2012年9月定例会

山口清明議員の議案外質問② 中小企業への実効ある支援を(2012年9月18日)

中小企業の支援について

 

中小企業振興基本条例に必要な視点は
【山口議員】名古屋市内の中小企業は、市内約13万事業所の99%を占め、また市内の従業者数は約146万人ですが、その75%、110万人は中小企業で働いています。まさしく中小企業は名古屋の経済と雇用を支える主役です。
 しかしここ20年間に市内の事業所は約2万も減りました。ものづくりを担う製造業はここ30年で事業所も従業員数も半減です。地域経済の主役である中小企業を市としてどう支えていくか、が問われています。
 1999年に改定された中小企業基本法で、都道府県だけでなく市町村にも中小企業を支援する責務があるとされました。一昨年には、中小企業憲章が閣議決定されました。愛知県でも中小企業振興条例がこの秋に制定される予定です。
 さて名古屋市はどうでしょうか。
 河村市長のもと2010年に策定された「中期戦略ビジョン」では、残念ながら、ビジョンの目標を示す「5つのまちの姿と45の施策」のタイトルのどこにも「中小企業」という言葉が出てきませんでした。
 ようやく2011年に定めた「産業振興ビジョン」で、名古屋のめざす三つの姿の一つとして「中小企業の持続的成長」が盛り込まれました。そこでは2015年までの5年間で、立地または創業する事業所1100件、新規雇用4万人、という極めて具体的な目標が示されました。一歩前進です。
 そして現在、今年度中に「中小企業振興条例」(まだ仮称ですが)を制定するための検討作業が始まりました。
 中小企業振興条例については、一昨年2010年11月議会でわが党の田口議員も制定を求める質問をしており、当時の市民経済局長は「愛知県や政令市の動向も踏まえ、引き続き調査したい」との答弁でしたので、条例の検討開始は大きな前進と評価したいと思います。
 名古屋市には、中小企業を支援するメニューはたくさんあります。しかし地域経済の主役として中小企業を位置づけ、全庁的な指針となる条例がありません。市独自の振興条例に期待するところ大であります。
 そこでうかがいます。市としてこの時期に中小企業振興のために新たな条例を制定することにした一番の動機、条例の狙いは何でしょうか。愛知県や他都市も制定するから、という理由だけではないですよね。いままでの支援策では足りない何かがあるから、条例の制定をめざすのだと思いますが、それは何か、お答えてください。

中小企業者の取り組みを地域全体で支援
【市民経済局長】中小企業が果たしている役割の重要性をふまえ、中小企業者をはじめ、市、大企業、市民などの役割分担や市の施策の基本的事項を定めることにより、中小企業活性化施策を総合的に推進し地域経済の発展や市民生活の向上に寄与することを目的とするもの。

小規模事業所への配慮を
【山口議員】条例の制定にあたり、しっかり位置づけていただきたい三つの点についてうかがいます。
 第一は、小規模事業所への配慮を、条例にもしっかり位置づけることです。小規模事業所とは、従業員が製造業その他では20人未満、商業・サービス業では5人未満の事業所のことを指しますが、全事業所数の70%を占めており、とくに製造業や建設業では9割を超えています。県の条例案には「小規模事業所への配慮」がうたわれていますが、市の条例構想では小規模事業所への言及がありません。家族経営もふくむ小規模零細業者の営業と生活実態を把握し、必要な配慮をすることは振興条例に欠かせないと思います。
 小規模事業所について、その実態を把握する独自の手立てをとり、その役割を踏まえて必要な配慮を条例に位置づけるべきです。小規模事業所についての認識をうかがいます。

資金繰り円滑化の支援や相談事業の実施
【市民経済局長】市内事業所の約7割を占めている小規模企業者は、景況調査でも資金繰りなどほとんどの指標で中小企業全体を下回っており、とりまく環境は厳しい。「名古屋市小規模事業金融公社」を通じた資金繰り円滑化の支援に加え、設備投資助成や相談事業の実施など、小規模企業者向けの施策の充実・強化を図っている。

困っている中小企業を支える視点を
【山口議員】第二に、「困っている中小企業を支える」視点を行政の全施策に貫くことです。中小企業憲章の「自立する中小企業を励まし、困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていく」という立場を堅持していただきたい。よく「がんばっている中小企業を応援する」というセリフも聴きますが、これが有望産業へシフトできる企業、業績が伸びそうな企業だけを選別して支援する意味だとすると、憲章の立場からはずれます。
 いま中小企業が困っていることは何か、二つだけ具体的に指摘します。
 ひとつは固定経費の負担です。小規模企業が行う一定規模以上の設備投資への助成が予算化され、現在53社から7400万円分の申込みがありました。設備投資を促すうえで一定の成果をあげていると思います。ただし補助限度額300万円の申請、つまり3000万円以上の投資を計画しているのは数社に限られ、平均の補助申請額は150万円にとどまっています。
 設備投資の落ち込みは深刻で、市の税収見通しでも法人市民税は11.2%(減税前)も来年度は伸びる見通しなのに、償却資産にかかる固定資産税は逆にマイナス4.8%、12億円も減る予測です。
 そしてもう少し現場の声を聴いてみると、設備投資は新規購入でなく、リースでという会社が増えているようです。この実態をよく見てください。
 減税についても、条例の検討委員会の場では「固定資産税を下げてほしい」という声も聞かれました。利益があがれば税金はきちんと納めたい、ただ利益が出ないのに支払い費用がかさむ設備・機械のリース代など固定経費の負担こそ、何とかしてほしい、というのが切実な要求です。設備投資を促す助成も必要ですが、困っている中小企業には固定経費の助成こそが必要ではないでしょうか。
 もう一つが税金です。とくに市税事務所に移行してから、税金の過酷な取り立てや機械的な差し押さえに対する苦情が増えています。国民健康保険についても滞納者への一律で機械的な差押えがやはり急増しています。売掛金を口座入金と同時に全額差し押さえるなど、営業の継続を妨害するようなケースまで聞こえてきます。町工場の社長の気持ちはようわかると言いながら、実際にやっているのは、病人から布団をむしりとるような過酷な税金や保険料の取り立てではないですか。
 税務行政や保険年金業務についても、ていねいに分割納付の相談に応じる、事業の継続を困難にするような機械的な差押えはしない、誠実に分納に応じている業者には融資でも一定の配慮をする、などの対策も不可欠です。
 「困っている中小企業を支える」という視点を条例で確立し、全庁的に徹底していただきたい。答弁を求めます。

中小企業を支える観点で各種支援施策を講じている
【市民経済局長】様々な課題に直面している中小企業を支えていくという観点に立ち、各種支援施策を講じており、中小企業の役割・重要など、条例の内容などについて関係局と適宜、情報交換を行うなど全庁的な連携・協力を図っていく。

金融・相談機能のいっそうの充実を
【山口議員】第三に、名古屋市独自の金融・相談機能のいっそうの充実です。
 県の中小企業振興条例案にあるのに、市条例の構想にないものの一つが「金融機関の役割」です。県条例案では中小企業振興に果たす金融機関の役割に触れています。信用金庫や信用組合などの協同組合金融や、メガバンク以外の地域銀行が、地域産業を支えるために果たす役割は大変大きく、そしていま、地域の金融機関は、単なる融資だけでなく中小企業に対する総合的なコンサルティング業務も担う地域産業支援機関ともいうべき機能を果たしつつあります。 市の条例にも、こうした金融機関の役割を明記する必要があります。
 さて名古屋市には、政令市では唯一の小規模事業金融公社や政令市では全国で4市にしかない信用保証協会があります。中小企業の相談に乗る振興センターや技術支援を行う工業研究所もあります。これらの機能を有機的に活用すれば、金融機関以上に、地域産業を支援する機能を発揮できると思います。
 ところが「経営相談は市の事業だが融資の可否は保証協会、保証協会の判断には市は介入できません」とか、「金融公社では融資しますが、協会保証ではなく、保証人が必要、と言われて困った」とか、チグハグで使い勝手がいまひとつとの声をききます。もったいない話です。
 せっかく市がもっている金融支援と相談機能を、もっと有機的に、使い勝手がよい利用者本位の仕組みに改善することが必要です。
 条例には、金融・相談機能について名古屋市が積極的な役割を果たすべきことにもふれる必要があると考えますが、いかがでしょうか。

保証付の融資制度や小規模事業金融公社の融資制度がある
【市民経済局長】保証付の融資制度に加えて、本市独自の小規模事業金融公社が行う融資制度を設けて、中小企業金融の円滑化に努めている。中小企業の立場に立ったきめ細かい金融相談や経営相談等を行っている。
 条例案の検討に当たり、検討委員会からの意見や相談窓口、パブリックコメントを通じて市民や中小企業の声を把握しながら進めたい。

「中小企業の仕事を増やす」ための提案
【山口議員】最後に、中小企業の仕事を増やす具体策についてです。
 一つは、取引先開拓の支援を強めることです。特に製造業では特定の親会社の「系列」が強く、技術があっても異業種の分野などに十分に販路を広げられていない問題があります。
 名古屋市でも産業振興公社が、新技術を紹介し、異業種交流をすすめるなどの取り組みを行っていますが、十分な成果があがっているでしょうか。
 東大阪市の技術交流プラザのホームページがたいへん参考になります。地元中小企業の持つそれぞれの強み、売り込みたい技術や製品などを幅広く紹介するシンプルでわかりやすいホームページです。市の事業紹介ではなく、注文したい人が検索しやすいホームページの作成など、地元中小企業のもつ力をよく把握して、それらを効果的に情報発信することにもう一工夫してください。

「企業アピール大会」を実施
【市民経済局長】中小企業者の官公需の受注機会の確保方針の周知徹底を行っている。平成21年度より「企業アピール大会」を実施して市内中小企業の優れた技術や商品の情報提供をする機会を設け、広くアピールすることで販路開拓を支援していく。

住宅リフォームなどの具体的な提案
【山口議員】二つめは、何度も提案している住宅リフォーム助成です。市内の需要を喚起することが景気刺激の基本です。とくに耐震補強や介護のためのバリアフリー化、さらには節電のためにと、住宅リフォームへの需要は広がりつつあります。
 市の策定した住生活基本計画(住まいの基本計画)でも「住宅ストックの友好活用の促進」が掲げられ、リフォームの促進も大きな柱とされています。マンションの大規模修繕も視野に入れながら、住宅リフォーム助成制度をいまこそつくるときです。
 三つめに、自然エネルギー分野への進出を特別に支援することです。名古屋の長い日照時間は、この地域の大切な資源です。大企業に買い占めさせず、地元中小企業と市民にこそ積極的に活用してもらう。市営住宅の屋上などを地元中小企業などに優先的に提供することも一つの呼び水になります。
 官公需だけでなく、市民の力を活用して中小企業の仕事を増やす。その仕事を通して企業は地域社会に貢献する、その結果、市民は安心して環境にやさしい安全な街で暮らせる、そんなサイクルを廻していこうではありませんか。
 中小企業の仕事を増やすためには、全庁的な取り組みが不可欠です。どう仕事を増やすのか、いくつか提案もしましたが、局長の答弁を求めます。

地域を支える中小企業の支援策に引き続き取り組む
【市民経済局長】様々な提案をいただいたが、地域を支える中小企業の支援策に取り組むとともに、中小企業の役割や重要性の認識を全庁的に共有するなど関係局に働きかけながら、中小企業に対する支援につながるよう取り組みたい。

固定経費の負担と税金や保険料の問題をどうする(再質問)
【山口議員】中小企業の支援について、振興条例をつくることは、本市の中小企業施策にとって画期的だ、というのが私の基本的評価です。そのことを前提にして、いくつか再質問します。
 小規模企業の支援を図ること、困っている中小企業を支えることはたいへん重要と考えている、との答弁でした。具体的に小規模の事業所が困っている固定経費の負担と税金や保険料の問題を例にとりあげましたが、この二点について市民経済局長の認識をうかがいたい。

固定経費への支援は融資制度がある、 相談窓口も置いている
【市民経済局長】固定経費への支援は低利な信用保証協会の融資制度や小規模事業金融公社の貸し付け制度で支援。その他、金融・法律・技術などの相談窓口を置き、職員や専門家が中小企業に出向くなど細かい対応をしている。

相変わらずの答弁だが、それでいいのか。アピール大会は有効か
【山口議員】いままでとちっとも変わらない答弁だが、そういう姿勢が変わらないままここまで来た。事業所が減って条例を作ることになった。改めてなぜ今までの施策では救えなかったのか、この事実を受け止めてほしい。赤字でも納めなければいけないのが消費税。これが増税される法律が通ったが、もっとこの問題が深刻になります。国税で滞納が多いのが消費税。国税だから名古屋市は知らないではいけない。困っている中小企業を応援できない。市民経済局の施策だけでは、困っている中小企業に対応しきれないのが現実です。
 自分たちの局が担当する施策に沿って要望をつかむだけではダメなんです。だから局の条例でなく市の条例にするのでしょう。何に困っているのか、どんな要望があるのか、逆にその企業の強み、売り込みたい技術や製品は何か、職員みんなんで聞いてきてほしいのです。アピール大会を今年もやるというが、何社を予定しているか。

5社がアピール
【市民経済局長】5社の予定。

市内の中小企業にこそ御用聞きにまわれ
【山口議員】市長のイニシアチブで始まったアピール大会だが、年1回5社ですよ。これで効果を上げているといえるのか。もっと状況をつかんでほしい。
 愛知県では、100社訪問を行っています。春と秋の年2回、職員が二人組で県内の中小企業を100社ずつ訪問、調査しています。直接、訪ねて話をきいて、中小企業には独自の支援策が必要だと職員が実感し、それが振興条例づくりにも活かされています。
 名古屋市ではたしか「職員御用聞き営業大作戦」というのがありましたね。何やってるんですか。外からの企業誘致のためだけでなく、市内の中小企業にこそ御用聞きにまわるべきです。職員の訪問による中小企業の実態調査を条例制定のこの機会にこそ、行いませんか、どうですか。

相談や景況調査で十分声を聴いている
【市民経済局長】相談窓口や職員・専門家の派遣などで年3万件以上の対応を行っている。年2回の景況調査などで日頃から生の声の把握をしている。訪問は考えていない。

いままでと何を変えるのですか
【山口議員】条例でせっかく中小企業をオール市役所、オール名古屋市民で支えましょう、と打ち出すんですよね。市民経済局長からも積極的に関係各局に働きかけを行うとの答弁がありました。しかし話が具体的になればなるほど、いままでとちがうことをやる姿勢が感じられなくなる。困っている実態をつかむうえでも、仕事を増やすうえでも、全庁的な取り組みを本気で、イベントではなく、地道に系統的に進めなければなりません。
 そこで入倉副市長にうかがいます。振興条例づくりを契機に、全庁的な課題としてどう中小企業の支援に力を入れるのか。いままでと何を変えるのですか。
 抽象的な問題ではいけないので、税金と保険料の対応、そして住宅リフォーム助成の二つは、中小企業を支えるために全庁的な検討課題としてぜひとりあげていただきたい。答弁を求めます。

市全体としての方針を決めたい。リフォーム助成は現行制度で十分(副市長)
【入倉副市長】中小企業の厳しさ、価格競争と市長から毎回のように言われておりまして、条例をどうするか、中身をどうするか、市長も含めて市全体としての方針を決めていきたい。
 地域経済をどうするか、需要を作る、設備投資をしていく、技術革新、人材育成、伝統産業の育成などいろいろ観点・分野があるが、いろんな政策をやらなくてはいけない、市役所ができることに何があるか、民間投資を増やしていく、お金が回っていく状況を作るのも大きなことだと思いますが、なかなか市役所ではできない、そんな中でこれが一番効果があるというところを考えてやる必要がある。市民税の減税、投資に向けた助成も来年度にやります。航空宇宙産業も国の特区制度を活用し、市としてできることは、規制緩和や、助成などもある。市全体でやっていくのはその通りで、その観点も必要だと思う。
 リフォームは市場ができている。税金で助成する方針はない。耐震、太陽光、福祉リフォームとかでかなり助成している。全体には局長が参加する名古屋市経済対策推進会議で対応、議論する。

しっかり支援を
【山口】しっかりやってほしい。(時間切れのためここまで)

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