岡田ゆき子議員の個人質問①子どもの貧困(2018年3月5日)

子どもの貧困解決に就学援助や給付型小医学金の改善と保育所へのソーシャルワーカーを

   岡田ゆき子議員

「愛知子ども調査(2017年)」の分析結果でも所得等による学習意欲等の格差が明瞭
【岡田議員】愛知県は、生活困窮世帯の子どもの生

活実態を把握し、子どもの貧困対策すすめるため、「愛知子ども調査」を県内全域で実施しました。調査は小学1年、5年、中学2年の本人と保護者で、全県で約2万4000人の回答を得て、その分析を行った、有識者で構成する「検討会議」が、県に対し「子どもが輝く未来に向けた提言」を昨年発表しました。提言は「教育の機会均等」「健やかな成長環境」「支援体制の充実」の3つの取り組みを提示しています。
また、この提言では、県内のすべての市町村が、この提言に沿って地域の子ども・子育て支援体制の強化を期待するとしています。
分析結果では、学習の習熟度、学習意欲、進学希望などほとんどの項目で、保護者の所得、ひとり親かふたり親かによって、差が見られました。こうした格差を解消していく必要があります。

 

就学援助制度の申請をためらう人がいる。教育委員会がしっかり発信を
【岡田議員】小中学生対象の経済的支援の一つが、就学援助制度です。名古屋市の場合、対象は保護世帯と保護基準の1.0倍にあたる準要保護世帯で、2018年1月末時点で、約2万2000人、13.7% が利用されています。7年前に対象が保護基準の1.3倍から1.0倍に下げられ、より厳しい基準となりましたが、現在の基準であっても、必要な世帯が漏れなく利用できているでしょうか。
小学2年生と4年生のお子さんを持つあるひとり親のお母さんは、子どものため、残業の多い正規労働ではなく、パート労働で生計を立てていました。児童扶養手当の対象で、就学援助の制度は知っていたのですが、受けていません。理由は「自分の子どものことくらいは、税金の世話にならず、自分で何とかしたいから」ということでした。
しかし、実際は、貯金はありませんし、仕事は飲食業で、週末は子どもを残しておけず、平日のパート仕事で、その日暮らしに近い状態です。
 就学援助制度を利用することは「恥」だと感じる、スティグマが、必要な制度の利用を妨げているのではないか。申請方法は、保護者の同意があれば、所得状況の確認はできる仕組みに改善されました。それでも、利用をためらう人がいるとすれば、教育委員会が「学ぶことは子どもの権利、そのために制度を積極的に利用しましょう」と、保護者によびかけていただきたい。沖縄県は子どもの貧困対策の結果を受けて就学援助を利用してもらおうと、カラーパンフ(図)とPR動画を作られました。制度の周知には、思い切った配慮や工夫が必要ではないですか。教育長お答えください。

制度の丁寧な周知や申請受付時の配慮に努める(教育長)
【教育長】教育委員会では、就学援助制度を確実に周知するため、小学校入学時に制度を案内するほか、毎年、全ての保護者に制度を知らせ、申請書を配布しています。
 今年度から、保護者の同意を得て、従来求めていた証明書類の添付を不要とし、審査に必要な所得情報等を教育委員会で閲覧・確認することで、申請にかかる負担を大幅に軽減した。
 今後とも制度の丁寧な周知や申請受付時の配慮に努め、真に援助を必要とする方を的確に認定し、適切に就学援助を実施します。

高校生向けの給付型奨学金は全員に支給すべきではないか
【岡田議員】高校生向けの給付型奨学金についてお聞きします。3年前子どもの貧困問題を議会で取り上げ、アルバイトをする高校生の中で2割程度の生徒がバイト代を家計に入れているという実態を紹介し、給付型奨学金制度の創設を求めました。
名古屋市は、今年度から県内の高等学校等に進学された1年生から、給付型奨学金制度をスタートさせ、対象学年も拡大していく予定です。家庭の経済状況によって、教育を受ける権利が侵害されないための制度として、大変評価したいと思います。
しかし、支給対象を非課税世帯の半数と限定し、「学業、その他活動における努力が認められるもの」を条件としました。
県の子ども調査の結果は、親の所得によって学習意欲や進路希望などに差があると紹介しましたが、そもそも、経済的に困難な子どもをさらに選別する理由は何ですか。条例の目的に沿うなら、まずは全非課税世帯を無条件で対象にすべきではないですか。

生徒に努力を促すような制度をめざす(教育長)
【教育長】本市の給付型奨学金制度は、教育の機会均等に寄与するとともに、有為な人材の育成に資することを目的として、市民税非課税等の要件のほか、学業その他の活動における努力が認められる生徒に対して奨学金を支給することとしています。
 奨学金制度の制度設計にあたり、経済的支援策と同時に、生徒に努力を促すような制度をめざし、都道府県が実施する奨学給付金制度の対象や給付金額、生活保護世帯が受給する保護費などを総合的に考慮し、対象者や給付額を設定した。
 まずはこの制度の周知や運用を確実に行いたい。

何をもって努力と評価するのか(再質問)
【岡田議員】奨学金制度は、経済的支援策であると同時に、生徒に努力を促すような制度を目指したと言われました。頑張る生徒に奨学金を出そうということですが、その頑張りを何で測るのか。ある子どもは部活動で頑張っている姿があるかもしれない、しかし、同じ非課税世帯で、家計を助けるために、下校後すぐにアルバイトをする高校生もいます。また、親に代わって家事や兄弟の世話をしている、保育園へ妹のお迎えをするそんな高校生もいました。経済的困難な世帯という条件の上に、さらに何を持って努力を評価するのでしょうか。

努力する姿勢を見ていく(教育長)
【教育長】経済的な理由で修学が困難な中、自らの目標に向かって頑張っていこうとする生徒に対し、「将来の針路」を応援するもので、生徒の取り組みに対する結果ではなく、努力する姿勢を見ていくものです。

努力の評価に公平性が担保されて いるか(再々質問)
【岡田議員】経済的な理由で就学が困難という生徒の置かれている状況を認識しながら、その上、努力する生徒を評価するというけれども、その評価の方法は、公平性が担保されていると言えるのですか。

頑張っている様子を現場で見ている学校で推薦するのが妥当(教育長)
【教育長】日頃より、目標に向かって頑張っている生徒の様子を現場で見ている学校で推薦していただくのが妥当だと考えています。

校外の生徒の努力を客観的に評価するのは難しいし、経済的困難な中でどの生徒も頑張っている(意見)
【岡田議員】対象世帯に推薦の順位をつけるのは学校で、妥当だと言われました。しかし、実際は、学校によって対象世帯の数もちがうため、広報の仕方一つとっても違っていました。評価の中身も、学校それぞれでしたから、努力の評価など公平ではないのではないか。公立、私立の先生何人かにお聞きしました。学校外の生徒の努力を客観的に評価するのは難しいし、経済的困難な中でどの生徒も頑張っているから皆推薦したい。これが率直な意見です。
 相模原市は来年度から給付型奨学金制度をスタートします。貧困の連鎖を防ぐことを狙い、対象は非課税世帯意外に要件を設定しないとします。名古屋市も全員対象とするよう、見直しを強く求めます。

エリア支援保育所へのソーシャルワーカーの配置を
【岡田議員】エリア支援保育所へのソーシャルワーカーの配置について、子ども青少年局長にお聞きします。県の「提言」は子どもの貧困の解決のために「支援体制の充実」が必要だとし、「支援へつなぐこと」「切れ目のない支援」「支援者の確保」の3つをあげています。学校現場ではスクールソーシャルワーカー等の配置が進み、重要な役割を担ってきています。こうした支援がより早い乳幼児期に開始されることはその後の子どもの成長発達に大きな影響を与えるという研究や実践が報告されています。
 乳幼児期の養育放棄が原因で、ことばの発達が遅れる、食が細く体重が増えない、感情が希薄といった子どもが見られた場合、より早い時期に親へ支援を行ったことで、年齢相当の発達に近づいた事例が、市内の保育所でも報告されています。困難を抱える家庭は、子どもと母親だけの問題にとどまらず、父親の病気・失業や多子世帯、兄弟の障害や不登校、若年での妊娠、経済的困難など、保育士によるケースワークだけでは解決できない問題を抱えていることも多いのです。
 就学前の早い時期から、様々な困難を抱える子育て世帯を支援できるように、エリア支援保育所に、社会福祉士などのソーシャルワークの専門職を、まずは、モデル的に配置することを提案します。子ども青少年局長の見解をお聞きします。

必要に応じて相談や支援を行い、状況に適した関係機関につなぐ(局長)
【子ども青少年局長】地域の子育て家庭を対象とした交流会等を通じ、子育て家庭の状況を把握し、必要に応じて、相談や支援を行い、その状況に適した関係機関等につなげていく取り組みを進めでおり、順次、実施園を拡充している。公立・民間の保育所等の職員に対して、研修を行っており、ソーシャルワークのスキル向上に関する内容も取り入れて実施している。

困難を抱える子育て家庭を適切な支援につなげていけるよう取り組みを進める。
乳幼児期から「子どもと親も含め応援」をする仕組みを(再質問)
【岡田議員】県の提言では、支援体制について、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーなどの専門職の適性配置を行うこととしています。すでに、名古屋市は「子ども応援委員会」を先進的に進めてきています。
 私が注目したいのは、提言を作る過程の議論で、就学前、乳幼児期の支援の重要性を複数の有識者が指摘していたことです。保育士にソーシャルワークの研修をしていると言われましたが、待機児童対策を頑張って進め、同時に、共働きやひとり親世帯が増えて、援助が必要で、問題も複雑になっていると現場の保育士も多くが感じています。
 そこをどう補うか。市長にお聞きします。ソーシャルワーカーやカウンセラーなど多角的に専門職が関わり、子どもを応援する仕組みが、子ども応援委員会だと思います。そこを、就学前のより早い段階で、ソーシャルワーカーがかかわり、切れ目なくしっかり学校につなぐということができると考えます。エリア支援保育所に、ソーシャルワーカーを配置して、乳幼児期から「子どもと親も含め応援」をする仕組みを、名古屋で作っていただけませんか。

どえりゃあ、ええこと。相談して、やれるようにしたい(市長)
【市長】これはどえりゃあええことだと思います。学校に入ってからのSSW、4年間でカウンセラーも入れて、子どもさんを励ました数が6900人を超えた。それをもうちょっと若いうちから、子どもさん一人でなしに、家庭の問題もあるので、ソーシャルワーカーとしてやっていくというのもええと思います。どえりゃ忙しいと聞いている。せっかく、だいぶんの人数の方がSSWということでやってみえますので、それをエリア支援保育園に広たらどうなると、いっぺん相談してみます。やれるようにしたいと思います。

乳幼児の子どもを持つ親への社会援助を計画に盛り込め(意見)
【岡田議員】早期に支援を始めることが子どもの発達に非常にかかわるということは保育士の方からたくさん聞いた。現場では、保育士の養成課程にも社会援助技術という時間があるんですが、非常に複雑多岐にかかわると。さきほどもありましたが、介護を抱えている子育ての方も多く、どうしたらいいのかという悩みを常に持っています。
 個別の社会的援助の必要性を市長も理解していただいていると思います。年代別の相対的貧困率を見ると、最も高いのが、男女ともに20歳代の若者で、こ の年代が、乳幼児の子どもを持つ親であるから、社会援助が重要なのです。ぜひ、次期計画を策定する際、十分検討していただくことを要望して質問を終わります。

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