2013年6月定例会

岡田ゆき子議員の個人質問①・生活保護制度の改悪と市への影響(2013年6月20日)

 就学援助について

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基準引き下げで就学援助から外れる世帯はあるのか

【岡田議員】生活保護制度の改正等による本市の影響と対応について質問します。本市の生活保護世帯数は、リーマンショック前の2007年と比べて、1.7倍を超えており、デフレ不況が続く中で生活が維持できない厳しい状況があると考えます。私のここ2年間の生活相談でも、収入低下による生活困難な事例は少なくはなく、保護申請の際には区役所の担当職員さんの助けをいただきながら、生活をどう立て直していくのか、本人と向き合い相談することが多くなっています。生活保護グラフ

 8月からの生活扶助基準の引き下げが、今年度予算に組み込まれました。引き下げの対象は、受給世帯の96%に及び、今後3年間で平均6.5%の引き下げとなります。憲法25条に基づく健康で文化的な最低生活のラインをさらに低くする、重大な問題であると考えます。生活保護法の改正案について、日本弁護士会、愛知県弁護士会は問題を指摘する声明を出し、1つは申請の要式化により、違法な『水際作戦』を合法化するものであること、2つは、扶養義務者への通知の徹底で保護申請に対するいっそうの萎縮的効果を及ぼす点を上げ、改正案の撤回・廃案を求めています。

 大きく3つの点についてお聞きします。そのうち2点は子育て世代の関係。今回の引き下げは、子育て世帯に影響が大きいことも指摘しておきたいと思います。

 岡田自席2一点目は、生活扶助基準の引き下げによる他制度への影響についてです。当初、厚生労働省は、生活扶助基準の引き下げにより他制度へ影響が出ないように検討していくと説明していましたが、5月20日の全国係長会議で、「他制度への影響は、各自治体で適切に判断し対応する」ようにと、地方自治体に課題を押し付ける無責任な説明となりました。国の無責任さはゆるせませんが、現実問題として、名古屋市が対応していかなくてはいけません。

 就学援助制度は、本市の場合、保護受給世帯と、保護基準の1.0倍の収入である、準要保護世帯の方が対象で、子育て世代の厳しい家計状況を反映し、就学援助を受ける家庭は増え続けています。今年8月から生活扶助基準を下げることで、現在、就学援助を受けている方や8月以降に申請する方で、対象から外れる世帯が出てくるのでしょうか。

 基準は1年間適用なので今回は影響しません(教育長)

【教育長】就学援助で設定した所得基準は、年度当初に示したものを1年間適用するため、今年8月から生活扶助基準が下がっても、平成25年度中は、就学援助の所得基準は変わらず、現在、就学援助を受けている方や、8月以降に申請する方に影響は生じません。

 来年度以降への影響を避ける施策をとれ(再質問)

【岡田議員】就学援助について、今年度は、影響はないと確認できました。全国係長会議でも、引き下げによる影響が及ばないように自治体で対応を、というのが国の方針ですから、来年度以降、影響が及ばないようするために、いったん引き下げていた就学援助の準要保護基準を1.0から1.3倍にする、対策を講ずる必要があるのではないですか?再度、教育長お答えください。

 国の動向などを注視しながら検討してまいりたい(教育長)

【教育長】平成26年度以降の対応につきましては、国の説明会では生活扶助基準の見直しに伴う就学援助など他の制度への影響について、それぞれの制度の主旨や目的を理解してできる限り影響が出ないように対応すること、という基本的な考え方が示されました。今後地方への財源措置があるのかないのか国の動向などを注視しながら検討してまいりたいと考えております。

 就学援助の基準を上げなければ回避できない(意見)

【岡田議員】必ず就学援助の基準を上げなければ、引き下げの影響は回避できません。国の財源と言われたが、名古屋の施策でやっていることなので名古屋の子育て世代を守という点では、決断して頂きたいと思います。

 生活扶助基準引き下げの内容と子育て世帯への影響は

【岡田議員】生活扶助基準の引き下げへの対応について、今回の引き下げは、子育て世代への下げ幅が最大10%に上っています。特に多人数世帯に引き下げが集中しています。標準的な子育て世帯の生活扶助費の引き下げは月額でいくらになるのでしょうか。今回の引き下げで、子育て世代への影響をどのように考えていますか。

4人世帯で6,670円の減額(局長)

【健康福祉局長】40歳代の夫婦と小・中学生の4人世帯では、住宅費や教育費など除いた生活扶助基準額が月額200,050円のところ、平成25年度につきましては、8月からは月額193,380円となり、6,670円の減額となる。

 独自の施策が必要ではないか

【岡田議員】国の生活保護基準が不十分であるため、自治体では独自で経済的支援を行ってきました。本市の場合、学齢児等がいる世帯には「修学旅行参加支度金」と「学童服購入資金」の支給があります。また、今年度からは学習支援サポート事業を試行的に始めるなど、貧困の連鎖を断ち切るため、こうした子どもに特化した支援は当然必要です。

 以前には、小中学校入学祝い金や、卒業祝い金などもありました。今回の引き下げによる子育て世代への影響を最小限にするため、せめて引き下げた分、以前の祝い金の復活など、独自の施策を行うことが必要ではないですか。健康福祉局長お答え下さい。

教育扶助や入学準備金の支給の他、学習サポートモデル事業を7月から3区で実施(局長)

【健康福祉局長】子育て世帯の児童に対しては、学校の給食費や学習支援費などの教育扶助があるほか、小・中学校へ入学する際の入学準備金などが支給されている。その他、本市独自の施策として、いわゆる「貧困の連鎖」を防止するため、保護世帯の中学生に対し、学習支援や子どもの居場所づくりを実施する「学習サポートモデル事業」を本年7月から3区で実施する。

水際作戦の強化など、申請手続きへの影響はないか

【岡田議員】改正案の第24条で、保護開始の申請には、必要な書類の添付を求める規定が新たに加わり、「要保護者の資産および収入の状況」「扶養義務者の状況」などの提出を求めています。

 先日、病院のケースワーカーからお話しを伺いました。「病院に救急搬送される患者さんの中には、住所不定、資産不明の方がおられるが、生命優先で受け入れ、治療を開始している。その場合、現行では、口頭でも申請を受けつけ、保護を開始するが、改正により、申請書、資産や収入状況、扶養義務者の状況等がそろわない場合は、保護開始にならないのか」不安だと言われました。書類が整わなければ、生活保護の申請を受け付けない、これが「水際作戦」と言われ批判が強まっている理由の一つです。この批判を受けて、全国係長会議では、改めて「保護の意思が確認されたものに対しては速やかに保護申請を受け付けるとともに、保護の申請書類が整っていないことをもって申請を受け付けないということのないように」と説明がされました。

 改正案には、申請時の必要な書類提出が必要としながら、解釈では現行と変わりないと説明しています。名古屋市の取り扱いも現行と変わりないと認識してよいのか。健康福祉局長にお聞きします。

申請時の書類義務付けは一部修正され、現行と変わりない(局長)

【健康福祉局長】今回の改正で、申請時の書類の提出が義務付けられたが、国会の審議の中で「特別の事情があるときはこの限りではない」と一部修正された。国の説明では、書類の提出について、現行の運用の取り扱いを変更するものではないと聞く。

扶養義務者への通知で申請しにくくなるのではないか

【岡田議員】改正案には、「扶養義務者へ書面をもって通知しなければならない」ことが新たに加わりました。勤め先が倒産したある男性は、派遣社員となり、短期間の仕事しかないため、仕事がないときは貯金を切り崩して、切羽詰まると姉に数万円借りてしのいできました。現在は、姉から金銭的援助はできないことを本人の申し出で確認し、保護開始となりました。今回の改正により、扶養義務者に対し、収入や資産などの扶養状況を求め、親族に通知するとしていますが、生活が困窮している人と親族との間では、交流が途絶えている場合も少なくありません。親族間の軋轢を恐れて生活保護の申請を断念する人が増える危険があります。この点について全国係長会議では「扶養義務の通知」は「あくまで法制上の整理」とし、「通知の対象は極めて限定的な場合に限る」と説明しています。

 改正案に「扶養義務者への通知」が加わることで、現行よりも、当事者が生活保護の申請に抵抗を感じ、申請しづらくなるということはないですか、お答えください。

今も通知しておりかわりない(局長)

【健康福祉局長】扶養義務者に対する通知が法に明記されたが、従来より扶養が期待される方には通知しており、現行と大きく変わるものではない。現在、生活保護法の改正案が国会で審議中のため、詳細な取り扱いが示されてないが、保護の申請権を侵害することのないよう、引き続き適正な生活保護の実施に努める。

保護の申請権を侵害することない取り組みを(意見)

【岡田議員】保護法の改正案について、お聞きしましたが、法案が通ったとしても、名古屋市は現行と変わりないということを確認しました。であれば、法律を変える必要は全くないということです。18日付の毎日新聞の「記者の目」という記事で、「制度見直しを議論する社会保障審議会特別部会に受給者側も自治体側もそこに含まれていな」かったことを指摘して、「厚労省は現場の不安や懸念に向き合ってほしい」と述べています。現在、国の基準よりも少ないケースワーカーを早期に充足させることを求めたいと思います。

 基準の引き下げは、受給者だけに限らず、他の制度へ社会保障にかかわる制度へのマイナス影響が起きるわけです。先ほども子育て世代についは標準的な世帯、月に6670円も減額されるというのは本当に厳しいことだと思います。こういう点では名古屋市独自の支援は必要。今回の生活保護法の改正案は、保護の最初の窓口である申請を厳格化し扶養義務者への調査の義務化など、生活保護事態の申請をさせない意図が盛り込まれたものであり、改正案自体を撤回すべきだ思います。名古屋市に対しては、局長が言われたように、保護の申請権を侵害することないよう引き続き、保護行政に取り組んでいただくことを求めて、質問を終わります。

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