敬老パスのJR、名鉄、近鉄への対象拡大と利用上限回数の設定についての見解

10月11日に名古屋市が発表した、敬老パスのJR、名鉄、近鉄への利用拡大と利用上限回数を導入する方向性についての、日本共産党名古屋市議団の見解です。

(PDF)191028 敬老パス見解

 

敬老パスのJR、名鉄、近鉄への対象拡大と利用上限回数の設定についての見解

 2019年10月28日 日本共産党名古屋市議団

 

10月11日、名古屋市は敬老パスのJR、名鉄、近鉄への利用拡大と利用上限回数を導入する方向性を示した。

敬老パスのJR、名鉄、近鉄への対象拡大は、長年の運動の大きな成果

2022年2月からJR、名鉄、近鉄の名古屋市内の運行区間で敬老パスを使えるようにする。利用者は敬老パスにチャージした上で、いったん運賃を支払って乗車し、後から市が運賃相当額を2か月ごとに利用者に返還する償還払い方式を予定している。利用交通機関の拡大は、市民の粘り強い運動と2007年度からのわが党の要望に応えるもので歓迎する。各地で高齢者の無料乗車制度を改悪する動きがあるなかで利用拡大に踏み出すことは貴重な成果である。これにより居住地域による利用格差の縮小と利便性の向上で、パスの交付者数が1万人以上増え、高齢者の社会参加がより促進されることが期待される。

敬老パスの目的を損ねかねない利用上限回数の設定

同時に打ち出された利用回数の上限は年700回が妥当としている。700回とは1週間あたり13回。バスと地下鉄を乗り継ぎ往復すると4回と数えるので、こうした利用は週3日までという計算になる。利用回数に上限を設けると、敬老パスの利用を抑制する心理的圧力になる。居住地域による新たな利用格差も生み出しかねず、利用拡大による効果を台無しにするおそれがある。

敬老パスは高齢者の社会参加を支援する目的を持った生きがい施策であり、使ってこそ効果が発揮される。社会参加意欲を低下させる可能性がある利用上限は導入すべきではない。上限設定に伴う事務量と費用も膨大なものとなることも指摘しておく。

事業費抑制のための145億円という「暫定上限額」の絶対視にこそ問題

利用上限の導入は、利用拡大に伴う事業費の財源のためとされているが、その狙いは敬老パス事業費を抑制することにある。そのために「暫定上限額」なるものを過去最大の事業費を消費税込みで超えない額として設定し、消費税10%ベースで145億円とした。これを今後10年間、超えないために、利用上限を700回にする。そうすれば約14億円の財源が浮くという。

しかし、仮に事業費に上限を設けるとしても、設定根拠を変えれば金額が変わる。事業費が過去最高だった2003年度の財政負担額が暫定上限額の根拠だが、この時点では一部負担金は導入されていない。現在なら、事業費の上限は一部負担金の約10億円を加えた155億円余とすべきではないか。また、敬老パス事業費の一般会計予算に占める割合を上限にすると、過去最大の2003年度は1.34%だが今年度は1.14%である。1.34%を上限とすると167億円になる。

「暫定」である145億円という金額を絶対視することに合理的根拠はない。

利用制限を設けずに、民間鉄道・バスへの早期の利用拡大をめざす

敬老パスの経済効果は事業費の2.5倍との調査結果が示されている。事業費の抑制より利用の拡大こそが経済や財政にも貢献する。高齢者の社会参加を支援する敬老パスの目的に照らせば、今回の利用拡大は大きな一歩である。

利用拡大に必要な事業費8.9億円は一般会計予算の0.1%にも満たない金額であり、利用制限なしに十分賄うことができる。事業費の暫定上限に縛られることなく、利用制限を設けずに、早期に利用拡大すべきである。さらに、名鉄等のバスも利用対象に加えることが次の課題である。日本共産党はその方向で市民と力をあわせて奮闘するものである。