名港議会 一般質問③ 金属スクラップ火災(2014年11月7日)

名古屋港の安全対策
火災が続くスクラップヤードの保安管理について

可燃物の搬入や火災の可能性、使用目的の適否、貸付契約の条件はどうか
【山口議員】6月24日、港区潮凪町の金属スクラップヤードで火災が発生しました。幸いケガ人はありませんでしたが、猛烈な黒煙が吹き上がり、消防車18台、ヘリ二機が出動しましたが火は一晩中くすぶり続け、完全に鎮火したのは翌日でした。
 名古屋港では昨年11月にも弥冨埠頭の金属スクラップヤードで火災が起きたばかりです。どちらも火災原因は不明のままです。抜本的な対策に待ったなしで取り組むべき時ではないでしょうか。そこで数点うかがいます。 まず管理組合の対応です。臨港地区の土地について利用実態を正確に把握できていますか。今回の火災現場の土地使用者は「徳島興業」という会社ですが、現地で作業に従事し火災の第一発見者となった人は別会社の従業員でした。
 現地での消火活動でいちばん困ったことの一つは消火栓が現場近くには全くなかったことです。消防車のホースを数台分もつないでようやく水を確保できたと聞きました。
 可燃物の搬入や火災の可能性はまったく想定していなかったか。使用目的にふさわしい土地だったのか。土地の貸付契約の条件通りの使用状態だったのか。まず確認したい、答弁を求めます。

指定可燃物ではない。特殊物資港区で金属スクラップを取扱うことができる
【港営部長】金属スクラップは名古屋市火災予防条例上の指定可燃物ではないが、毎年事業者に火災防止に係る注意喚起を行っており、弥富ふ頭における火災後には更なる注意喚起を行った。
 なお、当該地は臨港地区を機能別に区分して目的の異なる建物等が無秩序に混在することを防止するための分区上の特殊物資港区にあたる。特殊物資港区は金属スクラップを取扱うことができる場所であり、当該地における使用目的は分区上適合している。また、この金属スクラップは製鋼の原料として輸出されているもので、当該地の土地使用目的は製鋼原料置場ですので、契約どおりの使用状態です。

消防との連携、弥富市の火災後の防火対策は
【山口議員】先の3月定例会で私は弥冨ふ頭のヤード火災について質問したばかりです。少しくどくなりますがその時の港営部長の答弁を引用します。
 「今回の火災を受けて、・・・スクラップを扱っている企業に対しさらなる火災予防の注意喚起を行いました。一方、海部南部消防組合は、金属スクラップ卸売業者などの指導基準を新たに定めました。この基準では、荷受け時の分別方法、集積の面積や高さ、設備や教育などの防火体制について定めています。・・・今後も、関係市村、関係消防機関との協力関係を一層深め、安全・安心な港づくりに鋭意取り組みます。」
 私は「海部南部消防の新たな指導基準も参考にして、臨港地区のスクラップヤードの管理基準、これしっかり設けるべきではないか。注意喚起だけでは解決にならない。管理組合としてとるべき具体的な再発防止策を示していただきたい」と再質問しました。
 港営部長の再答弁は「管理地の使用者に毎年火災防止の協力依頼を行ってきたが、今回のことを踏まえて、金属スクラップ置き場の使用者には、安全を確認するために防火対策が記載された利用計画書を提出させ、関係消防機関に相談するなどの対応を検討する。」というものでした。
 私は「これ以上同じ質問をさせないでいただきたい」と質問を結んだのですが、今回また質問する残念な事態となりました。
 消防との連携を具体的にどう進めてきたのか。防火対策が記載された利用計画書は提出されていたのか。その内容は十分なものだったのか。

5月下旬から6月中旬に立ち入り検査し、名古屋市消防局とは予防対策会議を本年4月に立ち上げた
【港営部長】防火対策が記載された利用計画書は新規の事業者に対する対応と考えており、弥富市の火災以降新規の事業者はない。しかし、既存の本組合管理地における金属スクラップ事業者に対しては、利用計画書に代わり、所在市村の消防機関と現況および是正事項確認のために本年5月下旬から6月中旬にかけて立ち入り検査を行った。また、名古屋市消防局とは市内の本組合管理地における金属スクラップ火災のための予防対策会議を本年4月に立ち上げております。

今後の再発防止策は
【山口議員】管理組合の対応についての総括と今後の再発防止策について責任ある答弁を求めます。

分別の徹底及び集積の小分けなどを要請
【港営部長】今回の港区潮凪町の火災は本年5月下旬から6月中旬の名古屋市消防局との共同立ち入り検査後に発生した。
 なお、火災発生後の翌日には、本組合管理地における同様な金属スクラップを扱う事業者に対し、名古屋市消防局と協力して再度立ち入り検査を行った。今回の火災を受けて名古屋市消防局が作成した金属スクラップの火災予防対策についてのリーフレットを添付の上、各事業者に対して季節の節目ごとに注意喚起を行っている。
 火災の原因は不明ではありますが、リーフレットに記載されている分別の徹底及び集積の小分けなどについて巡視時などに要請しており、今後も安全・安心な港づくりに努める。

国レベルでの新たな保安基準作成など技本的な対策を、管理組合から他港とも連携して求めるべき
【山口議員】この種の火災は全国的な問題です。三月議会でも紹介しましたが2月23日の中日新聞に「ミックスメタル全国の港湾や船舶で山積みされた状態で出荷する火災が、2010年以降毎年10件以上起きている。三河港でも昨年11月、火災が2件続いた」との記事が載りました。
 独立行政法人・国立環境研究所、循環型社会・廃棄物研究センターの研究成果報告集には、陸上での火災が2008年から2011年3月までの三年間だけで9件、船舶での火災は同じく12件発生している。この21件のうち出火原因が特定されたのは2件のみ、いずれも鉛バッテリーのショートが原因。現場関係者が推定する出火原因としては、バッテリーのショートが5件、金属と雨水による発熱が2件、金属接触による火花が2件、10件が原因不明との分析も載っています。
 消防サイドでは消防研究センターがいま紹介した国立環境研究所や海上保安庁などと共同で研究を進めています。「消防の動き」2011年2月号には「金属スクラップに紛れ込んだ小型のリチウム電池などの破壊で電流が流れ、熱が発生する、トナーカートリッジが粉じん爆発を起こす場合もある。火災の特徴は金属の火災というよりは大量に含まれるプラスチック、ゴム類の燃焼による大量の煙が生じる」などとあります。
 つまり金属スクラップの中から可燃性の危険物を徹底して分別することが火災予防には有効なのです。ところが業者としては、国内では分別の費用が高くつくので、有用な資源として金属スクラップをそのまま輸出してこそ商売になる、というのです。
 問題の根は深いと言わざるを得ず、名古屋港だけで解決できる問題とは私も思いません。
 金属スクラップについて国レベルでの新たな規制基準の作成など、抜本的な対策を他港とも連携しながら名古屋港管理組合からも強く求めていくべきではありませんか。

火災発生事例や予防対策などの情報を共有へ
【港営部長】臨港地区内で金属スクラップを取扱う他港湾と、最近の火災発生事例及び火災予防対策への取り組み等、情報を共有したい。
 また、昨年度から海部南部消防組合及び名古屋市消防局と各々連携して金属スクラップの火災予防についての取り組みを行っていますが、今後も連携して火災予防の徹底を図っていくとともに、関係機関などの対策状況も、鋭意情報収集に努め適宜対応します。

現状の対策より踏み込んだ安全対策を(再質問)
【山口議員】弥富ふ頭の火災以降、いろいろ取り組んできたのにまた火災です。指定可燃物でもなく、貸し付けた土地も適正に使用している。それでも繰り返し火災が発生しています。特殊物資港区に分区しているといいますが、スクラップヤードには金属だけでなくいろんなものが無秩序に混在しているのです。火災現場の隣にはあおなみ線も走っていました。一歩間違えば、あおなみ線も運休になりかねない事態でした。港営部長の答弁には危機感が感じられません。今回の火災についても原因不明のままです。
 注意を喚起するという対策では不十分なのではありませんか。金属スクラップの蔵置に関する規制基準をきちんと設けるよう、もっと踏み込んだ姿勢を取るべきではあありませんか。この問題、専任副管理者の答弁を求めます。

金属スクラップの規制基準の必要性など、火災防止対策のあり方について検討したい(副管理者)
【選任副管理者】今後も火災の再発防止に向け、金属スクラップ取扱事業者に対して、繰り返し火災予防の注意喚起ならびに啓発活動を徹底します。更に、引き続き各消防機関との立ち入り検査を行うとともに、対策会議などを継続的に行い、各機関との連携を更に深め、火災防止に努めます。
 なお、危険物や指定可燃物は各消防機関の条例による規制基準があるが、金属スクラシプに対する規制基準はないので、対策会議などの場を通じて金属スクラップの規制基準の必要性を始め、火災防止対策のあり方について検討したい。

安全・安心な港づくりには避けて通れない課題としてしっかり取り組みを(意見)
【山口議員】金属スクラップ火災については、規制基準の必要性もふくめ火災防止対策を検討していくと答えていただいた。安全・安心な港づくりにはとって避けて通れない課題としてしっかり取り組んでいただきたい。

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