2019年11月議会

岡田ゆき子議員の議案外質問①敬老パスの私鉄への拡大は、回数制限せずとも十分可能(2019年11月26日)

私鉄への対象交通の拡大を踏まえた敬老パス制度のあり方について
                       岡田ゆき子議員

敬老パスの私鉄への拡大を歓迎。将来も税投入額は暫定上限を超えないことで間違いないか
【岡田議員】名古屋市は、敬老パス制度について、2022年2月を目標に私鉄へ利用拡大することを明らかにしました。利用交通の拡大は、居住地域による利用格差を縮小しさらに利用しやすくなることから、敬老パスの交付者数が増え、高齢者の社会参加がさらに進むことが期待され、歓迎します。
 名古屋市は、今後の制度のあり方の方向性として、利用の差を解消し、より多くの市民が使いやすく公平で持続可能な制度にすること、事業費の暫定上限を145億円とし、必要な財源確保のために利用限度の設定を行うとしました。
 名古屋市は、2014年、持続可能な敬老パス制度に向けて、事業費に「暫定上限額」を設け、過去最大の事業費だった2003年の138億円を暫定上限額としました。事業費が最大であった当時は、利用者の一部負担金が導入される前であり、事業費138億円は、全て一般会計からの税投入額でした。翌年2004年度から利用者の一部負担が始まり、毎年約10億円を敬老パス利用者が負担しています。
 パネルをご覧ください。Aの決算額の推移をみると、2003年の138億円を超えないとした暫定上限額は、消費税増分を加味して2014年度に142億円としました。棒グラフの下が一般会計からの税投入額、棒グラフの上が利用者の一部負担金です。税投入額は昨年決算までを見ても暫定上限ラインを超えていません。
 今後10年の将来推計がBのグラフです。消費税増税分を加味して、暫定上限額は145億円となっています。将来推計には、私鉄拡大に必要な約9.9億円を反映して、利用回数上限を設けず作成しています。今後10年先の税投入額は事業費が最高となる2030年度で税投入額は144.1億円です。
 2003年度の税投入額を暫定上限としても、今後10年先も税投入額は暫定上限を超えないということで間違いはありませんか。答弁を求めます。

利用制限なしに拡大すると、総事業費は暫定上限を超える(健康福祉局長)
【健康福祉局長】利用制限を設けず、対象交通の拡大を行った場合、2030年の事業費は約154億円となり、暫定上限を大きく上回るものと推計している。このうち一部負担金による歳入が約10億円とすると、税投入額、すなわち一般財源額は約144億円となる。
 事業費の暫定上限額は、敬老パス制度を将来にわたって持続可能なものにするため、2014年度に、予算で「暫定上限額」を超えると見込まれる場合に新たな見直しを行うこととして設定したもので、制度の見直しを行う必要性を判断するために設定し、ある時点で予算が暫定上限額の範囲内であっても、数年後には超える見込みとなった場合には、見直しを行う。

事業費増が見込まれれば更なる利用制限などの負担強化をするのか
【岡田議員】私鉄拡大と同時に提案されたのが、利用回数に上限を設定するということです。利用回数を年間700回が妥当との提案で、市バス、地下鉄

、私鉄を利用する場合、片道3回、往復6回利用すると、週2回の交通機関を使った外出はトータル624回となります。700回という上限まで余裕がありません。利用拡大に伴う事業費の財源の為の利用上限の導入ですから、今後事業費が増大する見込みがあれば、回数制限のようにさらに利用者の負担を強化していくのでしょうか。答弁を求めます。

事業費が増えればさらに見直すが10年は見直さない(健康福祉局長)
【健康福祉局長】見直しは対象交通の拡大とその財源確保策として利用限度の設定を行うもので、今後さらなる事業費の増大で再び暫定上限を超えると見込まれる時には、改めて制度のあり方を検討する必要がある。
 しかし、短期間で見直すことは、利用者の混乱を招くおそれがあり、各鉄道事業者を始めとする関係機関への影響も大きいことから、今後10年間は持続できる制度となるよう検討をしている。

なぜ自己負担額を含めた総事業費を暫定上限額にするのか?(再質問) 2013年の社会福祉審議会の意見具申では、敬老パスの財源について事業費が増大する際、「税投入額の枠や一般会計に占める割合をどの程度抑えるかを想定して見直しをする必要がある」と考え方が示されたのに、なぜ、利用者の一部負担金も含めた「総事業費」を暫定上限額にするのか、明確な理由は何か、改めてお聞きします。

社会福祉審議会からの意見を踏まえた(健康福祉局長)
【健康福祉局長】暫定上限額は、事業費が予算で「暫定上限額」を超えると見込まれる場合、新たな見直しを行うために設定したもので、社会福祉審議会からのご意見を踏まえて全庁的な調整を行い、設定に至った。

意味不明のすりかえ答弁。利用拡大しても税投入額は暫定上限額以内に収まる(意見)
【岡田議員】「社会福祉審議会の意見を踏まえて、全庁的な調整で設定に至った」との答弁では、なぜ税投入額ではなく、総事業費を上限にしたのか、まったくわかりません。
 過去最大の税投入額を上回らないとしながら、いつの間にか利用者の負担金も含めた総事業費を上限額にすり替えているではないですか。質問に答えられない、答弁不能だと言わざるを得ません。
 今後10年間の推計で、私鉄拡大をしたとしても税投入額は暫定上限額を超えることはなく、見直しはしなくても、敬老パスは持続可能だということをはっきり申し上げたいと思います。

利用回数制限の設定は利用抑制を招く(再々質問)
【岡田議員】利用回数について、「対象交通を拡大するために、その財源確保として利用限度を設定する」といわれました。「今後事業費が増えるなら改めてあり方を検討する」いうことは、利用者の利用をさらに抑制することになりかねない。今回上限回数は700回が妥当としていますが、今回の制限が新たな利用抑制に道を開くものになることを言っておきたいと思います。
 私鉄拡大で、喜んでおられる方はたくさん見えます。高齢だから早く実施してほしいという声も聞こえます。しかし、利用制限はそうした声にこたえることはできません。
 緑区の方は、ご主人の入所先に週3回、敬老パスを使って行くのが日課だそうです。今は、自宅からバスで徳重へ行き、地下鉄に乗り換えて中村区役所で下車、歩いて施設に向かう、往復4回の利用で片道1時間半かかります。今後、私鉄にも敬老パスで使えるようになれば、自宅から市バスで名鉄有松駅へ、名古屋駅で地下鉄に乗り換えて、中村区役所で下車すると、片道1時間弱となり、とても楽になると言われます。
 ところが、交通機関の利用は往復6回となるので、週3回通うと、年間1000回近い利用回数となります。上限を超えてしまう。利用回数制限を設けることで、「地域格差」の解消どころか、こういう高齢者は多回数利用者ということになり、700回以上をカットされる対象になってしまうのです。
 「利用回数制限」を設けることとは、新たに利用が広がることと引き換えに、これまで利用していた人、これから利用できると期待していた人の利用を制限して、その分を財源に充てると、こういうことではないですか。答弁を求めます。

 

市民アンケートでは「利用に上限を設けるべき」の意見が多かった(健康福祉局長)
【健康福祉局長】2018年秋に実施した市民アンケートでは、利用回数が少ない方や民間鉄道沿線地域の方などには、個人や居住地域で利用の差があることが「よくない」とする意見が多く存在し、改善要望として最も多く寄せられたのが「利用に上限を設けるべき」といった「利用に応じた負担や利用制限」に関する意見でした。
 制度の見直しには、こうした市民アンケートの結果も踏まえ、若い世代を含めて広く市民に理解いただける制度とすることが必要です。
 対象交通の拡大に伴い、利用者は新たに約1万1千人増加することが見込まれており、より多くの高齢者に対して社会参加の支援と、福祉の増進という制度の目的を果たすことができると考え、対象交通の拡大を、利用限度設定を併せて行う。
 見直しにあたっては、高齢者の社会参加の支援と福祉の増進という制度の趣旨を損なわない範囲で、利用者のほとんどの方がこれまで通り利用できるよう検討を進め、使い勝手が良く、公平で持続可能な制度とするために行うものであることをご理解いただけるよう努めたい。

利用制限の意見は回答全体の僅か2割。若い世代の5割が「現状のままでよい」。回数制限なしに私鉄への利用拡大を求める

【岡田議員】答弁の中で、市民アンケートの説明がありました。最も多い意見が「利用に応じた負担や制限」に関する意見だったと。そうでしょうか。市民アンケートの回答者は約1700人、その中で回数制限、負担金引上げなどの意見があったのは、357件で全体の2割です。そもそも、この市民アンケートは、敬老パスの目的も事業のさまざまな効果も他都市との比較も、まったく説明はなく、心理的に「制限が必要だ」と意識させる意図的なものだと私たちは指摘してきました。
 しかし、そのようなアンケートであっても、64歳以下の方の5割以上が「現状のままでよいと思う」と答えているのです。若い世代の理解は得られている事業だというのが、このアンケートの見方でないでしょうか。
 又、答弁で「高齢者の社会参加の支援と福祉の増進という制度の趣旨を損なわない範囲で検討する」と言われました。「制度の趣旨を損なわない程度」を誰が判断するのですか。社会福祉審議会の意見具申で「利用限度を設けること」は「高齢者の社会参加意欲を低下させる可能性がある」とはっきり言っています。

 利用抑制は、たくさん利用している人だけに起こることではありません。問題は、普段、利用回数が多くない高齢者にも「なるべく回数を抑えないと、必要となった時に利用できなくなると困る」という心理が働く、だから「社会参加意欲を低下させる」と、意見具申で指摘したのではないでしょうか。
 高齢の親が元気でいてくれるので、現役世代が働くことができ、子育ても応援してもらうことができるのです。すぐれた効果のある制度を萎縮させるのではなく、高齢者の社会参加できる機会が保障される、積極的に社会貢献できる、他の都市にはない名古屋の住んでいいところだと、若い世代にこそ宣伝すべきです。利用者に新たな分断を持ち込むような、回数制限は作らずに私鉄へ利用拡大することを求めて、この質問は終わります。

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