2024年2月議会

岡田ゆき子議員の個人質問(2024年3月6日) 能登半島地震の被害状況を踏まえた災害対策について

【岡田議員】能登半島地震で亡くなられた方々に心より哀悼の意を表し、被災された方々にお見舞い申し上げます。地震発災から2カ月が経過しました。電気・ガスはほぼ復旧していますが、断水はいまだ続いており、1万人を超る方々が避難生活をされています。避難生活は一刻も早く、解消される必要があります。しかし、やむなく続く場合でも、安心して生活できる環境を作ることは重要です。能登半島地震の被害状況を踏まえた災害対策について、4点質問します。

避難所生活で直面する女性特有の困難さ

【岡田議員】災害時には様々な困難に直面しますが、男性と女性ではその困難さの質や度合いに大きな違いがあります。過去の災害においても、高齢者、障害者とともに、乳幼児や妊産婦、シングル女性、中高生など若年女性が厳しい現状に置かれていたと多く報告がされていいます。

防災会議の女性構成比はわずか17%

 そうした問題は、災害対策において、意思決定過程で、女性の参画が十分確保されず、男女のニーズの違いが配慮されていないことなど、課題があるとして、2020年に内閣府男女共同参画局は「災害対応力を強化する女性の視点男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」を策定しました。地方治体の地方防災会議の委員の任命等に女性の参画を広げること等を自治体にもとめていますが、名古屋市地域防災会議において、今年度の委員64名中、女性員は11名で女性比率は17%にとどまっています。

女性の視点に立った避難所運営 避難所レイアウトに専用スペースの配置を

【岡田議員】指定避難所運営においても同様です。名古屋市避難所マニュアの基本的な考え方では「男女平等参画の視点を取り入れた避難所つくりに取組みます」と、書かれており、災害対策委員に女性の参画が求められているですが、実際は女性比率が低いという課題があります。女性の視点に立った難所運営にするにはどうしたらよいでしょうか。

 女性視点に立つとはどういうことか。例えばトイレの場合、女性は着ている服や生理の手当て等で、男性よりもトイレに要する時間が長く、避難所で、女性トイレに長い列ができるため、トイレを我慢するということも起きました。そのため、内閣府のガイドラインには、「女性用トイレの数は、男性用よりも多くする」としています。人道対応に関する最低基準を定めたスフィアでは、トイレ箇所数の男女割合は1対3を推奨しています。汲み取り式や下水直結式の仮設トイレは、男女共用また介助用トイレとして使用されると考えると、校舎内の複数あるトイレを、男女1対3の割合で使用場所を決めておくこが、指定避難所での女性の特性を取り入れた対応になります。

 過去の災害で、避難所において、女性や子ども達が、人の目を気にして着がえができない、また、性暴力被害等、困難に直面しても、声を出すことをためらい、あきらめてしまう等、重大な問題が発生しました。その反省から、能半島地震では、地震発生当日に、内閣府が「避難所では、性被害・性暴力・Vが起こりやすいです」という注意喚起がされ、チラシが配布されました。

 今回の地震で、D‐MATとして医療支援に行かれた、性暴力救援センタ日赤なごや「なごみ」の山田浩史医師に話を伺いました。発生3週目に現地に行かれ、このようなポスター(左)も持参して、避難所を回られたといいます。避難所で被害を受けないためには、排泄や着替え、授乳等の場面で、回りを刺激しない、女性のプライバシーが保てる環境をつくっておくことは重要だと言われました。

 議場配布の資料をご覧ください。これは、群馬県のぐんま男女共同参画センターが避難所レイアウト例として作ったものです。過去の災害を教訓に、有識者や女性支援団体などとも一緒に、女性の視点を盛り込んだレイアウトを作り、自治体に配布されました。

 裏をご覧ください。前橋市の指定避難所 小学校の配置図です。前橋市防災危機管理課が、どの避難所にも共通する、女性視点で必要なスペースを列記しています。それらを防災担当、自治会、学校、民生委員さんで話し合い、これらすべてのスペースを、平面図に落とし込む作業をされました。前橋市の担当者は、避難所を見える化するまでは、時間はかかったが、すべての避難所でこの配置図を作り、地域のコミセンなどに張り出して、常にだれでも見てもらうようにしている、と言われました。

 名古屋市はどうでしょうか。避難所運営マニュアルには、女性の参画を促す記載やトイレを安全な場所に設置すること、安心して利用できる更衣室、物干しの設置や、間仕切りを利用した授乳、おむつ交換場所の確保」と書かれています。 

 名古屋市の小学校の避難所平面図です。ここまでは、あるけれど、それ以上の必要な配置は、各自主防災組織に任されており、避難所によっては女性の視点を取り入れた配置までは、考えきれていないところが多いのではないでしょうか。地元の災害対策委員長さんに、前橋市の事例を見てもらい、話を伺いました。避難所運営に女性視点で必要なスペースが具体的に示されれば、女性の視点を見落すことはないね、また役員が交代しても、引継ぎができるのでよいといわれます。

 女性や子ども等の特性に対応した避難所の見える化を具体的に進めるべきと考えます。防災危機管理局長の見解をお聞きします。

給食調理場と家庭科室を活用し 指定避難所であたたかい食事の提供を

【岡田議員】2点目に、避難所での食についてです。名古屋市は「発災後3日分」の食料を備蓄し、指定避難所、区役所などに分散保管しています。しかし、非常用食料は、緊急、一時的なものです。被災し、いのちは救われても、心身に大きなストレスを長期にわたり受ける、そのダメージは計り知れません。緊急避難から、その後続く避難生活で、いち早く、温かい食事が摂れる環境にすることは、体力維持、健康維持するうえで、重要です。

 市内の指定避難所のうち、小学校には、自校調理できる調理場があります。また、小・中学校には家庭科室もあります。教育委員会にお聞きしたところ、大規模改修や学校を新設する際、災害で都市ガスが供給停止することを想定し、都市ガスからプロパンガスに切り替えられる設備を取り入れてきたという事です。現在、261校中、121校で整備がされています。

 長期化を想定して、「温かい食事」を提供するため、指定避難所にある給食調理場や家庭科室を、避難時の利用スペースとして位置付けて、見える化を図るべきと考えます。防災危機管理局長の見解をお聞きします。

配置図にあらかじめ明示することは有効。他自治体の取組みも参考にしたい(局長)

【防災危機管理局長】

 「女性の視点に立った避難所運営の見える化」「給食調理場、家庭科室を活用した温かい食事の提供」という、円滑な避難所運営に関する質問をいただきましたので、2件一括で答弁させていただきます。

 本市のこれまでの女性視点を取り入れた避難所運営につきましては、東日本大震災など過去の災害の教訓を踏まえ、指定避難所運営マニュアルを改訂し、男性、女性ともに避難所運営に参画することや、男女別のトイレ設置に配慮すること、また、暴力や性被害を許さない環境づくり等について掲載し、概要版による周知に取り組んできたほか、女性目線を取り入れた防災啓発冊子を作成し、災害時に特有の困りごとを抱える女性に対し、避難所生活における備えについて促してきたところでございます。

 また、小学校をはじめ指定避難所となる施設内の使用可能スペースにつきましては、これまで地域住民、施設管理者、区役所職員の三者が事前に協議を行い、福祉スペースや感染症対策スペースなどの拡充に努め、指定避難所運営マニュアルの事前準備編に反映してきたところでございます。

 議員ご提案の、女性視点や温かい食事を提供するためのスペース等の具体的な見える化について、例えば女性専用のトイレや物干し場スペース、また、給食調理場及び家庭科室などの炊出しスペース等を避難所内に適切に確保し、レイアウト配置図にあらかじめ明示すべき事項として位置付けることは、今回の能登半島地震における避難所の状況を踏まえ、改めて有効であると認識したところであり、他自治体の取り組み事例も参考といたしまして、避難所運営に必要となる追加すべき機能・スペースを防災危機管理局として事項の整理をしてまいりたいと考えております。

 また、それらの事項について、個別の指定避難所における施設レイアウトは、配置図への見える化につきましては、地区防災カルテの話し合いの中で地域住民や学校等の施設管理者との協議を踏まえ、取り組みを進めてまいります。

住宅耐震化には大きな費用負担。 耐震改修工事助成額の引き上げを

【岡田議員】次に、木造住宅の耐震化促進について、住宅都市局長にお聞きします。能登半島地震では、多くの木造住宅が倒壊しました。地震による建物倒壊は、下敷きになるなど人的被害はもとより、倒壊による道路封鎖で、消火活動や支援物資の運搬等へ大きな影響を及ぼします。

 1家屋でも倒壊すれば、それが原因で火災が発生し、まち全体に被害が及ぶことになります。そのため、地域一帯の安全として耐震化を進める必要があります。名古屋市は、木造住宅の耐震化を促進するため、1981年以前の旧耐震基準の木造住宅の無料耐震診断、耐震改修工事助成、地域ぐるみ耐震化促進支援事業等進めてきました。

 名古屋市建築物耐震改修促進計画によれば、本市の木造住宅は、2020年度末の推計値で、 341,600戸あり、そのうち、耐震性が不十分とされる住宅は54,700戸で、約16パーセントは「倒壊する可能性がある」ことになります。

 耐震化が進まない最大の理由は、費用負担が重いことです。昨今、資材高騰が続いており、今の助成制度では、耐震改修が進まないことは明らかではないですか。助成額の引き上げを求めます。ご答弁ください。

非常に重要。様々な支援施策を組み合わせ更なる耐震化に努めたい(局長)

【住宅都市局長】

 議員ご指摘のとおり、診断から改修へ進まない要因として最も大きいのは、所有者の費用負担が大きいことです。このため、本市の木造住宅の耐震改修工事助成につきましては、平成15年度に上限額60万円で制度を創設して以降、上限額を順次引き上げる等の制度拡充をしており、現在は改修工事費用の5分の4以内で上限額最大100万円、非課税世帯の場合は最大150万円を助成しております。

 しかしながら、耐震性が不十分な木造住宅は、依然として数多く残っていることから、低価格で改修できる低コスト工法や改修個所数を減らすことができる精密診断設計の普及啓発に取り組むとともに、耐震改修ではなく除却・建替えを検討される方の後押しとなるよう、令和4年度から戸建て木造住宅の除却助成を開始したところでございます。

 能登半島地震の被害状況を鑑みても、木造住宅の耐震化は非常に重要な課題と捉えている。耐震改修工事助成だけでなく、除却・建替えの促進やシェルター等設置の助成、耐震相談員を無料で派遣する等、様々な支援施策を組み合わせ、引き続き更なる耐震化に努めてまいります。

被災者生活再建支援は復興の重要な課題

【岡田議員】最後に、被災者生活再建支援の拡充について、健康福祉局長にお伺いします。被災者の生活再建をどうするか、地域の復興にも関わる重要な課題です。能登半島地震では、これまでの被災者生活再建支援法の適用に加え、高齢者世帯等対象に最大600万円を支給する方針を明らかにしました。

 しかし、対象は、あくまでも家屋の「全壊、大規模半壊」等限定しており、中規模半壊に至らない、一部損壊では支給対象外となっています。国に対し、対象を広げることを求めると同時に、名古屋市独自の支援が必要だと考えます。答弁をお願いします。

「一部損壊」も生活に支障を生じる場合がある。引き続き国に求める(局長)

【健康福祉局長】

 被災した住宅につきましては、被害程度により、「全壊」、「半壊」、「一部損壊」に区分されているが、一方で被災者生活再建支援法の支援対象は、「全壊」「大規模な半壊」「中規模の半壊」となっておりますことから、議員ご指摘のとおり、中規模な半壊に至らない「一部損壊」は、被災者生活再建支援法の支援対象にはなっておりません。

 しかしながら、「一部損壊」においても、屋根の損壊等により、被災後の生活に支障を生じる場合はあるものと認識しています。

 本市では、これまでも国に対し、被災者の生活再建のため、支援制度の拡充を他の指定都市とともに継続して要望しておりますが、令和6年能登半島地震による被災自治体の被害状況や、他の自治体の意見を伺いながら、必要な支援策が行われるよう、引き続き要望してまいります。

 また、市独自の支援制度に関しましては、「全壊」、「半壊」、「床上浸水」等を対象とした市災害見舞金制度があり、本市において発災した場合は、こうした制度の適用があります。発災時においては、国制度に基づく被災者生活再建支援制度を基本としたうえで、必要に応じて拡充なども含めて検討を行うことになるものと考えているので、ご理解賜りたいと存じます。

必要なスペースの検討は、女性・男性が同数参画する場で議論すべき

耐震改修助成額は物価高騰分を含めて見直しを

【岡田議員】避難所運営の見える化について、答弁ではこうしたスペースを、まずは、防災危機管理局で具体的に列記、整理していくということで、理解しました。そうすると、あとは、地域において、施設平面図に必要なスペースが配置されれば、より運営がイメージしやすくなります。避難所は多様な方が利用します。コミセン等に掲示し、多くの市民が認識されれば、そもそも、不安で避難所に行くことに抵抗がある方々に安心して「避難してください」というメッセージになります。

 必要なスペース検討される際は、女性・男性が同数参画する場で議論していただくことをお願いしたいと思います。

 被災者生活再建については、他の政令市で一部損壊についての助成を行っているところがあります、引き続きこの後の委員会でも取り上げたいと思います。

 最後に、耐震改修工事助成について、低コスト工法の紹介がありましたが、価格の抑制はできても1~2割程度とお聞きしています。

 商店街で店舗含め2軒長屋を所有される方は、無料診断では、大規模改修が必要だと言われ、改修費負担の大きさに、改修の決断ができず、あきらめています。残る木造住宅の耐震化は非常に重要だと位置付けるのでしたら、改修の決断を後押しするために、物価高騰分を含めた助成額を再度検討していただくことを求め、すべての質問を終わります。

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