2015年11月定例会

藤井議員が繁華街での「キャッチ」について議案外質問

藤井議員_演壇4452 藤井ひろき議員が本会議にて11月26日、繁華街での「キャッチ」の実態をふまえた対応について議案外質問を行いました。動画は名古屋市会HPを、質疑応答の全文意訳は下記をご覧ください。

2015年11月26日 藤井ひろき

11月定例会 議案外質問と答弁

繁華街における「キャッチ」の実態を踏まえた安心・安全の確保について

~誰もが安心して食べて飲んで楽しめる、まちのにぎわいを守るために~

市の条例などで居酒屋やカラオケ店の客引き行為を規制できるのか

【藤井議員】みなさん、「キャッチ」て、ご存じですか。いわゆる「客引き」です。キャッチと聞いて、どのように想像されるでしょうか。居酒屋やカラオケ店が自分の店に、お客さんが来てほしいから、「いらっしゃい、いらっしゃい!」と、通行人に呼びかける行為を想像される方が多いと思います。今、私たちの想像を超えるキャッチ、客引き行為が名古屋駅周辺、栄、金山などの繁華街で起きています。

 この間、市内の繁華街で店を営業されている方々から、キャッチに関する相談を受けました。

 たとえば名駅周辺では、夕方になると、複数の色のカラージャンパーやカラーシャツを着た若者を多く見受けます(写真パネル掲示)。このような状態です。他にも私服のキャッチもいます。約3年前から数十人のキャッチが現れ、この1年で大幅にその人数が増えました。現在、多いときには200人を超えるキャッチがいます(写真パネル掲示)。そして、店の前で客引きを行います。

 では、このキャッチシステムは、どういったものでしょうか。キャッチの会社と、店との間で交わされる「宣伝代行業務委託契約書」を名駅周辺で店を経営されている方から見せていただきました。それによりますと、管理費に加え、成功報酬として、キャッチが客を店に案内すると、店側が客一人あたり500円を払うシステムです。また月に10名以上、店に客を案内すると別途1万円を支払う内容となっています。私に契約書を見せた店の方は、キャッチ会社からの契約の誘いを断りましたが、現在、自分の店の目の前でキャッチ行為が行われており、大変困っておられます。

 さて、名駅前に次々と建設される高層ビルが、話題になっています。そのビルの足元である名駅周辺を夕方以降、歩きますとキャッチから次々と声がかかります。

 「どのお店に行かれるのですか。すぐにメニューが出る店を案内しますよ。割り引きが効く店を案内できますよ」。このような声かけで、私も30mほど、キャッチにつきまとわれましたが、このような光景は多々あります。

 また店の入口の前でメニューが書かれた、立て看板を見ていますと、すぐキャッチから「もっといい店を案内しますよ」、あるいは「この店はもう満席です。よければ、席が空いている店を案内しますよ」とも、声がかかりました。

 ある店では、自分の店の前に「空席あります」とプラカードを掲げたスタッフを立たせて、店の目の前に張り付く5人から6人のキャッチに対抗しています。そうでもしないと、キャッチから自分の店は満席だと言われてしまう。店長からは、プラカードを持つスタッフを1人雇うだけでも負担がかかる、とても正常な商売行為ではないとの声がありました。

 先日、この問題で名駅周辺で店を経営されている方々と懇談を持ちました。

 居酒屋の店長や、マネージャーからは「自分の店の前の歩道に何人もキャッチが張り付いていて、お客様からも街の雰囲気が悪いとの声を多くいただいている。商売をするにあたっては、必要最低限度の正規のルールを守っていただきたい。誰もが安心して食べて飲んで楽しめる、健全な街の賑わいが失われつつある」との声がありました。

 また、全国でチェーン店を経営している企業の次長は「これまで東京、大阪と全国各地を担当し、この春、名古屋に赴任した。現在、名駅周辺の店を担当しているが、こんなにキャッチがひどい街は、他にはない」と、言われました。

 私も、営業開始前の各店舗を訪れ、店長やスタッフから聞き取り調査を行いました。皆さんから共通して出される声は自分の店の前、なかには店の出入口の前で客引きをしている、自分の店に入ってくるかもしれない客が、店の前でのキャッチの客引きにより取られている、とにかく困っているとのことです。

 ある店長は「名古屋で飲食営業するなら、ちゃんと飲食営業してください。営業の商売の最低限度のルールは守ってください」と訴えておられました。

 また店長やスタッフが、キャッチに対して「客引き行為を自分の店の前でしないでくれ」、「街の雰囲気が悪くなるから、つきまといの客引きはしないでください」などと声をかけますと、キャッチからは、「何の権限で注意をするのか」と言われ、トラブルになるケースが多く、警察を呼ぶこともよくあるとのことです。

 他にも自分の店の前で、キャッチが観光客に客引き行為をし、その観光客から、「このキャッチは、あなたの店のスタッフか。店の案内を頼んでいないのに不愉快だ」といった、お怒りの声をよくいただいている。街の雰囲気、賑わいがこの数年で悪くなってきた。名駅近辺に遊びに来る方たちに不快感や不安感を与えない街、安心で楽しめる街といった本来の名駅の賑わいを取り戻してほしいとの声もありました。

 それでは、このようなキャッチを現行制度で規制することができるのでしょうか。

 今月、私はこの件について、愛知県警察本部生活安全部保安課の警視と警部に直接伺いました。愛知県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」、いわゆる「県迷惑行為防止条例」では性風俗営業、接待飲食営業については規制が設けられています。

 しかし、居酒屋やカラオケ店のキャッチに対しては、同第七条八において、「人の身体又は衣服を捕らえ、その所持品を取り上げ、その身辺に立ち塞がり、つきまとう等執ような方法により、客引きをし、」とありますが、警視の話では、歩行者の行き先を立ち塞がるなどの行為をしたキャッチを逮捕した事例はあるが、それ以外の居酒屋やカラオケ店のキャッチに対しては、「規制することができる『拠り所』がなければ、難しい」とのこと。現条例では警察でさえ、規制するのも困難です。

 そこで市民経済局長にお尋ねします。現在、本市の条例などで、市内の繁華街における、居酒屋やカラオケ店の客引き行為を規制することができるのでしょうか。お答えください。

本市が直接規制や指導等を行う旨の条例等の規定はない

【市民経済局長】客引き行為について、本市が直接規制や指導等を行う旨の条例等の規定はないが、通常の居酒屋やカラオケ店等への執拗な方法による客引きは、愛知県が制定している、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」によって禁じられている。

新宿区のような条例も含めて、市としても対策の検討を

【藤井議員】他都市では、このようなキャッチに対して、どのような対策をとっているのでしょうか。たとえば新宿区では一昨年より、「新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」が施行されています。同条例では、冒頭に紹介した自分の店の前で「いらっしゃい、いらっしゃい」と不特定多数の人に呼びかける行為は客引き行為等に該当せず、禁止されていません。通行人等不特定の人の中から相手方を特定して、居酒屋やカラオケ店等へ誘う客引き行為が禁止されています。

 新宿区のケースでは、新宿駅周辺の居酒屋などの客引き行為が、区民や街を訪れる方に不快感や不安感を与えている、何とかしてほしいと地元の住民や商店街、経営者から寄せられた「条例をつくってほしい」の声が始まりでした。条例が施行されて、どうなったでしょうか。

 今月、私は夜の新宿3丁目、歌舞伎町などを訪れ、現地を歩いてきました。町内のいたるところに「客引き行為は条例違反」の看板が設置され、またスピーカーからは「客引き行為は条例違反です」と、警告メッセージが流れていました。条例制定前に訪れた際、あれだけひどかったキャッチの姿がありません。

 地元の商店街振興会のみなさんが、新宿警察署員とともにキャッチ対策のパトロールをされていました。話を伺いますと「条例が施行されて、客引き行為が激減した。また条例ができたことで、キャッチに対して注意をすることができる、『後ろ盾』ができたので、以前のようにキャッチを注意して、トラブルになることも減って助かっている。街に本来の賑わいが戻ってきた」との声がありました。

 新宿署の刑事にも話を伺うことができましたが、キャッチに関するトラブルも減ってきているとのことです。

 そこで、市民経済局長にお聞きします。本市でも必要最低限の正規の商売ルールを守るため、そして市民のみなさんや、名古屋を訪れる観光客が安心して、食べて飲んで楽しんでいただける賑わい、名古屋の繁華街の賑わいを守るためにも、新宿区のような条例を設けることも含めて、本市としても今後、対策を検討するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

愛知県警とも情報を共有し、他都市も調査する

【市民経済局長】今後、県警で把握している客引きの実態や課題について、県警との情報の共有の場を設けていけるよう調整していくとともに、他都市の施策の状況についても把握していきたい。

市長も夜の繁華街を歩いて、キャッチの実態を見てほしい(意見)

【藤井議員】市民経済局長から、本市が直接規制や指導等を行う旨の条例等の規定はないと答弁がありました。

 先ほど申し上げましたように、現在の県迷惑防止条例では、店の前での居酒屋、カラオケ店などの客引き行為などを規制することができません。また通行人に対する、つきまといの客引き行為の規制も難しいのが現状です。

 今回の件は、市の条例でも県の条例でも規制できない、新しいケースだと考えます。

 また市民経済局長からは「今後、愛知県警察との情報の共有の場を設けていけるよう調整する」「他都市の施策の状況についても把握して」いくと、答弁いただきました。

 新宿区以外にも渋谷区や千代田区、豊島区。大阪市や兵庫県など、全国各地で客引き行為等の防止に関する条例が、次々と施行されています。

 名古屋市民のみなさんや、名古屋を訪れる観光客のみなさんが安心して、食べて飲んで楽しんでいただける、繁華街の賑わいを守るためにも、早急に条例が必要です。

 ぜひ愛知県警察と連携をとって、スピーディーに取り組んでいただきたいことを強く要望を申し上げます。

 さて、最後に今回、名駅周辺の店長や社員、シェフやスタッフのみなさんから、私に寄せられた声を一つ紹介します。それは、市長も市の担当者も、ぜひ一度、夜の繁華街を歩いて、キャッチの実態を見てほしいとの声です。

 これから忘年会シーズンを迎えます。キャッチによる客引き行為が増えることでしょう。必要最低限の商売ルールを守るためルールが求められています。

 また名駅前だけでなく、本市を訪れる観光客は、これからも多く増えることでしょう。「観光都市名古屋」と言うのであれば、賑わいのある安全で安心な街づくりが求められています。

 誰もが安心して食べて飲んで楽しめる、街の賑わいを守るために一刻も早く条例をつくってほしいが、みなさんの声です。この声を最後に紹介申し上げまして、私からの質問を終わります。

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