2012年9月定例会

田口議員の2011年度決算に対する反対討論

私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して、一般会計決算の認定にたいして、反対する立場から討論を行います。

昨年度は、市民税減税が実施されませんでした。これによって確保できた財源の一部を活用して、中学卒業までの通院医療費無料化、待機児童解消のための保育所整備、地震・津波対策など、一定の前進がみられました。しかし、今年度からの「減税」の恒久化が大前提とされたために、「行財政改革」の名のもとに福祉・市民サービスの削減や公務の民間化がいっそう進みました。一方で、将来に大きなツケを残す恐れがある新たな大型事業の種がまかれたことも重大であります。

以下、反対する理由を具体的に述べます。

第1は、本市で初めて実施された「事業仕分け」が、「金持ち減税」の財源づくりのために、福祉・市民サービスを削減していくテコにされようとしていることであります。

敬老パスや高年大学鯱城学園、温泉休養ホーム松ヶ島、女性会館、野外学習センターなど、市民にとってかけがえのない事業や施設がやり玉にあげられ、「廃止」「見直し」という判定結果が下されたことにたいして、市民団体などから市や市議会に、存続を求める要望や請願が数多く寄せられたにもかかわらず、仕分け結果をお墨付きにして、事業のあり方の検討が進んでいることは看過できません。

第2は、身体障害者授産施設「緑風荘」など福祉施設の民営化が進んだことであります。

名古屋市は福祉施設の現場からほとんど手を引き、民間に委ねてしまいましたが、これは、福祉にたいする公的責任の大きな後退だと言わなければなりません。

第3は、「中京都」構想の司令塔である中京独立戦略本部を、愛知県とともに立ち上げたことであります。

「中京都」構想は、財界の要求にこたえた巨大インフラ整備に集中投資する体制づくりであり、また道州制の先取りにほかなりません。中京独立戦略本部は、本部長である河村市長と大村県知事の思惑のズレから、今年度に入って1度も本部会議が開かれていないのですから、「中京都」構想は、きっぱり断念すべきであります。

第4は、リニア中央新幹線の開通を既定路線として、その開業に向けた都市機能検討調査および名古屋大都市圏戦略の検討調査が実施されたことであります。

東海道新幹線の年間輸送人員は、この20年間でほとんど横ばいの状態であり、第二東海道新幹線ともいうべきリニア新幹線の建設を必要とする事情はまったくありません。新幹線と飛行機が頻繁に運行している東京―大阪間で、1時間半程度の「時間短縮」への国民の強い要望や経済的社会的要請はなく、まさに建設の“大義”がありません。このリニア新幹線に、名古屋のまちづくりの将来をかけてよいのでしょうか。開通すると、東京の経済圏に飲み込まれる「ストロー現象」が起きる懸念も指摘されているのに、検討調査では、「ストロー現象」が考慮されていません。リニア頼みの活性化は、危険な道だということを指摘しておきたいと思います。

第5は、名古屋城天守閣の木造復元や、ささしまライブ24地区の開発と一体に計画されている巨大地下通路など、新たな浪費をもたらす大型事業の調査・検討に踏み出したことであります。

天守閣の木造復元については、今年2月に開かれた「市民大討論会」で、木曽ヒノキの調達が困難、耐震性や火災、バリアフリーへの対応など、容易に解決することができない課題があることが明らかになりました。342億円、天守台の改修も加えると、400億円を超える木造復元よりも、現在の天守閣の耐震改修を優先すべきであります。

笹島交差点からささしまライブ24地区に至る地下通路は、当初の300mの計画が、昨年度の整備検討のなかで390mに延長され、さらに最近ではムービングウオークを設置するために幅員も拡張するというように、どんどん計画が膨れ上がってきました。こんな巨大事業の計画を、事業費も明らかにしないで進めてきたことは問題であります。

第6は、需要が見込まれないにもかかわらず、中部国際空港の二本目滑走路の建設要望や徳山ダム連絡導水路事業への出資が続けられたことであります。

以上の反対理由を申し上げ、討論を終わります。

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