2022年6月議会

岡田ゆき子議員の個人質問(2022年6月24日)公立夜間中学の設置を

義務教育を受ける権利を保障するためにも夜間中学の設置を
                    岡田ゆき子議員

義務教育を受ける権利を保障する重要性をどう思うのか
【岡田議員】夜間中学の設置に向けた取組の推進について、教育次長に3点質問します。
 1点目、義務教育を受ける権利を保障することの重要性についてです。
 「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保に関する法律」(以下、教育機会確保法という)2017年2月に施行され、5年が経過しました。文部科学省は、設置促進に向けた支援を進め、現在、全国で40校が設置、今後設置予定、検討している自治体も含め、確実に広がっています。さらに、文部科学省は、今年6月1日に、都道府県、指定都市の教育委員会に対し、「夜間中学の設置・充実に向けた取組の一層の推進について」の事務連絡を出しました。
 今年5月27日に総務省統計局が公表した2020年国勢調査の「就学状態等の調査」で、初めて、未就学者又は最終卒業が小学校の方が合わせて約90万人に上るとの実態が明らかになりました。
 この事務連絡は、「夜間中学がますます重要な役割を果たし、その期待も高まって」くることから、国勢調査の結果も踏まえ、夜間中学の設置・充実に向けた取組の一層の推進を図るよう依頼するというものです。
 今回の国勢調査の結果を受け、一層必要となっている、義務教育を受けることができなかった方々等の教育機会の確保の重要性について認識をお聞きします。

教育の機会を提供することは重要(教育次長)
【教育次長】令和2年国勢調査により初めて未就学者等の人数が明らかになりましたが、教育委員会としては、不登校や外国籍である等の様々な事情により十分に教育を受けられなかった方々に教育の機会を提供することは大変重要な責務であると考えている。
 このため、昭和48年から愛知県と連携して、公益財団法人愛知県教育・スポーツ振興財団が実施する無料の中学夜間学級に、中学校の施設を貸与したり、担当教員を推薦したりするなどの協力をしている。

ニーズを把握する必要があるのではないか
【岡田議員】2点目に、公立夜間中学の利用のニーズはどれだけあるかということです。(パネル、議場配布の資料をご覧ください)資料1は、総務省が公表した国勢調査から、指定都市別未就学及び最終卒業が小学校の方の人数。大阪市、横浜市に次いで名古屋市は3番目に未就学、小学校卒業までの方が多く、1万568人いらっしゃいます。名古屋市は、この方々の存在を視野に入れた教育行政を講じていく必要があるということです。
 また、不登校や外国籍の人など、様々な事情で十分義務教育を受けられないまま中学校を卒業した方がいます。資料2は、名古屋市立小中学校でこの10年間の不登校となった方の人数を示したもの。年々増加しています。2012年に中3だった方は、25歳になっていることになります。教育機会確保法は、十分義務教育を受けられず卒業し、大人になった方も義務教育を学びなおす機会を講じることを地方公共団体の責務としています。
 資料3は、指定都市ごとに在留外国人の人数と夜間中学設置状況を表にしました。在留外国人はやはり大阪市、横浜市に次いで名古屋市が3番目に多い都市です。赤は設置、設置予定の自治体。名古屋市より在留外国人が少ない指定都市でも公立夜間中学が設置、また設置の検討がされています。
 在留外国人の方が、家族を日本に迎える場合、家族の中には、日本語を話す、読む、書くが全くできない場合が少なくありません。義務教育未就学、不登校だった方、外国籍の方で学びなおしを希望するすべての方が、名古屋で義務教育の機会を得られるようになっているのか、問われなければなりません。
 名古屋市内には、愛知県教育・スポーツ振興財団が実施する「中学夜間学級」があり、名古屋市は教員の派遣という形で協力しています。しかし、文科省はここについては「夜間中学」と位置付けていません。資料(右)を見てください。文科省作成の「夜間中学」を説明していますが、太字「一般的な中学校と夜間中学は区別されていない」つまり、日数も教職員の配置も含め、義務教育としての中学校の形式があるということです。
 潜在的に夜間中学入学を希望する人がどれだけいるのか、ニーズ調査に基づき実情を把握することは重要です。本市議会で、これまでも公立夜間中学の設置について取り上げられてきましたが、振興財団が運営する「中学夜間学級」が、希望する人の受け皿になっていることを理由に、夜間中学のニーズ調査についても「調査する考えはない」との答弁でした。
 文科省の新たな事務連絡の内容を踏まえ、現時点でニーズ調査の必要性をどう考えていますか、その考え方の根拠も合わせてお聞きします。

希望者は夜間学級に全員入学。夜間中学のニーズ調査は必要ない(教育次長)
【教育次長】中学夜間学級は、義務教育を修了していない方だけでなく、不登校等が理由で実質的に義務教育を十分に受けていないために学び直しを希望する方も、入学の対象としています。
 現在、同学級は入学資格を満たしている希望者の全員を受け入れている状況にあり、直ちに市立の夜間中学設置のニーズ調査を行う必要があるとは認識していない。

支援活動を行う民間の団体等との協議が必要ではないか
【岡田議員】3点目に、これまで、法的根拠がない中、学び直しを希望する方の受け皿としてボランティア等による「自主夜間中学」等が各地に作られました。教育機会確保法の基本指針では、改めて民間支援団体が「重要な学びの場となって」いるとし、地方公共団体が、地域の実情に応じて適切な措置を検討されるように促がすとしています。
 名古屋市内にも、自主夜間中学、日本語教室、フリースクール等があります。こうした所に参加される方の中には、公立夜間中学で学ぶことを希望する人が一定数存在していることも、文科省が行った実態調査で指摘されています。
 北区上飯田南町に自主夜間中学「はじめの一歩教室」あります。開設のきっかけは新型コロナ感染の第1波の中で、学びが止まってしまった生徒たちへの支援でしたが、国籍、年齢を問わず、様々な理由で義務教育が十分に受けられず、学びたいという人に学びの場を無償で提供しようと元教員や地域の団体・個人の協力で運営されています。
 毎週土曜日には終日教室が開かれ、設立当初は、生徒さん5人と支援者5人でしたが、口コミで広がり、2年経過した現在は、生徒さん75人、支援者は40人へ一気に増えました。様々な困難を抱えた生徒さんの学習支援を通じ、教科学習だけでなく、抱える社会背景も含め支えたいと、地域の関係機関とも連携しています。
 支援者から言われたのは、「義務教育を学びなおしたい人は、人間として生きていくために必要な教育を求めているということ。個々の生徒の学びのニーズは多様で、学力も学ぶペースも一人一人違う。寄り添う学習がとても大事だ。学齢期の学びとは違う、成人の学びなおしには難しさもあり、専門性も必要だ」ということです。そして、「ボランティアだからできることはある。しかし、義務教育の代わりはできないのです」と言われました。
 支援する側、学ぶ側のリアルな実態があります。こうした民間の支援団体、当事者との懇談、協議の場を設ける考えはありますか。

教育の機会を提供する支えになっており懇談の場を検討する(教育次長)
【教育次長】引き続き、中学夜間学級に最大限協力し、様々な事情で十分に教育を受けられなかった方々に対し、今後もかけがえのない教育の機会を提供します。
 民間団体等の活動は、学齢期の子どもも含め、中学校の教育課程を学びたいと希望する方々にとって大きな支えとなっており、大変意義のあることと認識しており、今後、懇談の場をもつことを検討していきます。

リアルな実情を知るためにも懇談を(意見)
【岡田議員】自主夜間中学や日本語教室などされている民間支援団体との懇談の場を持つことを検討するといっていただきました。やはり、リアルな実情を知っていただくことが必要だと思います。お願いしたいと思います。

就学の機会の提供その他必要な措置を講じるものという法の趣旨に反する(再質問)
【岡田議員】再質問を教育次長にいたします。教育機会確保法14条は、「地方公共団体は…就学の機会の提供その他必要な措置を講じるものとする」としています。答弁の中で、教育委員会は、振興財団の実施する夜間学級に「協力する」という立場です。これは法律の主旨と違うのではないですか。

就学の機会の提供をする役割を果たしている(教育次長)
【教育次長】中学夜間学級は、県と連携し協力を行い、同学級の修了者は市立中学校の卒業生として取り扱っている。様々な事情で十分に教育を受けられなかった方々の就学の機会の提供をする役割を果たしていると考える。

夜間学級は入学条件に中3程度の日本語レベルを要求しているため、学び直しを希望する人すべてに開かれていない。ニーズ調査すべき (再々質問)
【岡田議員】名古屋市が協力している中学夜間学級に入学している方の就学の機会は提供されているという答弁。法律は学び直しを希望する人すべてに措置を講じることも求めているのであって、この点では答えになっていない。
 ニーズ調査の必要性について、答弁で、振興財団の「中学夜間学級」が、入学資格を満たす希望者を全員受け入れている、だからニーズ調査は必要ないといわれる。この入学資格ですが、(財団のチラシ参照)全国の公立夜間中学にはない資格があります。「中学夜間学級」には「日本語で話す、聞く、書くことができること」という語学の要件を設けています。見学もしたが中学3年生レベルの教科書を使って授業をしていた。ある程度の日本語の話す、書く、聞くということができることが要件になっています。義務教育という位置づけであれば、日本語が全くできない方も、小学校低学年程度の読み書き、計算が精一杯の方も、公立夜間中学では希望者は無条件で受け入れるのです。ここが財団の実施するものと公立夜間中学との大きな違いの一つだと思います。
 振興財団の中学夜間学級というのは、文科省では自主夜間中学と位置づけていますから、入学に語学の要件を設けることや、中学3年生の教科書を中心に一斉授業を行うなど、独自の学習スタイルであっていいわけです。財団では日本語基礎学習のための、ステップアップスクールも受けられる仕組みもあります。こうした独自の在り方を否定するものではありません。ただ、語学力の要件を設けたことで、入学できるかどうか、ふるい分けることになってしまっているのが現状。
 現に、日本語がほとんど話せないフィリピンの方で「中学夜間学級」に入学ができなかった方がおられました。また、母子の多子世帯で、小学校低学年のころから母親のケアをして学校にまともに行けなかった女性は、義務教育を経験していません。ひらがなは読めたとしても、財団の夜間学級で提供される中学3年レベルの授業はハイレベルで、ついていけない人もいて、入学を諦めてしまう。そうした実態も踏まえ、学べていない人がどれだけいるのか、教育委員会として、公立夜間中学のニーズを把握する必要があるんじゃないですか。再度答弁求めます。

中学夜間学級が数年来定員に満たない状況なのでニーズ調査の予定はない(教育次長)
【教育次長】既存の中学夜間学級で、数年来定員に満たないという状況であり、直ちにニーズ調査をする予定はない。まずは中学夜間学級の広報の充実を図るなどを通して同学級に関する様々な声の把握に努めたい。

義務教育未就学又は小学校卒業の方、在留外国人が政令市で3番目に多い名古屋市。不登校で十分義務教育を受けられなかった方も増えている。名古屋市にも公立夜間中学を(意見)
【岡田議員】定員に満たないからニーズがないという、議場のやり取りだけではすれ違いを感じる。ニーズをしっかりつかんでいるかどうかを聞きたかったのに。実態を改めてきちんととらえる必要があると思います。支援団体との懇談の機会を設けて、財団の夜間学級で学べない人がいることを知っていただきたい。
 文科省が求めているのは、無条件で教育の機会を提供する公立夜間中学です。
 能力に応じて等しく教育を受ける権利は、基本的人権の重要な一つです。それを保障するのが国、地方公共団体の責務ですから、条件整備をする義務があるのです。
 資料に示したように、市内には、義務教育未就学又は小学校卒業までの方、在留外国人が政令市で3番目に多いという事実や不登校で十分義務教育を受けられなかった方が増えている中で、なぜ、名古屋市には公立夜間中学がないのですか、これは、全国の夜間中学を支援する団体からも注目されるほどだといいます。一人も取りこぼさない、セーフティーネットとして教育の機会が与えられるべきです。名古屋市はまだ、十分に応える段階に立っていないと認識すべきだと指摘します。
 早急に、設置に向けて検討を始めるよう強く求めて、質問を終わります。

キーワード: