや季節に合った装飾品等を作成しています。その結果、温かみのある使いやすい学校図書館となって、利用する子どもの数も増えています。また、学校司書が教員の要望に応じて授業に必要な図書資料を準備することで、子どもたちが調べ学習等に意欲的に取り組むようになったと聞いています。

昼休みに開館というが児童生徒の活動。「居場所」としての役割について市長の認識は(再質問)
【高橋議員】学校図書館の開館状況について多くの学校で毎日昼休みに開館しているとのことですが、児童生徒が委員会の仕事として図書館を開館しているのが実態です。もちろんそれも大事なことですが、ただ開ければいいというものではなく、子どもたちが安心して過ごせる場を作っていくことが大事なんだということを指摘しているのです。それは、教育長が最後にお答えになった、学校司書を活用している学校での取り組みにも表れていると思います。
 私は、先日、実際に学校司書を活用している学校へ行ってきました。
 学校司書の方にお話しを伺うと、学校に来た当初、古い本もたくさんあって、どんな本が入っているかもわからなかった。本をわかりやすく並べなおすことで、「こんなところに面白い本があるんだね」と言って本を読みに子どもたちがたくさん来るようになったということや、毎日のように子どもが図書館に来て、ほんの数分でも本を読むことで、楽しそうに帰っていくようになった。子どもが「いつでもここにいていいんだ」という安心感からの変化。子どもがワクワクし、ホッとできる空間を作る仕事は忙しい先生だけではできないとおっしゃっていました。
 学校司書を活用している学校の先生も、子どもたちの読書と学習の環境を整え、子どもの「心の居場所」ともなる図書館を作りたい、そのために学校司書は必要と語っておられました。
来年度予算要望で教育委員会は、「ことばの力育成事業」ということで、学校司書の配置に向けた予算も要望していましたが、学校司書を配置することで、ことばの力だけでなく、子どもが安心して過ごせる「居場所」も作ることができる、本市におけるチーム学校を作っていく上でも大事な要望だったと思います。しかし、市長査定を経て、予算は計上されませんでした。そこで、市長にお尋ねします。市長は、子どもの声を聞くことの大切さを日頃から述べていますが、学校図書館が子どもたちの「居場所」となり、その声を聞くことができるという場だという認識はおありだったのでしょうか。

小学校、中学校ごとに一つのミニ図書館みたいなものがあるといい。公務員以外でやるといい(市長)
【市長】どえらい、ええこと。ここまでいくなら、小学校・中学校で、近所のいろんな郷土史の本などを集めて、公務員ではない、近所のおばちゃんでもボランティアでもいいけど、誰か1人、2人おって、普通の民間の人も入ってくるところで、小学校、中学校ごとに一つのミニ図書館みたいなものがあると子どもさんも楽しめるし、ええとこができると思います。そういうのを一つモデルで作ろうかと、昨日、言っとったところです。そういう方法だったら大いに賛成ですが、いたずらに公務員が増えていくのは、あんまりピンときませんね。

法の趣旨は学校職員に限定。市の配置計画は(再々質問)
【高橋議員】昨年4月に施行された改正学校図書館法、これを提案した議員連盟…日本共産党議員も入っておりますけれども…がつくった「改正学校図書館法Q&A」には、学校司書の法制化にあたって、外部の業務受託者は学校司書とは呼ばないと明記されています。学校司書は職員でなければならないというのが法律の趣旨です。そのことを市長に指摘しておきます。
 ただ市長自身、学校司書を置くこと自体は完全には否定せず、子どもたちの居場所となる学校図書館をつくる、このことは大事だと言っておりました。 
 いつでも子どもを見守り、相談に乗ることができる、そんな学校司書の配置は一刻も早く行っていく必要があるはずです。そして子どもの「居場所」を作るためにも、本来なら、継続し、安定して職務に従事できる正規の専任で、配置していかなければならないのではないでしょうか。
 そこで教育長にお聞きします。子どもの「居場所」ともなる学校図書館づくりを支える学校司書を今後、どのようなスケジュールで配置していくおつもりでしょうか。

配置できるよう検討する(教育長)
【教育長】4つの実践校では、学校司書の活用により学校図書館が整備され、いつも人がいることで、子どもの利用も増えているという成果が報告されている。今後は、こうした実践校での成果をもとに、学校司書を配置できるよう種々の角度から検討します。

学校職員としての司書、一刻も早く配置を(要望)
【高橋議員】教育長からは、4つの実践校での成果もあり、順次配置できるよう検討していきたいとご答弁がありました。学校司書の果たすべき役割は、学校図書の整備、授業への支援、そして子どもたちが過ごしやすい「居場所」を作っていくことです。そのためにも学校司書の配置は今、一刻も早く進めていかなければならない課題です。有償ボランティアではなく、学校の職員として、学校図書館における学校司書の配置を、できるだけ早く進めていただくよう、要望を申し上げまして、私の質問を終わります。

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