2023年6月議会

田口一登議員の議案外質疑(2023年6月23日)問われる人権より「『本物復元』優先」市政ーー市民討論会 差別発言問題ーー

市長・市の対応に批判広がる「聞こえなかった」-市長は注意散漫  

【田口議員】通告に従い、質問します。

 6月3日に開催された名古屋城バリアフリーに関する市民討論会で、木造天守へのエレベーター設置を求める車いす利用の参加者に対し、一部の参加者から差別発言があり、その発言を主催した市側は制止しませんでした。本市の市政運営の指導理念とされている「名古屋市基本構想」では、まちづくりの基本理念として、「憲法の精神にもとづき、ひとりひとりの基本的人権がまもられ、健康で文化的な生活がいとなめる個性豊かなまち、名古屋の建設をめざす」とされ、「人間性の尊重」が掲げられています。障害のある参加者の人権を侵害した今回の事態は、人権の尊重という本市のまちづくりの基本理念に反するきわめて重大で深刻な問題であります。

 河村市長は先日の所信表明で、改めて謝罪されるとともに、市民討論会での市側の対応について検証を行い、再発防止に向けて取り組んでいくと表明されました。名古屋市をあげて検証作業を進める上で、私は、今回の差別発言に対する市長自身の認識が問われると思っています。そこで、市長に数点お尋ねします。

 1点目。6月5日の記者会見で市長は、身体的ハンディキャップへの差別表現については、「聞こえなかった」と弁明していますが、「聞こえなかった」のではなく、「聞き洩らした」のではないのですか。差別表現を発した参加者の前に別の参加者からも、エレベーター設置を求める車いす利用の参加者にたいして、「我慢しろよ」といった発言がありました。市長も「我慢しろよ」という発言は「覚えている」とおっしゃっていますので、この発言を「不適切な発言」と認識しておられたならば、その後の参加者の発言に耳を傾けて注意して聞かれたと思うのです。その場にいた市職員やマスメディアの記者には聞こえていたのですから。

 市長、あなたが障害のある参加者への差別表現を聞き洩らしたのはどうしてだとお考えですか。

【市長】まず当日参加されておられた一部の市民から、他の参加者に対して差別発言があった際、差別発言をした一人目の方には職員が駆けつけまして駆けつけましたが二人目の方を含め、発言の制止や注意喚起といった対応ができずと。発言を受けた発言を受けた方は大変心を痛められたと思います。

 また他の参加者の方や動画配信をご覧になった方、多くの方にも不快な思いを抱かせることになり、改めてお詫びを申し上げます。市側の対応についてしっかりと検証を行い再発防止に向けて全力で取り組んでまいります。

 発言者が、立て続けにお話をされる中で聞こえた部分聞こえなかった部分もあるけど、身体的ハンディキャップへの差別表現については、突然出た言葉であり、何を言われたのか聞き取れなかったことから聞こえなかったと申し上げたということでございます。

一連の発言も差別発言と認めるか? →「障害者差別である」(市長)

【田口議員】2 点目。車いす利用の参加者にたいする「ずうずうしい」「我慢しろよ」などの発言について健康福祉局は、障害者権利条約や障害者差別解消法、本市の障害者差別解消推進条例の理念に反した障害者への差別に当たると断定しています。障害者権利条約では、障害のある人にたいして合理的配慮をおこなわないことは差別であるとされ、障害者差別解消法では「合理的配慮の提供」が行政機関の義務とされています。そして、障害者差別解消推進条例では、差別解消の基本理念として、「差別する側と差別される側とに分け、相手方を一方的に非難し、又は制裁を加えようとするものであってはならず、当事者間の建設的な対話による相互理解を基本とする」と定めていることからも、「我慢しろよ」という発言はまぎれもなく差別に当たると考えます。

 そこで市長にお尋ねします。「我慢しろよ」という発言について市長は、6月5日の記者会見では「表現の自由」を盾に、差別に当たるかどうかの判断を避けられましたが、現時点ではどのようにお考えですか。障害のある人への配慮を欠いた差別的な発言だったという認識をお持ちですか。

【市長】今回の発言は差別かどうかの市長の認識ですけど、討論会において発言された「そちらの車椅子の方」という、障害のある方とない方を分け隔て、その上で、障害者がエレベーターの設置を求める意見を述べたことに対する、「わがまま、図々しい、我慢せえ」と、また身体的ハンディキャップへの差別表現を用いつつ、「生まれながらにして不平等があって平等、そんなお金勿体ないと思うけどね」といった一連の発言は、障害者基本法および障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の理念に反するものでありまして、障害者差別でございます。

「討論会」は重大な汚点をのこした

【田口議員】3点目。市長は、市民討論会の閉会あいさつで、「熱いトークもありまして、なかなかよかったですね」と述べておられます。障害のある人への身体的ハンディキャップへの差別表現など差別的な発言が相次いだにもかかわらず、「なかなかよかった」と肯定的に評価された。市民討論会での河村市長の閉会あいさつは、主催者である名古屋市の市長としてのあいさつですから、「熱いトークもあって、なかなかよかった」という発言は名古屋市として障害者への差別発言を無視し、容認したことになるのではないですか。

【市長】「なかなかよかった」という発言は、差別発言以外の参加者からの意見に対しまして、8 名意見を言っておられます。2 人、そのうちお 2 人がまあ、差別発言があったということですが、それは建設的な意見もございまして、わざわざあの会に出てきていただいたということでですね、無作為抽出の方ばっかりですから。

 まあそういう表現を用いたと、閉会に当たってということでございます。わざわざ出てきていただいたということで感謝の意を話したことでありまして、差別発言を容認するものでは全くありません。

【田口議員】市民討論会の動画DVDを当局からお借りして、私も拝見させていただきました。市長が「聞き取れなかった」という差別表現もはっきり聞き取れました。市民討論会の場での市長の注意が散漫だったと指摘させていただきます。市民討論会では、車いす利用の参加者が、「今までの天守閣にあったエレベーターがなくなるのは、障害者は排除されると感じる」などと発言された後に、木造天守にエレベーターは必要ないという立場の方が、「どこまで図々しいのという話で、お前が我慢せよ」と発言されたとき、車いす利用の方だと思いますが、肉声で反論されているのが聞こえました。続いて発言された方が、差別表現を用いながら「生まれながらにして、不平等があって平等」と言って、「エレベーターは必要ない」と発言されたときに、会場から拍手が起きていました。こうしたやり取りは、「熱いトーク」などとは断じて言えません。「我慢しろよ」などの発言については、市長も障害者差別だと答弁されました。閉会あいさつでの「なかなかよかった」という発言については、「差別発言を容認するものではない」とおっしゃった。だったら、今回の市民討論会をどのように評価されているのか伺いたい。差別表現のみならず、障害のある参加者への差別的な発言が相次いだ今回の市民討論会は、「なかなかよかった」のではなくて、「差別を助長させた」という評価になるのではないですか。お答えください。

【市長】さきほどもちょっと申し上げましたけども、今の市民討論会への評価ですが、発言いただいた方 8 名でございまして、2 名の発言は差別発言を含む不適切だった、いうことですけどあとの方は建設的で率直な意見を賜ることができたということでございます。

 今回の場合、全員 5000 人だったかな、5000 人に無作為抽出を行ってその中の任意で36 名の方が自らの意思で参加して、ご意見を承るということですので、僕からそりゃ、本当の市民の皆さんの発言を、あんときはフラットに伺えるということで、大変参考になる。来ていただいた方は非常にありがたい方だと、一切作為はありませんので、そこで。このような発言が出ることについて、あのときにもすぐ言いましたけど、市民の皆さんの自由な意見を伺うと、全く作為なしにですね。

 その後途中でいっぺんもっと広く、せっかくやるんだから市民の皆さんに来ていただこうか、という話もあったんだけど、僕はそれは止めたんですよ。それはまずいと。

 せっかく無作為抽出をやって、その中で 36 名お見えになるんだから、その人たちの意見を聞こうということでやったということになりますと、やっぱりこういう不測の事態も発生する可能性がありますので、その時に言ったけど、車椅子の方にどう福祉というかエレベーターをどうするかいう話ですから、いわゆる可能性があったか、あるかもしれないという予測をしてですね、必要などういうかな準備をしておくと。

 始まる前に、差別に渡るような発言をしないように、皆さんお願いしますわというぐらいは、やっぱりしておくべきだったと、そういうふうに思っております。

【田口議員】はい最後におっしゃったね、市長が。それは当然のことです。そういう発言が出るだろうということを予測して準備をしておくというのは。それで私が聞いたのは、市民討論会の運営あの中身について、市長はどう評価されているのかを聞いたんです。2 人の方の発言は不適切だったけれども、他から建設的ないい発言が出たというふうに市長は答弁されましたけれども、この 2 人の方の差別発言によって、他の方の発言も帳消しになってしまったと思うんです。

 市長に改めてお尋ねしますけれども、今回の市民討論会の内容、運営、どう評価されていますか。市長には差別を助長させたという認識はお持ちでないようですけれども、人権の尊重という点で、不適切な運営があって汚点を残した、ということは市長も否定されないと思いますがいかがですか。

【市長】大変残念なことになったというふうに思っております。

 ただ、本当に無作為抽出をして自由に思うところを喋っていただきたいということは、こんな結果になってまって言うのも変な話ですけど、もっと注意をしながらですねから本当に自由に喋ってくださいということになると、市民の皆様ですから、それが。それが公務員だとか例えば僕だとか議員の皆さん、という場合は、一般的にそういう差別発言をしないようにと、自分にこう、まあ義務感というか、それは当然持った人が言うやつですけど、こんなこと言っちゃいかんですけど、本当に自由に発言してくださいと言った場合には、こういう危険があったと。

 ということで、今後必ずそういうような場合には、先ほど言いましたけど、事前にしかし表現の自由もありますから、これ重要なんで、注意喚起は、さしていただくという必要は、必ずあるなというふうに思っております。

 それと今回のことについてはしっかり検証するということが必要だとそういうふうに思っております。

「本物復元」優先の市長の態度が、差別発言の一因では

【田口議員】市が主催した集会で参加した市民の人権を侵害するということが、本来起きてはならないことが、起きてしまったと。しかもその場にいた市長も市の職員も、制止も、そして注意喚起もしなかったと。これはですね、本当に人権尊重のまちづくりという市政運営の観点からいって、重大な汚点を残したと私は思います。それではこうした差別発言を市民討論会で許してしまった原因はどこにあるのか。市による検証作業の中で究明していかれると思いますが、私は、河村市長が名古屋城の天守閣の本物復元にこだわって、障害者への配慮を軽視してきたことも原因の一つにあると考えています。

 観光文化交流局が 2018 年 5 月に示した木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針では、様々な工夫により、可能な限り上層階まで登ることができるよう目指し、現状よりも天守閣の素晴らしさや、眺望を楽しめることを保証するとされています。そして、昨年 12 月には、上層階まで登ることが可能な昇降技術が選定されました。当局は、障害のある人も上層階まで登れるようにしたいと考えておられたと思うんです。ところが市長は昨年 12 月の定例記者会見で、公募で選定した昇降技術について、「一、二階までなら、合理的配慮と言える」と発言された。合理的配慮というのは、最上階まで登れるようにすることじゃないですか。障害者への配慮よりも、本物復元を優先する市長のこうした態度が市民討論会において、市長の考えに同調されている市民の皆さんの感情を高ぶらせ、差別発言を誘発させたんじゃないでしょうか。

 市長。市民討論会で差別発言を許してしまったのは、市長が天守閣の本物復元、本物復元にこだわって、障害者への配慮を軽視してきた。ここに、これ全てではないですけれども、原因の一つがあると考えますが、いかがですか。

【田口議員】時間がありませんので、最後一言申し上げておきます。

 市長はですね、所信表明最後、所信表明で、市を上げて人権施策の推進に取り組んでいくと表明されました。そのためには、今回の差別発言問題をしっかりと検証するとともに、市長には自らの市政運営を謙虚に省みていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

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