2022年2月定例会

江上博之議員の議案質疑②(2022年2月25日)

名古屋城天守閣木造復元事業ーーー着工のめどがない天守閣木造復元は中止を 江上博之議員

債務負担行為の期間設定に「暫定的にR5年度」とある。過去に「暫定的に」とした例を示せ

【江上議員】天守閣実施設計と木材製材など木工事の債務負担行為の変更及びバリアフリーにかかる繰越についてです。
 この事業は技術提案交渉方式で進められています。この方式を取ったのは、高度な技術をもつ民間の力が必要、そして、工事期間の短縮につながることを理由にしてきました。2020年7月の天守閣完成を条件に公募しました。2017年5月9日に工事会社と基本協定を結び、公募条件に反して2年以上延長の2022年今年の12月天守閣完成。その後9年間かけて石垣の保全。事業費を最大でも400億円と名古屋市は答弁していたにもかかわらず、消費税込みで505億円となりました。ところが、昨年11月18日、当事者間で、完成期限を「暫定的に令和6年(2024年)3月31日))と覚書を取り交わしました。
 2018年の当初予算で、実施設計は、8億6千万円に債務負担行為2020年度までの7億4百万円。木工事は、22億1150万円に債務負担行為2022年度までの73億11百万円とした。その後、石垣調査があり、繰越などのうえ、今回の覚書を踏まえ、債務負担行為を「暫定的にR5年(2023年)度まで」と提案しています。
 そこで、以下、観光文化交流局長に質問します。
 技術提案交渉方式として今年12月31日の天守完成は不可能ですから、債務負担行為の変更でなく、きっぱりと事業中止し、見直すのが筋ではないでしょうか。ところが、実施設計と木工事の債務負担行為を「暫定的に令和5年度」とあります。債務負担行為の期間で名古屋市として「暫定的」とした過去の例をお示しください。

「暫定的に」の事例はないが、文言で表示した事例はある
【観光文化交流局長】今回の実施設計と木工事は、契約期限の変更を予定しているので、基本協定書に係る覚書の趣旨を踏まえ、「令和4年度から暫定的に令和5年度」という期間の設定をする。
 「暫定的に」とした事例は過去にないが、文言で表示した事例として、昭和60年度2月補正予算で議決した「国営尾張西部土地改良事業に係る費用の負担」において「工事完了の翌年度から17年間」という期間を設定したものがある。
 そういった事例や他都市の事例を参考にし、期間設定をした。

完成のめどがたたないから暫定的にしているだけ(意見)
【江上議員】名古屋城天守閣木造復元事業について、債務負担行為の期間で「暫定的に」とした事例は過去にないことが明らかになりました。文言で表示した事例といいますが、昭和60年度2月といえば、今から36年前の事例です。「工事完了の翌年度から」というのは、相手がいる事業だから出てきた表現でしょう。しかし、今回は、名古屋市だけで判断できる事例です。さらに工事完了がいつになるかわからない、工事が17年間と明確です。名古屋市の例は工事がいつ始まるいつ終わるかもわかりません。全く事例にならない事例。事例に当たらないものまで持ち出して、「暫定的に」が異例ではない、と言いたかったのでしょうが、今回の事例は「文言で表示した事例」も含めてないということです。

2023年3月までに全体計画を作成するというが有識者会議は確認したのか
【江上議員】今、石垣について2点間題があります。
 1点は、天守部分と石垣部分との接点の基礎構造をどうするのか。接点部にあたる穴倉石垣は、専門家も「ひどいことをやったなあ」と発するぐらい現天守建築時に壊されています。
 この部分の石垣をどうするのか、元に戻すのか、戻すならいつの時代にするのか。現状のままにするのか、これだけでも文化財として相当な議論になるのではないか。
 2点は、工事にあたって影響する天守内堀の御深井丸側「石垣が極めて申告な状況」と専門家から指摘されています。ここでも石垣保存方針決定後どう修復するか時間がかかると思われます。2点だけでもいつまでに解決できるかわかりません。
 昨年11月9日の経済水道委員会では、「2023年3月に(全体計画である)基本計画書を作成すると認識している」と河村市長は明言されました。来年の3月に全体計画ができるというのです。石垣部会など専門家会議にかけているのでしょうか。いつ、基本計画を来年3月までに作成すると専門家会議で確認したのかお答えください。

2021年12月の特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議で表明した
【観光文化交流局長】2022年度中に全体計画を取りまとめるという目標は、2021年12月の特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議で、当局から表明した。
 文化庁や有識者の指導、助言を得ながら必要な調査、検討を丁寧に進めつつ、十分な議論と合意形成を図りながら、目標達成に全力で取り組んでいく。

市の姿勢を表明しただけ。有識者の確認を得ていない(意見)
【江上議員】基本計画を来年3月までに作成すると名古屋市の姿勢を表明しただけであって、有識者の確認を得たわけではないことが明らかになりました。事業の見通しがないのに目標を表明し、その時になったら、弁解をする。そんなことの繰り返しはもうはやめたらどうでしょうか。

「少なくとも1階に昇降ができること」という、こんな条件でバリアフリー対策といえるのか
【江上議員】バリアフリーにかかる繰越について、実施設計がどうなるかもわからないのにバリアフリーの昇降技術の公募のために繰越ものです。
 公募は、大天守の「少なくとも1階に昇降ができることとし、可能な限り上層階まで登ることができること」としています。最上階に行けるようにするのがバリアフリーのはずです。なぜ、こんな条件でバリアフリー対策といえるのかお答えください。

1階までの昇降ができれば上層階への昇降の可能性がある
【観光文化交流局長】現天守閣は外部エレベーターで大天守1階に昇ることができるので、大天守の外内を問わず1階に昇降ができることを昇降技術の公募の要件の一つとしている。それができれば、上層階への昇降の可能性があると考え、「少なくとも」とした。この要件は最低基準で、「誰でも簡単に利用できる」や「より上層階まで昇ることができる」などを多く満たした技術が選定される。
 史実に忠実な復元とバリアフリーの両立を目指し、より上層階までバリアフリー対応ができる昇降技術を求めていく。

最上階までを条件にしたら応募者がいなくなることを避ける方便(意見)
【江上議員】バリアフリーの公募と言いながら最上階までの条件でないことがはっきりしました。市民から批判を受けて表現を変えたようですが、内容は変わりません。最上階までを条件にしたら応募者がいないということでしょうが、それは、バリアフリーができないことを示しているのであって、応募者がいるようにするために予算を繰り越すなどというのは理由になりません。
 このように強引に進めてきた木造復元事業は、事業を中止することです。あるものは活用し耐震改修し、ないものを復元して、名古屋城全体の整備を進めることを求めて質問を終わります。

キーワード: