さはし あこ議員の個人質問① 保育所待機児童解消について

2011年9月14日
さはし あこ

■待機児童を常態化させてきたことに反省はないのか

【さはし議員】保育所待機児童解消について、子ども青少年局長におたずねします。

名古屋市の待機児童数は、前年比約2倍の1,275人であり、全国最多となりました。10月にも、待機児童数の中間報告が出されますが、例年9月を過ぎると、新規の申し込みが増え、4月に比べてさらに増えることが予想されます。

「夫の給料が減り、共働きしなければならないが、子どもを預けるところがない」「育休が終わるというのに入所の目途がないため、このままでは退職」、「やむなく仕事に行くため、職場に子どもを連れて行かなければいけない」など、切実な声が、私のもとにもたくさん寄せられています。父母が無理をすることによって、なかには虐待に及ぶケースもあり、事態は非常に深刻です。ここ数年の間に、経済が大きく落ち込み、社会の中の雇用形態などが変化したことに対応してこなかったツケが、子どもたちに及んでいると思います。

名古屋市の待機児童対策は今までどうであったでしょうか。2005年度から2011年度の7年間において待機児童数を満たす保育所入所枠の拡大が出来たのは2006年度2009年度の2度だけです。1984年以降の27年間、公立保育所は1つも作られていません。待機児童が増加しているこの間も、公立保育園は増設どころか廃止・民営化を進める始末です。

児童福祉法第24条では、『保護者から申込みがあったときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない』と定められています。市町村には、保育実施義務があり、子どもには保育を受けるという権利があります。子どもたちに保育所での保育を提供出来ず、待機児童を常態化させている本市の現状は、児童福祉法上の義務に違反しているという認識をお持ちですか。

■経済状況の厳しさから需要が拡大した。保育の実施責任がある(局長)

【子ども青少年局長】平成15年度~平成19年度まで待機児童の減少が続き、待機児童数を踏まえた認可保育所の新設整備を行ってきた。しかし、厳しい経済情勢で就労希望が非常に増加した。平成22年度に、待機児童がいるから保育所を整備するという「後追い」の発想から、3歳未満児の潜在的なニーズも想定した対策を実施する「先取り」の発想へ方針の転換を行った。

児童福祉法にもとづく保育の実施責任がある。待機児童の早期解消に向け、様々な手法を用いて取り組みたい。

■現存施設の有効活用をせよ

【さはし議員】名古屋市は、本補正予算で、待機児童早期解消のため730人分の定員増の予算を計上しました。6月市会の市長答弁で、2013年度当初までに3才未満児の定員を2400人分拡大する目標を表明されたことは、評価いたします。

そのうえで、先日、日本共産党市議団は、「待機児童問題を解決し、安心して預けられる保育を実現するための緊急提言」を発表し、市に申し入れました。その基本は、名古屋市の責任で公立も民間も認可保育園をしっかり増やすということ、待機児童解消を理由にした営利企業の参入は認めないことです。

検討会議の中で、名古屋民間保育園連盟は、待機児童問題を受けて入所枠を1005人確保するとの提案がありました。公立保育園はどうでしょう。

市は、本当にあらゆる手立てをつくしたのでしょうか。

私たちの緊急提言では、民間移管のため、現在新規入所制限している千種台保育園で0才からの受け入れを開始することや、閉園中の市立幼稚園など、施設が現存している幼稚園を、保育園として活用することを提案しています。また、名古屋市内で、二番目に待機児童数が多い、緑区にある汐見が丘保育園にいたっては、新しい敷地に園舎を建設中のため、旧園舎跡地は、24年度に売却予定です。売却先が決まっていないならば、売却せずとも、耐震も済んでいる園舎を継続的に活用したらどうでしょうか。

そこで、私たちが提案しているような千種台保育園や閉園中の市立幼稚園など、現存している施設を有効活用すべきではありませんか。

■千種台保育園を活用する気はない。廃園した幼稚園は民間で活用(局長)

【子ども青少年局長】千種台保育園の移管先の民間保育所は、平成22年4月、近隣地に定員を拡大して開設し、跡地利用の計画も地域に示されているので併存させる予定はない。

市立幼稚園は、今年度、民間法人が旧平田幼稚園の園舎を改修し、平成24年4月には保育所として開設する予定。

市有地の有効活用は、引き続き積極的に検討したい。

■国有地の積極的な活用を

【さはし議員】一方、民間保育園が建設する場合、一番難しい問題は、土地を確保することです。土地購入には補助はありません。全国には、保育所用地として国有地を斡旋している自治体があります。例えば、東京の世田谷区では、利用されていない国有地を借り入れ、社会福祉法人に提供し、来年4月に民間の認可保育園を開園する予定と聞いています。

そこで、おたずねします。東海財務局は随時自治体に対して、国有地の情報を提供しています。こうした、国有地を保育所の用地として活用すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

■積極的に検討を行っている(局長)

【子ども青少年局長】スピード感ある対策を行うためには、国有財産の活用も有効な一手法です。昨年6月に厚生労働省から、国家公務員宿舎の保育所入所待機児童対策への活用に関する通知があり、その後、東海財務局からも様々な情報提供がある。国有財産の活用は価格や契約条件と併せて、待機児童の状況等を総合的に勘案しながら、積極的に検討を行っている。

■営利企業の参入はやめよ

【さはし議員】現在、名古屋市では、待機児童解消の切り札として、企業参入について検討されています。有識者で構成する保育施策検討会議主催による「市民の意見をお聞きする会」では、企業参入による保育の質の低下を心配する声が、多く出され、検討会議でも、「入所できるならどこでもいいというわけではない」、「保育という場に利潤を追求する企業参入はそぐわない」などの父母や現場の保育士の不安の声を受け止めることが必要だとする慎重な議論となりました。

企業参入で、全国的に現実に起こっていることは、保育所なのに店舗と呼ばれ、園児家庭は顧客となり、保育の提供というより、利益優先になっているということです。株主のために効率化が至上命令で、例えば、給食は揚げ物ばかりの仕出し弁当という事例も見られます。これでは、今まで名古屋が築き上げてきた、子も親も丸ごと支えることができる支援拠点としての、保育の質を維持することはできません。

検討会議の議論でも、現段階は企業参入を認めるか否か答えを出すことはできないというものです。

検討会議で、答えを出すことが出来なかった企業参入導入は、きっぱり断念すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

■議会の意見も聞きながら、方針を決定したい(局長)

【子ども青少年局長】名古屋市保育施策検討会議では、待機児童が急増する中で、スピード感ある対策が必要であり、そのために必要なあらゆる方策を取るべきとの共通認識で議論している。営利法人の参入は、経営リスクへの対応、保育の質の確保について懸念する声もあり、社会福祉法人等を中心に保育所整備を進めることが望ましいとの意見が出された。一方、営利法人の参入を視野に入れ、他都市の実績を踏まえた厳格なルールを検討しておく必要があるとの意見も出され、現在、中間報告に向けた取りまとめをいただいている。

今後は、中間報告をいただいた後に、議会の意見も聞き、営利法人の参入にかかる方針を決定したい。

■汐見が丘保育園を活用してはどうか(再質問)

【さはし議員】現存の保育園の活用では、緑区の汐見が丘保育園は、まだ売却先が決まっていません。土地も建物もそのまま生かし、売却するのをやめて活用すべきではないでしょうか。

■保育所の配置バランスを配慮しながら、待機児童の解消に努めたい(局長)

【子ども青少年局長】汐見が丘保育園の廃園は、平成23年3月に条例改正し、現在、南側隣接地で引き継ぎ法人が整備している。定員を現行の100人から130人へと30人拡大し、平成24年4月に開所する予定。また今回の補正予算での民間保育所整備のうち緑区の1か所は、汐見が丘保育園と同じ中学校区での整備を予定している。

今後も、保育所の配置バランスを配慮し、あらゆる方策により待機児童の解消に努めたい。

■企業参入は、おこなうべきではない(意見)

【さはし議員】検討会議では、賛成・反対の意見が割れ、結論がでていないというのが営利企業の参入です。今後、議会の意見も聞きながら、営利企業を参入させるかどうかも決めていきたいとのことですが、私は、父母、保育関係者の思いを重く受け止め、企業参入は、おこなうべきではないということを、申し上げておきます。

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