名港管理組合2021年3月議会 江上博之議員の一般質問  しゅんせつ土砂の中部国際空港沖への埋立 (2021年3月26日)

しゅんせつ土砂の中部国際空港沖公有水面への処分について

土砂の処分地を増設するにしても、なぜ最優先に空港島周辺となるのか

 

【江上議員】「しゅんせつ土砂の中部国際空港沖公有水面への処分について」質問します。
 この1年、新型コロナウイルス感染症の拡大で対応に追われました。そして、様々な問題の見直しが求められることになりました。港湾のあり方も変わるでしょう。世界的な貿易のあり方の見直しが行われ、それに伴う物流のあり方も変化します。パンデミックはこれからも起きることを想定し、いざという時のために、海外の安い人件費に頼る構造から国内産業、地元生産の必要性を位置付けないと私たちの命、暮らしが守れない心配が出てきました。
 そのような中で、今回、中部国際室港沖公有水面埋立事業に関連して港湾計画の変更が報告されています。
 しゅんせつ土砂約3,800万㎥を名古屋港外の中部国際空港沖公有水面埋立計画地に処分できるようにするものです。空港島西隣接地や南東部をしゅんせつ土砂処分地に加え、約290haを埋め立てる計画で、そのうち空港島西隣接地の中部国際空港第2滑走路予定地は15年ほどで埋め立てようというものです。コロナ感染症による交流人口のあり方に変化がみられる中、中部国際空港の第2滑走路の増設計画そのものの必要性が疑問であり、その拡張による自然への影響も大きなものがあります。 名古屋港のしゅんせつ土砂は、今年度見込みで、約60万㎥。そのうち、港の維持しゅんせつのために約15万㎥で、残り約45万㎥は、国直轄事業の整備する航路や泊地等に係るしゅんせつ土砂の処分です。しゅんせつ土砂処分の多くは、名古屋港大水探岸壁建設に伴う泊地や航路のしゅんせつによるものです。名古屋港のしゅんせつ土砂は、港の維持しゅんせつ以上に開発のためのしゅんせつが3倍近くになっている事実を見る必要があります。
 今回、「名古屋港港湾計画の軽易な変更について」「新たな土砂処分場の確保について」の報告がありました。2015年に改定された港湾計画からの変更をしようとするものです。現計画では、しゅんせつ土砂の処分として2027年ぐらいまでに4070万㎥を現ポートアイランドの周辺や南側、南5区第2期工事予定地域などを埋立予定地としています。今回の計画は、新たに名古屋港の外にある中部国際空港押公有水面に土砂約3800万㎥を埋め立てる提案です。
 そこで、企画調整室長に質問します。現港湾計画にあるポートアイランド周辺や南側、南5区第2期工事予定地で埋め立ては行われていません。現計画で埋め立ても行われていないにもかかわらず、なぜ、今回の処分地増設を行うのですか。また、なぜ、埋め立て処分地として空港島周辺を最優先で埋め立てするのですか。

新たな処分場を複数の候補地から技術的、経済的な観点で比較検討を行い、市民の意見や学識者の第三者委員会の助言を踏まえ、中部国際空港沖を選定(室長)
【企画調整室長】港湾計画は、港湾の開発、利用及び保全等の基本的な計画であり、埋立計画が必ずしも直ちに事業化できるというものではない。
 中部地方整備局は、港内の水域が既に航路や泊地などに利用されており、大規模な土砂処分場を計画する余地がないと判断し、新たな処分場を複数の候補地から技術的、経済的な観点で比較検討を行い、一般の方への意見募集や学識者で構成する第三者委員会の助言を踏まえ、中部国際空港沖を選定した。
 その後、事業化に向けた一連の手続きが整ったので、しゅん土砂を港外に処分する。

管理組合が基金を負担する理由と本組合以外の負担者の有無はどうか
【江上議員】この埋め立てに伴って、漁業関係者に拠出する処分場整備に係る基金負担金について質問します。提案では、公有水面埋立事業の実施により予測される漁業への影響を緩和し、将来にわたって安心して漁業を営むことができるよう、(公益財団)愛知県水産業振興基金及び(公益財団)三重県水産振興事業団へ基金を拠出する予算を計上しています。
 そこで、企画調整室長に質問します。この基金などに負担する理由は何ですか。管理組合が拠出しなければならない理由は何ですか。負担するのは、管理組合以外どこですか。

事業者である中部地方整備局が漁業補償を行い、港湾管理者として本組合が基金を拠出する。基金の拠出は本組合のみ(室長)
【企画調整室長】現在のしゅんせつ土砂処分場であるポートアイランドの受入容量が限界に近付いている中、港湾施設の建設・改良及び維持に伴い発生するしゅんせつ土砂の処分場を長期的・安定的に新たに確保することは、港湾法に定める港湾区域及び港湾施設を良好な状態に維持するために必要な港湾管理者の本来業務です。
 一方、本事業による埋立区域及びその周辺海域は、伊勢湾内でも良好な漁場となっており、早期に事業着手するためには、漁業者の理解と協力が不可欠です。
 そのため、隣接する中部国際空港の整備時、漁業者の理解を得るために漁業補償を行うとともに基金の拠出を行うことで事業を進めた事例を参考に、本組合と中部地方整備局は、愛知県及び三重県の漁業協同組合連合会と調整を重ね、事業者である中部地方整備局が漁業補償を行い、港湾管理者として本組合が基金を拠出することとした。
 基金を拠出するのは本組合のみです。

現在埋立中のポートアイランドと、第4ポートアイランドの遣いは(再質問)
【江上議員】企画調整室長は、第4ポートアイランドは事業化のめどが立っていないから埋立が行われないと回答がありました。では、埋め立てられている現ポートアイランドの区域は事業化されているということになります。ポートアイランドの現に埋め立てられている場所と、今回質問したポートアイランドの埋め立て予定地と事業化という点で何が違うのか区別がつきません。
 そこで、企画調整室長に質問します。この違いを説明してください。

現在埋め立てているポートアイランドは所定の手続きを経て処分場として活用中で、第4ポートアイランドは事業化に向けた手続きを行う状況にはない(室長)
【企画調整室長】「現在、埋立中のポートアイランドと、第4ポートアイランドの違い」について、お答えします。
 現在、ポートアイランドの埋め立てている区域は、中部地方整備局が公有水面埋立法に基づく埋立承認など所定の手続きを経て事業着手し、現在もなお土砂処分場として活用しています。
 第4ポートアイランドは、環境影響評価法及び公有水面埋立法に基づく事業化に向けた手続きを行う状況に至っていない。

名古屋港区域外の空港沖の公有水面埋立予定地で新たに土砂処分を行う理由は(再質問)
【江上議員】管理組合として、地球温暖化対策に取組み、自然を少しでも残すよう取り組んでいるはずです。また、漁業を安心して営むようにするのであれば、自然破壊を行うべきではありません。回答でも「良好な漁場」となっています。にもかかわらず、海の海流、漁業など自然や漁業者に影響を与えるしゅんせつ土砂の処分をなぜ空港沖の公有水面埋め立て予定地で新たに行うのか理由を明らかにしてください。また、空港島は、名古屋港港湾区域の外です。なぜ、そのような場所を処分地にするのかも明らかにしてください。

港湾機能の維持や強化拡充に伴って発生するしゅんせつ土砂を、長期的、安定的に処分することができる大規模な土砂処分場の確保するための候補地として選定(大村管理者)
【大村管理者】名古屋港は重要な役割を担っている。本港が、持続的にこの役割を果たしていくためには、しゅんせつ土砂を、長期的、安定的に処分することが大きな課題となっていた。このため、中部地方整備局で2010年から新たな土砂処分場の確保に向け、複数の候補地から技術的、経済的な観点で比較を行うなど手順を踏んで検討が進められ、中部国際空港沖が候補地として選定された。
 こうした経緯を踏まえ、本組合としても関係者と丁寧に調整を進め、今般、事業に対する理解を得るに至った。

中部国際空港沖の埋め立てを優先し、環境破壊を進める計画だ(意見)
【江上議員】管理者の回答では、「伊勢醇の貴重な海域環境を保全する重要性」を述べながら、良好な漁場を埋め立てることは理解できません。また、第4ポートアイランドを土砂処分場として活用手続きをすれば処分場として活用できるのに手続きしないのは、中部国際空港沖の埋め立てを優先しているとしか理解できません。
 第1に、しゅんせつ土砂の処分の必要性です。港の維持管理のためのしゅんせつは必要ですが、それ以上に、大水深岸壁の開発のしゅんせつが今年度見込みで3倍です。コロナ禍を受け、今後の国際貿易の変化を見た開発のあり方を見直すことが必要です。今まで通りのしゅんせつ土砂量を前提の埋め立て計画は認められません。
 第2に、21世紀、経済の犠牲になってきた地球温暖化、自然環境破壊に対する地球そのものの存続が緊急の課題になっています。自然破壊を進める土砂処分の見直しが求められます。
 そして、第3に、コロナ禍を受け、海外交流のあり方の変化も大きくなります。中部国際空港第2滑走路そのものの必要性はますますないのではないでしょうか。その建設のためにしゅんせつ土砂を埋め立て、漁業関係者に基金まで支出することは認められません。
 以上申し上げて質問を終わります。

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