2018年6月定例会

柴田民雄議員の議案外質問②(2018年6月25日)

自立支援医療(精神通院医療)への医療費助成を   
柴田民雄議員

自立支援医療(精神通院医療)に1割負担を強いる自治体は7市町村のみ
【柴田議員】障害者医療費助成制度における自立支援医療(精神通院医療)対象者への助成拡大について、健康福祉局長に伺います。
 先日、市議団宛てにあるメールが届きました。名古屋市民を友人に持つという蒲郡市民の方からのメールですが、そのご友人がうつ病が元で自殺されたということです。メールの男性自身も4年間にわたってうつ病に苦しみ、休職・復職を繰り返し、今は休職中とのことですが、自立支援医療制度と、蒲郡市の精神障害者医療費助成のおかげで、心療内科と投薬、復帰支援プログラムのデイケアをすべて自己負担なく受けられているとのことです。
 ところが、名古屋市の場合、自立支援医療は1割の自己負担があると聞き、名古屋市民のために自己負担無しで精神医療が受けられる制度を作ってほしい、と亡くなられたご友人になり代わって訴えてこられたのです。本市の場合、精神障害者保健福祉手帳1級・2級を所持していれば、病院窓口では自己負担無しで医療を受けられますが、手帳が無いと、自立支援医療対象者でも、1割負担が必要です。精神障害者手帳の所持者数は2012年度から2017年度の5年間で、17,128人から24,117人へと1.4倍に増加しています。身体障害者・知的障害者の手帳所持者の場合は、それぞれ身体1.0倍、知的1.2倍の伸び率ですから、精神障害の手帳取得がとても増えていると言えます。
 また、精神科通院の「自立支援医療受給者証」所持者の数も、同じ5年間で、27,630人から36,273人へと1.3倍余に増加しています。今年3月末時点で、本人負担無しで医療を受けられる、手帳所持者数は16,830人。一方、自立支援医療対象者で、本人一割負担が必要な方は約20,000人と、無料で医療が受けられる方の1.2倍ほど多くおられます。身体障害の場合は1~3級であれば無料で医療が受けられるのに対し、精神障害の場合、手帳を所持しているとは限らず、1割負担をしている方が多いという特徴があります。
 精神科通院の自立支援医療対象者の過半数は、気分・感情障害、いわゆる「うつ」に分類される方が占めています。働いている場合、精神障害者手帳を取得していることを会社に知られたくないなどの理由で申請を躊躇する場合が多いと聞きます。病気を抱えていることで、不安定雇用・非正規雇用で働く方が多く、そのことが病を悪化させ、さらに失業し長期療養で失業手当が切れたりして、さらに経済的な不安定さ、貧困状態に陥っているのではないかと、容易に想像できます。生活保護も、様々な理由で受けられない、あるいは受けたくないというケースもあります。精神疾患や精神障害に対する周りの理解が得られないなどで、一般的な医療よりも精神医療に接近することが困難となっていることに加えて、経済的な負担がさらに受診の敷居を上げ、自殺など最悪な状況を生み出してしまうことにもつながっているのではないでしょうか。
 このように、とりわけ精神医療では、経済負担が病状にもたらす影響が大きいことも考慮する必要があると考えます。現に、愛知県下の他の自治体は、ほとんど、手帳無しでも自立支援医療証さえあれば自己負担無しで医療を受けられる制度となっています。名古屋市のように1割の自己負担を求めているのは、54自治体中、わずか7自治体だけです。
 そこで伺います。精神通院の自立支援医療対象者に対して、医療費自己負担ゼロで医療が受けられるよう、精神障害者医療費助成制度を拡充した場合、予算はいくら必要でしょうか。また、そのような制度拡充をする考えはありませんか。
 また自立支援医療には、1年ごとの更新時に医師の診断書が必要なため、その場合3,000円程度の文書料が必要となりますが、身体障害の更生医療・育成医療では、国の通達で文書料は取らないこととされています。しかし精神通院の自立支援医療に限っては、文書料は自己負担するものとされています。国の制度だから、負担軽減も国に要求するべきとも考えますが、この文書料の負担を名古屋市が独自に助成して無料にすることは、お金の心配なく治療を安心して継続してもらうために有効な施策となるでしょう。
 自立支援医療対象者の、更新時に必要とされる診断書の文書料を本市が補助した場合、予算はいくら必要でしょうか。合わせてご答弁ください。

多くの市町村が独自助成していることは承知しているが、負担軽減は国の仕事(健康福祉局長)
【健康福祉局長】自己負担分1割を、市独自で実施している障害者医療費助成制度で助成すると、毎年4億円の予算が必要となり、診断書の文書料を全額公費で負担すると、5千万円の予算が必要になるため、医療費助成との合計では、4億5千万円が必要となる。
 愛知県下の多くの市町村は、精神科通院の自立支援医療の受給者に対して、1割分の自己負担額を独自で助成しています。本市の障害者医療費助成制度は、重度、中度の身体、知的、精神の障害者、および難病患者の方を対象に、すべての診療科の医療費について、入院、通院ともに、自己負担が無く医療が受けられる制度を構築しています。これは財政規模の近い他の政令指定都市と比較しても、水準の高い制度です。こうした中、障害者医療費助成制度の対象について、精神障害のある方のみ精神科通院医療費の助成を拡充することは、障害者医療費助成制度における他の障害等のある方とのバランスの点からも大変困難であり、課題がある。
 精神科通院に係る自立支援医療制度は、低所得者等に対して、自己負担額の上限が定められており、一定の配慮がされている。診断書の文書料の負担軽減も含めて、自己負担の軽減措置は、まずは国の責任において実施されるべきもので、自己負担額の軽減措置について国に対して要望するとともに、心の病に苦しみ、支援を必要とされる方々が、適切な医療につながり、治療が継続されるよう、精神科通院に係る自立支援医療制度の周知に努めていく。

自立支援医療更新の文書料にも補助の検討を(意見)
【柴田議員】現在、本来なら自立支援医療の対象となるべきなのに、制度そのものを知らずに申請せず、3割負担で医療を受けていらっしゃる方も多くいるかもしれません。この質問を通じて、本人一割負担で精神医療を受けられる制度がある、ということを知っていただくことにつながれば、それ自体も、意味のあることかと思います。制度の周知、大いに進めたいと思います。
 自立支援医療の更新に必要な文書料の補助をするだけでも、身体障害の皆さんとのバランスも取れて、自立支援医療の普及に大きく貢献できると思います。せめてこの点だけでも、実現していただきたいと思います。
 非正規雇用の労働者が劇的に増大している今、その労働・貧困との関係の中でうつが増えていること、それが特に大都市である名古屋では強い傾向であることを、改めて重く受け止め、自殺対策や精神医療への施策にしっかりと取り組んでいただきたいと強く求めて、終わります。

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