名港議会 一般質問③ 港湾運営会社と国際戦略港湾について(2013年11月5日)

港湾運営会社制度と国際コンテナ戦略港湾政策について

民の視点を強調する港湾運営会社に国が出資を検討するとはどういうことか
【山口議員】今年の3月定例会でも私はこの問題について質問しました。少しやり取りを振り返らせてください。自席1
 当局からは、港湾運営を一元的に管理することになる特例港湾運営会社は「公共性・公平性の確保」ができ「利益を追及するのではなく、利用者に(利益を)還元できる主体である必要がある」と説明がありました。私は、だとすれば、この会社は利潤追求が目的の株式会社はふさわしくない。利益を追求せず、公共性や公平性を確保するのはまさしく公が担うべき役割で、どうしてこの会社の設立が民営化の中心課題なのか理解に苦しむ、と指摘しました。
 企画調整室長は、利用者ニーズに対応した低廉で質の高い港湾サービスの提供を目指し、港湾運営の一層の効率化を図るため、民の視点を導入して株式会社によって行う。しかし公共性や公平性の確保も必要なので、指定後も国及び港湾管理者が監督を行っていく、と答弁しました。
 私は「特例港湾運営会社は自ら積極的に利益を出すものではないが、株式会社化により民の視点を導入して、港湾運営の効率化を図ると言うが、利益を出すのが目的ではない会社に出資する会社があるのか?」と尋ねました。答弁は、「出資は今後の課題」というものでした。
 その出資について、国が港湾運営会社への出資を検討すると言い出しました。8月に公表された「国際コンテナ戦略港湾政策推進委員会 中間とりまとめ」には「統合する港湾運営会社の体制のあり方」について「港湾運営会社への民間出資比率を3割以上としている基準の緩和、並びに国家的利益の確保等の観点からの港湾運営会社に対する国の出資など、港湾運営会社の出資構成の見直しに向け取り組む。」と書かれています。
 民の視点を強調していたのに、公共性の確保が目的なら自治体直営なり公社公団方式で十分です。株式会社化せよ、と言っておきながら今度は国が出資する、とはいったい何なのか、理解に苦しみます。民の視点を強調する港湾運営会社に国が出資を検討するとはどういうことか。民の視点を強調する政策から、国の関与を強める方向に転換するようです。国が出資を検討することについて、みなさんはどう受け止めているのですか。

地域的事情より国家的利益を第一に考えられた
【企画調整室長】国際コンテナ戦略港湾政策推進委員会の中間とりまとめは、「国際コンテナ戦略港湾が極めて広い背後圏を有する広域・国際インフラであり、より全国的・広域的な視点での集荷対策を迅速な意思決定機構のもとで実行していくためには、地域的事情よりも国家的利益の確保・最大化を第一に考えた、言わば部分最適よりも全体最適を優先した港湾運営を実現する必要がある。」とされ、港湾運営会社に対する国の出資を検討されている。
 国が検討している出資は、まだ中間とりまとめの段階であり、出資の意義や効果、名古屋港への関わりなど明確でないので、今後の動向を注視したい。

名古屋港は国からの支援は期待できない
【山口議員】また「中間とりまとめ」には、東西の二大港湾に貨物を集めて、予算も重点的に投入する、だから国も東西の運営会社に出資する、と読めます。名古屋港は、港湾運営会社を作らされても、国際コンテナ戦略上、国からの支援はあまり期待できないのではありませんか。名古屋港を事実上無視するのが国のコンテナ政策ではありませんか。

上物へ最大8割の無利子資金の貸付等で支援
【企画調整室長】国も名古屋港の重要性が理解され、港湾運営会社に係る部分に、特例的に国際コンテナ戦略港湾と同等とみなしてその規定が適用され、上物施設整備への最大8割の無利子資金の貸付等の支援が受けられるよう措置されている。

中間とりまとめをどう読んだのか
【山口議員】中間とりまとめをどう読んだのか。聞かせてください。

取り組む課題を明確化し、具体的な取組を加速させる
【企画調整室長】国の中間とりまとめは、国際コンテナ戦略港湾政策全体を深化させるとともに、国、港湾管理者、港湾運営会社、港湾関係者それぞれが取り組むべき課題を明確化し、具体的な取組を加速させるためのもの。

港湾運営会社も外郭団体になるのか
【山口議員】港湾運営会社の性格がますます不明瞭になりつつあります。出資状況からみると、この港湾運営会社も名古屋港管理組合の外郭団体になるのですか。この会社の社員の給料は公務員準拠、管理組合準拠になるのですか。

外郭団体となるが業務内容や組織体制、人員構成、社員の給料などは検討課題
【総務部長】本組合の出資・出えんが資本金等の25%以上等の要件を満たし、かつ、本組合が指導調整等を行う必要がある団体を外郭団体と指定。現在、外郭団体職員の給料は、本組合からの派遣職員等は本組合の給与制度に準拠し、その他の固有の職員は当該団体が経営状況や他団体との均衡などを踏まえ決めている。
 特例港湾運営会社の業務内容や組織体制、人員構成は現在検討しており、社員の給料も検討課題です。

社長だけ企業人で「民の視点」が確立できるのか
【山口議員】社長だけを外から企業人を持って来れば「民の視点」が確立できるのですか。

専門的な知見を有するスタッフの配置などで利用者ニーズに柔軟に対応できるようにしていく
【企画調整室長】民の視点を導入し、効率的な運営を実現するため、民間企業経営経験者からの社長の登用を始め、集荷や海外主要港湾の専門的な知見を有するスタッフの配置、株式会社組織での経営の自由度や迅速な経営判断の確保などによって、利用者ニーズに柔軟に対応できるようにしていく。

必要以上の国の関与はお断りし、独自のスタンスで港湾運営を(再質問)
【山口議員】民間企業から儲けを出すことが目的でない港湾運営会社に出資を募っても集まらない、社員の給料は公務員に準ずる、社長が民間人なら、それだけで民間の力が発揮できるというのは無理がありますよ。国が作れといったから、わざわざ港湾運営の株式会社をつくるのは問題です。外郭団体を新たに増やすのですか。
 国のコンテナ政策で、名古屋港は、貨物を集めるというより、貨物を創りなさい、と位置づけられている。国の政策変更に一生懸命すがりつき、名古屋港は国際コンテナ戦略港湾に準じた港湾です、といくら叫んでも、国の関心は、東西二つの港湾に貨物を集中させる。それが選択と集中という国策です。
 国の支援を受けられるように会社をつくることと、実際に支援があるかどうかは全く別なのです。管理者の言葉を借りれば、名古屋港が輸出でいくら稼いでも、稼いだ分はみんな国を通して、東西二つの港にいってしまうのです。
 名古屋港=伊勢湾は独自にがんばって、というのが国のスタンス。だったらいっそのこと、名古屋港は、必要以上の国の関与はお断りする、独自のスタンスで港湾運営にあたるという姿勢を確立すべきではありませんか。
 国際コンテナ戦略港湾に関する国の政策動向と名古屋港の位置について、専任副管理者の考え方をうかがっておきたい。

国の良いところは取り入れ、民間の先駆的な取り組みは維持・発展させる(副管理者)
【専任副管理者】我が国の経済と産業の成長を牽引する「国際産業ハブ港」の実現を目指す本港の港湾運営は、国の制度のメリットを活用しながら、飛島ふ頭南側の自働化コンテナターミナルや鍋田ふ頭の第3バースにおいて民間活力を積極的に導入し、効率化を図ってきた。今後も国の制度の良いところは取り入れつつ、これまでの民間の先駆的な取り組みは維持・発展させ、本港と背後圏の発展に繋がる港湾運営に努める。

あまりに一般的な答え(意見)
【山口議員】港湾民営化と国際戦略港湾政策については、副管の答弁はそつがないとも言えますがあまりに一般的です。もう少し聞きたいこともありますが、国際競争力強化特別委員会でも議論できると思います。今日はこの程度にしておきます。

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