名城天守閣等整備事業 2023年3月までに復元化基本計画策定の見通したたず    市民合意ない「木造復元」は断念を

 名古屋市議会経済水道委員会は11月9日、名古屋城天守閣等整備事業の進捗状況に関する所管事務調査を行ないました。江上博之議員は、出席した河村市長に対して、改めて木造復元計画の中止を迫りました。

●工事期限

 市は、本丸及び天守の「整備基本構想」をもとに、現天守の解体と木造復元を一体化した全体計画(基本計画書)を2023年3月末までにまとめる方針です。江上議員は、「構想」には着工や完成時期が記載されていないと指摘。「期限を決めて初めて計画になる。木造復元には維持費を含め1千億円もの費用がかかる以上、期限をはっきり示すべきだ」と求めました。

●石垣保全

 江上議員は、史跡としての価値が高い石垣の修復・保存について、「この夏に保全方針を発表すると市は言ってきたが、来年5月以降に延期したのはなぜか」と質問。市担当者は「文化庁より”宿題”が残っているため」と述べました。江上議員は「市石垣部会メンバーから、”ひどいことをやったなあ”と指摘されるほどの大問題。修復をどうすすめるのか」と質問。市担当者は「指摘の通り、現天守の再建時に人の手が入っている。不明な点が残っているので、調査を終えてから具体的に考えたい」と述べました。江上議員は御深井丸(おふけまる)側内堀石垣についても質問。市担当者は「戦災で劣化し文化庁から指摘されている。調査のうえ年内にとりまとめたい」と説明。外堀などの石垣も修復が必要と認めました。

●天守基礎構造

 全体計画には、新天守の重みを支える基礎構造の検討も盛り込まれる方針です。江上議員は、穴倉石垣を含めた石垣の保全をしっかり行うよう要請。市担当者は「指摘の通り、非常に丁寧な対策が必要。遺構保存を第一に、その上で木造復元を進めたい」と答弁。江上議員は「石垣のあり方もはっきりしないのに基礎構造の議論に入れるのか」と追及しました。

●バリアフリー対策

 基本計画書には、身体障害者や高齢者が上階へ移動できるバリアフリー対策方針も記載。新たな昇降技術を公募年明けに行なう方針ですが、公募条件は「1階まで昇ることを必須とし、可能な限り上層階まで昇ることができると」としています。市担当者は「応募者が減る可能性があるのでハードルを下げた」と説明。江上議員は「バリアフリーを求めている人は、最上階まで昇れることを求めている」と主張しました。

●基本協定

 木造復元事業は、設計から施工までを一括発注する「技術提案・交渉方式」で民間企業と基本協定を結んでいます。期限は来年12月末。江上議員は「この方式を採用したのは、多少お金が高くなっても短期間でできるから。期間がどうなるかもわからず建設費だけで、消費税抜きで460億円もかかり、メリットがなくなっている。損害賠償金を払ってでも契約を廃棄すべきだ」と求めました。

●全体構想

 名古屋城の周辺を含めた全体の構想について、市担当者は「尾張名古屋の歴史文化的な気づき、楽しさ、いこいの場を提供できるよう整備したい」と説明。江上議員が「そのために天守を木造化する必要はない。歴史文化を情報発信する施設を検討すべきではないか」と提案すると、「歴史文化の情報を発信する機能は必要」と回答しました。

●財源

 財源問題では「入場料収入だけでは無理。税金投入は必至。コロナ禍を受け、一層人の流れを制限する必要がでてきた。入場者数を再検討すべきでは」との指摘に、市担当者は「コロナで入場者が70%減少。コロナが落ち着けば入場者は増える」などと述べました。

●市民合意

 江上議員は4月の市長選での新聞世論調査に触れ、「木造復元に賛成は46.5%、反対も33、8%あった。市民合意は得ていない。事業をやめるべきだ」と求めました。途中から出席した河村市長は、「(4年前の)市長選で木造復元に反対という人にも勝ち、民意を得た」と主張。江上議員は「示したのは今年4月の世論調査だ。市民合意を得ていない事業はやめるべきだ」と重ねて求めました。

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