2015年11月定例会

岡田議員が子ども貧困対策と介護保険制度について議案外質問

岡田演壇IMG_4820 岡田ゆき子議員が本会議にて11月27日、子どもの貧困対策について、介護保険制度の改定による本市への影響について議案外質問を行いました。動画は名古屋市会HPを、質疑応答の全文意訳は下記をご覧ください。

2015年11月27日 岡田ゆき子

11月定例会 議案外質問と答弁

子どもの貧困対策について

就学援助の認定基準を生活保護基準の1.3倍に戻せ

【岡田議員】子どもの相対的貧困率は、2012年に16.3%と過去最悪になりました。子どもの6人に一人が貧困状態。ひとり親家庭などは54.6%、半数以上が平均所得の半分以下の収入で暮らしています。

 2013年に成立した子どもの貧困対策法は、「貧困の状況にある子どもが健やかに育つ環境」の整備を国・地方自治体の責務としました。名古屋市は今年度から5年間、「第3期名古屋市子どもに関する総合計画」を策定し、「貧困状態にある子ども・若者・子育て家庭の支援」にも重点的に取り組むとしています。名古屋の本気度が試されます。

 はじめに、経済的支援である就学援助について教育長にお聞きします。義務教育を受けるために必要な教育費は、学習塾などにかかる費用を除いても、小学生で年間10万円程度、中学生で年間17万円程度必要です。本市の就学援助があれば、小学生ならその7割、中学生なら5割がまかなえます。その本市の就学援助の認定基準は生活保護基準の1.0倍です。就学援助が国庫補助の対象であった2005年までは1.3倍でした。しかし、国庫補助が廃止され、認定基準も引き下げられたのです。2014年の本市の就学援助の認定率は14.5%です。子どもの貧困率より低いのです。厳しい経済状況にある家庭を救いきれていません。

 文科省がおこなった2014年度の調査では、認定基準が1.1倍以下の自治体は名古屋市を含めて全体の10.3%だけ。1.3倍、それ以上の認定基準の自治体が65%。名古屋市の基準の低さは問題です。「子どもの貧困対策大綱」では、「世帯の生活の基礎を下支えしていく必要があり、経済的支援に関する施策については子どもの貧困対策の重要な条件として確保する必要がある」と位置付けられています。

 基準の引き下げで当時、1828人が支給対象外となりました。1.3倍に戻すには、対象外となった人数に、一人当たりの平均支給額をかけても約1億1500万円あれば元に戻せます。貧困対策を進めるために、認定基準をせめて元の1.3倍に戻すべきではないですか。答弁を求めます。

行政評価で他都市水準にとの指摘があったので1.0倍にした

【教育長】かつての行政評価で、基準の設定は他の指定都市の状況を考慮すべき旨の指摘を受けたことを踏まえ、平成18年度(2006年度)から所得基準を生活保護基準の1.3倍から1.0倍に改め、支給金額としては指定都市の平均水準とすることで、基準の適正化を図った。引き続き現行水準を堅持して援助してまいりたい。

困難を抱える子どもを見逃さない仕組みづくりを

【岡田議員】子どもの貧困は実態がなかなか見えないといわれます。しかし、子どもに寄り添うことで早期に子どもの貧困をつかみ、支援につなぐことができれば、救うことができます。

 「子どもの貧困対策大綱」は、学校をプラットフォームと位置付けました。学校は、子どもたちが長い時間を過ごす場所であり、福祉の視点から子どもの貧困をつかみ支援につなげることができます。プラットフォームとしての役割について、今回は学校歯科検診から考えてみます。

 小中学校の全児童対象に毎年歯科検診が行われています。本市は子ども一人あたりの虫歯の数が全国平均よりも低くなっています。しかし、歯科医からは「口腔内の状態が、経済的格差により2極化している。きれいな歯の子どもがいる一方で、ほとんどの歯が虫歯になっている子がいる」ということでした。歯科衛生士からも、「学校で虫歯と指摘されても、なかなか受診しない子どもがいる。そのような家庭の多くは、親が仕事で忙しく治療に連れて行けないということが多い」、また「保護者自身が経済的困難を抱えた家庭で育ち、口腔衛生という概念がなく親子ともに虫歯が見られ、貧困の連鎖が見受けられる」と言われました。

 親の働く環境や生育歴が子どもの歯にまで影響しているのです。受診させていないのは、「親の責任」「親に問題がある」として、問題が見過ごされていないでしょうか。学校歯科検診の結果、治療が必要なのに受診していない子どもがどれだけいるのですか。また、そのような子どもたちのフォローをどうしていますか。教育長にお聞きします。

必要があれば関係機関への情報提供を図る

【教育長】何らかの指導や治療を受けた方がよい場合は、保護者に対して歯科医受診を勧める文書を配付しています。受診した場合には、指導や治療の結果を報告していただき、報告割合は小中学校全体で約5割となっています。

 受診の勧めをしても報告がない場合は、再度お勧めの文書を配付したり、個人懇談会の折りに面談により受診を勧めています。そうした中で、家庭状況が子どもの歯の状態に影響しているような場合、その情報をきっかけに周辺の状況を校内で共有し、必要があれば関係機関への情報提供を図るなどの対応をしている。

地域の子どもの居場所づくりに応援を

【岡田議員】子どもの居場所として、今、全国に広がっているのが「子ども食堂」です。東京都豊島区で、一人ぼっちで公園で遊んでいた近所の子どもに、食事を提供したり。母子家庭で、勉強を教えてやれない保護者に代り、勉強を教えたことから始まった活動です。仕事が忙しく、子どもと向き合う時間が少ない家庭では、子どもを丸ごと受けとめてくれる大人との時間が絶対的に不足します。子どもだけで気軽に立ち寄ることができ、食事ができる、宿題を見てもらい、おしゃべりができるそんな場所として「子ども食堂」が、各地に広がっています。

 北区にある民間団体が共同で今年8月から「わいわい子ども食堂」をはじめました。「ひとりぼっちの食事をなくそう」を目標に多くのボランティアの参加を得て、夏休みには子どもが30人参加して昼食をとり、学生ボランティアに宿題を見てもらい、あるいはゲームをして楽しみました。活動の中で、子どもの様子から支援の必要な子どもがわかると言われ、ボランティアからは「自分たちの身近にいる、元気そうな子どもの中に、生活が大変だと思われる家庭があると分かった。こうした発見が福祉など支援につなげるきっかけになる」と言われました。その通りだと思います。こうした自主的な居場所の運営を自己資金のみで続けるのは困難です。国が「居場所」つくりに「こどもの未来応援基金」をつくり寄付を募り始めたようです。本市が子どもの居場所つくりを応援すること、地域の取り組みをつなぐ役割を担うことを求めますが、子ども青少年局の答弁を求めます。

子どもを支援する取組みの情報収集に努めたい

【子ども青少年局長】子どもの貧困対策について、国の取り組みとして10月から「子供の未来応援国民運動」が開始された。まだ始まったばかりで、どの程度の規模になるのか、どのような支援を実施するのか詳細は不明なところもあり、当面、実施状況などの把握に努めたい。

 一方、社会全体での子ども・子育て支援を進めるという視点からは、地域における草の根の支援の育成は大切な取組みで、市内でどのような子どもを支援する取組みが行なわれているのかなどの情報収集に努めたい。

子どもの貧困をつかむ視点で実態調査を

【岡田議員】子どもの貧困対策大綱では、「子どもの貧困に関する調査研究が必ずしも十分に行われてきたとはいえない」として、子どもの貧困の実態把握・分析を継続的に行うとしています。

 これまで名古屋市は無作為抽出で「子ども子育て家庭意識・生活実態調査」を行ってきましたが、十分とは言えません。貧困が子どもにどんな影響を及ぼしているか、家庭の収入や働き方と子どもの学習や健康などとの関係をより詳しく調査することが必要です。

 また、子どもの貧困対策への施策の効果を図るには、長い時間をかけた追跡調査が必要です。東京都足立区では、小学校1年生のいる家庭を対象に、保護者の学歴や収入および就業状況などの経済状況をたずね、子どもの虫歯の有無、起床時間、朝食の習慣などの生活習慣を無記名で実態調査をしました。名古屋市も子どもの貧困の実態をつかむ視点で調査を行うことを求めますが、子ども青少年局長の考えをお聞きします。

まずは「わくわくプラン2015」の貧困対策の着実な実施に努めたい

【子ども青少年局長】「なごや子ども子育てわくわくプラン2015」の策定にあたり、平成25年度に「子ども・子育て家庭意識・生活実態調査」を実施した。その調査結果から、勉強に必要な道具を持っていない子どもや勉強に必要な参考書を持っていない子どもの割合が、世帯収入が低いほど高い傾向があるなど、一定の状況を把握した。この調査結果を踏まえ、なごや子ども子育てわくわくプラン2015では、新たな視点として、「貧困状態にある子ども・若者・子育て家庭の支援」を取り入れ、貧困の連鎖を断ち切るための支援に向けた取り組みを進めることとした。

 子どもの貧困対策としては、国の動向などにも十分に注視しながら、まずは「わくわくプラン2015」に計画されている子どもの貧困対策に資する事業の着実な実施に努めたい。

学校と福祉の連携を本格的に強めていただきたい(意見)

【岡田議員】どんなに手間や時間がかかっても、一人残らず見つけるという気概で学校と福祉の連携を本格的に強めていただきたい。子どもの健康という側面では養護教諭の役割は大きい。実際、養護教諭の多くが、口腔崩壊を見ていると言われますが、その先の支援をどうしたらいいのか、ここに悩んでいると聞きます。どんどん福祉につないでいただきたい。市内には歯科受診させられない子どもに歯科受診を手伝うボランティアもあることを教育の現場はご存知でしょうか。学校の中の福祉の窓口であるSSWに求められている役割は本当に大きい。

 今回は学校歯科を取り上げましたが、視力、肥満、中学校で昼食をとらない子など、子どもの見せる事象に気づく教員の目、学校とSSWの連携、SSWと支援機関との連携を強めること求めます。

 子ども食堂に見られるような草の根の取り組みは、名古屋市内でも芽が出始めています。そこが、地域で困窮している子育て家庭を見つける場所にもなってきます。地域の取り組みについて情報収集をしていくということですが、そこでとどまらず、支援につなぐ仕組みに行政がかかわり財政的にも応援できるよう要望します。

貧困が社会問題となっていることを認識しているか(再質問)

【岡田議員】就学援助について再質問します。10年前に就学援助の基準引き下げた理由は、行政評価で指摘を受けたということでした。しかし、子どもの貧困が社会問題となり、「子どもの貧困対策法」において、経済的支援が重要な条件だと改めて位置づけられたのです。下支えできる就学援助の拡充が必要です。

 先ほども子ども青少年局長の答弁で、市が行った実態調査でも世帯収入が低いほど参考書や勉強に必要な道具を持っていない傾向があるという報告でした。こういう格差が調査のクロスでも明らかなんじゃないですか。

 教育委員会はこの調査結果を認識しているのか。この事実から施策をどう進めていくつもりか。改めて、就学援助の認定基準を見直すことではないですか。再度認識をお聞きします。

生活保護基準の変動に従い、基準も引き上げている

【教育長】生活保護基準に応じて所得基準を設定し、平成18年度(2006年度)に所得基準を見直した以降も、生活保護基準の変動に従い、就学援助の所得基準も引き上げている。

 25年度(2013年度)以降、生活扶助基準の引き下げが行われていますが、その影響が就学援助に及ばないように、今年度の所得基準額を設定している。

子どもの悲鳴に応える市の本気度が試されている(意見)

【岡田議員】生活保護費の引き上げに伴って就学援助の所得基準が上がるのは当然です。それでもいま経済的支援が必要だといっているのが、子どもの貧困対策法ではないですか。市長に聞きませんが、子どもの声にならない悲鳴に応える市の本気度が試されていると思います。

 見えない子どもの貧困を一人も見過ごさないために、経済的支援が必要だという視点で対策を進めてほしい。名古屋市の「子どもの貧困対策推進計画」を局を超えて作る必要があることも申し上げておきます。

介護保険制度「改正」と影響

新しい総合事業のサービスは現行水準を維持して実施を

【岡田議員】介護保険制度の「改正」にともなう、新しい総合事業による影響についてお聞きします。今年度も、介護報酬削減により介護事業所の経営が厳しい中で、名古屋市は来年6月から「新しい総合事業」を始めるとしています。これは、要支援1と2の高齢者への専門職による訪問介護と通所介護を予防給付から外し、自治体がおこなう地域支援事業へ移行するというものです。

 名古屋市は「新しい総合事業」として、人員基準を緩和して、現在の報酬の7割、8割で実施する生活支援型訪問サービスとミニデイ型通所サービスを始めるとしています。これらについて市は、利用者が多様なサービスが選べる、選択の幅が広がると説明しています。

 しかし、具体的には基準緩和した生活支援型訪問サービスやミニデイ型通所サービスは、今よりも低い報酬で運営が迫られることになります。結果的に、事業所の経営困難あるいは廃業に拍車をかけることになりませんか。高浜市、春日井市、政令市では横浜市などが「新しい総合事業」を、現行水準のサービスでスタートします。本市でも「新しい総合事業」で、当面、基準緩和型は設けず、現行水準のサービスで新総合事業を始めるべきではありませんか。健康福祉局長の考えをお聞きします。

それぞれの方に適したサービスを提供できるようにしていきたい

【健康福祉局長】「介護予防・日常生活支援総合事業」いわゆる「新しい総合事業」は、平成28年(2016年)6月の開始に向け準備を進めている。開始時に、これまでの予防給付と同様の基準による専門的サービスに加えて、緩和した基準で地域の協力のもと多様な担い手による新たなサービスを提供していくことを予定している。

 事業開始時から多様なサービスの提供体制を構築することは、利用される方にとって、サービスの選択肢を広げるメリットがある。

 これらのサービスの利用にあたり、いきいき支援センター等で、サービスの内容を丁寧に説明し、ケアマネジメントを行う際には、本人の意向や心身の状況を正確に聞き取った上で、それぞれに適したサービスを提供できるようにしていきたい。

現行水準のサービスの継承を(意見)

【岡田議員】新しい総合事業について、利用者にとって選択肢が広がるという答弁でしたが、介護事業所や利用者から上がっている声は、経済的な理由で専門職の必要性の有無よりも、安上がりのサービスを選ぶしかないという事態が出てくるのではないかということです。

 事業所は今年度からの介護報酬引き下げで厳しいうえに、新しい総合事業で、市は「低い報酬のサービスを始めよ」ということですから、「新しい総合事業」で利用者、介護事業所ともに疲弊をもたらすだけではありませんか。当面、基準緩和型サービスの導入は見合わせ、現行水準のサービスの継承を強く求めます。

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