名港議会 一般質問① 国際バルク戦略港湾について(2013年6月11日)

港湾法の改正で国際バルク戦略港湾の何が変わるのか
【山口議員】港湾法の改正により、国際バルク戦略港湾が「ばら積み貨物の輸入拠点の形成」として法律上も位置づけられました。かといって格段の予算措置がとられたわけではありません。また国会審議でも、このバルク戦略港湾が穀物メジャーをはじめ多国籍化した大企業の支援策に他ならず、新たな税金の浪費につながる大型開発だとの厳しく指摘されています。そもそも戦略とよべる代物なのか、私には疑問です。名港 山口自席
今回の港湾法の改正で、国際バルク戦略港湾について何が変わるのか、法改正の狙いは何か、管理組合に新たな役割が生じるのか、国庫補助など本港にとっての経済的メリットはあるのか、など選定された港への影響についてまずうかがいます。

大型船活用等で企業間連携を促進する
【企画調整室長】港湾法の一部改正で、一定の要件を満たす港湾を「特定貨物輸入拠点港湾」として指定し、指定された港湾の管理者が作成する計画に基づいた事業者の施設整備への支援や連携を促進する制度の創設等がおこなわれた。これは本港の国際バルク戦略港湾施策に掲げている「大型船舶の活用等による企業間連携」の促進に資するものであり、今後ともしっかりと取り組んでまいりたい。

2,360億円の整備で物流コストは下がるのか
【山口議員】国際バルク戦略港湾の費用対効果について質問します。
 昨年の日本航海学会の講演会で、国際バルク戦略港湾政策の費用対効果を検証したある研究が発表されました。
 研究者の問題意識は、「各国際戦略港湾の計画書では、大水深化にともなう港湾設備の整備にかかるコストと、大型船の大量一括輸送によるコスト削減効果の比較による費用対効果が不明」なので、国際バルク戦略港湾政策の効果について「港湾の大水深化による船舶の大型化と、連携港湾を活用した場合の物流コスト(及びCO2排出量)の削減効果を検証する」点にありました。具体的には鉄鉱石のバルク戦略港湾である千葉県木更津港を対象にした研究です。
 その結論だけ紹介します。
 木更津港のバルク戦略港湾化による鉄鉱石の輸入に関する物流コストの削減を試算しています。船舶の大型化で運行する船舶数を減らし、寄港回数や航続距離の減少で燃料代も節約でき合計で年間約1,100万USドルのコストが削減できる。さらに連携港湾を活用し、木更津港と名古屋港の連携でプラス240万USドル、合計で年間約1,340万USドルのコスト削減になる。この金額を2010年の1ドル88円の為替レートで計算すると、船舶の大型化で約9億8千万円、連携港湾を活用した場合で約11億8千万円です。
 一方、バルク戦略港湾のための大水深化には木更津港で1,500万㎥の浚渫が検討されているがその費用は約600億円になる。その他に荷役設備の拡充・整備の費用も必要になるとしています。
つまり年間10億~12億円のコスト削減のために600億円以上の費用をかけることになる。元を取るのに約50年かかります。結論として「今後の国際バルク戦略港湾政策の推進に当たっては費用対効果についての議論が必要であることが明らかとなった」と研究をまとめています。わかりやすい指摘です。
 さて名古屋港ではどうでしょうか。
 名古屋港でのバルク戦略港湾の整備にかかる費用は、育成プログラムで木更津港とは一桁違う2,360億円と試算されています。その結果、名古屋港が扱う穀物量が160万トンから200万トンへ伸びる、と推計されています。
 さて、それでは結果として輸入穀物の物流コストはどれだけ下がるのか。費用対効果が判断できるよう具体的に示してください。

年間で約53億4,000万円の削減効果がある
【企画調整室長】「名古屋港国際バルク戦略港湾の選定に向けた計画書」において、物流コストは、大型船舶の活用や周辺港湾への連携輸送等により、現状と比較して、年間で約53億4,000万円の削減効果があると試算した。
 穀物の安定的かつ安価な供給に貢献するとともに、県民・市民の食の安全・安心の確保や国内における産業活動の維持・強化に寄与し、同施策を推進しない場合は、物流コストの増加や穀物の供給不安、背後産業の空洞化等の影響が懸念される。

コスト削減での船舶の最適な船のサイズは
【山口議員】なお、この研究発表のやり取りでは、船舶の大型化にも限界があり、寄港回数の減少は港での倉庫費用など保管費の増加も招く。陸上での保管費等を考慮すると、コスト削減に最適な船の大きさというものを考えなければいけない、との指摘もありました。
 大型化イコール最高のコスト削減とは言い切れないのではありませんか。穀物バルクの輸入コストの削減には最適な船型はどんなサイズなのか、よく検討する必要があると思いますがいかがでしょうか。

ポストパナマックス船への対応を検討する
【企画調整室長】大型船舶による一括大量輸送のスケールメリットを活かすことで、物流コストにおける一定の削減効果がある。トウモロコシをアメリカ中部の穀倉地帯から海上輸送するにあたり、その大半がパナマ運河を経由して輸送されています。現在、同運河の拡張工事が進められており、拡張後は、スケールメリットを活かすために、輸送船舶が大型化すると考える。このため、現時点で、穀物輸送における受け入れ体制が整っていないポストパナマックス船の対応を本港の国際バルク戦略港湾施策の1つとして位置付けている。

元をとるのに40年以上。見直しを(再質問)
【山口議員】削減コストは年間53億4千万円との答弁でしたが、かかる費用は2360億円ですよ。元をとるのに名古屋港でも40年以上かかります。費用対効果からみてどう思いますか。この戦略については費用対効果の観点から見直す必要がありませんか。
バルクについては港湾管理者の役割も重くなります。港湾管理者は施設の建設や維持管理ばかりでなく、財政上のバランスや産業政策にも十分な目配りができなければ務まりません。
 国の港湾政策について、費用対効果の観点から見直しを迫るべきだと考えますが、この点は専任副管理者に答弁を求めます。

価格や食の安全・安心、雇用創出等にも資する
【副管理者】コーンスターチ用のトウモロコシの輸入で、東海地区の港湾とともに全国シュアの7割を占める本港は、国際バルク戦略港湾に穀物で選定されています。この施策の実現に必要な全体事事業費は、約2,360億円で、そのうち公共事業は851億円、民間事業は1,509億円です。
 物流コストの削減効果は、年間で約53億4,000万円。物流コストの削減のみならず、食品・医薬品等の穀物を原材料とする多様な商品の価格に反映されるとともに、食の安全・安心の確保、雇用創出等の地域経済活性化にも資すると考えます。
 今後とも、本港の国際兢争力強化、ひいては、国際産業ハブ港の実現に向けて、世界の貿易環境や社会経済情勢、また利用者や地域の要請等の本港を取り巻く環境を的確に捉えながら、長期的かつ戦略的な視点に立って、更なる発展と利用の促進を図り、地域産業と県民・市民の暮らしを支えていくことが名古屋港の使命と考えております。

食の安全・安心の確保なら食料の自給率こそ高めるべき(意見)
【山口議員】公共事業851億円、民間事業1509億円とのことだが、民間事業者のかける費用はコスト削減分から控除しなければいけなくなる。価格に反映されるのはコスト削減分ではなくかかった費用ということになりはしないか、かえって心配が増えました。食の安全・安心の確保とも言われたが、それなら全量を海外に依存していることこそ問題です。穀物をはじめとした食料の自給率こそ高めるべきです。それに逆行するのがTPP、輸入拡大一辺倒の政策がそもそもまちがっていると指摘しておきます。
戦略港湾については、後日の特別委員会でも議論させていただきます。

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