2013年2月定例会

山口清明議員の個人質問 若者の雇用に支援を(2013年3月8日)

 若者の雇用と自立支援について

貧困の連鎖を防止する就学支援を

中退者や早期離職者など困難を抱えた若者の状況把握と支援体制は

【山口議員】七五三といえば子どもの成長を祝う日本の年中行事ですがいま、七・五・三とよばれる深刻な実態が若者の間に広がっています。中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割、就職した若者が3年以内に離職する割合です。これは昨年、内閣府がまとめた「若者雇用戦略」の議論で出てきた数字です。雇用戦略には「大卒(専門学校卒を含む)・高卒の就職率は9割を超えているが、中退者・無業の者・一時的な職についた者・早期離職者を合わせると、高卒の三人に二人(68%)、大卒の二人に一人(52%)は、学校から職場に円滑に接続していない」とされています。名古屋市内の完全失業率は国勢調査によると1995年(平成7年)の4.5%から2010年(平成22年)では5.8%まで上昇しており、若年層では約10%と推計されます。先日、高校の卒業式がありましたが、卒業式までに就職が決まらない生徒が2ケタになるクラスもあります。教育委員会からは就職率は毎年90数%と公表されていますが、就職をあきらめた生徒はこの数字からは除かれています。実態ははるかに厳しいのです。「若者雇用戦略」には「若者の失業率は上昇し、新卒者の就職率は低下」し「若者雇用を取り巻く環境は厳しい」「若者の育ちを社会全体で支援していくことが重要」とあります。また「若者の非正規雇用の割合が大幅に増えており、正規雇用の場合も、長時間労働等、職場環境が厳しく早期離職する場合も少なくない」「若者が働き続けられる職場環境の実現が重要」「地域の中小企業等の活性化を図ることで、地域の雇用を創出することが求められている」ともあります。

 これらの視点も踏まえて、以下、順次うかがっていきます。

 まず若者の雇用と自立をめぐる実態把握です。子ども青少年局からは困難を抱える本市の子ども・若者の状況について、二―トが約1万2700人、ひきこもりが約1万3200人(どちらも15歳から39歳まで)、不登校児童生徒数が約2千人、発達障害者相談人数が約1200人、非行少年は約3万人などの数字が示されていますが、二―トやひきこもりは推計値です。学校から雇用へと円滑に接続できない若者が、全国で中卒2千人、高卒11万人、大卒37万人と推計されますが名古屋ではどうでしょうか。高校中退者や早期離職者、就職活動や厳しい職場環境に苦しむ若者は、支援の対象にはしていないのですか。学校から旅立ち又はリタイアした後の状況を、名古屋市はどのように把握しているのか、そもそも支援の対象と考えているのか。教育長及び子ども青少年局長におたずねいたします。

 卒業後に進路が変わったり、早期離職した生徒は把握できない(教育長)

【教育長】市立高等学校では、すべての生徒の卒業時の進路先について把握しております。また、中途退学者のその後の状況については、2年間、担任が直接連絡をとるなどして実態把握を行っております。しかし、卒業後の進路がしばらくして変わったり、早期離職したりした生徒については、本人の申し出がない限り、学校として把握できないのが現状です。今後設置が予定されている「子ども・若者総合相談センター」との連携を図り、困難を抱えた若者に対する状況の把握や支援の充実に努めたい。

 現在のところは、状況の把握はできていない(子ども青少年局長)

【子ども青少年局長】関係局にお願いし、ひきこもりや不登校など困難を抱える子ども・若者に対する様々なデータの収集に努めてきたが、学校から卒業又は中退した後の若者の状況は、対象者の把握など限界もあり、現在のところは、状況の把握はできていない。今後は教育機関との連携をより一層図ることにより困難を抱える、子ども・若者支援のための状況把握に努めたい。

 貧困の連鎖を防ぐための教育と定時制高校へのソーシャルワーカーの配置を

【山口議員】解決への第一の課題は、教育の機会均等を保障し貧困の連鎖を防ぐことです。親の経済状況が子どもの学歴に影響を与え、学歴が正規・非正規という離学直後の就業形態を規定し、さらに、それがその後のキャリア形成、所得や結婚にまで影響を与えます。「貧困の連鎖」を予防がまず重要です。就学援助制度、高校入学準備金貸与制度、新年度からは、生活保護世帯の子どもの学習サポートモデル事業も予定されています。国も「高校中退者や不登校経験者等が多く在籍している高校(とくに定時制・通信制課程)に…カウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の…配置を推進」するとしています。親の経済状況に左右されずに、進学し次のステップにいくまで、子どもたちを支え抜く姿勢が求められます。そこで教育長におたずねします。貧困の連鎖を防ぐうえでの教育の重要性をどう認識していますか。困難を抱えている生徒も少なくない定時制高校へソーシャルワーカーを配置する考えはありませんか。

 教育相談・進路相談を行っている。必要に応じてソーシャルワーカーの相談を受けられるようにしたい(教育長)

【教育長】市立高等学校においては、経済的な理由で就学が困難な生徒に対して、担任をはじめ教育相談・進路指導の担当教員により、相談にのっている。こうした場合、関係機関へのコーディネートなど、専門的な知識・経験が重要と考えている。 今後、定時制高校等において支援を充実するため、必要に応じてソーシャルワーカーからの相談が受けられるよう、体制の充実に努めたい。

雇用のミスマッチ解消へ 地元の中小企業への理解を深めるような教材を

【山口議員】次の課題は、「雇用のミスマッチの解消」です。中小企業の大卒求人倍率は3倍以上であり、中小企業には採用意欲が旺盛である一方で、学生の側は大企業志向が根強いといったミスマッチが問題とされています。また採用活動のインターネット化などで、学校の就職支援機能が低下し、学生が適切な情報を入手できずに、企業と学生の間での過剰な選び合いとなっています。「就活」を終えたばかりの若者に話を聞いてみました。「大学の就職説明会やインターンシップ説明会に出てくるのは大手企業の人がほとんど」「就職セミナーでメーリングリストに登録し情報を集めるのが普通ですが、入手できる情報は大手中心、中小企業の情報は学生には届かない」「とりあえず就職しなければ、というプレッシャーが強くて、一つ内定をとって、そこから安心して本来の意味での『就活』を始めることができた。」正直な感想だと思います。一方では、大企業の内定がもらえないから中小企業に応募するといった意識や実態もあります。そこで早くから学生の目が中小企業に向かうように、中小企業に関する情報提供を強めることや、同じ地域の中小企業に入社した若者が相互に交流できる仕組みを整えるなど中小企業への定着支援も必要です。中小企業の振興をすすめる名古屋市として、中小企業支援と若者支援を重ね合わせた施策が必要です。

 そこで、市民経済局長に三つ提案し答弁を求めます。

 まず、学校教育の中で、中小企業への正確な理解を育むことです。中学校での職場体験はそのほとんどが地元の中小企業ですが、将来の就職に結びつけるにはもう一工夫が必要です。中小企業振興条例をもつ大阪府八尾市では、市の産業政策課が学校の副教材として使う想定で「びっくりものづくり~八尾の工場大冒険」というDVDを作り、小学校と中学校に配布しています。我が町の産業、中小企業に誇りと愛着を持てる工夫をしています。子どもたちに地元でがんばる中小企業への正確な理解を育むために、名古屋でも子どもたちや学生向けに、地元の中小企業への理解を深めるような教材を開発しませんか。教材作成のための取材も大学生や高校生と一緒に行えばさらに効果的です。

 副教材とともに、実際にものづくりなどに触れたり、体験できる場も(局長)

【市民経済局長】若者が中小企業の仕事をよく理解できるように支援し、ミスマッチの解消を図っていくことが重要です。 現在、市内の小学校では、産業を含め郷土にかかる副教材を採択し、授業で活用しております。これを踏まえ、市民経済局としては、教材という形ではなく、子どもたちが実際にものづくりなどに触れたり、体験できる場が必要であると考えております。このため、小・中学生に対しては、ものづくりや中小企業への関心や理解を深めるため、ものづくり教室などの創作活動の場を提供する名古屋少年少女発明クラブを愛知県発明協会と連携して運営しております。

 名古屋でがんばる中小企業を紹介するサイトを

【山口議員】二つめは、中小企業から学生に必要な情報を届けることです。就職活動の主流はいまやネット上での情報集めです。ところがリクルートなどのサイトに登録するにも相当の費用が必要で、独自の技術を持っていても中小企業からの情報発信が弱く、学生に来てもらえません。約1万6千社の会員を有する名古屋商工会議所は「就活ナビ」というサイトを立ち上げていますが掲載企業は現在74社です。私は以前、東大阪市の例を出して、営業支援として地元中小企業の強みが一目でわかるホームページの開設を提案しました。いわゆるブラック企業の被害から若者を救うためにも名古屋市が情報提供に積極的に関与すべきです。名古屋でがんばる中小企業を紹介するサイトを市としてつくる、または就活ナビへの登録企業を増やすための支援を求めます。

 名古屋就職応援ナビサイトでツイッターを活用して求人情報等を提供

【市民経済局長】学生と中小企業の面談の場として、「会社合同説明会」を経済団体と連携して実施するほか、若者への情報提供を強化するため、名古屋就職応援ナビサイトでツイッターを活用して求人情報等の提供を行っている。

中小企業への訪問調査を地元の大学、学生や研究者と一緒に

【山口議員】三つめは、中小企業の現実と課題、そして魅力を学生と教員につかんでもらうことです。そのためには代表質問で市長も「さっそくいってちょ、実行させます」と答弁された中小企業への訪問調査が有効です。この訪問調査を地元の大学、学生や研究者と一緒に行いませんか。多くの学生や教員・研究者と地元の中小企業が直接触れる機会を提供できます。中小企業を訪問する実態調査を大学とも連携して、学生と一緒に行いませんか。 

 緊急雇用創出事業を活用して中小企業で現場研修を行う事業に取り組む(局長)

【市民経済局長】中小企業の実態は現場での把握に一層努めますが、さらに若者が中小企業に触れる機会として、緊急雇用創出事業を活用し、中小企業で現場研修を行う事業に取り組んでおり、中小企業に対する理解を高め、就職に繋げるよう努めたい。

若者のキャリアアップと自立支援へ正規雇用の拡大を

【山口議員】第3の課題は、若者のキャリアアップ・自立支援です。

とくに問題なのは非正規雇用です。「若者雇用戦略」にも「若年層の非正規雇用は1990年代半ばから大きく上昇しており、34歳までの学生等を除く非正規は約410万人、このうち正社員への転換を希望している不本意非正規は4割強の約170万人と推計される」「若者が働き続けられる職場環境を実現するため、過重労働防止の徹底、労働法違反やトラブルに対する相談体制の充実等を図る」「非正規雇用の労働者のキャリアアップ支援」も強化するとあります。しかし、非正規のキャリアアップは簡単ではありません。正社員へのキャリアアップが難しいからこそ、正社員をめざす苛烈な就活競争に駆り立てられているのです。最大の若者支援は、非正規労働の広がりを押さえ正規雇用を増やすことです。ところが名古屋市は率先して民間委託や嘱託化、指定管理者制度の導入などを進めています。市長、このことによって非正規など不安定な身分の雇用を拡大しているという認識はお持ちでしょうか。お答えください。

 正規職員として雇用したら共産主義になる(市長)

【市長】民間委託とか嘱託、指定管理者制度とか、民営化一連だと思うけど、そういうことをやめてですね、正規職員として雇用したら、こうなりますと共産主義になるんです。ちょっと悩ましいところですね。今の経済学では、そういう方法よりも、全体の経済のパイを大きくしていく。民営化なんかによって。雇用のチャンスを、正規雇用ではないかもしれんけど、増やしていくという方向のほうが、結局、雇用を増やすことになると、今はそう判断しとるんだと思いますよ。僕も、経済の目標として、完全雇用をめざすというのは、そうとう大きな目標ですから、それは重要だとわかるんだけど、残念ながら、この共産主義が間違っとったでいかんのではない。だから、両方あると思いますね。正規雇用は正規雇用で大事だから、そのぶんはきちっとやるんだけど、全体をそうしていくという方向になりますと、全体の経済そのものが小さくなっちゃうというふうに思います。

サポートステーションをせめて、市内の東西南北4か所ぐらいに

【山口議員】いま「地域若者サポートステーション」がこつこつと実績をあげています。名古屋では青少年交流プラザ内に設置されていることもあり、若者に居場所と同世代交流の場を提供できて、いっそう効果をあげています。ニートやひきこもりなどの若者だけでなく、就活や非正規労働で苦しむ若者もしっかり受け止める場として重要です。しかしこのサポステ、市内に一か所しかありません。サポステでは新たに、高校中退者などへの訪問支援も行う計画もあり、期待されています。ところがこのサポステは単年度の委託事業であり、支援に取り組む職員自身の多くが不安定な雇用環境に置かれています。若者をサポートするこの事業を国任せにせず、市として積極的に関与して安定した事業に転換をはかりませんか。若者の居場所になり若者に寄り添って支援できるサポートステーションをせめて、市内の東西南北4か所ぐらいに増やしませんか、子ども青少年局長に答弁を求めます。

 

必要となったら厚生労働省と相談する(局長)

【子ども青少年局長】地域若者サポートステーション、通称「サボステ」は、現在全国116か所において事業が委託され、25年度予算案では、全国160か所に増設するとともに、学校との連携事業を新たに盛り込むなど、制度の拡充を打ち出している。子ども青少年局では、平成25年度は、子ども・若者総合相談センターを核とする官民相互のネットワークを構築し、関係機関が連携して最終的に就労など自立できるようにし、国の委託事業であるサボステとも、十分連携したい。サボステの複数設置は、必要となる状況が生じた場合には、厚生労働省と相談したい。 

就職時における本市独自の奨学金返還支援制度の創設を

【山口議員】最後に深刻な奨学金問題で提案です。

大学の後輩の話です。「福祉の職場につきたいと思って大学を選んだが、奨学金を借りて気が付いたら卒業と同時に数百万円の借金を背負う身になっていた。福祉の現場で働いても返す展望が見えず、一般企業への就職しかなかった」。いま奨学金は相次ぐ制度改悪で、有利子が主流です。学生の5割以上が何らかの奨学金を借りていますが、約7割の96万人が有利子の奨学金を借りています。毎月10万円の奨学金を4年間借りると総額は480万円、上限の利率3%だと返済総額は640万円、月賦返済額は約2万7千円、23歳から返し始めても返済が完了するのは43歳。教員などについたときの返済免除制度は既に廃止されました。返済が一度でも遅れたら延滞金が発生し、延滞が続けば個人信用情報機関に登録、つまりブラックリストに載せられ、クレジットカードや住宅ローンも組めなくなります。学生が数百万もの負債を抱えて新社会人となるのはあまりに異常です。給付型の奨学金と正規雇用がスタンダードな社会をつくることがいちばんの若者支援です。先日、愛知県は、高校生対象の奨学金について返還猶予制度をつくることを表明しました。そこで名古屋では何ができるか。この状況を逆手にとり、名古屋に若者を呼び寄せるのです。奨学金を借りて学んだ学生が、名古屋の中小企業に就職したら、名古屋市が奨学金の利子を肩代わりする、いや思いきって返還そのものを肩代わりする制度を提案します。人手不足に悩む介護や保育、福祉の現場でも有効です。中小企業の人材を確保し、若者を励まし、名古屋に新たな活力と息吹を吹き込み、国には給付型奨学金の導入を強くアピールできます。市長、日本一若者が集まるまち、日本一中小企業が元気なまちをめざして、名古屋市独自の奨学金返還支援制度をつくりませんか。

なかなかいいんじゃないですか。真剣に勉強させてください(市長)

【市長】奨学金返還支援制度というのは、これは、なかなかいいんじゃないですか。だけど筋でいうと、名古屋市は奨学金を出しとらんで、名古屋市がやるのは、変なような。県は自分で出していますから、そちらがやるというのが本当だろうけど。これはなかなか、ええかもしれませんので。真剣にいっぺん考えさせていただきますわ。初めて聞いたもんで、申し訳にゃあけど、ちょっと、勉強させていただいて。これで本当に、若者が来て、学生時代苦労して、奨学金でやってきた子どもたちや若い人が来るいったら、こんなええことはないですよ。これは。真剣に勉強させてください。 

実態把握をすすめ「子ども青年局」への転換で体制強化を(再質問)

【山口議員】教育委員会、子ども青少年局にいう。どちらの局からも「学校から職場に円滑に接続できない若者」の状況を把握しきれていないという答弁がありました。正直な答弁だ。先日も大学政策が、名古屋市は弱いという指摘もありましたが、18歳をこえた若者たちの状況をどうつかみ、どう支えていくか、市としてきちんと考えていってほしい。名古屋市子ども条例の対象は基本的に「18歳未満の者」としています。18歳以上の若者に対して支援することが必要です。青少年は18歳まで。20代35歳までの若者を支援するという体制を取るためにも、子ども青少年局から「子ども青年局」へと名称も変え体制も強化して、若者支援を推進する体制をぜひ整えていただきたい。市長どうですか。

 

いっぺん本当に考えてみますわ。大事な指摘だと思います(市長)

【市長】就職して3年くらいで、あとが決まってしまうという。そのへんのところをきちっとケアする、これがどえらい重要らしいですね。ですから、いっぺん本当に考えてみますわ。大事な指摘だと思います。 

奨学金の返還に苦しむ若者もふくめて支援が必要だ(意見)

【山口議員】奨学金の話です。市長からは「ええかもしれませんね、初めて聞く」と答弁いただきましたが、初めて質問するから当たり前です。日本中どこにもこういう制度ありません。奨学金制度つくれという質問ではありません。それじゃ名古屋市も大変です。対象者も限られる。そうじゃなくて、全国で奨学金借りて学んだ若者を名古屋の中小企業、福祉や介護の現場に就職してくれたら、応援するよ、とこういうメッセージを発してほしいんですよ。国が奨学金制度改正しなかったら、日本中の若者を名古屋に持ってくよ、というつもりでね、意見言ってほしいんですね。市議会も給付型奨学金つくれと国への意見書を4年前に上げています。その間なかなか国の動きも鈍い。名古屋から若者を支援する、中小企業の人材確保にも資する具体的なメッセージを発信してほしい。このこと強く要望して質問を終わります。

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