2012年2月定例会

山口清明議員の予算反対討論(2012年3月19日)

 

介護保険料などの市民負担増、教育や福祉の民営化をやめ、金もち・大企業優先を改め、暮らしを守る市政に

大企業と富裕層を優遇する、恒久的な市民税5%減税を始める予算
 私は日本共産党名古屋市会議員団を代表し、ただいま議題となっている2012(平成24)年度名古屋市一般会計予算案に対し、反対の立場から討論します。
 反対する大きな理由は三つです。
「市民生活の支援及び地域経済の活性化を図る」ものとならない予算
 第一に、大企業と富裕層を優遇する恒久的な市民税5%減税を始める予算となっていますが、河村市長の提案理由説明とは裏腹に、78億円の減税は「市民生活の支援及び地域経済の活性化を図る」ものとはならないからです。
 なぜか、この減税予算では「市民の可処分所得を増やすこと」はできません。
 この点で私は、市長だけを責めるつもりはありません、民主党政権の、国民の生活が第一どころか二の次、三の次にする悪政がまず問題です。あいつぐ負担増は、市民にとって耐え難いものになってきており、消費を冷え込ませ、経済成長にもマイナスです。しかし残念ながらこの予算では更なる負担を市民に強いるものとなっています。
耐え難い高齢者負担増
 高齢者の負担増はどうでしょうか。75歳以上の後期高齢者の保険料は平均で5%をこえる年額4489円の値上げです。65歳からの介護保険料は、本人非課税の基準段階で年額1万5492円、30%をこえる大幅な値上げです。さらに年金は、物価スライドに加え、マクロ経済スライドの導入で、支給額が減らされます。月額6万5千円の国民年金の方では年間約5千円も支給額が減るのです。
 このうち名古屋市の努力と責任で負担増を抑制できるのが介護保険料です。わが党は代表質問で、「介護保険料の大幅値上げに胸の痛みを感じないか?」と問いかけました。市長は「胸の痛みをたいへん感じる」「法律改正が必要と言われているが、名古屋だけで独自にやりたい」とまで答えました。国からの独立を唱えるあなたなら、本気で独自の努力を尽くすべきです。
 65歳以上の市民の約6割は減税の恩恵を受けない非課税世帯です。単純計算で保険料の据え置きに必要な予算は約78億円です。金持ち減税をやめて、保険料の値上げを抑えるために、一般会計からの繰り入れを決断すべきです。わずかな年金で暮らす市民の家計を応援すれば、そのほとんどが市内での消費にまわり、税金を投入した分だけ、地域経済の活性化に確実に貢献します。
 加えて約4万2千人に適用していた高齢者向けの市民税減免が今年度から廃止です。これでは減税の実施にあたり低所得者にも配慮した、とは言えません。
子育て世代に重い負担
 子育て世代はどうか。子ども手当(児童手当)が迷走を続けていますが、年少扶養控除の廃止、特定扶養控除の削減による負担増だけは確実です。新年度は市民税の負担が増えます。約27万の子育て世帯から合計約50億円の増税です。単純計算で一世帯あたり年間で約1万8千円の負担増です。子どもの数によっては数万円をこえます。それなのに本市独自の子育て支援手当は打ち切りです。子どもの貧困が社会問題になり、いまなお就学援助世帯が増え続けています。高校入学準備金の貸与枠は拡大されましたが、教育の機会均等を守る立場から見ても、就学援助の対象拡大など教育費の負担軽減策はまだまだ不十分です。
中小零細企業には親身な支援を
 一方、法人企業はどうでしょうか。国の法人税減税で、法人市民税は新年度で約6億円、平年ベースで49億円も減収になります。そのうえに5%減税が今年だけで12億円です。しかしこの減税の恩恵は、市内企業約9万社のうち約7割近い赤字の中小企業にはほとんど及びません。5万2千社には年間2500円の減税だけです。これでは社長が安いラーメンを従業員4、5人におごるのが精いっぱいではありませんか。
 新たに募集を始める小規模企業者設備投資促進助成事業ですが、限度額いっぱいの補助を受けるには3000万円の投資が条件です。融資を受けて利用することになると思いますが、経営難で税金の滞納があると、誠実に分割納付をしていても、そもそも融資は受けられないのが現実です。もっときめ細かな支援策が中小企業、零細業者には必要なのです。
 大企業と富裕層を優遇するだけの減税予算は認められません。
 公的福祉の解体をすすめ、市民サービスの低下をもたらす予算
 反対する第二の大きな理由は、減税の財源とも目的ともされる「行革」の名で、公的福祉の解体をすすめ、市民サービスの低下をもたらす予算だからです。
守山市民病院を廃止
 長年、地域で市民に信頼されてきた東部医療センター・守山市民病院が廃止されます。守山市民病院は、大切な災害時の医療活動拠点でもあり、また市立病院で唯一の緩和ケア病棟を持ち、地域医療のモデル病院として、まだまだ発展する可能性があります。病院と地域医療を支える意欲をもった市民がたくさんいます。存続を求める多くの民意を無視した病院の廃止は認められません。
待機児対策で公的責任放棄
 全国最多となった保育園待機児童の解消をめざすとしながら、市立保育園の増設は、はじめから視野の外です。やれることは何でもやるのではなかったのですか。そればかりか、市立保育園の約1300人のパートや臨時職員のうち300人以上に雇い止めや勤務時間の細分化などが提案されています。
 これは保育の体制を手薄にし、子どもの安全・安心にとってマイナスになる恐れが強いものです。名古屋市が率先して、非正規労働者の雇用をいっそう不安定にしてどうするのですか。民間保育所への給食費補給金や地域活動事業費や、留守家庭児童育成会=学童保育への助成を削ることも子育て支援の後退であり認められません。
保育園への営利企業参入の容認ともあいまって、保育を子どもの育ちを保障する専門的な仕事と捉えずに、とにかく預かればいい仕事とだけ、考えるようになってはいないか、大きな危惧覚えます。
市役所の窓口業務も民営化対象
 新たな行政改革の手法である「民間活力の導入に関する調査」は、市のすべての事業を対象に、民間企業などから民間委託や民営化などの提案を募るものです。委員会の質疑を通じて、市役所の市民課の窓口業務も対象となることが明らかになりました。市が直接実施してきた公務を際限なく民間に委ねることは、名古屋市が地方自治体でなくなることを意味します。
 いわゆる「事業仕分け」と相まって、市民の健康や子どもの安全・安心をないがしろにするような「行革」で、「金持ち減税」の財源をつくるとは、自治体として本末転倒だと言わなければなりません。
新たな浪費へと足を踏み出す危険
 反対する第三の大きな理由は、新たな税金の浪費へと足を踏み出す危険がいくつもある予算となっているからです。
市民合意のない木造天守閣
 名古屋城天守閣の木造復元のための調査費が計上されています。市が主催した討論会でも多くの疑問と様々な課題が出されました。木造再建には少なくても342億円との試算ですが、石垣の土台から修復する費用なども考えれば400億円をはるかに超える事業となりかねません。きっぱり断念すべきです。
事業費が膨れ上がる巨大地下通路
 名古屋駅周辺公共空間整備として、ささしまライブ24地区などの開発と一体に、笹島交差点から南へ地下通路を伸ばす計画が提案されています。
 事業規模は昨年段階では約300mで30億円~45億円との推計でしたが、委員会の質疑で、いつのまにか通路の長さは390mと伸び、事業費は当初計画の3倍になることが明らかになりました。どこまで事業費が膨れ上がるか予測がつきません。いま歯止めをかけておかないと取り返しがつかなくなります。
企業誘致や巨大インフラ整備などの促進めざす「中京都構想」
 加えて「中京都構想」です。大企業支援は「減税」だけにとどまりません。世界から人・モノ・カネを呼び込み、「強い大都市」をつくるという「中京都」構想は、この地域の国際競争力の強化を図るために、企業誘致や巨大インフラ整備などを促進するものです。
 中京独立戦略本部の会議で河村市長は、「日本中、世界中で、商売をするなら名古屋へ行こうと言ってもらえるまちをつくる」と語りましたが、商売といってもラーメン屋ではありませんよね。大企業を中心とした企業誘致を指していることは間違いありません。
 この「中京都」構想は、道州制を視野に入れながら、大都市圏が国の成長エンジンなることをめざす名古屋大都市圏戦略の検討調査ともオーバーラップしながら推進されています。企業の国際競争力強化のために税金を注ぎ込む「中京都」構想等の推進は、市民にとっては、必要性も緊急性も乏しいものであり、きっぱり断念すべきです。
ダムからの撤退は言うだけ
 さらに市長が撤退を表明したにも関わらず、徳山ダム導水路事業への一般会計からの支出が続いています。開門調査の必要性が指摘された長良川河口堰にも、市民は一滴の水も使っていないのに一般会計からの支出が続いており、どちらも問題です。
改革すべき対象を見間違えた予算だ
 従来型の大型公共事業の推進に加え、大企業のためのインフラ整備が、新たな予算の「聖域」になっています。ここにメスを入れずに、市民向けの施策だけに切り込むことを「行財政改革」と呼べますか。改革すべき対象を見間違えた予算を認めることはできません。

 いま市政で優先されるべきは、大企業や富裕層が集まる「強い大都市」をつくることなのでしょうか。
 財政局が質疑の中で示した予算編成の参考にした経済指標は、国の経済動向予測よりもかなりシビアなものです。勤労世帯の給与所得の伸びはマイナス0.5%、法人税割の伸びにいたってはマイナス7.5%と見込んでいます。高齢者世帯の所得も残念ながら伸びる要素はありません。
経済成長は必要です。それは家計を温めて市民の所得を増やし、地元の中小企業も潤う内需主導の経済成長でなければなりません。そんな成長を後押しする施策こそが求められています。
誤解を招いた「発言」の撤回こそが、友好都市との交流をすすめる近道
 なお予算案には、姉妹友好都市との交流の予算も計上されています。残念ながらいま南京市との友好交流が難しい状況です。私は先日の本会議で、いわゆる南京事件の存在は否定できないとする政府見解を認めるか、と市長に尋ねました。市長は本会議の答弁でも、その後の記者会見でも、自身の見解は政府見解と「ほぼ同じ」と明言されました。
 政府見解を認めるのなら、誤解を招いたとする自身の「発言」を撤回することが道理にかなう態度であり、本市が友好都市との交流をすすめるための近道であると、申し上げておきます。
「福祉と防災のまちづくり」への予算組み替えを
 わが党は、予算の組み替えを提案しました。大企業と富裕層を優遇するだけの市民税5%減税の実施を中止し、不要不急の大型事業など約141億円を削ります。こうして確保した財源で、介護保険料の値上げ幅を極力抑え、市立保育園を新設し、防災と環境に役立ち、地元中小企業の仕事につながる分野の事業を拡大する提案です。
 1兆円もの一般会計のわずか1.4%の組み替えというささやかな提案ですが、それでも無用な減税をやめ、大企業優先の政治姿勢を変えれば、厳しい財政事情の下でも、市民のくらしを守る仕事がたくさんできます。
 名古屋市は、いまこそ自治体の本分に立ち返り、消費税増税と社会保障の改悪をすすめる国の悪政から、市民を守る防波堤になるべきです。
 私たちも「福祉と防災のまちづくり」をすすめるために、全力を尽くす決意を表明して、討論を終わります。

2012年度予算での、主な市民サービスの後退
・後期高齢者医療保険料は5%超の年額4489円の値上げ
・介護保険料は標準階層で年額1万5492円30%超の値上げ
・約4万2千人の高齢者向けの市民税減免は今年度から廃止
・市独自の子育て支援手当を廃止
・守山市民病院は民意を無視して廃止
・日本一の待機児なのに市立保育園の新設なし
・保育所臨時職員の300人以上に雇い止めや勤務条件改悪
・民間保育所への給食費補給金や地域活動事業費の廃止
・留守家庭児童育成会=学童保育への助成を削減
2012年度予算での、巨大なムダにつながる事業
・名古屋城天守閣の木造復元のための調査費
・名古屋駅周辺に笹島交差点から南への巨大地下通路計画
・企業誘致やインフラ整備などを促進する「中京都」構想

 

キーワード: