2020年11月議会

江上博之議員の議案外質問:①新型コロナ感染拡大防止の体制を強化し面的PCR検査実施を(2020年11月30日 11月定例会)

新型コロナウイルス感染症拡大防止のための検査・保護・追跡調査について  江上博之議員

業種を限定せず、面的にすべての関係者にPCR検査をおこなうべき
【江上議員】10月下旬から感染拡大が日に日に急増し、国内感染は連日2000人を超えています。名古屋市内でも、19日116名で過去最高を更新し、感染経路不明が54名、感染者中46%を占めました。検査数は675人です。そして27日には117名と更新しました。PCR検査能力は一日当たり1200件を超えていますが、実際の検査数は、11月18日の997件が最高です。検査能力は十分あります。

 政府の「大都市の歓楽街における感染拡大防止対策ワーキンググループ当面の取組方策に関する報告書」が10月発表され、「これまでの感染拡大の経験を踏まえれば、大都市の歓楽街が感染拡大のいわば『急所』であり、こうしたエリアへの対策を強化することが、今後の感染拡大防止に有効である」としています。大都市歓楽街が感染の震源地というのです。同じく政府の新型コロナウイルス感染症対策本部11月10日では、「新宿歌舞伎町においては、大規模・地域集中的なPCR検査を実施したことにより、陽性者数が減少したことが統計的分析で明らかになっている」としています。大規模・地域集中的なPCR検査の効果を認めています。
 11月29日から愛知県では、3回目の休業要請が一日2万円の「愛知県感染防止対策協力金」とセットで実施されています。対象は、8月休業要請の栄・錦地区です。休業要請だけでなく、感染経路不明が増える中、無症状の感染者を把握し、保護し、追跡して感染経路を断つためにPCR検査を抜本的に拡大することです。
 日本共産党市議団は、今年7月からの感染拡大にあたり、感染拡大防止のために、① 無症状の感染者を把握し、保護し、感染経路を追跡調査すること。② 集中的に感染震源地である栄地区繁華街を面的に検査すること。③ 検査方法として、地域全体の住民、従業員など全員にPCR検査を実施することを求めてきました。PCR検査については、「一般的に感度は70%程度」という見解があります。確かに、個々人の診断では、コロナウイルスがのどや鼻の奥になく肺にあれば陰性となってしまいます。しかし、感染拡大は、くしゃみや息遣いによるものです。喉や鼻の奥にウイルスがあれば、ほぼ100%検出できる精度の高いのがPCR検査です。感染拡大防止の検査には効果があることを示してきました。
 7月28日、8月4日、8月12日、河村市長、大村県知事に申し入れを行いました。そして、河村市長からは、提案について「そういうつもりでやります」という回答がありました。名古屋市は、10月28日の3日間、栄繁華街の地域を特定して、無症状の方を含めPCR検査を行いました。大いに評価するものです。
 続いて11月には、8月に休業要請した地域を特定して、「新型コロナ感染防止対策協力店認定制度」を創設し11月4日から申請を受け付けました。この取り組みも大いに評価します。風俗営業法の中の「接待を伴う飲食店」を対象に、愛知県の新型コロナウイルス感染防止対策を実施している店舗で、従業員名簿を提出していただき、市の実地調査、無症状の従業員に対する唾液によるPCR検査を実施。全員が陰性であれば、認定のステッカーを発行するものです。感染防止対策と飲食店等の盛り上げ策をめざすものであります。
 そこで質問します。感染拡大防止のためには面的にすべての関係者にPCR検査を行うべきです。なぜ、今回「接待を伴う飲食店」に限定したのか。理由を説明してください。
 そして、名古屋市として、業種を限定することなく面的に無症状の方を含め地域関係者全員にPCR検査をおこなうことを求めます。

面的PCR検査は体制構築に課題(局長)
【健康福祉局長】国の分科会提言で、接待を伴う飲食店がある歓楽街への早期介入や対策強化の重要性、エリアや業種等の対象を絞った上での集中的な対策強化の重要性が指摘されたことを踏まえ、愛知県が営業時間短縮・休業要請を行った地区において、感染拡大のおそれがより高いと思われる、従業員と利用者との接触が密で、時間も長い、接待を伴う飲食店に限定した。
 面的なPCR検査は、飲食店等の従業員や利用者に一度に大量の検体採取を行う必要があること、保健センターの職員への事務量増加に伴う負担など、検査体制の構築といった点などに様々な課題がある。
 飲食店等の従業員や利用者にはCOCOAの普及啓発に努めるなど、早期発見につながる取り組みを進め、必要に応じてPCR検査等を受けることができる体制の構築に努める。

「協力店」を増やすためには金銭的補償などが必要では
【江上議員】申請には「従業員名簿の提出」が必要です。また、PCR検査実施によって「陽性」と判定されれば、10日以上の保護が必要となり、仕事につけません。このことが、申請数が増えない原因になっていないでしょうか。信頼関係を作ることも求められています。
 「従業員名簿」はPCR検査のため以外は使わないことの周知徹底、「陽性」あるいは、濃厚接触者となり保護された期間、仕事ができなかったことによる金銭的補償を行うなど支援策が必要です。いかがお考えでしょうか。

金銭的な補償を行う考えはない(局長)
【局長】従業員名簿は認定後に協力店で感染が確認された際に提出するなど、感染拡大防止の目的に限り使用するもので、申請時点に申請者に対して周知している。陽性が判明した場合等に金銭的な補償を行う考えはない。

病院・高齢者施設へのPCR検査(社会的検査)を定期的に行うべき
【江上議員】繁華街とともに、高齢者施設での集団クラスターが発生しています。特に、高齢者施設では、命と直結しています。それだけに、病院や高齢者施設等への「一斉・定期的な検査」を行って集団クラスターになる前に止めなければなりません。東京都世田谷区では、介護事業所で集団的にPCR検査を行い、無症状の陽性患者がでました。「重症者が出る前に感染状況がわかった」と感染拡大防止効果が出ています。病院や高齢者施設等への集団的な検査のために施設を特定してPCR検査を定期的に行う「社会的検査」実施を求めます。

査体制の構築などの課題があるが、市内では入所者・従事者全員に検査した事例もある。今後も柔軟に検査対象を拡大して検査を実施する(局長)
【局長】「社会的検査」という新たな枠組みは、まずは国において検討していただく必要があるが、医療機関や高齢者施設等の関係者に対して定期的に検査を実施する場合は、検査体制の構築など、様々な課題がある。
 高齢者施設の入所者や従事者に陽性が判明し、クラスター対策上必要と考える場合には、これまでも当該施設の入所者及び従事者全員に検査を実施した事例もあり、今後も柔軟に検査対象を拡大して検査を実施するなどの対応を行っていく。今後とも適切な範囲で調査を行い、必要に応じ検査につなげるよう努めていく。

追跡調査充実のために保健所のもと感染追跡専門の組織・人員を確保すべき
【江上議員】無症状の方を検査し陽性となれば保護が必要です。診断までは医療が行っても、その後は、保健所の対応です。健康観察担当者がますます必要になります。
 では現状はどうか。市長提案説明で、濃厚接触者等の健康観察について丁寧に報告されていました。先日、中保健センターの実情が報道されていました。「行動調査や健康観察は保健師ら12人が担う」「感染者からの折り返し電話や市民からの相談で電話は鳴りっぱなし」「軽症者が入るホテルへの入所手続といった仕事も抱え、土日は交代で出勤。『第一波の時より忙しい』『連休が取れない』『こんな状況が続けば病気になる』」「みんな疲れきっていて、職員の応援のあり方を考えて」の声です。ここをどうするかです。感染拡大防止のためにはどうしてもPCR検査以後の陽性者や濃厚接触者に対し、保護、追跡調査する感染追跡を専門とする人員を確保しないと進みません。東京都では、保健所の下、保健所支援拠点を設置し、追跡調査のための「トレーサー班」を設けています。看護師、准看護師、保健師の資格を持ち、個人情報保護に認識がある方となっています。名古屋市においても追跡調査充実のために保健所の下、感染追跡専門の組織・人員を確保することを求めます。

感染拡大防止のための人員確保は必要。体制強化を検討したい(局長)
【局長】感染拡大防止のため、感染者やその濃厚接触者に対し、丁寧な疫学調査や健康観察を実施していくための人員確保は必要であると認識している。感染追跡、つまり積極的疫学調査は各保健センターの保健師、看護師などの専門職が行っている。日ごろから地域との関係性を築いている保健センターがそれぞれの区の実情に即した細やかな調査や対応を行うため、集約化はせず、引き続き各保健センターで調査を行っていきたい。今後、感染拡大時にも迅速かつ的確に対応できるよう、体制の強化を検討したい。

公費負担のPCR検査は国に全面的に負担するよう求めるべき
【江上議員】以上のことを実施しようとすれば財源が問題となります。名古屋市は、PCR検査の名古屋市負担分について新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金で対応しています。しかし、臨時交付金には限りがあります。また、国の責任で進めるべき事業という点からも感染拡大防止のためのPCR検査の財源は国が全面的に負担する必要があると私たちは考えています。公費負担のPCR検査の財源は、国が全面的に負担するよう求めるべきです。

国で対応すべきところは国が負担すべき(局長)
【局長】新型コロナウイルス感染症対策に係る各種費用の財源は、国で対応すべきところは国が負担すべきものと考えている。

追跡調査体制があれば、面的にPCR検査が実施できるのでは(再質問)
【江上議員】追跡調査の体制があれば、栄繁華街など特定地域の関係者全員を対象にして面的にPCR検査が実施できますよね。お答えください。

柔軟に検査対象を拡大、検査を実施し、感染拡大防止に努めたい(局長)
【局長】特定地域の関係者全員を対象とした面的なPCR検査は、一度に大量の検体を採取するための検査体制を構築することが一番の大きな課題です。
 これまでも感染者が確認された施設などにおいては、迅速に各保健センターが積極的疫学調査を行い、クラスター対策上必要と考えられる場合について、柔軟に検査対象を拡大して検査を実施している。
 今後とも適切な範囲で調査を行い、必要に応じ検査につなげ、感染拡大の防止に努めたい。

大規模・地域集中的なPCR検査の効果は国も認めている。面的検査実施の決断を
【江上議員】面的に検査を求めておりますし、高齢者施設等で一人でも出れば全面的に検査する、そういう姿勢で感染拡大防止に努めていただきたいと思います。そのためにも市長に改めて質問致します。

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 大都市の歓楽街での、大規模・地域集中的なPCR検査の効果がある、と国は言っているわけです。カネは出さない、というところに大きな問題があることは承知しております。そこで、「接待を伴う飲食店」がさらに面的に検査することが必要だと思っております。この点についてのご決断。
 もう一点は、検査・追跡体制を充実することです。どんちゃん騒ぎを市内でくださいと言いますが、市民はもう一所懸命感染防止に努力しています。いま必要なのは市民に市のやる気を見せるときです。
 PCR検査を栄繁華街で地域関係者全員に面的に行うこと。少なくとも今回の休業要請を行った業種にまで広げること。要は「接待を伴う飲食店」のみならず、お酒関係のところですね、そういうところに広げること。
 そして地域との関係性を築いている各保健センターの下に追跡専門の人材を確保して、感染拡大を絶つ決意を求めます。

たくさんの人にPCR検査をすることはいいこと。調整しながらやっていきたい(市長)
【市長】全員というのは非常に課題が大きいということですし、それはそれで一人でもたくさんの人をやっていくことはええことだと思います。名古屋の場合は非常に保健センターが大変努力していて、積極的疫学調査、健康観察者のフォロー、どこまでかといいますと、PCR検査で仮にネガティブに終わりますと一応それで普通は終わってしまうわけです。しかし健康観察者フォローの場合はほぼ2週間連続的に連絡を入れて、「注意して下さいよ」と。市民の皆さんの協力がいりますけど。これだけ毎週数字を出しているのが、政令都市・県で名古屋市しかないです。先週でしたか2240名健康観察チェックをしておりまして。
 PCRもやれるだけというか、とにかく一人でもようけやれるように増やしていきますけど、健康観察の名古屋のやっとる姿というのも、大変ええことではないかという気がしておりまして、両方調整しながらやっていきたいと思います。

休業損失を補償し、面的なPCR検査を実施してこそ、経済回復の大きな力になる(要望)
【江上議員】今問題は、私自身、例えば追跡調査で保健所や保健センターが一生懸命やってみえることは承知しております。ただ私達の視点は、市民にとって感染拡大をどう防止するか、そのために必要な体制をどうつくるか、そして検査についてもやれるだけやるのではなくて、やっぱり面的検査をやれば効果があると言っているわけです。
 いま繁華街での関係者全員への面的検査をやると、PCR検査をやるということは言われませんでした。私自身、休業要請する以上は、協力金だけでなく事業規模に応じて損失補償すべきと考えています。同時に感染拡大防止の姿勢を市が示す、PCR検査を徹底して行いますと、こういう姿勢、追跡調査も徹底して行いますと、こういう姿勢を示してこそ、商売や経営にも大きな力になると私は思っております。感染拡大防止に全力をあげてこそ経済の回復もできます。引き続き市民の命と暮らし営業を守るために全力を尽くすことを求め、私自身も全力を尽くすことを申し上げます。

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