2012年2月定例会

さはし あこ議員の個人質問① 天守閣木造再建は、いま、必要ない(2012年3月5日)

いまは必要ない名古屋城天守閣木造再建

木造復元にかかる様々な課題は容易に解決できるものではない
【さはし議員】先日、名古屋市主催による『名古屋城の将来を語る市民大討論会』が開かれ、私も参加いたしました。天守閣の木造再建については、再建を望む意見の一方で、様々な観点から疑問の声が出されました。例えば、「まずは、現在の天守閣の評価をしたうえで考えるべき」「焼失した天守閣をなぜコンクリートで再建したか、当時の名古屋市民の思いをどうするのか」「現在の天守閣であっても50年がたち価値あるものとなってきている、この価値を超えるものであるかの議論・検証が必要」などという意見です。
 また、市当局や有識者の方からは、木造で復元する場合の課題が示されました。それは、木造建築のため火災に弱く、避難時の安全確保に問題があるとともに、耐震性について正確に判断するには様々な検討、計算・解析が必要になるなど、火災や地震に対する安全性という問題、急な階段や段差が多く、お年寄りや体の不自由な方は見物して回ることができないというバリアフリーの問題、使用されていた直径60cm以上の木曽ヒノキは年に数本しか出ないなど木材調達の問題などです。
 さらに、莫大な建設費がかかるという問題があります。更地に再建するだけでも342億円を要するとの試算が示されていますが、天守台の石垣が、戦災によってもろくなっている可能性があり、はらみのある北面などを積み直す必要もあることから、天守台にも手を加えることになれば、さらに数十億円もの費用がかかるとお聞きしました。
 そこで、おたずねします。名古屋城天守閣の木造復元にかかる様々な課題については、私は、容易に解決できるものではないと考えますが、市民経済局長はどのようにお考えか、お答えください。
必ずしも解決できない課題ではない
【市民経済局長】木造復元には、建築基準法、消防法上、木材の調達など様々な課題があるが、どのような復元をするかによって、必ずしも解決できない課題ではない。
大改修にかかる莫大な費用も名古屋市民に残すことになる
【さはし議員】河村市長は、「天守閣を本物で復元して、400年大事にすれば、また国宝になるんじゃないか」と夢を語っておられます。しかし、巨大な木造建築物を400年維持するには、大変な費用がかかります。国宝の姫路城は、400年経ちましたが、昭和30年代に解体復元の大修理が行われ、現在は、大天守の保1存修理工事が実施されています。立派な木造天守閣を後世に残すのと引き換えに、大改修にかかる莫大な費用も名古屋市民に残すことになると思いますが、いかがお考えですか、お答え下さい。
姫路城の大改修は45年ぶり、約28億円
【市民経済局長】一定期間を経過した段階で改修が必要で、一定の費用がかかる。姫路城は、現在、45年ぶりに漆喰壁の塗り直しや、瓦の全面葺き直し等の「平成の大改修」を実施しており、この改修には約28億円の費用がかかる。
天守閣の木造再建よりも、名勝二之丸庭園などを優先せよ
【さはし議員】地下鉄市役所駅にある『名古屋城内郭絵図』(なごやじょうないかくえず)は「名古屋城が最も整備された時代の内郭全容を復元したもの」であり、そこに記載されている二の丸庭園は、愛知県内で唯一の名勝庭園であります。本丸御殿や天守閣へは、二の丸庭園の入り口を通って行くことになり、徳川城主が、毎日眺めていた素晴らしい庭園を整備して、観光客のみなさんにもっと見ていただきたいと思います。
 私は、天守閣の木造再建よりも、名勝二の丸庭園などの整備を優先して進めるべきだと考えますが、いかがでしょうか、お答えください。
順次進めてまいりたい
【市民経済局長】現在、西南隅櫓の修復整備や石垣の修復整備を実施している。二之丸庭園は本年度より整備調査を行っており、順次、進めてたい。
木造再建か、今の耐震改修か、どちらだ(再質問)
【さはし議員】市民経済局長は、木造復元については、「どのような復元をするかによって、必ずしも解決できない課題ではないと考えている」と答弁されました。しかし、市長は本物で復元すると言っているのです。
 直径60センチ以上もする巨木の木曽ヒノキを、創建当時と同様に調達できるのか、バリアフリーが常識となっている今日の時代に、身体の不自由な高齢者や障がい者の方たちが現物できない施設を作っていいのか。私は、本物の復元は容易ではないと考えます。
 さて、当局は、現在のコンクリートの天守閣の耐震改修について調査されてきました。市民大討論会で配布された資料では、天守閣の耐震改修について、工期3年で総工費29億円、バリアフリーのためにエレベーター1基を7階まで延伸するという考えが示されました。東海地震や3連動地震などの巨大地震に備えて、天守閣の耐震改修は急がなければならないと思います。 まず、お聞きかせいただきたいのですが、現在の天守閣の耐廣改修は、いつごろから実施される予定ですか。
 お城がある都市の市長さんは、どうも天守閣を木造で復元することを夢見るようです。小田原市では、小田原城の天守閣の耐震改修について、検討委員会を設置して検討を進めていたところ、市長が突然、天守閣の木造再建を言い出したそうです。しかし、検討委員会では、天守閣の木造再建については、長い視野でその可能性を探りつつ、現在の天守閣は必要最低限の安全を確保するための耐震補強をする、という方向で議論を進めるべきとの考えが示されたそうです。
 一方、大阪城の天守閣については、平成7年から9年にかけて、耐震改修をともなう大規模な改修が実施されており、木造で再建する考えは、さらさらないようです。
 そこで、伺いますが、天守閣の木造再建か、今ある天守閣の耐震改修か、どちらに進むべきか、方向性を決める必要があると思いますが、どちらに進まれるのかお答えください。
市民にわかりやすく説明しながら意見を伺いたい
【市民経済局長】本丸御殿復元工事は平成30年に完了の予定です。天守閣を整備するにあたっては、天守閣内に保存・保管されている重要文化財である障壁画などの収蔵・展示物を移転する必要があるとともに、入場者の安全な観覧や工事ヤードの確保について配慮する必要がある。
 市長の熱い思いがあり、市民にも賛同する意見がある。新マニフェスにも掲げられている天守閣の木造復元は、まずは、課題の内容や解決策を整理し、市民にもわかりやすく説明しながら、意見を伺いたい。
本丸御殿の復元工事完了後には耐震改修に着手するのか(再々質問)
【さはし議員】天守閣の耐震改修と木造復元の方向性についてお伺いしましたが、あいまいな答弁でした。ただいまの答弁にあった「天守閣の整備」というのは、本丸御殿の復元工事が完了してから、耐震改修などの工事に着手するという理解でいいですか。明確にお答えください。
木造天守閣の復元に当たり、課題に対する解決策を整理する
【市民経済局長】木造天守閣の復元に当たり、いろんな課題がある。そうした課題に対する解決策を整理し、市民にもわかりやすく説明しながら、意見を伺ってまいりたい。
子どもたちに「天守閣より防波堤がほしかった」と、悲しませないように(意見)
【さはし議員】私は、天守閣の木造再建は急ぐ必要はないと考えています。木造再建よりも、現在の天守閣の耐震改修を優先すべきであり、二の丸庭園の整備を急ぐべきです。 現在の天守閣が再建された昭和34年には、伊勢湾台風が起きています。その当時の中学生が書いた作文で、「天守閣より堤防がほしい」というものがあったそうです。昨年、東日本大震災が起こり、東海地方でも30年以内に巨大地震が起こる可能性がきわめて高く、地震対策の強化が急がれています。伊勢湾台風の時の子供たちのように、今の子どもたちに「天守閣より防波堤がほしかった」と、悲しませないようにして下さい。

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