2015年6月定例会

青木ともこ議員の議案外質問 リニア建設計画について(2015年6月25日)

リニア建設計画について(2015年6月25日)

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説明責任を誠実に果たさないJRに住民から不満の声

【青木議員】JR東海のリニア建設計画は、品川~名古屋間の2027年開業をめざし、昨年10月に国の工事実施計画認可を受けて建設準備が急ピッチで進められています。名古屋市は「リニアを見すえたまちづくり構想」のもと、リニア開通を魅力的なまちづくりと地域経済活性化の柱と位置づけて、名古屋駅周辺の大規模リニューアル計画を打ち出しています。
 「夢の超特急」を謳い文句に、大きな期待を集めているかのようなリニアですが、建設準備の段階で夢とはほど遠い現実が見えてきました。工事実施計画認可以降、沿線住民への事業説明会が各地で行われましたが、そこで浮き彫りになったのは「住民とまともに向き合おうとしないJR東海の不誠実な姿勢」でした。

名古屋市内各地で開かれた説明会には、リニアに係る用地補償や、工事による騒音や振動、地盤沈下や地下水の枯渇、電磁波の影響など、多くの疑問を抱えて沿線住民が詰めかけ、私も各地の説明会に参加して来ました。どの会場でも次々に質問の手が上がりましたが、JR東海の説明は個々の疑問に沿った具体的な回答とはほど遠く、住民からは「あまりにも通りいっぺんだ」IMG_4410との不満が相次ぎました。多くの会場では、納得出来る説明を求める住民をよそに質問は打ち切られ、西区の学区説明会に参加した住民からは、「高速道路を作ったりする時でも、学区の住民に丁寧な説明があるものだ。JRは住民の頭越しに工事を進めようとしている」と、怒りなかばの声が寄せられました。   

沿線住民の不信が広がっているのは、名古屋だけではありません。各地の説明会でJR東海は、大深度地下の使用について「認可を受け使用する場合には、地上の権利が及ばない」と、土地の所有権が消滅するかのような誤った説明をしていた事が明らかとなり、また、ある2つの隣接する自治体では、建設発生土の搬出ルートについて両自治体に2枚舌を使った説明をしていた事が発覚しました。リニアは「住民の理解なしに工事着工は不可能」という国の通達を、JR東海は真剣に踏まえているのか、疑問が深まるばかりです。

そこで河村市長にお訊きします。沿線住民に対する説明責任を誠実に果たそうとしないJR東海に、市内をはじめ多くの住民から不満の声があがっていることを承知しておられますか。市長の答弁を求めます。

 

誠実なうえに丁寧に説明してと申し上げました(市長)

【市長】とにかくでかい工事ですので、誠実なうえに丁寧に説明してつくしてちょうと申し上げました。

 

これからもJRに申し入れを(意見)

【青木議員】事業説明会に対する住民の不満の声を、市長は聞き及んでいるとのお答えをいただきましたが、その不満の声を受け止め、これからもJRに申し入れを行っていただきたい。

 

活断層が集中する南アルプスのトンネル掘削工事懸念はないか

【青木議員】リニア計画は、発表当初から多くの問題を抱えています。過大な需要予測による採算性の不安、膨大な残土処理も含めた環境問題、電力エネルギー浪費による大量の温室効果ガス排出、電磁波による健康と安全性への危惧など、その多くは昨年2月、市長がJR東海の環境影響評価準備書について表明された懸念そのものです。JR東海の事業説明で、これらの問題が解消され、住民の疑問や不安が払拭されたとは到底考えられません。

それでもなお「粛々と」進められるリニアに反対の世論が広がっています。昨年12月には名古屋市内を含む沿線住民5048名が国に対し工事認可の行政不服申し入れを行いました。国会では今年3月、超党派議員団の呼びかけで、リニアを問う内容の院内集会が開催され、沿線住民と弁護団が国を相手取った「建設差し止め訴訟」に向けた動きも強まっています。

なぜリニアが問われるのか。最大の問題は、南アルプスのトンネル掘削工事です。リニアのルートは日本第一級の活断層地帯である南アルプスを25kmに渡って貫通し、建設工事の最難関とされています。これらの活断層は、南海トラフ巨大地震とほぼ同時期か前後に大地震を起こす可能性が指摘されており、多くの専門家が「たいへん危険な工事だ。やるべきではない」と警鐘を鳴らしています。特に最近、全国各地で大きな地震が多発しており、御嶽山の大惨事をはじめ突然の火山爆発が各地で相次いでいます。南海トラフ巨大地震が今後30年以内に起きる確率は70%を超えており、名古屋市は今年から防災危機管理局を特別設置して、巨大災害に備えた防災対策の強化に取り組んでいるところです。地震や火山災害の警戒が強まる中で、JR東海が南アルプスの掘削工事を始めることに新たな懸念はありませんか。市長の考えをお訊きします。

 

イノベーションが人類を進める。期待している(市長)

【市長】新幹線や青函トンネル、ドーバー海峡とか、みんな人類の英知は苦労しながらこれを乗り越えてきた。イノベーションが人類を進めていくだろう。丁寧にやらなければいけませんが、期待しています。

 

技術への過信は安全神話を独り歩きさせる(意見)

【青木議員】イノベーションに期待するという内容ですが、技術への過信は安全神話を独り歩きさせることにつながります。そして安全管理を企業任せにすることがどれほど危険か。福島原発事故が表しています。

 わが会派は、リニア建設と名古屋駅のリニア関連開発に反対しておりますが、名古屋駅の大改造計画は、リニア工事は大丈夫という前提で進められています。そこに冷静な判断が必要です。リニア建設工事が南アルプスの掘削の難関で立ち行かなくなった場合、名古屋市のまちづくり構想の柱も崩れるということを厳しく指摘しておきたいと思います。

 

リニア工事が及ぼす環境影響への対応は

【青木議員】名古屋駅周辺におけるリニア工事が及ぼす影響についてですが、建設発生土運搬のトラックなど工事車両の往来は、駅周辺10箇所で1日最大3940台と凄まじい交通量が予想されます。近隣の交通安全への影響はもちろん、騒音、振動、大気汚染など、長期的な大規模建設工事による環境悪化は避けられません。「環境都市」をめざす名古屋市の積極的な取り組みを大きく後退させてしまうのではないでしょうか。

 JR東海は事業説明会で、関係機関と協議し名古屋駅周辺の渋滞緩和に取り組むとしていますが、住民から要望が出された「工事車両走行による振動で家屋に損害が生じた場合の補償と事前の家屋調査」については、「補償の対象とは考えない」とし、家屋調査についてはまったく回答がありませんでした。長期に渡る集中的な大規模工事が近隣の住環境に及ぼす影響は計り知れないものがあり、想定外の家屋被害等が起こる可能性は十分に考えられます。JR東海は、沿線住民に対し十分な工事説明を行ったうえで理解を得て、安全で快適な環境を損なうことのないよう、最大限の努力をすることが求められます。

 しかし、自治体と地域住民に対するJR東海の企業姿勢をありありと示す、次のような事態が起こっています。新幹線車両基地を保有する大阪・摂津市では、昭和39年の新幹線開業後に深刻な地盤沈下が起き、のちに防止のため地下水くみ上げを禁止する「環境保全協定」を市と国鉄が締結していましたが、昨年9月、JR東海は「コスト削減」などを理由に、事前協議もないまま井戸の掘削を強行し、摂津市から提訴されるという異常な事態を招いています。自治体との環境保全協定すら守ろうとしない、このようなJR東海がリニア建設にあたり、名古屋をはじめ沿線住民の理解を得ながら安全で適切な工事を進めていけるのか?甚だ疑わしいと言わざるをえません。環境局長は昨年11月の議会で、JR東海に対し環境に配慮した工事の適切実施を確認し、必要に応じ指導を行うと答弁しましたが、名古屋市は沿線住民の声をふまえ、環境保全や安全管理を企業任せにせず、市民の快適な住環境を守る立場をより明確にすることが求められます。

 そこで環境局長に改めてお訊きしますが、今後JRに対しどのような姿勢で指導を行い、住環境への配慮と安全対策を講じるよう求めていくのか、お答えください。

 

環境に配慮した工事かを確認、必要に応じ指導する(局長)

【環境局長】現在、リニア新幹線の環境影響評価は、事後調査の段階に入っている。この事後調査では、工事車両の走行や建設機械の稼働による騒音、振動の影響、地下掘削工事に伴う地盤沈下や地下水位の変化など周辺の住環境に関連する項目について、事業者自らが適切にモニタリングすることが計画され、環境保全のために追加的な対策が必要となった場合は、適切に対応することが求められる。

 今後、事業者から提出される報告に基づき、環境に配慮した工事が適切に実施されているかどうかを確認し、必要に応じ指導する。また、騒音規制法をはじめとする公害規制法令に基づく規制指導などを通じて、工事区域周辺の良好な環境の確保に努める。

 

住民の不安解消へどのような対応をするのか(再質問)

【青木議員】環境局長の答弁をいただきましたが、環境影響評価の事後調査の手続き以上のものではないと思います。市内の沿線住民から、「工事車両走行による振動で家は大丈夫か、家屋調査や補償はどうなるのか」と具体的な疑問があがっているんです。しかし、JR東海は「規制の対象外」だと取り合わない、家屋調査については回答すらない、ではどこへ持っていけばいいのか。

 現行規制の限界という問題点もふまえて、住民の不安が解消されるよう、環境局としてどのような対応で具体的な改善を図っていくのか、再度お訊ねします。

 

苦情等には速やかに状況把握し、必要に応じて指導する(局長)

【環境局長】JR東海には、今後、本格的な工事を実施する段階において、工事説明会の開催などを通じて、住民からの意見や疑問点を把握し、施工方法や環境対策の内容をていねいに説明するなど、市民の理解と協力が得られるように十分に努めていただきたい。

 環境局も、環境影響評価の事後調査や法令等に基づく規制指導を通じて、リニア新幹線の建設工事に伴う騒音、振動等の影響を監視するとともに、周辺の住民の皆さんから苦情等が本市に寄せられたときは速やかに状況を把握し、必要に応じて指導するなど、市民の健康で快適な環境の確保に努める。

 

採算性や安全性への不安、深刻な環境影響、沿線住民との摩擦を広げるJR東海の企業姿勢など、問題を抱えたままの巨大開発をやめよ(意見)

【青木議員】環境局長のお答えには、周辺の住民の皆さんから苦情等が本市に寄せられたときは速やかに状況を把握し、必要に応じて指導するなど、市民の健康で快適な環境の確保に努める、とありましたが、これは市として当然のことです。

 そもそも、リニア計画は採算性や安全性への不安、深刻な環境影響、そして沿線住民との摩擦を広げるJR東海の企業姿勢など、憂慮すべき問題をたくさん抱えたままです。そのようなリニアに過大な期待をかけ、東京に負けないナゴヤづくりのために関連巨大開発に市民の税金を費やすことが果たして自治体の責任ある判断と言えるのか、市民の要求に応えるものであるのか、冷静に検討していく必要があるということを申しあげておきます。

 

リニア中央新幹線は全幹法の目的である全国的な幹線鉄道網とは言い難い

【青木議員】次に、まちづくり公社の用地取得あっせんの問題ですが、名古屋市はリニアの沿線住民と最前線で向きあう仕事までJR東海の肩代わりをしようとしています。市の職員を80人も削減しながら、リニア建設にかかる用地取得のために職員を30人派遣し、立ち退き交渉に当たらせる、まるで企業の下請けさながらです。市は全国新幹線鉄道整備法、いわゆる「全幹法」の13条にある「地方公共団体は、土地の取得のあっせんなど措置を講ずるよう努めるものとする」を理由にしますが、そもそも全幹法第1条の目的には「新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図る」とあり、このリニアが全国的な幹線鉄道網を形成するものとは言い難く、同法の適用さえ疑問を持たざるをえません。

そこで、リニアに係る全幹法の適用について、住宅都市局長の認識をお聞かせください。

 

計画当初から一貫して全幹法に基づいて事業が進められている(局長)

【住宅都市局長】中央新幹線は全国新幹線鉄道整備法に基づき、昭和48年の基本計画の決定、平成23年の整備計画の決定を経て、昨年10月に工事実施計画の認可がされており、計画当初から一貫して同法に基づいて、国土交通大臣の決定・認可のもと、事業が進められている。

 

リニアにしたのは平成23年。全国を有機的に連結できなくなった以上、全幹法に合致しない(意見)

【青木議員】確かに中央新幹線計画は東京・大阪間となっていますが、走行方法をリニアと決定したのは平成23年であり、全幹法の第3条にある「全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結する」目的に矛盾しております。よって、名古屋市が用地取得あっせんを協力する根拠にはならないと理解するものです。

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