2015年9月定例会

さいとう議員が介護保険と高齢者福祉について議案外質問

さいとう演壇IMG_0174 さいとう愛子議員は本会議にて9月16日、介護保険制度の改悪に関連する議案外質問を行いました。サービス利用料の2割負担、特別養護老人ホームの入所対象変更などの問題点を指摘し、名古屋市独自の対策をとるよう求めました。動画は名古屋市会HPを、質疑応答の全文意訳は下記をご覧ください。

2015年9月16日 さいとう愛子

9月定例会 議案外質問と答弁

介護保険と高齢者福祉について

―介護保険制度「改正」による影響と本市がとるべき対応―

障害者控除認定書を対象者には送付せよ

【さいとう議員】高齢者をめぐるさまざまな事件が、テレビや新聞で取り上げられ、NHKでも「老人漂流社会」「老後破産」など、衝撃的でリアルな実態が放映されました。

 平成27年度から29年度の第6期介護保険事業計画のもとで、名古屋市は、介護保険料を第6段階基準額で、年間5,440円もの値上げを行いました。

 さらにこれまでにない大幅に制度が変えられました。「一定以上所得のある65歳以上の方はサービス利用料が2倍に値上げになる」「補足給付の制限を強化すること」などのいっそうの負担増と、「特別養護老人ホームへの入所は原則要介護度3以上とすること」「新総合事業では、要支援は、介護保険の対象からはずすこと」。そのことで介護そのものを受ける条件がせばめられるという大改悪がおこなわれたわけです。

 市民のみなさんからの問い合わせも相次いで、市役所や区役所には4月以降8月までに約6,000件、特に、7月には2,000件もの問い合わせがあったと聞いています。

 これらの制度改悪が名古屋市民にとってどんな影響をおよぼすのか、「保険あって介護なし」と言われる状況がさらに進むようなことがあってはならないという問題意識から、介護保険糊度の「改正」の中で、2つの点にしぼってお聞きします。

 1つ目は、「一定以上所得のある65歳以上の方はサービス利用料が1割から2割に2倍になる」という制度改正です。この「一定以上所得」というのは、65歳以上の本人の年金収入が、280万円以上の世帯が対象となります。国会の議論でも「余裕があり2割負担が可能」な世帯ではなく、「やりくりすれば負担可能」と厚生労働大臣がわざわざ言い換えざるを得ない世帯の方々です。今回の「改正」は、現在でも、年金の連続切り下げ、消費税増税、介護保険料の引き上げなど「やりくり」に追われ、預貯金を取り崩して生活している高齢者世帯に、「2割」の負担をおしつけるものではないでしょうか。本市では、要介護・要支援の認定を受けている方103,247人のうち、13,174人、12.8%が対象になりました。国の制度とはいえ、何とか負担を軽くすることできないでしょうか。負担が2割になったのは、課税世帯であり、要介護状態にあるわけですから、今ある制度の中では、「障がい者控除」の対象者として申請することをすすめてはいかがでしょうか。

 「障がい者控除の申請制度」は、所得税法上の措置であり、要介護認定者を「市町村長が身体障がい者等に準ずる」と認めれば、控除の対象となります。今、愛知県内の市町村では、障がい者控除認定書を、要介護度1以上に発行しているのは、39の市町村であり、7割以上となっています。課税世帯の負担軽減策ですが、負担が重くなった方へのせめてもの緩和策として、提案するものです。

 健康福祉局長にお尋ねいたします。「2割負担」になった方全員と、介護度の高い4・5の方には、自動的に障がい者控除認定書を送付することはできないでしょうか。

一律に認定書を送付することは適切でない

【健康福祉局長】国の見解でも、税法上の「障害者控除」と介護保険の「要介護認定」の対象者は判断基準が異なっているため、要介護認定の結果のみをもって一律に障害者控除の対象者と判断することは困難としている。

 また、認定調査時では把握できない事項を区役所の窓口で確認する必要もあるので、一律に「障害者控除対象者認定書」を送付することは適切でない。

せめて、障害者控除の「申請書」を送れ(再質問)

【さいとう議員】所得税法施行令第10条では、「精神又は身体に障害のある65歳以上」で、「市町村長等の認定を受けているもの」とあります。ですから、県下の市町村はこのような措置をおこなっているもので、障がい者控除の認定は、市町村の判断でできるのではありませんか。

 そこで、健康福祉局長に、再度質問いたします。一律に「認定書」を送付できないなら、せめて、障害者控除の「申請書」を送り、認定申請できることをお知らせしてはいかがでしょうか。

申請書を送付するとかえって混乱しかねない

【健康福祉局長】提案された対象者に申請書を送付する場合約3万人に送付することになるが、中には障害者控除の認定基準に合致しない人も相当数あり、混乱をまねく可能性が大きく適切でない。認定書に有効期限はないので、いったん認定を受ければ、状態が変わらない限り翌年以降も確定申告に使える。

県下の市町村が自らの判断で行っている。市民の立場にたって交付を(意見)

【さいとう議員】高齢者を介護していらっしゃるご家庭は、区役所までなかなか足を運ぶことができまぜん。申請主義とはいえ、申請書が送付されてくれば、該当する方々にとってはたいへんありがたく、市民のみなさんの立場にたった施策の一つとして喜ばれるのではないでしょうか。県下の市町村が自らの判断で行っている立場に、本市としてもその立場に立っていただきたいと強く要望いたします。

 今回は、介護保険制度の改正される点についてお尋ねしました。市でできることを求めながら、根本的には国の制度をかえていかなければならないと認識しています。しかし名古屋市としてもまだまだできることがあると申し上げておきます。

要介護度1・2でも特別養護老人ホームに入所できるように特例入所を

【さいとう議員】今年4月から「特別養護老人ホームの入所対象から原則要介護度1・2を外す」問題についてです。

 今年4月1日時点で市内の特別養護老人ホームに入所している方のうち、6人に1人が要介護度1・2の方です。名古屋市は現在入所している要介護度1・2の方は「そのまま入所は可能」としました。在宅で生活が困難だから入所されているわけですから当然の対応だと思います。

 では、現在入所を待機している方はどうか。待機者は今年4月1日時点で5,336人。そのうちの1,469人、なんと4人に1人が要介護度1・2で、現に入所申し込みされています。

 要介護度1・2の高齢者の在宅生活はどうか。Bさん74才男性ですが、70才の妻と精神障害の息子さんの3人暮らし。要介護度2で、認知症生活自立度はⅡb。これは、日常生活に支障をきたすような認知症状が家庭内、家庭外でも見られますが、誰かが注意していれば自立という状態です。デイサービスとショートステイを利用していますが、妻も高齢でBさんの行動を常に見守るには限界があること、また毎回のデイサービスへの送り出しの際『行きたくない』と抵抗するBさんの対応に、疲労困憊で、特別養護老人ホームの入所を希望していました。

 こうした本人の状態や介護状況、在宅での支援の限界などについてよく把握しているケアマネージャーのすすめで、入所申し込みに行きましたが、施設からは、「要介護3以上でないと入所はできない」と断られました。

 国は、要介護度1・2でも、特例的に入所できる要件を示しています。要介護度1・2の方でも、重度の認知症であったり、虐待などを受けていたり、家族や介護サービスに期待できないなどの場合は、特例入所の対象者とするものです。

 保険料を払っているのに、改定により入所を希望しても入所できない制度では高齢者の尊厳を守ることはできまぜん。現に待機者の4人に1人が申し込みしていることを考えれば、入所が必要な方が特別養護老人ホームに入所できるようにすべきです。

 特例入所対象者かどうかを判断するのはどこでしょうか。名古屋市は、各特別養護老人ホームが判断するとしています。しかし、今回の改定で、報酬が大きく削減されたのが特別養護老人ホームです。すべてがそうだとはいいませんが、経営など考えれば客観的に入所の判断ができない場合もあるのではないでしょうか。

 そこで、健康福祉局長にお聞きします。特例入所の対象者かどうかの判断は、各施設が判断するのではなく、本人の状態や介護状況、サービスの利用状況などを把握しているケアマネージャーやいきいき支援センター等もふくめた地域ケア会議などで判定をする仕組みにすること、その判定を持って持別養護老人ホームに入所申し込みをすることは、より高齢者の実態に即した仕組みではないかと考えますが、健康福祉局長の見解をお尋ねします。

優先入所指針を策定し、公正・公平な運用を行っている

【健康福祉局長】国は、要介護1・2でも入所可能なやむを得ない考慮すべき事情として、「認知症や知的障害・精神障害等に伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動が頻繁に見られること」などの要件を示している。

 本市独自に「在宅生活が困難であり、他の介護サービスの利用も困難であることなどを総合的に勘案する」旨の規定を追加するとともに、入所申込みから決定に至るまでの手続き等を定めた優先入所指針を策定し、市内すべての施設にその詳細を説明するなどして、公正・公平な運用を行っていただいている。

 各施設において、特例入所の対象に該当するかどうか判断がつかない揚合には、本市に意見を求めることができる。

判定を行う合議体をつくり、その判定を持って施設に申し込む仕組みを(意見)

【さいとう議員】要介護度1・2の場合は入所の対象かどうかを、申込みの段階で判断する必要があるわけです。それも、多くの高齢者の場合、同時に数カ所からそれ以上、入所申し込みすることが多く、特例入所者かどうかの判断が、各施設で変わるようでは困るわけです。

 厚生労働省老健局高齢者支援課に確認しましたが、例えば、私が提案したように、判定を行う合議体をつくり、その判定を持って施設に申し込む仕組みは否定するものではないとしています。その判定の上、最終的に施設が判断することはあってもいいわけです。

 制度改正が始まって半年です。今後、こういった合議体での判断もできることも考え、見直し、検討の機会をつくるべきだと申し上げておきます。

利用者2割負担導入による負担増、利用の制限の実態と影響の把握を

【さいとう議員】私は、今回、「改正」された介護保険制度の問題点のうち2つを取り上げましたが、負担増や、給付の制限という改正は、高齢者の介護を社会が支えるという理念が、さらに遠のくのではないか、実際、質問をつくるに当たり、多くのケアマネージャーや利用者家族からお話を聞き、今でも、お金と相談をしながらサービスを利用しており、家族による介護の限界を感じながら在宅生活を送る様子が語られました。

 今回の制度改定によって、新たな利用者負担増、サービス利用の制限、などの実態と影響を、利用者、ケアマネージャー、事業者に対しアンケート調査するべきと考えますが、いかがでしようか。

市民の皆様に周知し、丁寧に説明してきた

【健康福祉局長】今回の制度改正は、利用者負担の変更を含め大変大きな改正でしたので、昨年度の早い段階から、いきいき支援センターや介護保険事業者にご協力をいただくとともに、各種広報媒体を活用して、市民の皆様に周知してきた。

 また、これに加えまして多数のお問い合わせに対応できるよう、今年の4月から8月までコールセンターを設置し、より丁寧に説明してきた。

 現在では、区役所等への問い合わせ件数も徐々に減少し、市民の皆様に制度改正の内容が一定、浸透してきたものと認識しております。

 引き続き市民の皆様に丁寧に説明するとともに、いきいき支援センターやケアマネージャー等を通じて現場の声や状況を把握していきたい。

 他の指定都市とも情報交換を行い、さらなる改善が必要な場合には、共同で、適切に国へ要望していきたい。

利用者の声をしっかり聴いて(意見)

【さいとう議員】健康福祉局長も、「今回の制度『改正』は、利用者負担の変更を含めたいへん大きな改正でございました」とおっしゃっておられます。

 実態と影響の調査については、利用者の声にしっかり耳を傾けていただきますよう要望します。

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