2017年度予算案に反対 市長のこだわりが暮らしをないがしろに(山口清明3月23日)

市長の「減税」や「世界からの集客」というこだわりが市民の暮らしをないがしろにしている。今やるべきことは暮らしの応援だ     山口清明議員

 私はただいま議題となっております第一号議案、名古屋市一般会計予算について、日本共産党名古屋市会議員団を代表して反対の立場から討論します。
市長の金持ち減税へのこだわりが市民の暮らしをないがしろに
 反対する理由の第一は、河村市長の「市民税5%減税」への異常なこだわりにより、市政が本来果たすべき市民生活の応援がないがしろにされているからです。

市長のウソ・・・「減税は低所得者にやさしい」
 我が党は今議会の代表質問において、一律減税が富裕層・大企業優遇という認識があるか、公平性を欠く減税だという認識はないのか、と問いかけました。
 市長は「年収200万円とか100万円台とかの人がちょこっとでも減税されるのは低所得者にやさしい考え方ですよ、これが税の根本ですよ」と答えましたが事実はどうか。

事実は・・・わずかな減税と引き換えに国保や介護の保険料は大幅増額
 夫婦と子ども二人の四人世帯をモデルにした給与所得者の課税ラインは年収271万6千円です。70歳の年金暮らしの夫婦世帯の課税ラインは年収211万1千円です。年収が100万円や200万円とかの人はちょこっとも減税になっておりません。ところがこれらの世帯にかぶさる市民税以外の負担はどうか。
 減税の恩恵ゼロの年収200万円の夫婦と子ども二人の四人世帯にかかる国民健康保険料は新年度12万1690円です。
 この家族ががんばって収入を増やして、減税の恩恵をちょこっと受ける年収300万円になるとどうか。課税世帯になり市民税が4万6400円で減税も年間2700円ありがたく受けることになります。ところが一方で、国保料は市民税額の約6倍、26万8630円になるのです。

年金生活者は200円の減税の一方、国保・介護保険料は8万円の増
 年額200万円の年金で暮らす70歳の夫婦世帯にかかる国保料は6万7230円になります。年金から天引きされる介護保険料は二人で7万4260円です。夫婦の年金収入が220万円になると課税世帯となります。
 市民税は3300円、ようやく200円減税の恩恵にあずかります。ところが介護保険料は13万7920円となり、約2万円増える国保料とあわせて年間22万5310円(国保料は8万7390円)に負担が跳ね上がります。わずか200円の減税より、この重い保険料負担こそ軽減すべきではありませんか。

一人平均7329円(介護分含む)の国保料値上げ中止は25億円でできる
 格差と貧困の広がりが社会問題となり、年金支給額が減らされるなか、市民の生活を支援するには、市民税減税ではなく、一般会計からの繰り入れによる保険料負担の軽減こそ決断すべきです。
 新年度は、医療費や薬価の高騰のあおりを受けて、国民健康保険料が一人平均4039円、40歳以上の加入者で介護分を合わせると一人平均7329円も引きあがる予算となっています。値上げをくいとめるために必要な金額は約25億9千万円。117億円の減税額の四分の一で実現可能なのです。

小学校給食費の無償化もできる
 あわせて、小学校給食の無料化や18歳までの医療費無料化など、市民が求める負担軽減にも取り組むべきです。

「減税」にこだわらず、市民負担軽減へカジを切り替えよ
 富裕層優遇の減税ではないか、との質問に市長は「平成18年に法律が制定されて、市民税が6%という単一税率になったから減税も同じ定率減税しかできない」と答弁しました。
 もしも市長の「減税」へのこだわりが、心底、庶民の負担軽減を願ってのものならば、市民税が単一税率になった時点で、減税以外の施策による負担軽減へとカジを切り替えるべきでした。
 減税という心地よい響きにこだわり、庶民の暮らしがあなたには見えていない。減税という甘い言葉にいつまでも騙されるわけにはいきません。市民生活の支援という点でも効果が薄い「一律減税」はきっぱり中止すべきです。

「減税」は行革推進の口実、民間まかせの待機時対策も詰まり
 「減税」にこだわるのは、庶民のためではなく、減税をテコにしたカッコつきの「行財政改革」の推進で、福祉や保育、教育や介護の分野にまでカットの大鉈を振るうためです。必要以上の行革圧力が8年間続いてきた結果、守るべき市民を守れない事態まで生じています。
 市長は「待機児童3年連続ゼロ」と胸を張りますがほんとうですか。いわゆる隠れ待機児童、入所保留児童が増加しています。民間まかせの保育園増設も行き詰まってきました。公立保育所の廃止・民間移管路線を抜本的に見直すべき
です。

発達支援センターの待機児を増やしながら800万円の経費削減を自慢できるのか
 そして名古屋市にはもう一つの待機児童問題があります。
 障害を持つ子どもたちが通う市内5カ所の発達支援センターの待機児です。今年度当初では19名が待機状態におかれていました。ところが新年度は22名となる見通しです。待機児童が増えています。
 名古屋市は児童の受け入れを進めるため、現場のセンターには定員の1割超過の子どもたちを受け入れるよう求め、一方で、運営費補給金の支給基準を変えてセンターへの人件費の補給金を800万円削減しました。
 いま本市の乳幼児健診の受診率は95%を超えています。保護者と保健所のがんばりでせっかく障害の兆候が早期発見できても、早期療育にスムーズにつながらない。ここをスムーズにつなぐことこそ行政に求められる改革です。待機児童を増やしながら、800万円の経費削減を行革の成果だと、あなたは胸を張れるのですか。

「減税」で強制的に税収不足をつくり出し、必要な施策や人員まで際限なく削りこむことはやめよ
 地方交付税交付団体である名古屋市が市民税減税を行うと、総務省から地方債の発行許可に同意する際に条件がつけられます。一つは地方税の徴収率が類似団体の地方税の徴収率を上回っていること、もう一つは、減税による減収額を上回る行政改革の取組みを予定していることです。
 減税という方法で市民負担を軽減しようとすれば、この行革圧力がずっと付いて回ります。でも保育料をいくら国基準より軽減しても国からこんな締め付けはありません。
 国保料を独自に引き下げるのも、学校給食を無料にするのも自治体の裁量にまかされています。医療費無料化に対する国保の補助金へのペナルティはまだ残されていますが、自治体の働きかけで改善されつつあります。市民税減税だけが国からの干渉を招きます。その意味でも、減税は自治体としてとるべき施策ではありません。
 「減税」により、強制的に税収不足をつくり出し、必要な施策や人員まで際限なく削りこむ。この政策の行きつく先は、住民福祉の増進を図る自治体本来の役割の自己否定です。このアリジゴクのような路線から、いまこそ抜け出そうではありませんか。

不要・不急の大型事業を推進
 反対する第二の理由は、市長の熱中するハコモノづくりがさらに市民のくらしと本市の財政を圧迫する恐れが強いからです。

天守閣に続き、新たな大規模展示場。いずれも過大な採算計画
 名古屋城天守閣の木造化とともに、大規模展示場の整備にいま市長は熱中しています。
 大規模展示場の整備はそもそも採算がとれる事業なのでしょうか。
 国際展示場は金城ふ頭のポートメッセを4万㎡規模に拡張移転する概算事業費が約330億円、愛知県が空港島に6万㎡規模で340億円、そして県との調整もつかないまま空見ふ頭に5万㎡、稲永ふ頭での整備費をもとに試算すると500億円を超える整備費となります。三つ合わせると東京ビッグサイトを超える15万㎡の規模となり、整備費用も1200億円以上が想定されます。
 ある経済専門誌による大都市圏ランキング調査によると、東京大都市圏の人口は3510万人、名古屋大都市圏は554万人です。六倍ちがいます。経済規模の違いも考慮しない、過大な需要を当て込んだ過大な投資となりかねません。

市長のウソ・・・大村知事と空見のことで話をし、調査をやってちょう
 事業の進め方も問題です。
 空見ふ頭での大規模展示場整備に関する調査について、わが党は代表質問で、県との調整がついていないままでの調査費計上は独断的ではないか、と尋ねました。

事実は・・・大村知事は「やめとけよと言ってぼそっと返した」
 市長は「大村知事とは事あるごとに空見のことで話をしてきまして、この話も調査をやってちょうよ、ということだった」と答弁されましたが、大村知事は「そんなことは言っていない」と反論し、大問題となりました。
 経済水道委員会に提出された資料には、名古屋市の空見地区調査に対する愛知県の認識として、「空見地区が抱えている問題点はすべてクリアすることはできないため、事業可能性はないと考える。事業可能性がなく、具体化できない事業について調査を実施することは無意味である」とあります。ここまではっきり言うのは県としても相当の確信と覚悟があるのでしょう。
 また大村知事は記者会見で「出来ないものは、1年経とうが、3年経とうが、5年経とうが10年経とうができない」とまで発言しています。両者の関係が解きほぐされる時は果たして来るのでしょうか。
 市長が知事の了解を取り付けたというのは、経済水道委員会の資料では知事の発言として「1月30日、立食パーティの会場で市長が(空見の調査予算をつけることについて)私の耳元で囁いた際、私は本当にそんなことやるのかと、お前やめとけよと言ってぼそっと返した」となっています。
 この「やめとけよ」が市長には「知事は『調査はしっかりやってくれ』と答えた」と聞こえたようです。

重要な事案の予算をパーティ会場の立ち話で決める市長でいいのか
 事の真偽や事業への賛否は別にして、少なくとも本市の予算編成にも関わる重要な問題をアルコールも入るであろう立食パーティの会場で、しかも立ち話で済ませようとした市長のその姿勢が許せません。こんないい加減な調査費の提案を認めるわけにはいかない。潔く撤回すべきです。

思い付きやパフォーマンス優先の市長の姿勢
 二つの反対理由を述べてきましたが、どちらも河村市長の執拗なこだわりがそもそもの原因です。市民の負担軽減や健全な市政運営よりも、自身のこだわりや思いつき、パフォーマンスを優先させる市長の姿勢こそが問題です。

金持ち減税ストップ、ハコモノ作りはいったん立ち止まる
 格差を広げるだけの金持ち減税ストップ、ハコモノづくりも一旦立ち止まろう、この二点で一致するみなさんと共同を広げ、市政の抜本的転換を図ろうではありませんか。

2つの転換で暮らし優先の市政に
 二つの転換だけで、小学校給食の無料化をはじめ、どれだけ市民生活を応援する施策が実現できるか、私たちが先ほど提案した予算組み替え動議にその一端をお示しいたしました。
 4月には、8年間の市政の混迷と停滞から脱却し、市民生活を向上させる名古屋市政を取り戻すために奮闘する決意を申し上げ、討論を終わります。

減税も自民・公明・民主も討論せず、黙って賛成
 採決にあたっての討論を行わなかった自民・公明・民主。減税も黙って賛成するだけでした。

実現した市民要望
・高等学校給付制奨学金の創設6897万円
・小中学校に災害避難用スロープを設置2300万円
・新堀川の悪臭対策3億6400万円
・環境学習センターの改修で名古屋の公害の歴史の展示も
・子ども食堂推進事業助成150万円
・学童保育への運営助成の拡充
・学校図書館への司書の配置1467万円
・就学援助における入学準備金の増額1億9462万円
・病児・病後児デイケア事業3億1354万円
・ヘルプカード配布268万円
・守山養護学校増築2300万円
・客引き行為規制150万円
・低所得者の第2子保育料無料化
・ゴミ減量、分別ガイドの全戸配布3580万円
・船頭場公園に命山整備、川名公園などを整備
・非常勤講師を正規教員に切り替え
・いじめ対策134万円
・救急隊増隊のための消防隊庁舎改修2920万円
大型事業の例
・空見ふ頭の大規模展示場整備調査・・・  2000万円
・名古屋駅周辺の巨大地下通路・・・ ・ 2億5341万円
・科学館蒸気機関車の動態展示調査・・ ・・ 600万円
・リニア開業を見据えたまちづくり・・ 1億9400万円
・栄1丁目6番地区に補助(御園座)・ 11億2831万円
・錦二丁目7番地区に補助・・・・・・・2億3300万円
など
民間委託推進
【学校給食調理業務】
・荒子、大清水、西山小の3校に加え新たに山田、瀬古、下志段味、桶狭間、天白小の5校で民間委託
【介護保険の要介護認定事務】
・16区から1か所に集約し民間に委託
【生涯学習センター】
・中川、港、南、緑、天白の5館を指定管理し全16館が指定管理に
【市立図書館】
・志段味図書館に続き新たに中村・富田・緑・徳重の4図書館を指定管理
【公立保育園】
・これまでに12か園を民営化、さらに11か園の民営化を準備
減税の財源に「行革」推進
・後期高齢者医療制度の低所得者軽減制度の縮小・廃止で保険料(年額)が総額3億円の負担増に
・地下鉄ワンマン化で職員削減49人
・国保料収納強化、保育料の収納対策で6300万円増収
・保健所を全区16か所から1か所に集約。区保健所は支所(保健センター)に
・高等学校入学準備金貸付人数を削減

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