2024年2月議会

田口一登議員の予算反対討論(2024年3月21日) 「金持ち減税」やめて、値上げストップ、生活支援に

 私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して、2024年度一般会計予算に反対する立場から討論を行います。

3つの保険料値上げ

 反対する理由の第1は、物価高騰で苦しんでいる市民に〝3つの保険料値上げ〟で負担増を強いる予算となっているからです。

 消費者物価指数は今年1月まで29か月連続で上昇し、実質賃金は前年同月比で、22か月連続のマイナスです。年金支給額は、2022年度は引き下げられ、23年度と24年度は物価上昇を下回る実質的な引き下げとなっています。株価は史上最高値を更新していますが、市民は生活苦に直面しているのです。ここに〝3つの保険料値上げ〟がのしかかります。

 一つは、国民健康保険料です。平均保険料は今年度の年額約1万円値上げに続いて、来年度は7492円の値上げになります。値上げの要因の一つは、「赤字分」の繰入金の解消を求める国と愛知県からの圧力に屈して、愛知県に納める保険料の賦課率を今年度から4年間で2%引き上げることによるものです。しかし、「赤字」とされる決算補填等目的の繰入金は、2020年度決算からゼロになっており、保険料賦課率を引き上げる必要はありません。

 二つは、介護保険料です。基準額は年額3696円の値上げで、政令指定都市では4番目に高い保険料となります。保険料の段階区分を15段階から18段階に増やすことによって、応能負担は強化されますが、それでも値上げとなる低所得者については、一般会計から繰り入れてでも据え置くべきです。

 三つは、後期高齢者医療保険料です。平均保険料が年額1万2264円値上げされます。後期高齢者医療の保険料は、高齢者人口と医療給付費の増加にともなって値上げが繰り返されてきましたが、加えて今回は、出産育児一時金の拡充分の一部を後期高齢者に負担させる〝値上げの上乗せ〟があります。子育て支援の財源を高齢者の負担増で賄うのは邪道だと言わなければなりません。

 〝3つの保険料値上げ〟で負担増がとりわけ大きいのが、物価高騰で年金収入が目減りしている高齢者世帯です。収入が年金だけで年間200万円の高齢単身世帯では、74歳までの方は国民健康保険料が年間6230円、介護保険料が4060円の値上げで、合わせて1万290円の負担増です。75歳以上の方は後期高齢者医療保険料が7200円、介護保険料が4060円の値上げで、合わせて1万1260円の負担増になります。

 河村市長は「減税」で市民の負担を減らしていると言いますが、この高齢単身世帯の場合の市民税減税額は1300円ですから、1万円を超える保険料負担増にたいしては焼け石に水であります。物価高騰で苦しむ市民に追い打ちをかける保険料値上げは中止するよう求めます。

中断している天守閣木造化

 反対する理由の第2は、行き詰まっている不要不急の大型事業を推進するからです。

 名古屋城天守閣の木造復元は、昨年6月に開かれたバリアフリー市民討論会の差別発言問題の検証作業で中断しています。今議会の直前に検証委員会が中間報告を提出し、河村市長は総務環境委員会における所管事務調査で、市民討論会の閉会あいさつでの「熱いトークもあってよかった」という発言については、「不適切」だったと認めましたが、市長の口からは根本的な反省の弁は聞かれませんでした。 検証委員会の検証作業は来年度も続けられます。予算案には、木造復元の実施設計や天守閣昇降手段の予算が計上されていますが、検証作業が終了するまでは執行することができない予算を計上することは認められません。天守閣木造化は中止し、現天守閣の耐震改修へと舵を切り替えるべきです。

 中部国際空港の2本目滑走路の整備は設計段階へと進みますが、ここにきて事業の名称が第2滑走路整備=滑走路増設から代替滑走路整備に変更されました。どうしてか。滑走路整備の目的は、「現滑走路の大規模補修への対応」と「完全24時間運用の実現」であり、航空需要の増加への対応、すなわち滑走路処理能力の向上ではありません。中部国際空港の需要はコロナ禍による激減からの回復が遅れており、現在進められている環境アセスメントでは需要予測が示されていません。需要予測が立てられず、滑走路処理能力の向上を目的とするものではないことから、滑走路の増設とは呼べなくなったと言わざるをえません。それにもかかわらず、2本での運用をめざして滑走路整備を進めることは容認できません。

 リニア新幹線の開業を理由に、名古屋高速道路のインター・ジャンクションの追加整備が進められていますが、JR東海はリニア新幹線の品川~名古屋間の2027年開業を公式に断念し、「2027年以降」として開業時期を明示しておらず、急いで整備する根拠がなくなりました。

 新洲崎ジャンクションの出入口追加工事の事業費は、基本設計段階の2.5倍に膨れ上がりました。黄金インターの出入口追加整備と丸田町ジャンクションの渡り線整備でも同様の事態を招きかねません。黄金インターの出入口追加整備では、立ち退きを余儀なくされる住民などから不安の声が上がり、丸田町ジャンクションの渡り線整備では、吹上方面でUターンする代替案への変更を求める声が上がっています。「住民の理解と納得」が得られていない名古屋高速道路の追加整備は中止すべきであります。

 この他、笹島交差点から「ささしまライブ24地区」に至る西側歩道を拡幅したにもかかわらず、基本設計の予算が計上された笹島巨大地下通路建設、および工業用水道は水が余っていて、地下水利用の代替水源の確保という出資目的が成り立たなくなっている木曽川水系連絡導水路事業に係る工業用水道事業会計への出資もやめるべきです。

減税額トップは429万円

 反対する理由の第3は、「金持ち減税」はやめて、約100億円の財源を福祉や子育て支援に活用するべきだからです。

 そもそも税・財政が果たすべき役割は、福祉や教育をはじめ、市民の暮らしや営業を守ることと、能力に応じた税制や社会保障制度による所得の再分配で、格差の是正をはかることにあります。ところが、河村市長の市民税減税は、今年度の減税額がトップの方は429万円も減税されるなど、富裕層優遇の減税であり、河村市長自身が「誰もほめてくれない」と嘆くほど、庶民には恩恵の実感が乏しい減税です。

 来年度は、この「減税」によって約100億円の減収が見込まれており、その財源づくりのために、公立保育園の民営化や学校給食調理業務などの民間委託が進められます。しかし、市が公表している『行財政改革の取り組み』では、来年度は職員定員の見直しによる削減額が示されていません。委託化などによる人件費の削減は、委託する業務とその範囲が限られてきていることから、限界に近づきつつあるのです。

 このまま「金持ち減税」を続ければ、財源不足によって福祉や暮らしのための施策の充実を図ることができないばかりか、市民サービスの低下をもたらすことは、火を見るよりも明らかです。

 日本共産党市議団は、「金持ち減税」はやめて、約100億円の財源を確保し、3つの保険料値上げによる負担増を抑制するとともに、小学校給食費の無償化をはじめとする暮らしを支える施策に振り向けることを求める予算組み替え動議を提出しました。この方向で市政運営を転換するよう求めるものであります。

市長特別秘書は廃止すべき

第4に、反対するいくつかの個別の事業について理由を申し上げます。

 一つは、市長特別秘書です。市長特別秘書の職務の範囲は、減税日本ナゴヤの代表質問に対する市長答弁を踏まえて、本市では公務に限定されています。ところが、名古屋城天守閣木造復元の市民説明会の動員に関わって、公務から逸脱したと思われる不適切な行為があったことが発覚し、職務執行に対する市民の疑惑や不信を招く事態が生じました。

 市長特別秘書の公務と公務外の区別については、市長と特別秘書との間で個別に整理して対応していることから、線引きが曖昧であり、公務から逸脱したと疑われる行為が避けられないという制度上の瑕疵が浮き彫りになりました。しかも、あえて設置する必要性も認められないことから、市長特別秘書は廃止すべきであります。

名古屋市が婚活イベント開催

 二つは、「出会いや結婚の希望をかなえる支援」、いわゆる官製婚活イベントです。家族や性のかたちなど価値観が多様化しているもとで、行政が行う婚活支援は「結婚」という価値観を押し付けるものになりかねません。この事業は、異性間のみを対象として実施するものであり、多様な生き方の尊重という本市の行政理念と齟齬をきたしかねません。少子化対策のために行政が行うべきことは、子育て支援の拡充や奨学金の返還支援など、結婚して子どもを持ちたいと思う人たちが、安心して子どもを産み、育てられる環境の整備であります。

武力攻撃を想定した訓練の実施

 三つは、国民保護に係る研修・訓練です。弾道ミサイル攻撃など武力攻撃などを想定して、市対策本部の図上訓練が本市では初めて実施されます。北朝鮮が先日、弾道ミサイルを発射しましたが、これは、北朝鮮に対して弾道ミサイル技術を使った発射などを禁じた国連安保理決議違反であり、日本共産党は強く非難し、抗議するものです。しかしながら、武力攻撃を想定した訓練は、市民の不安を煽り、軍備拡大が必要との世論を誘導するものになりかねません。国民保護というのなら、戦争を起こさせないための憲法9条を生かした外交努力こそ必要であります。

 最後に、能登半島地震で被災されたみなさんが、能登で希望を持って生きていくことができるよう、本市が復旧・復興への支援に力を尽くすとともに、南海トラフ巨大地震に備えた本市の地震対策のいっそうの強化を求めて、討論を終わります。

キーワード: