名港議会 江上博之議員の一般質問  新たな大水深バースは不要 (2020年3月26日)

飛島ふ頭南側コンテナターミナルの大水深(16m)第3岸壁整備は需要もなく必要ない                    江上博之議員 

新型コロナ感染症でグローバルサプライチェーンが止まっている
【江上議員】新型コロナウイルスが世界で感染を広げ、大変な被害を出しています。治療薬の開発がされ、少しでも早い終息を祈るものです。現在も今後も経済への影響が大変です。その中で、世界の供給の鎖グローバルサプライチェーンが止まっている大問題があります。私自身の体験ですが、和式トイレを洋式トイレに改修しようとしたら、部品が入らなくて工事ができない、と言われています。エアコンの買い替えもままならないようです。中国や、東南アジアに私たちの身近な生活までいかに依存しているか、身を持って実感しています。それだけに今後の経済のあり方、人件費の安い海外に依存する経済がこのままで良い訳がありません。人件費にかかわらず、私たちが安心、安定した消費ができる国内産業のあり方がこれから大いに議論されることになるはずです。海外からの輸入・輸出のあり方が変わっていく転機の時期ではないでしょうか。
 このような時期に、新年度予算で、飛島ふ頭南側コンテナターミナルの第3岸壁背後用地として、民間事業者の所有する土地を25億2千万円で先行取得を計上しています。今後この水深16m第3岸壁が必要なのかどうか。費用はどれだけかかると見積もっているのか。その整備によって自然環境に与える影響はどうなるのかなどについて質問します。

第3バースの整備費用および名古屋港管理組合の負担金はいくらか
【江上議員】第1に、第3岸壁整備にどれだけの費用が予定されているか、という点です。大水深岸壁建設には多額の費用が必要になるはずです。
 そこで質問します。岸壁整備費用、泊地を含むしゅんせつ工事費、背後地の取得費用、民間が行う費用など全体の費用とその中での名古屋港管理組合の負担金を明らかにしてください。

既存バースから推計すると、事業費は380億円で組合の負担は140億円
【企画調整室長】第3バースの整備は、港湾利用者との議論を重ねながら検討していくが、具体的な費用は事業実施段階でなく、地質状況や岸壁の荷重条件、ターミナルの利用形態等、不確定な部分が多く設計を行っていないため未定です。
 既存2バース750mについて、供用までに要した整備費用は約710億円、うち名古屋港管理組合の負担金としては約260億円であったことから、仮に第3バース400m分に換算すると、整備費用についでは約380億円、名古屋港管理組合の負担金は約140億円程度と想定できます。

欧米基幹航路の便数はふえたのか
【江上議員】第2に、多額の事業費を使って整備しようというのですから、第3岸壁の必要性と財政的裏付けが必要です。今ある岸壁2バースで水深16mでなければ利用できない船舶の利用状況はどのくらいあるのでしょうか。
 国土交通省港湾局が昨年11月8日に「国際コンテナ戦略港湾政策について」という資料を発表しています。その中に、「欧米基幹航路寄港便数の比較」というのがあり、伊勢湾では、2010年に14便であったものが、2019年には6便に減り、「我が国に寄港する基幹航路の便数は減少」と書かれています。大型船化し、取り扱いコンテナ貨物量は増えているといわれるかもしれませんが、便数が減っているのは事実です。
 そこで質問します。2010年と現在の名古屋港での欧米基幹航路の便数について明らかにしてください。
2010年は14便 2020年で5便
【企画調整室長】2010年の名古屋港への寄港便数は、週当たり北米航路10便、欧州航路4便の合計14便でした。2020年3月現在は、週当たり北米航路3便、北米・欧州航路2便の合計5便となっています。

第3パースが必要な根拠はなにか
【江上議員】第3に、今後の見通しです。一つは、最初に申し上げたように、新型コロナウイルスを教訓にして国内経済のあり方が大きく変わるのではないか。変えなければならないのではないかと思っています。人件費が安い海外に進出することによって、地元の小規模事業者、個人自営業者がどんどん減っています。「わざ」がなくなってしまっています。ここで、このような小規模事業、個人自営業を復活し、国内産業を活性化する。地産地消をめざすことがいかに必要か。いざという時でも、安心、安定した供給体制が必要です。そうすると貿易での依存が減ることになり名古屋港の利用も変化します。
 もう一つは、少子高齢化・人口減少です。国内の消費者の数、特に、若い方が減り、高齢者の方の割合が増えるのですから、消費量はますます減ります。愛知県でも、名古屋市でも、現在の合計特殊出生率のままだと2060年、今から40年後には、現在から2割の人口減少を地方創生プランで明らかにしています。私は、少子高齢化を克服する必要があると思っています。少子高齢化の原因は、結婚したくてもできない、あるいは、子どもをなかなか持てないという経済的理由。そして、東京一極集中が大きいと言われます。非正規労働・低賃金・長時間労働が問題です。その克服のためには、8時間働けば誰もが普通の暮らしができる。地産地消の経済、国内産業の育成が必要です。ただし、この方向の効果が出てくるのは20年後、30年後です。ところが、現時点では効果どころか、出生率はさらに下がり、東京一極集中も加速していますから少子高齢化が加速しています。リニアが来たらもっと加速するのではないでしょうか。この点からも名古屋港の輸出入は減少方向ではないか、と考えます。
 また、現在、利用中の水深16m岸壁は2か所。利用中あるいは整備中か整備予定の水深15m岸壁は4か所あります。もうこれだけあるのです。船舶の貨物量は満載でくるわけではありません。船舶の求められる最大喫水より必要な水深は浅くなるのではないかと思います。
 財政では、少子高齢化で財政収入は減っていきます。そのときに、このような事業に投資する余裕があるのでしょうか。
 そこで質問します。このような環境変化や条件がある中、今後、名古屋港の水深16m第3岸壁が必要な根拠を明らかにしてください。

北米・欧州と結ぶ基幹航路の維持・拡大に向け、船舶の大型化などに対応する

【企画調整室長】飛島ふ頭南側コンテナターミナルは、北米・欧州と結ぶ基幹航路の維持・拡大に向け、船舶の大型化などに対応できるよう、港湾計画で、水深16mの連続3バースを位置付けている。
 基幹航路や東南テジア航路などの多方面・多頻度サービスの充実を目指し、コンテナ取扱機能の強化に取り組んでまいります。

国によるしゅんせつ内容は変わったのか
【江上議員】第4に、名古屋港は庄内川の土砂の流入で絶えずしゅんせつが必要といわれました。2018年度決算から見ると、12m以上のしゅんせつに責任を持つ国のしゅんせつ土砂量は、55万㎥で、そのうち維持しゅんせつは15万㎥で建設による土砂が40万㎥です。庄内川ではなくて、大水深岸壁の建設がしゅんせつ土砂を多くしている原因ではありませんか。建設が減ればしゅんせつ土砂も減ることは明らかです。必要もない事業によるしゅんせつ土砂によって、捨て場の心配を減らすことも大切です。自然破壊を少しでも減らす必要もあります。
 新年度も国によるしゅんせつ土砂の建設と維持しゅんせつの土砂の割合に変化はないと思いますが見通しをお答えください。

整備・建設のためのしゅんせつと維持しゅんせつの割合は変わりない
【企画調整室長】国によるしゅんせつの土量は、2014年から2018年までの平均で整備・建設のためのしゅんせつが48万㎥、維持しゅんせつが約15万㎥となっており、2020年度に国が予定しているしゅんせつの土砂の割合も、ほぼ同程度と聞いている。

船舶の便数は、1/3に減少しているのに第3岸壁が必要か(再質問)
【江上議員】第3岸壁の供用までに約140億円程度想定しているとのことです。これからの少子高齢化で、消費も減る、税収も減るという時代を迎えてこのような多額の費用。今までと重みが違います。これは整備費だけですが、維持管理費を含めればもっと必要になります。
 それだけに必要性についてよほどの根拠が必要です。ところが、「北米・欧州と結ぶ基幹航路の維持・拡大に向け、船舶の大型化などに対応できるよう」というものです。2010年と比較し、船舶の便数は、三分の一程度まで減少しています。これから便数が増える根拠は示されていません。さらに、申し上げたように、新型コロナウイルス感染の教訓から、国内産業の充実に経済のあり方が変わるのではないか、少子高齢化人口減少で、消費が減少するのではないか、とこれからの時代の見通しを申し上げました。便数が増える根拠はますますないのではないでしょうか。さらに、第3岸壁供用の前には、水深16mが2岸壁、水深15mが4岸壁あるわけで、国際競争力はあるのではないでしょうか。もっと、地球温暖化対策や地震、津波、台風などの災害対策に力を入れることこそ必要ではないでしょうか。これからの20年30年を見通した施策が求められています。
 そこで、大村管理者に質問します。回答を受け私が申しあげたことも踏まえて、あらためて水深16m第3岸壁が必要な根拠を明らかにしてください。

基幹航路の寄港地に選ばれるために必要な設備(副管理者)
【専任副管理者】飛島ふ頭南側コンテナターミナルは、2019年のコンテナ取扱個数が2010年当時と比べて約33%増加しています。
 ターミナル関係者から、コンテナ船の大型化で1隻当たりの取扱個数が増加し、2バース体制ではピーク時にコンテナの搬出・搬入や蔵置・積替え等のターミナル内の作業でひっ迫することもあると聞く。
 コンテナ航路の再編で寄港地の絞り込みが進む中、基幹航路の寄港地として選ばれるためには、船会社が大型コンテナ船の運航スケジュールを編成する際に、本港への柔軟かつ円滑な寄港を可能とすることが重要です。
 日本で唯一の自働化コンテナターミナルである強みを生かしつつ、作業の効率化や労働環境の改善に向けて、AI、IoT等を導入した世界最高水準の生産性を有する次世代のコンテナターミナルの形成を目指していく必要があります。
 これらの実現に、飛島ふ頭南側コンテナターミナルは連続3バースが必要で、当該用地の企業が操業廃止したので、用地の先行取得をすべきと判断した。

地球温暖化対策、災害対策などを専門家の声を聞きながら整備を(意見)
【江上議員】16m水深岸壁建設の根拠を聞きました。2010年から欧米航路の便数が、三分の一近くにまで減っている理由はなぜか。この分析なしで、根拠は出てこないのではないでしょうか。減ってきているのは、名古屋港だけではありません。国土交通省の「国際コンテナ戦略港湾政策について」という資料では、東京・京浜港や、関西・阪神港も減ってきています。新型コロナ感染症の世界的広がりを受けての貿易のあり方の研究が必要です。
 少子高齢化・人口減少など分析をしっかりしたうえで、大水深岸壁の必要性を考えることです。専門家を交えてしっかりと調査することを求めます。
 整備費用は、過去の例から約380億円と回答しています。これだけ多額の事業を進めようというならしっかりした根拠が必要ですが、納得できる回答はありませんでした。
 維持しゅんせつは、約15万㎥と回答しました。その3倍以上のしゅんせつ土砂を整備・建設で出すというのです。しゅんせつ土砂を減らし、自然環境を守るためにも、第3岸壁整備を行わないことです。
 今、名古屋港管理組合が行うべきことは、輸出・輸入の今後を見極め、地球温暖化対策、災害対策などを専門家の声を聞きながら進めることです。名古屋市民、愛知県民が希望をもって安心・安全に暮らしていけるよう名古屋港を整備することを求めて質問を終わります。

 

 

 

 

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