名港議会 山口議員の一般質問③ 自衛隊装備品の荷役(2015年11月4日)

自衛隊装備品の名古屋港での荷役について演壇 知事と専任福管理者も

民間船舶での武器・兵器や弾薬等、自衛隊装備品の輸送は通常貨物扱いか
【山口議員】陸上自衛隊の武器・兵器をふくむ装備品が名古屋港を利用して輸送されています。以前から、北海道での演習には一般客や普通貨物と一緒にフェリーを使って車両と人員が輸送されていました。DSCN8346
 昨年は、みなと祭りの晩に、自衛隊がチャーターした元フェリー「はくおう」を使って演習帰りの戦車などが輸送され、名古屋港金城ふ頭で陸揚げされました。この荷役作業は港運事業者を通さず、自衛隊が自ら行いました。
 さて今年は8月14日に、日米共同演習に参加する部隊の榴弾砲や戦車、戦闘用ヘリなどが自衛隊のチャーターした民間の自動車専用船で運ばれていきました。そして10月15日に戻ってきました。どちらも弥富ふ頭が使われました。今回の荷役作業は通常の貨物と同様に、基本的に港運事業者に託され港湾労働者が担うことになったようです。
今回は演習のための兵器等の輸送ですが、有事の際には、いわゆる兵たん活動を名古屋港が担うことになるのでしょうか。海外で戦争するために、名古屋港から武器や兵器、兵員をおくり出すようなことは絶対に許せません。
 自衛隊だけで戦争はできません。とくに港湾や空港が戦争に協力させられる体制が強められています。150814 中日夕刊 自衛隊せんしゃを民間船で輸送
 そのなかで、民間航空各社で組織する定期航空協会は、周辺事態法においては国から協力を依頼される地位にあり、武力攻撃事態法では指定公共機関とされています。この定期航空協会は1999年5月に、「周辺事態法に対する当協会の基本的な考え方」を明らかにしました。そこでは、民間企業に対する協力依頼について「協力を行うことによって関係国から敵視されることのないよう、協力依頼が武力行使に当らないこと」を確認し、民間航空の安全の確保に、国は万全を期すように強く要望する、としています。
 港湾も同様の協力を求められますが、日本が海外で武力を行使する、そのために港湾が兵員や軍事物資の輸送に使用されるなら、その港湾が「関係国から敵視される」危険性が飛躍的に高まり、テロや報復の対象にされる事態になりかねません。名古屋港は戦争につながる一切の動きに協力しないと宣言すべきです。
 その角度から数点うかがいます。民間船舶を利用した自衛隊装備品の輸送は、自衛隊艦船に準じた扱いが必要だと思いますが、通常貨物の輸送と同じ扱いなのですか。

一般の船舶による通常貨物の荷役として取り扱う
【港営部長】民間船舶を利用した武器・兵器や弾薬等の自衛隊装備品の輸送は、一般の船舶による通常貨物の荷役として取り扱っています。

自衛隊装備品は危険物にすべきだ
【山口議員】自衛隊装備品のうちでも武器や弾薬などは危険物として取り扱うべきではありませんか。港湾における取扱ルールはどうなっているのでしょうか。ちなみに以前、中国からの輸入花火は危険物として規制の対象になっているとの答弁をいただいた記憶があります。もっと危険ではありませんか。軍事物資の荷役を認めることは、本港でも力を入れているテロ対策上も危険を呼び込むことになり、問題ではありませんか。

通常貨物と同様に扱う。今回は弾薬等がなかった
【港営部長】通常貨物と同様に、港則法上の危険物に該当する弾薬等の火薬類が含まれる場合には、名古屋海上保安部の許可を受けることとなっている。今回の自衛隊装備品は、港則法上の危険物に該当する弾薬等の火薬類はありませんでした。
 また、テロ対策には、国際条約に基づき、港湾施設の保安対策としてフェンス・ゲート、監視カメラ等の設置を行うなどの対応を図っている。

自衛隊装備品の輸送は名古屋港では認めないと宣言すべきだ
【山口議員】名古屋港は国際貿易を担う商業港であり軍港ではありません。自衛隊装備品の輸送についても名古屋港では認めないと宣言すべきではありませんか。
国から協力要請があったら有事関連法等対応委員会を設置し法令に照らして適切に対応する
【防災・危機管理担当部長】国から「周辺事態安全確保法」や、有事の際に港湾及び空港などの公共施設を特定の者に優先的に使用させることを目的とする「武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律」などに基づく協力要請等があった場合には、国からの協力要請等に係る必要な事項について審議する有事関連法等対応委員会を設置し、法令に照らして適切に対応していく。

軍事物資の輸送には名古屋港は加担しないと宣言すべき(再質問)
【山口議員】輸送される自衛隊の装備品について、弾薬等の火薬類は港則法上の危険物に該当し、名古屋海上保安部の許可を受ける、今回は危険物に相当する弾薬類は積載していなかった、という答弁でした。秘密扱いせず、きちんとチェックして、情報を公開する必要があります。
 港湾施設が、軍事物資の補給基地、後方支援の兵站基地となれば、相手国から見ればその港湾施設が攻撃対象となります。そして兵たんは軍事上の弱点でもあり真っ先に狙わる対象です。港湾労働者には、朝鮮戦争、イラク戦争でも軍事荷役を強いられてきた苦い歴史があります。ベトナム戦争では日本の港も米軍の兵たん活動に使用された。
このようなことは二度と繰り返してはならない。答弁では、現行法では港湾運送事業者には必要な協力を依頼することができる、との答弁でした。協力を拒否できなくはないが、現場で拒否することは簡単ではありません。
 港湾が戦争の加害者にも被害者にもならないためには、政治の責任で戦争へつながる動きをシャットアウトすること、港湾の軍事利用を拒否することが必要です。そこで管理者にうかがいます。
 定期航空協会の例を紹介しましたが、少なくとも関係国から敵視されるような軍事物資の輸送には名古屋港は加担しない、と宣言すべきではありませんか。

法令に照らして適切に対応(管理者)
【管理者】岸壁や荷さばき地などの港湾施設の利用について、有事、平時を問わず、いかなる場合においても、関係法令に基づき対応することとなります。
 従いまして、今後、周辺事態安全確保法などに基づき、国から港湾施設の利用などの協力要請等があった場合においても、法令に照らして適切に対応していきます。

軍事利用を拒否する姿勢を示すことが、名古屋港が貿易と交流の拠点としてさらに発展させる道(意見)
【山口議員】管理者からは、法令に照らして適切に対応したい、との答弁でした。適切に対応すべき法令の根幹は言うまでもなく日本国憲法です。戦争を放棄し、武力の行使も武力による威嚇も禁じたこの憲法最高法規であり、この憲法に反する法令は認められません。憲法にもとづく政治を国が踏み外すようならば、しっかりと戒めていただきたい。
 現行の港湾法は1950年にできました。戦後の民主的改革の一つとして、港湾を国家の一元的管理から地方公共団体が管理する自治体港湾にあらためられました。港湾法の制定には、国家による港湾の軍事利用に歯止めをかける意図があったと言われています。
 憲法と地方自治、港湾法の観点から、国から独立した港湾管理者としての自主的な判断が求められます。11.10海王丸が名港でセイルドリル
 戦争にはけっして加担しない、港湾の軍事利用を拒否する姿勢を明らかにすることが、名古屋港がアジアと世界の貿易と交流の拠点としてさらに発展させる道である、と申し上げておきます。(写真は海王丸)

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