2014年9月議会

田口一登議員の個人質問②子ども子育て支援新制度(2014年9月19日)

 子ども・子育て支援新制度について
        名古屋市会議員 田口かずと

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保育の必要量の確保は認可保育園の整備を基本に
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【田口議員】子ども・子育て支援新制度について質問します。新制度は、これまでの幼稚園と保育園に加えて、新たな「認定こども園」や地域型保育事業を始めるというものです。最大の特徴は、これまでの市町村の責任によって保育を提供する現物給付の仕組みを改め、利用者と事業者の直接契約を基点にする現金給付の仕組みに変更したところにあります。高齢者福祉の分野では、介護保険化を機に営利企業の参入が一気に進みましたが、新制度も、保育分野への営利企業の参入促進など、保育の市場化をめざして提起されました。
 これにたいして、福祉としての保育制度の根幹が揺らぐという批判が広がり、本市会も国へ意見書を提出しました。国会では法案の修正が行われ、市町村の保育実施責任をうたった児童福祉法24条1項が復活。これにより、新制度になっても、保育所は現在と変わらず、市町村の責任で保育が実施されることになりました。新制度移行
 新制度への移行にあたっては、市町村の保育実施責任が最大限に活かされ、現行の保育水準を維持し、拡充するという観点が大切であると考えます。この点に立って、子ども青少年局長に数点お尋ねします。
 第1は、子ども・子育て支援事業計画における保育の必要量の確保についてであります。
 新制度の実施にあたっては、ニーズ調査をふまえて、子ども・子育て支援事業計画を策定することが義務づけられており、本市では現在、事業計画案のパブリックコメントが行われています。事業計画案では、2015年度から17年度までの3年間で、保育・教育事業の必要な量に対する不足分を確保するとして、3歳以上の保育が必要な子ども――「2号認定子ども」といいますが――については2461人分、3歳未満の保育が必要な子ども――「3号認定子ども」といいますが――については3163人分を確保する計画となっています。
 ところが、確保する方策は、保育所や認定こども園、小規模保育、家庭的保育などを「分離して考えず、一体的に確保していく」とされており、市町村の保育実施責任が明確な保育所で、どれだけ確保するのか明示されていません。
 本市が昨年実施したニーズ調査では、3歳未満の子どもを持つ保護者では、保育所の利用希望が50%にのぼる一方で、認定こども園は3.5%、家庭保育室は1.3%にすぎず、保育所への入所希望がきわめて高くなっています。
 保育の必要量の確保は、こうした保育ニーズからも、また、児童福祉法24条1項の市町村の保育実施責任を果たす立場からも、認可保育所の整備を基本に進めるべきではありませんか。答弁を求めます。

保育所の整備を中心に行ってきたが、新制度でも同様にすすめる(局長)
【子ども青少年局長】子ども・子育て支援新制度は、市が策定する「子ども・子育て支援事業計画」に基づき、必要量の見込みに対応した整備を計画的に行うことになっている。
 一方、これまでの待機児童対策は、直近の保育所入所申込の状況等を踏まえ、地域の実情も合わせ効果的な対策となるように進めてきました。
 平成22年度から平成25年度までに保育所を80か所新設するなど、これまで保育所の整備を中心に行ってきましたが、新制度でもこうした考え方に基づき、進めたい。

小規模保育事業の保育士配備の割合を引き上げよ
【田口議員】定員が6人から19人までの小規模保育事業には、3つの類型がありますが、職員の配置基準が異なっています。国の基準では、A型は全員が保育士ですが、B型は保育士の割合が2分の1以上に緩和され、C型は保育士資格がなくても市町村の研修を終了した家庭的保育者でよいとされています。
 児童福祉法はその第1条で、「すべての児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」と規定されていることからも、すべての子どもに教育・保育を受ける権利を等しく保障するためには、保育の基準に格差を生じさせてはならないと考えます。本市は、C型については本市の現行の基準に合わせて、「家庭的保育者は保育士とする」と基準を引き上げますが、B型については国基準のままであります。
 保育に格差を生じさせないためには、B型も保育者は全員保育士とすべきですが、国はB型の基準をA型とまったく同一にすることを認めていません。しかし、自治体が、国を上回る基準を設定することは認めており、北九州市は4分の3、札幌市、仙台市、横浜市では3分の2以上に引き上げることを予定しています。
 本市でも、小規模保育事業B型の保育士割合を国の基準以上に引き上げることを求めます。お答えください。

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現行水準を確保するため半数を保育士とする(局長)
【子ども青少年局長】小規模保育事業及びグループ実施型家庭保育室は、従事者の半数が保育士であることを求めています。新制度での小規模保育事業は、職員の資格要件等によりA型、B型、C型の3類型に分かれており、いずれの類型でも市の現行水準は確保しなければならないと考える。
 小規模保育事業C型は、国の基準では従事者の保育士資格に関する要件がないため、国の基準に上乗せし、半数を保育士とする予定ですが、小規模保育事業B型は、国の基準も従事者の半数が保育士であるため、本市の現行水準を確保できる。
 新制度では、保育士の割合が高ければ公定価格が加算されるということも踏まえ、引き続き保育の質が確保できるよう、努めたい。

民間社会福祉施設運営費補給金制度の堅持を
【田口議員】民間社会福祉施設運営費補給金制度は、公私間格差を是正するためのものであり、これにより民間保育所の保育士などの給与が、公立保育所の職員並みに保障され、国基準を上回る職員の配置が保障されています。
 先日、共同保育所から認可園となった保育所などでつくる愛知県小規模保育所連合会と名古屋市との話し合いがもたれ、私も同席させていただきました。ある民間保育所の父母の方が、「保育園の先生たちが、専門性を発揮して保育をすすめるためには、安心して働き続ける保障が必要です。新制度においても運営費補給金制度を堅持してほしい」と訴えておられました。
 保育水準を維持するために、民間社会福祉施設運営費補給金制度は堅持すべきです。明快な答弁を求めます。

これまでの経過や公定価格の水準等を総合的に勘案し、慎重に検討したい(局長)
【子ども青少年局長】民間社会福祉施設運営費補給金制度は、これまで、保育所の安定的な運営に一定の役割を果たしてきたと認識している。しかし、国の子ども・子育て支援新制度の詳細はまだ確定していない状況で、今後の予算編成の中で議論していくことになっている。
 子ども青少年局としては、これまで補給金制度で民間施設の処遇の向上を図ってきた経過や公定価格の水準等を総合的に勘案し、慎重に検討したい。

公立保育園は幼保連携型認定こども園へ移行すべきでない
【田口議員】幼保連携型認定こども園は現在、本市に2か所あります。これまでは認可幼稚園と認可保育所を一本化した施設でしたが、新制度では、内閣府所管の新しい単一の施設となります。
 国は幼稚園、保育所からの移行を推奨していますが、幼稚園関係者からすると、3歳未満児の保育については新たな取り組みであり、躊躇する向きがあります。そこで、国は幼稚園から移行する場合、3歳未満児の保育を必要とする子どもの定員は設けなくてもよいとしたために、多くが3歳未満児である待機児童への対策は後景に追いやられてしまいました。
 保育所から幼保連携型認定こども園に移行する際には、3歳以上の保育の必要がない子ども――「1号認定子ども」といいますが――の定員枠を設けなくてもよいとされています。本市では、1号認定子どもにたいする幼稚園の供給量は、現状でもほぼ需要を満たしており、保育所が認定こども園に移行して、1号認定子どもを受け入れる必要性はまったくありません。むしろ、幼稚園の経営を圧迫しますので、1号認定定員を設けるべきではありません。
 であれば、保育所が認定こども園に移行しても、政府が喧伝するメリット、「保護者が働かなくなったなど、就労状況が変わった場合も、通い慣れた園を継続して利用できる」というメリットはもたらされません。保育所の認定こども園への移行は、児童福祉法24条1項の位置づけをはずすことによって、市の保育実施責任を後退させるだけであります。
 公立保育所の移行については、市が判断することになりますが、以上の点から、私は、公立保育所は幼保連携型認定こども園に移行すべきではないと考えますが、いかがお考えですか。

様々な課題があり、制度全体の実施状況も踏まえながら、総合的に検討したい(局長)
【子ども青少年局長】国からは、市町村が幼保連携型認定こども園の普及に取組むことを求められている。しかし、公立保育所の幼保連携型認定こども園への移行には、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を保有した教育公務員となる保育教諭の配置や園舎・園庭の面積基準の充足などの様々な課題があり、制度全体の実施状況も踏まえながら、総合的に検討したい。

保育料は据え置きを
【田口議員】なごや子ども・子育て支援協議会の教育・保育部会から、「平成27年4月当初の新制度に基づく教育・保育施設の利用者負担の額は、現状維持を基本とすること」「第3子以降3歳未満児保育料無料制度も継続すること」との意見具申が示されました。
 この意見具申を踏まえて、保育料は据え置くことを求めます。お答えください。

 現状維持を基本とする意見具申の内容を踏まえ、予算編成で検討したい(局長)
【子ども青少年局長】子ども・子育て支援協議会「教育・保育部会」で議論し、「平成27年4月当初の新制度に基づく教育・保育施設の利用者負担の額は、現状維持を基本とする」との意見具申をいただきました。子ども青少年局も、現状維持を基本とする意見具申の内容を踏まえ、予算編成の中で検討したい。

上乗せ徴収は認めないようにすべき
【田口議員】新制度では、施設・事業者による保育料以外の上乗せ徴収や実費徴収を認めています。保育所ではこれまで、上乗せ徴収という考え方での費用徴収は行われていませんが、新制度では、「保育の質の向上を図るため」として、英会話や音楽教室、体操教室などのオプション保育が容認され、これに要する費用が上乗せされて、低所得者の負担が重くなりかねません。
 上乗せ徴収について新制度では、私立保育所は自治体と協議し承認を得るとされていますので、保育所における上乗せ徴収は、原則として認めないようにすべきではありませんか。また、認定こども園や小規模保育事業などでは施設・事業者ごとに設定できるので、高額な別料金を設定するところが出てくるかもしれません。直接契約の施設・事業者による上乗せ徴収についても、行政が関与する仕組みを設けるよう国に求めるべきではありませんか。

 保育所はケースごとに判断し、認定こども園等は適正な運用を指導したい(局長)
【子ども青少年局長】上乗せ徴収をする際には、額や徴収理由をあらかじめ書面表示をして説明し、同意を得ることが必要であり、従前よりも明確に手続きが定められました。
 保育所の上乗せ徴収では、この手続きに加え、自治体との協議が必要とされている。協議があったら、保育料が応能負担であることや、今後、国から示される制度運用の詳細を踏まえて、個々のケースごとに判断をする必要がある。
 認定こども園等、直接契約の施設・事業者による上乗せ徴収は、幼児期の学校教育・保育の質的改善を図るという制度の趣旨を踏まえ、適正に運用されるよう、指導したい。

保育の質の向上という新制度の趣旨をふまえ、運営費補給金制度は堅持を(意見)
【田口議員】子ども・子育て支援新制度につきましては、今後の委員会における条例案の質疑に委ねますが、1点だけ要望させていただきます。
 民間社会福祉施設運営費補給金制度について、この制度が仮に維持されないとすると、民間保育所の職員の給与が下がり、加配もできなくなり、保育の水準が下がってしまいます。新制度は、保育の質の向上をうたっているのですから、保育の質の水準が下がるようなことは絶対あってはならない。ですから、運営費補給金制度は、今度の予算の中できちんと確保して堅持されることを強く要望しておきます。

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