2023年2月議会

江上博之議員の個人質疑(2023年2月24日)トリエンナーレ負担金は上告せず判決通りに支払いを

文化芸術基本法にも反し、裁判でも否定された。それでも上告するのか

【江上議員】あいちトリエンナーレ2019への負担金交付請求控訴事件の「訴えの提起に関する専決処分」について河村市長に質問します。
 控訴判決は市側の主張をことごとく否定し、負担金と遅延損害金の支出を求めています。それに対する上告理由書はまだ提出されていません。市長は、今回の催しが公共事業であるから市の裁量権があるとして、事業内容への「表現の自由に対する」介入ではないと主張しているようです。
 公共事業ということに市長はこだわり、市の裁量が認められるかどうかを争っているようですが、今回のような実行委員会形式であろうと、市が主催者の場合であろうと、文化芸術活動における公的事業は、文化芸術基本法が定める地方自治体の責務に沿って進めるべきです。文化芸術基本法は、「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行うものの自主性を尊重すること」を述べています。同法の基本理念では、「文化芸術に関する施策の推進にあたっては、文化芸術活動を行うものの創造性が十分に尊重される」ことが求められ、地方自治体の責務として、「基本理念にのっとる」ことが求められており、ここを基準に地方自治体の判断は求められています。表現の自由を守るため、名古屋市は、「金は出しても口は出さない」姿勢が求められています。
 ところが河村市長は、表現そのものに踏み込んで発言しています。「平和の少女像」や、「昭和天皇の肖像が映った映像作品」などに対して、「日本人の心を踏みにじるものだ」と言って個人的見解を述べています。それを、名古屋市の裁量の範囲と主張しています。
 そこで質問します。市長の発言は、文化芸術基本法にも反するものであり、裁判でも否定されています。それにもかかわらず、上告するのですか。

政治的に偏った展示への税金の使い方が問題(市長)

【市長】自分の金で自分の選んだところでやってください。判例では実行委員会がやっていると。どう考えても名古屋市というか愛知県というか、公共の主催と思われている。著しく政治的に偏った展示をされるのは認められんのじゃないか。表現の自由というよりも税金の使い方をどういう風に考えていくのだと。著しく政治的に偏った、反日展示といいますけど、そういう展示を税金でやるべきではない。実行委員会だから公共ではないといいますが、これは判例に反しておりまして、実行委員会でなく外郭団体がやった場合も、名古屋のデザイン博もそうだが、名古屋市がやったことになるという判例にも反すると、こういう主張している。憲法15条2項には、全公務員は全国民の代表者である、公正にやらないかんという規定がありまして、そういう任務に従って考えている。

議会に諮らず専決処分としたのは議会軽視ではないのか

【江上議員】一審判決は、昨年5月25日にだされ、14日間の猶予があるにもかかわらず、5月30日に控訴しました。専決処分でした。このことについて議会を軽視するものだと私は質問しました。市長は、6月22日の答弁で、裁判所は、「仮執行、強制執行を認めていて、そのまま時間がたち強制執行されてしまえば、市民に対して申し訳たたんじゃないですか。時間が誠にないということで専決処分させていただいた」と答弁しました。
 ところが、今回の控訴判決は、12月2日にだされ、上告を専決処分で、12月16日、期限いっぱいの14日後にされています。12月2日は、11月議会開会中でした。議会は、12月7日まで行われていました。にもかかわらず、議会延長も求めず、専決処分で上告しました。議会軽視ではありませんか。まさか、専決処分であれば、効力に影響がないことを承知していて行われたのではないでしょうね。
 そこで、質問します。今回、仮執行や強制執行の心配をされていないようです。なぜ、控訴と異なって、上告は、期限いっぱいでされたのか。違いを明らかにしてください。議会にかけなかった理由についてもお答えください。

負担金及び遅延損害金を支払った理由は

【江上議員】名古屋市は今年1月13日、負担金3,380万2,000円全額と、負担金の請求の支払い期限の翌日である2019年10月19日からの遅延損害金547万3,145円をあいちトリエンナーレ実行委員会に支払っています。遅延損害金が増えることを防ぐためのようです。
 そこで質問します。一審判決後にはこのような措置は取りませんでした。遅延損害金が増額となるのはわかっていました。なぜ、今回は支払うことになり、一審判決後には支払わなかったのですか。

上告審では判例違反などの要件が必要なので慎重に判断、遅延損害金は判決と市民感情を考慮し仮払いとして払った(市長)

【市長】上告には、民事訴訟法では判例違反とかの要件が定められており、慎重なうえに慎重に判断させていただいた。遅延損害金を支払ったことは、私どもは当然承服はできないが、1・2審でトリエンナーレが実行委員会であって公共事業ではないと、あっと驚くような判決をされたが、現実にあのような判決が出たことは重く受け止めないかん。市民感情も配慮させていただいて、仮払いということで。最高裁はちゃんと判断してくれると思いますけど。
1週間ほど前、小法廷で金沢の例も出て、公共的なものが一定の判断をすると公共が支持したように見えるということで、隣が土地のところで一定の表現をするにしても一定の配慮がいるという判決をしておりますので。

展示物に対する内容に踏み込む発言ではないのか(再質問)

【江上議員】答弁になっていませんね。表現の自由を尊重するとは言われませんでした。日本人の心を踏みにじるものだというのは名古屋市が展示物に対する内容に踏み込む発言であると認めますか。

表現の自由は当然尊重されるが、反日展示を公共でやるのはやめてくれ(市長)

【市長】表現の自由は当然尊重される。名古屋市とか愛知県が中心となってやることはやめてくれ、反日展示は、という方は大変多く見えます。そういう方の意見に耳を傾けて、全国民の奉仕者として、市長は行動せないかん。

芸術活動は多様な解釈がある。市民感情があるから負担金を払ったというが

【江上議員】判決にもありますが、芸術活動は多様な解釈がある、鑑賞者に不快感、嫌悪感を与えてもやむを得ないんだと。芸術活動とはそういうものだということが述べられています。
 市民感情ということを言われました。市民感情があるからお金を払ったんだと。その市民感情は、もうこんなことに税金を使うなと言っていると思いますが、どのような市民感情と受け止めているのか。

自分の金で自分の選択でどっかでやってほしい(市長)

【市長】いろいろな方がお見えになりますけど。自分の税金を使って、名古屋市民としてすんどる人間として市民税を払っとる人間として、そういうふうにはやってくれるなと、もしやるなら自分の金で自分の選択でどっかでやってほしいと、そういう方は大変に多いですよ。

遅延損害金540万円余は市長自身が払うべき。名古屋市の代表として見識ある行動を(意見)

【江上議員】いろいろと言っているが、納得できません。負担金は名古屋市が払うべきだと思いますが、遅延損害金540万円余は市長自身が払うべきだと思います。
 行政の長たる市長は、名古屋市の代表です。代表として見識ある行動をとることを求めて、あとは関係委員会での質疑にゆだねて終わります。

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