2013年2月定例会

山口議員の議案反対討論(2013年度予算 3月22日)・・・保育料値上げ・市民犠牲の予算には賛成できない。金持ち減税を認め、市民犠牲放置の修正案も認められない

 私は日本共産党名古屋市会議員団を代表して、ただいま議題となっている2013年度名古屋市一般会計予算案、及び同修正案について、どちらにも反対の立場から討論します。

大企業と富裕層優遇の減税継続予算
 反対する理由の第一は、大企業・富裕層優遇の市民税5%減税をまだ継続する予算となっていることです。
 2012年度、個人市民税の減税額がいちばん多かった人の減税額は517万円でした。つまり市民税を約1億円納めていただいた。その方にはいくら課税所得があったのでしょうか、約17億円です。なおこの所得には分離課税の対象となる株の取引で得た利益は含まれていません。
 17億円もの所得がある人に500万円減税していったいどんな消費誘発効果があるのでしょうか。

市民の可処分所得は大幅に減少
 一方で、一カ所当たり25万円×16カ所、合計でもわずか400万円のほんのささやかな学童保育への助成金は全額廃止です。名古屋市は、支えるべき相手をまちがえているとしか思えません。
 しかも減税の直接の対象となる納税義務者は108万人、226万市民の半分にもなりません。さらに市長が減税の恩恵が及ぶと主張する納税義務者に配偶者など扶養控除の対象者を加えた市民の数は、前年より5千人も減っています。減税効果が及ばない市民が増えているのです。

中小企業の大半を占める赤字企業に恩恵のない減税
 法人税はどうか。景気は回復傾向と言われますが、あなたが市長になってから、市内では欠損法人が7割を超えた状態が続いています。
 法人市民税は15%も伸びる見通しで予算を立てました。前年比で約80億円も税収が伸び、法人市民税の減税予定額も昨年秋の見通しよりも3億円増えて34億円です。しかし大企業には国の税制改正によって70億円もの法人市民税が既に事実上減税になっています。 その一方で個人市民税の見通しはどうでしょうか。勤労者の給与所得の伸びはわずか1%です。年金生活者の所得に至ってはマイナス0.3%、所得が減ると見込んでいます。

高齢者の負担増は悲惨
 高齢者世代の負担増は、あらためて振り返ると、とんでもない数字です。
 65歳、年金額20万円の単身者の負担を例にとると、年間の税と保険料の負担合計は、10年前には5万8千円でした。それが、老年者控除の廃止、介護保険料、国保料のあいつぐ値上げ、住民税の減免縮小などで4年前の河村市長就任時には31万1千円になりました。庶民減税に期待が高まったのも当然です。
 ところがこの4年間で負担はさらに4万6千円も増え、現在では年間35万7千円、年金2カ月分がほとんどなくなってしまうのです。さらに医療費や介護の費用負担が重くのしかかるのです。

育て世帯には増税と保育料値上げ
 子育て世代はどうでしょうか。河村市長は、5.1%、年額では平均で1万1076円の保育料値上げを提案しました。しかしその前に、新年度は年少扶養控除の廃止で約50億円、約27万の子育て世帯に平均で1万8千円の増税です。保育料値上げとのダブルパンチはとんでもありません。
弱いものいじめの市政
 さらに市長が配慮したという非課税世帯はどうでしょうか。生活保護基準の引き下げで、4歳の子どもがいる標準3人世帯では月額17万2千円の生活扶助が3年後には1万6千円も削減されます。
 市長は、子育て世帯を支える、国はけしからん、と言いながら、何の手だても予算に盛り込んでいません。
 若者の多くが正規雇用を求めて必死なのに、市は行財政改革の名で、むしろ非正規・不安定雇用を率先して増やしているじゃありませんか。
 名古屋市が支援すべきは、国による減税の恩恵を既に受けている大企業や富裕層ではなく、国の悪政によって生活が脅かされている市民、とりわけ社会的に弱い立場に置かれている人々ではないでしょうか。
 ところが河村市長の減税は、負担増に苦しむ市民にとって何の救いにもなりません。どこからみても市民の間の経済的格差を助長するだけです。即刻、中止すべきです。

「行革」の名で市民犠牲次々
 反対する第二の理由は、市民に犠牲を強いる施策を次々に強行する予算となっていることです。 新年度予算は、保育料の2年連続大幅値上げや国民健康保険料の算定方式の変更に伴う保険料引き上げなどの負担増を市民に強いるとともに、さきほど触れた学童保育助成への助成=負担緩和措置の廃止、公立保育園の廃止・民営化の推進、民間保育所運営費補給金の削減、障害者福祉施設運営費補助金の削減、志段味図書館への指定管理者制度の導入など、市民サービスと行政責任を後退させるものが目白押しです。

減税のしわ寄せで値上げやサービスカット
 保育料の値上げなどは「行財政改革」と称して取り組まれていますが、本来、税金のムダ使いを是正すべき「行財政改革」が、市民生活に必要な事業を削り、市民に負担を強いるものとなっているのは、市民税5%減税を継続するための財源確保が至上命令とされているからです。

「65歳を守る」と言えない市長
 敬老パスについても、市長は本会議で「敬老パスは、守る。守るためにどういうことが必要か考えたい」と答弁された。委員会で私は「いったい何を守るのですか」とたずねました。当局は「持続可能な制度を守る」としか答えず、65歳からの「現行制度を守る」とはついに一言も答えませんでした。
 「守るために見直す」という詭弁は通用しません。行政評価の判定結果をお墨付きにした市民サービスの低下を認めるわけにはいきません。
  しかも企業を対象とした行政サービスや補助金も数々有りますが、「行財政改革」としてカットしたものはあるか、とたずねると「見当たらない」という答弁です。減税のしわ寄せはすべて市民に集中しているのです。

修正に値しない修正案
 減税による市民サービス低下の焦点の一つが保育料の値上げでした。ここで4会派提出の修正案に賛成できない理由について若干述べさせていただきます。
保育料値上げ撤回は当然
 保育料の値上げを撤回させることに私たちは何の異論もありません。保育料の値上げ撤回には大賛成です。
 しかし、修正案はそれだけです。「減税しながら保育料を値上げするのはけしからん」と議論しながら、修正案では、市民税減税そのものには指一本触れていません。
減税にも、ムダの継続にも、国保料の値上げにも何も言わない修正
 修正案は、減税が福祉や市民サービスカットの元凶だと言いながら、肝心かなめの河村減税を容認するものです。
 この修正案へ賛成することは、修正部分以外は原案にすべて賛成、減税や他にもある福祉や市民サービスのカットも認めることになります。だから私たちはこの修正案には賛成できません。
 もし、4会派のみなさんがほんとうにいまの減税が市民サービスのカットをもたらす張本人だと考えるのならば、正面から堂々と市民税減税を中止して福祉や保育の財源を生み出すことを提案すべきではありませんか。
 どうしてそうしないのか、私は残念でなりません。

待機児対策は認可園の増設こそ
 待機児童対策についても、いま必要なのは、安心して就学前まで入所できる認可保育園の増設です。いま増えているグループ型家庭保育室などでは、園庭がない、給食もない、3歳での転園の保障がない、資格を持った保育士も少ない、という不安の声が聞こえてきます。
 認可保育園に入れず、やむなく職場近くの大型店内に設置された認可外保育所に子どもを預けたお母さんの話です。
 「今日は散歩に行ってきました」というので見せてもらった写真を見て絶句、大型店の駐車場を園児が散歩している写真だったのです。思いっきり土の上で遊ばせてやりたい、と泣きそうになったといいます。
 子どもたちの安全と健やかな成長を願うならば、認可保育園の増設こそ待機児童解消の本道です。公立保育園の廃止など保育の営利化・民営化を減税のために行財政改革の名で進めることは大きな問題だ、と指摘しておきます。

新たな浪費へと足を踏み出す危険
 そして反対する第三の理由は、新たな税金の浪費へ危険な一歩を踏み出す予算になっているからです。

百数十億円もの地下道は誰のため
 リニア中央新幹線の開業を前提にした「名古屋改造」の検討、笹島には巨大地下通路の建設など、新たな税金のムダ使いにつながる大型開発事業が開始されようとしています。
 今回は市長選挙を控えているために予算計上が見送られた事業、名古屋城天守閣の木造再建、SL博物館構想など、河村市長の「本物」志向が具体化されるならば、税金の浪費はさらに拡大されることになります。

 

巨額の税金投入で企業誘致のためのインフラ整備・・・金城ふ頭
 金城ふ頭の開発も、新たな際限のない税金の浪費につながりかねない様相を呈してきており、抜本的な見直しが必要です。
 テーマパーク進出のための集約駐車場の整備などに約216億円もの事業費を投入する計画が明らかにされました。テーマパークの誘致のためなら基盤整備の名目でいくらでも税金を使っていいのでしょうか。
 わざわざ市営駐車場を150億円もかけて建設すると言いますが、利用客の大半は民間企業のお客さんです。
 民間でできることは民間で、というスローガンはどこへ消えたのですか。テーマパークの駐車場は民間企業が自前で用意するのが当然です。

イタリア村でさえ自前でやったのに
 サイエンスパークBゾーンも誘致のための基盤整備と称していったいどれだけの税金を使ってきたのか、もう忘れたのですか。港といえばイタリア村の失敗も苦い教訓ですが、あそこですら立体駐車場はイタリア村が全額負担して整備していました。
 呼びこみ型の開発は税金の浪費につながることを厳しく警告しておきます。

「福祉と防災のまちづくり」への予算組み替えを
 日本共産党名古屋市会議員団は、市長提案の予算にただ反対するのではなく、予算案の組み替えを提案いたしました。
 市民税減税の中止で112億円、その他、不要不急の大型事業の中止などで合計124億円の財源を確保します。
 その財源を国保会計や介護保険会計へ繰り出し保険料の負担増を押さえます。奨学金返還支援制度で学生や若者を応援します。
 就学援助の対象を広げ、30人学級を小学三年生まで拡大し、小学校給食も無料にできます。住宅用太陽光発電設備の設置補助や住宅リフォーム助成制度の創設で、エネルギーの地産地消と地元中小企業の仕事と雇用を増やします。
 減税をやめれば、市民のくらしを支え、内需を拡大し、なごやの地域経済を持続的な成長軌道へ乗せるための積極的な施策がたくさんできるではありませんか。
  本物の行財政改革は、まず市民税減税をやめることだ、とあらためて指摘をさせていただきます。

誤解を招いた「発言」の撤回こそが、友好都市との交流をすすめる近道
 最後に、予算に計上された「南京市友好都市提携35周年記念事業」1110万円に関して触れないわけにはいきません。
 ご承知のように、現在、南京市との友好都市交流は中断しています。河村市長のいわゆる南京虐殺否定発言の影響が続いています。
 南京市からは、市長発言の撤回と謝罪がないかぎり、交流は再開できないとの意向が示されています。自ら提案した予算を自らの発言で執行不能な状態にして平気な顔をしている人に、市長の資格はありません。
 歴史の事実から謙虚に学ばず、アジア諸国への侵略戦争と植民地支配への真摯な反省がない人に、市長の座はふさわしくありません。
 いま安倍内閣が消費税増税、原発再稼働、TPP交渉参加、そして憲法改悪を進めようとしています。そんなときだからこそ、名古屋のリーダーには国の悪政から身体を張って市民を守る防波堤となれる人が必要です。
 憲法を守り、くらしに活かす、福祉日本一の名古屋をとり戻す、新しい市政の実現をめざして、私たちも引き続き奮闘する決意を述べて、討論を終わります。

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