2023年9月議会

岡田ゆき子議員の議案質疑(20203年9月14日)市総合リハビリテーションセンター附属病院と福祉部門の運営が別法人に 医療と福祉の総合的・一体的・一貫性ある支援の継続を

相談→医療→訓練→社会復帰トータルで支援する県内唯一の施設

【岡田議員】通告に従い、第93号議案名古屋市総合リハビリテーションセンター条例の一部改正及び一般会計補正予算(総合リハビリテーションセンターの改修)について、健康福祉局長に質問します。

 本議案は、名古屋市総合リハビリテーションセンターの附属病院機能と介護事業を廃止する、2025年4月から附属病院の運営主体を名古屋市立大学へ変更するために必要となる工事を行うというものです。

 名古屋市総合リハビリテーションセンターは、障害のある方の、相談から医療、訓練を経て社会復帰に至るまでの総合的で一貫性のあるリハビリテーションを提供する県下唯一の施設です。1989年に事業を開始し、設立当初より名古屋市総合リハビリテーション事業団が事業を受託し、2005年からは指定管理者として継続されてきました。

 その総合リハビリテーションセンターについて、2020年の中間評価において、職員の欠員、診療収入の減少など、明らかとなった諸課題の解決に向け、学識経験者、医療福祉関係者、障害当事者を委員とする懇談会で、今後の総合リハビリテーションセンターの役割の検討が行われてきました。

 昨年11月に取りまとめられた同懇談会のまとめでは、センターの推進すべき役割として、附属病院の市立大学病院化を見据え、福祉部門と連携の上で、以下の3つを求めています。

 一つは、障害者リハビリテーションの中核施設として、地域リハビリの推進、地域共生社会の実現に貢献すること、

 二つ、障害者リハビリテーションに関する医療機能・人材育成の充実を図ること、

 三つ目は、相談から医療・訓練を経て社会復帰に至るまでの総合的・一体的・かつ一貫性のあるリハビリテーションを安定的・継続的に提供すること、ということです。

「高次脳機能障害、視覚障害からの社会復帰、職場復帰に大切な役割を担う」(局長)

【岡田議員】総合リハビリテーションセンター(右写真)が、特に、事故や病気などで高次機能障害、視覚障害者となった方を対象に、就労等社会復帰を目標に医療と福祉の総合的、一体的かつ一貫性のあるリハビリテーションを行ってきている、この役割の重要性について、どう評価していますか。

【健康福祉局長】総合リハビリテーションセンターは、身体障害を主要因とする障害のある方を対象に、相談から医療、訓練を経て社会復帰にいたるまで、総合的で一貫性のあるリハビリテーションを提供することを目的に設立した、医療・福祉の総合施設であり、特に高次脳機能障害や視覚障害を有する方に対し、医療から福祉の切れ目のない支援を行うことで早期の職業復帰を果たすなど、大切な役割を担っていると認識・評価しているところでございます。

なぜ病院だけ切り離すのか

【岡田議員】附属病院である医療と、障害者自立支援部門である福祉が一体となっているリハビリテーションセンターから、附属病院と障害者自立支援部門を切り離し、附属病院だけを市大化し、障害者自立支援部門は今まで通り事業団、という2つの法人に分けるのはなぜですか。お答えください。

【健康福祉局長】一方で、総合リハビリテーションセンターの開設から30年以上が経過し、取り巻く社会環境が様々に変化する中で、附属病院においては、医師などの確保や収支状況の改善など、運営上の課題も抱えていたことから、今後のあり方について検討してまいりました。こうした状況を踏まえ、附属病院につきましては、高い専門性を有した医療人を擁する研究・教育機関である市立大学に運営をお願いすることにより、高次脳機能障害や視覚障害を有する方のみならず、将来を見据えた新たな特色のある医療・リハビリの提供、先駆的・先進的な研究の推進、質の高い医療人の育成などを実現していただきたいと考えたところでございます。

どうなる医療・福祉の一体的連携

【岡田議員】全国でも、医療、自立支援訓練、復職を含めた社会復帰まで、一貫した総合的なリハビリテーションセンターを持っているのは、(私の調査では)国立障害者総合リハビリテーションセンター、埼玉県、兵庫県、横浜市、名古屋市の総合リハビリテーションセンターであり、他には、ここまで一貫した障害者リハビリテーションを提供している施設はない、全国でも貴重な実践の場であり、研究の場となっているのです。

 「総合的、一体的に一貫したリハビリテーション」とは、いったいどういうことなのか。先日、リハビリテーションセンターに出向き、事業団の方々から、支援の実際について説明を受けました。他の医療機関からリハセン附属病院に入院される方は、入所施設の利用も含めて社会復帰する見通しをもって、入院される方が多く、そのため、入院後の2週間に、病院スタッフと入所施設スタッフが一緒に入院時評価や目標設定をしているといわれました。入院中には、自立支援部門のスタッフが入院カンファレンスに入り、施設入所に向けた情報収集を行っています。また、同一法人内なので、電子カルテも病院と自立支援部門で共有しています。総合的、一体的な管理によって、患者さんの方針や実践記録などがカルテ上で共有等できる仕組みや、照会をかけなくても、医療・福祉の垣根なく、直接スタッフが部署に出向くことができることで、一貫したリハビリテーションによる支援ができているのだとわかりました。リハセンの特徴である視覚支援員は福祉部門に配置され、視覚障害者の歩行訓練等を行っていますが、障害者への指導の必要性から、福祉部門にとどまらず、医療部門の入院、外来へも縦横に行き来し、視覚障害者に対する訓練上の評価、医師への説明、情報共有を必要時に実施しています。

 今後、総合リハセンターから附属病院を切り離すことで、こうした、医療と福祉の一体的な連携はどうなっていくのですか。以上、一回目の質問を終わります。

「医療から福祉への切れ目のない支援を、地域に拡大する。高次脳機能・視覚障害者の支援強化に取り組む」(局長)

【局長】また福祉部門につきましては、引き続き、指定管理者により、これまで培ってきた経験やノウハウを活かし、特に高次脳機能障害や視覚障害を有する方の社会復帰に向けた、専門的かつ総合的な支援の充実を目指してまいります。医療部門と福祉部門で運営主体が別れることにはなりますが、従来はセンター内で行ってきた、医療から福祉への切れ目のない支援を地域に拡大できるよう、市立大学はもちろんのこと、地域の医療機関等とも連携し、これまで支援に繋がっていなかった高次脳機能障害や視覚障害のある方への支援の強化に取り組んでまいります。

職員や障害当事者の不安払しょくが不可欠

【岡田議員】高次脳機能障害や視覚障害の方等が早期の社会復帰を果たすうえで、医療と福祉の切れ目のない支援がセンターの大切な役割だと答弁されました。運営主体がかわっても、その役割は今後も引き継がれる、その上で、さらに地域に拡大していくということだと解釈したいと思いますが、しかし、これまでとは、前提条件がかわるわけですから、引き継いでいくといわれる支援をどう担保していくのか、これから市大や事業団と検討していくわけです。 条例改正にあたっては、これまで医療と福祉とが一体的に支援しきた、高次脳機能障害など障害者リハビリテーションがどう継続できるのかとの現場スタッフや障害当事者等の方の不安の払しょくされ、地域の医療機関への説明がされている等、合意形成が図られていなければなりません。有識者懇談会が求めた、リハセンの役割を安定的に・継続的にどう提供していくのか、引き続き、委員会で確認させていただくこととし、質疑を終わります。

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