さはしあこ議員の予算への反対討論(2019年3月15日)

安倍政権の下で市民の暮らしは大変。今やるべきことは天守閣やリニアの応援ではなく暮らしの応援だ

安倍政権の悪政からの防波堤にならず

 河村市長は、提案説明で、一丁目一番地、もう今は違うかもしれませんが、市民税減税について、「すでに1,000億円以上もの現金を市民の皆様にお返しし、民の竈を温め続けた」と言われました。けれども、私たちが取り組んだ市政アンケートでは、生活が苦しくなった市民が、よくなった市民の4倍もいます。温め続けるどころか、私には、竈から、煙さえ見えません。
 市民の1,000億円以上の大切な税金ならば、市民にわかるような暮らし応援に使うべきです。市民の暮らしが厳しいにもかかわらず、国は、10月に消費税を10%に引き上げようとしています。自治体の仕事は、その防波堤となり、市民の福祉を守ることです。これ以上、市民の負担を増やすことはできません。以下、反対理由を申し上げます。

富裕層に市民税減税が必要か

 反対する第一の理由は、金持ち優遇の市民税5%減税が継続され、公的福祉への行政責任が後退するからです。
 わが会派が中止を求めてきた河村市長の「市民税5%減税」のうち、大企業優遇の法人市民税は、「企業に対して十分機能しているとはいえない」という検証結果が出され、廃止されました。

 ところが、相変わらず、金持ち優遇の市民税減税が継続されています。昨年度決算で、減税額の最高は約500万円。課税対象の所得だけで16億円。そんな超高額所得者に減税が必要でしょうか。
 一方、市民の5割は、市民税減税はゼロです。後期高齢者医療の軽減特例の廃止によって、年収80万円以下の非課税の高齢者は、保険料が4,500円の引き上げとなります。非課税世帯が4割で、低所得者世帯の多い国民健康保険の加入者の保険料も、一人あたり平均3,262円の引き上げになります。

 市長、低所得者・非課税世帯は、市民税減税の恩恵を受けません。金持ちを優遇し、市民の格差をさらに広げているのが減税ではありませんか。

保育園の民営化のため公募で優遇措置

 減税をするための財源づくりとして、本来、行政の責任においてやるべき公的福祉が、どんどん縮小され、さまざまな問題が出てきています。公立保育所は、新たに、宮前、宝生、大永寺と3か所が民間移管され、さらに、鳩岡、松が根、藤が丘の3か所で移管準備を進めようとしています。引き受ける法人の公募不調が続く中、これまで、丁寧に民間移管を進めるために、応募できるのは一法人に一か所としてきた公募要件に反して、宮前保育園では選定された法人が、同時に、他の公立保育園の移管を選定されていたことが判明しました。それにもかかわらず、移管は進められ、「名古屋市は自ら定めた要綱に責任を持つべき」と、保護者に不信が広がりました。スケジュールありきで、強引に進める民間移管は、もう限界です。

学校給食調理は7校すべて入札不調

 また、委託が4年目となる小学校給食調理業務は、22校まで拡大されてきていますが、来年度委託される7校にいたっては、全て入札が不調になっており、こちらももう限界です。学校給食にふさわしい衛生基準や人の配置などの質を担保するには、業務委託ではなく、直営に戻すべきです。
 市長は、いつも国のしくみで一律減税しかできないと言われます。それならば、法人市民税減税をやめたように、個人市民税減税もきっぱりやめて、子育て応援に切り替えるべきです。

リニア関連で大型事業次々

 第二の理由は、2027年のリニア開業を見据えた名駅一極集中ともいえる名古屋駅周辺に特化した開発予算や急いでやる必要のない事業が目白押しだからです。

名古屋駅周辺に特化した開発

 リニア開業を前提とした名古屋駅周辺の開発については、二千億円を超える事業規模とのことでしたが、そこには、「まちづくり構想」に盛り込まれていた名鉄名駅再開発計画に関する事業は、入っていないことが明らかになりました。名古屋駅周辺とはどこまでなのか、いったい総事業費がいくらになるのか、鉄道事業者や国・県との費用分担はどうなるのか、不明瞭なままです。
学校跡地売却益をリニア開発に流用
 この状態で、リニア関連名古屋駅周辺地区まちづくり基金として100億円を積み立てることは認められません。基金の対象となる名古屋駅周辺地区とはどこかも限定されず、基金を活用する対象事業も明確ではりません。リニアに関連すれば何にでも使えるというのは基金のあり方としてあまりにも漠然としています。
 しかもその財源となるのは百年余にわたる歴史を刻んできた新明小学校跡地の一部を売却して得るというものですが、教育施設の売却収入は教育や子育て支援にこそ使うべきです。

リニアのためなら何でもありなのか

 名古屋駅周辺地下公共空間整備は、その必要性の検証も不十分なままであり、かつ整備費用についても6年前(2012年)に概算で134億円と示されたままであり、現時点では完成する見通しもいったいいくらかかるのかも明らかでありません。中止すべきです。
 リニアが来るからと言えば何でもあり、では困ります。何もかもリニア開業に合わせようとすれば、まちづくりも歪みます。過度の名駅一極集中ではなく、市域全体を見渡したバランスのよい住みたくなるまちづくりこそが必要です。それこそが東京にも大阪にもない名古屋の都市魅力です。

中部空港の需要は2本目滑走路に程遠い

 中部国際空港の2本目滑走路建設が促進されようとしていますが、急いで建設する必要性はありません。中部国際空港の旅客数が、今年度、伸びているとはいえ、過去最高の2005年度に届くかどうかという状況で、仮に届いたとしても、開港時に戻ったにすぎません。発着回数は10万回余であり、2本目滑走路の整備を進めている那覇空港の16万回余、福岡空港の17万回余には、はるかに及んでいません。
 中部国際空港の着工前の1998年3月に出された「計画案」(最終まとめ)では、滑走路を1本とした第1期計画で、旅客数は2000万人、発着回数は約13万回とされていますが、現状はこの需要を大きく下回っています。「計画案」では、「将来的には航空輸送需要が滑走路1本の処理能力を上回る時期がくる」と想定していました。その場合の「将来構想」における航空需要は、旅客数では2500万人、発着回数では16万回とされており、当初の計画に照らしても、2本目滑走路を必要とする状況ではありません。
 国土交通省からも「今後の需要の増大が2本目の道を開く」と言われている現状にもかかわらず、リニア開業の2027年に間に合わせようというのは、あまりに急ぎすぎです。

木造化のため現天守解体を先行

 名古屋城天守閣の木造復元と解体は、一体であるにもかかわらず、解体を先行しようとしており、問題です。

耐震化を放置してきた河村市長

 市長は、2022年までに、何としても木造復元をしたいために、耐震化をしなくては、現天守が危ないからと、文化庁の許可がおりないことの焦りもあり、まず解体をしようと提案しました。けれども、現天守の耐震化は、「特別史跡名古屋城跡全体整備計画」で2006年から、すでに盛り込まれていますあ。河村市長が当選した2009年以後も、2012年に耐震化の必要性は、確認されています。天守の耐震化を怠ってきたのは、名古屋市であり、河村市長であることを認めるべきです。本来ならば、整備計画にある通り、耐震改修を進めるべきです。文化庁の現状変更許可の見通しもない天守木造化を進めるのは、耐震化が遅れることにもつながります。

石垣保全も不明瞭のまま

 文化庁は解体のための現状変更許可申請にあたって、石垣部会の意見をつけることも求めています。昨年7月、10月は、石垣部会との意見の一致を見なかったために、木造復元のための現状変更許可申請を見送りました。委員会の審議で、当局は、石垣部会の意見とはどういうことかと問われ「了解を得ることだと思っている」と答弁したにも関わらず、「どんな意見が出たとしてもそれをもって文化庁への申請をおこないたい」と述べました。
 意見の一致を見なければ、結局、文化庁からの現状変更許可がおりる保証はありません。昨年申請を断念した段階から、何一つ変わっていません。そもそも、解体の現状変更許可の見通しもないのに、解体にかかわる構台等仮設工事予算9億6千万円を計上すること事態が問題です。
 さらに、工事車両搬入のため、外堀を通過するには、外堀石垣の現状変更許可が必要であることも明らかになりましたが、外堀石垣の調査は行われていません。天守木造復元の現状変更許可の見通しもないのに、木材を購入することも認められません。
 市民合意もなく、何としても2022年までに、天守木造化を進めようとしているところに問題があります。解体復元の見通しもない木造化は中止し、市民の声を聞いて再検討すべきです。

消費税増税を盛り込んだ予算だ

 予算案に反対する第三の理由は、家計消費も実質賃金も落ち込んでいるのに、10月の消費税増税を前提とした予算だからです。

減税言うなら消費税転嫁をやめよ

 わが会派の代表質問に対し、市長は「増税はとんでもないこと」と言いながらも、市民生活に直接かかわる消費税転嫁・値上げなどが盛り込まれています。消費税引き上げ前に、一斉に、食品が値上げされ始め、市民生活を直撃します。
 名古屋市立病院の特別室使用料や初診料加算額などの料金が引き上げられ、ただでさえ病気で不安がある患者に負担がのしかかります。また、市民の足である市バス・地下鉄料金も、命に直結する水道料金も値上げです。

組替案の方向で希望の持てる暮らしに

 以上、反対する理由を述べてきました。市長は、「日本で唯一の減税を通じて税金を1円でも安く」と言いますが、日本で唯一というよりも、他に広がらないだけではないですか。市長、格差を広げる市民税減税はやめて、大型事業を見直して作り出した財源を活用して、私たちが先ほど組み替えを提案した、18歳までの医療費通院の無料化、国民健康保険料の子ども均等割の廃止、介護保険料の年間平均5000円の引き下げ、敬老パスは利用制限なしでJRや名鉄などに拡大など、どれほど市民の負担が軽くなり、喜ばれることでしょう。未来に希望の持てる暮らしとなるよう応援していきましょう。
 日本共産党名古屋市議団は、市民が安心して住み続けたいと思えるような名古屋市となるように、全力を尽くすことを表明して討論を終わります。

キーワード: