2011年6月定例会

名港議会 本会議質問(2) 防災について(2011年6月10日)

名古屋港管理組合議会 2011年6月定例会 本会議質問(2)

2011年6月10日
山口清明 議員

名古屋港の防災問題について

地震や津波の被害想定について

【山口議員】3月11日の東日本大震災から明日で3か月が経とうとしています。被災されたみなさまに心からのお見舞いを申し上げると共に、この震災からしっかりと教訓を学び、これからに活かしていくことも私たちの大切な務めです。

私は名古屋港の防災問題について、この8年間、継続的にこの議会でも取り上げてまいりました。5月24日には被災した仙台港の調査も行ってきました。これまでの経過と今回の震災を踏まえ、あらためて名古屋港の防災について7項目、順次質問します。

第一に、防災計画とくに被害想定についてです。

名古屋港防災計画第4節には「災害の想定にあたっては、名古屋港が過去において被った台風、高潮等による被害のうち最も大規模な災害を、地震、津波、火災、爆発等による被害については、名古屋港に類似した他の港湾が過去において被った大規模な災害を参考にして想定する」としています。

台風や高潮は現在でも伊勢湾台風が被害想定のもとになっていると思いますが、現在の地震や津波の被害想定は過去のどんな災害を参考にしているのですか。

海溝型はマグニチュード8.27の想定東海・東南海地震連動発生を対象

【防災・危機管理担当部長】海溝型の地震・津波の被害想定につきましては、平成15年3月に愛知県が調査をおこなったマグニチュード8.27の想定東海・東南海地震連動発生におけるものを対象にしております。

直下型地震につきましては、「港湾の施設の技術上の基準」によりマグニチュード6.5を想定しております。

地震や津波に対して専門家からの指摘はあるのか

【山口議員】この規定に基づけば、当然、東日本大震災を踏まえた災害の想定に変更する必要があります。すでに愛知県も、東海・東南海・南海の3連動でマグニチュード9クラスの地震を想定する方向で、防災計画の見直しに動いているようですが、地震の想定を変更すると名古屋港での津波の想定はどうなるのか、高さと到達時間の両方でどんな指摘が専門家からされているか、うかがいます。

津波が高くなることで到達時間が早くなる(部長)

【防災・危機管理担当部長】専門家の話によりますと、津波が高くなることにより到達時間が早くなると聞いております。

また新聞報道によると、東海・東南海・南海地震が連動して発生し、東日本大震災クラスのマグニチュード9.0の場合、本港への到達想定時間である90分から120分に対し、5分から10分程度早まると予想されております。

その場合の津波の高さは、今までの想定を上回ると予想されておりますが、地形によっては想定の倍以上になる可能性も指摘されております。

防災計画変更のスケジュールを示せ

【山口議員】防災計画では計画の修正・変更について第2節第2項で「この計画は毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正する」とあります。国・県・市の防災計画の変更待ちではなく自主的主体的に緊張感をもって速やかに計画を見直すことが必要と考えますが、計画変更までのスケジュールを示してください。

本年6月には防災計画などの見直し、今後も必要に応じて見直す(部長)

【防災・危機管理担当部長】震災後に明らかになった問題点に速やかに対応するため、本年6月には防災計画などの見直しを行っております。

今後も防災施設・防災体制のあり方について引き続き検討を進めて、国・県・市の防災計画の変更を待つことなく、必要に応じて見直しを行ってまいります。

津波の高さが2倍になるのか、潮位が2倍になるのか(再質問)

【山口議員】名古屋港の防災計画、被害想定についてです。

現在は津波の予測についても、東海・東南海地震の二連動発生を想定し、名古屋港では3.9mの津波が来るという想定です。この想定が、専門家の指摘によると到達時間が早くなり、津波の高さも地形によっては2倍以上になると言うことなのでしょうか。津波の高さが2倍になるのか、潮位が2倍になるのか、よくわからない、説明して下さい。

大潮時のN.P.+ 3.9mがN.P.+5.2mとなる(部長)

【防災・危機管理担当部長】3.9mとは名古屋港における潮位であり、名古屋港基準面N.P.からの高さになります。その内訳は、大潮時の満潮位である朔望平均満潮面2.6mを基準として、津波の影響による偏差1.3mを足したものとなっております。

専門家に確認しておりませんが、仮定として、想定の2倍の津波が来襲したと考えた場合、本港における津波の影響による偏差が2倍の2.6mとなることであり、潮位はN.P.+5.2mとなるものと思われます。

名古屋港基準面の数値に統一して情報提供すべきではないか(再質問)

【山口議員】名古屋市会での議論やマスコミ報道でも、予想される津波は2.5mという数字が使われています。私もつられて2.5mと言ったことがありました。数字が混乱しています。2.5mはTP=東京湾が基準の数値です。防災計画の見直しの前提として、冷静な議論をするうえでも、市民県民に正確に情報を伝えるうえでも、これからはNP=名古屋港基準面の数値に統一して情報提供すべきではないでしょうか。あわせてお答えください。

名古屋港管理組合ではN.P.に統一して情報提供(部長)

【防災・危機管理担当部長】全国共通の海抜の基準としては、東京湾平均海面であるT.P.が用いられております。しかし、港湾においては港ごとの潮汐の特性により基準面の高さは異なっており、それぞれの港が水深の基準値である基準面を設定し、その港の施設整備などをしております。

したがって、名古屋港管理組合における水面や施設の高さ表示は、防災施設に限らず名古屋港基準面であるN.P.に統一して情報提供しております。

関係者にとっては常識でも市民県民から見ると、実にわかりにくい(意見)

【山口議員】津波の被害想定については県民市民の大きな関心事です。少なくとも5mの津波は想定する必要があると考えていきたい。名古屋港基準水面をもとにした数値を管理組合は使っている、との答弁でしたが、管理組合のなかだけでいいのか、という問題なのです。

名古屋市地域防災計画の津波予測は、T.P.表示2.5mです。N.P.はどこにも出てきません。関係者にとっては常識でも市民県民から見ると、実にわかりにくい。このままでは議論が混乱します。河村管理者、いちど確かめてください。そしてぜひ、わかりやすく表示を統一してください。これは要望です。

高潮防波堤の耐震補強の見通しを示せ

【山口議員】東日本大震災では、釜石港や大船渡港の津波防波堤などが破壊され、また地盤沈下で海面すれすれまで沈み込んでしまいました。生き残ったように見える防波堤も、津波による引き波などで防波堤本体を構成するケーソン(コンクリートの箱。堤防はこのケーソンを並べて置いてあるのが基本的な構造)が、櫛の歯が欠けるように落下しています。

それなら防波堤は津波に対して無力だったのか、そうではありません。港湾空港技術研究所の分析や国土交通省の調査によれば、釜石港では防波堤があったおかげで推定約13mの津波が約8mに高さで約4割抑えられ、津波の市街地到達を約6分遅らせる効果があったとしています。

しかし同時に、防波堤が機能していたのは津波による水位上昇から5分程度だけしか確認されていません。より詳しい検証作業が必要ですが、さて名古屋港はどうでしょうか。

長さ7.6㎞、海面からの高さは6.5mの名古屋港高潮防波堤ですが、津波の引き潮対策は皆無、強度の見直しが必要です。また何度も議会で取り上げてきましたが、地震による液状化で知多堤では最大4.1mも防波堤自身が沈下する可能性があることも指摘されています。築後47年になる高潮防波堤の補強は本港の急務です。

しかし高潮防波堤は国の施設です。国の予算がつかないと補強できないのですか。 いまの時期、国の予算を獲得する目処はあるのですか。高潮防波堤はどんな耐震補強をいつまでに行うのか、見通しをはっきり示してください。

愛知県及び名古屋市と連携し、国へしっかりと働きかけてまいりたい(室長)

【企画調整室長】高潮防波堤については、本組合は国から管理委託を受け、日常的な管理を行っており、改良工事は国が行っているため、補強については国の予算が必要です。

こうした中、現在、中部地方整備局におきましては、東日本大震災の発生を受け、高潮防波堤に対する想定外力の見直し等、最新の知見に基づいて検証を進めるなど、中央防災会議における検討内容との整合を図りつつ、早急な対応が図れるよう関係機関と調整中であると聞いております。

本組合としましても、東日本大震災がこれまでの想定を大きく上回るものであったことを踏まえて、今後、対策が早急かつ着実に実施されるよう、愛知県及び名古屋市と連携し、国へしっかりと働きかけてまいりたいと考えております。

防潮扉の閉鎖対応、防潮壁の耐震性はだいじょうぶなのか

【山口議員】総延長26.4㎞、名古屋港基準面より6~6.5mの高さを誇る防潮壁には51もの扉があります。うち常時閉鎖中の扉は16カ所です。災害時に閉鎖を確認すべき35カ所の防潮扉のうち管理組合が直接開閉を管理しているのはガーデンふ頭入り口など7カ所だけで、残りの28カ所は企業などが管理しています。

問題はいざ津波というときに閉めることができるのか、という一点です。仙台港で、どうだったか尋ねたところ、答えは「とにかく避難を指示したので、防潮扉や水門の閉鎖は確認できません」「電動の扉も停電で閉鎖したかどうかわかりません」とのことでした。

阪神淡路大震災のケースも紹介しながらこれまで何度も質問してきましたが、あらためてうかがいます。

防潮扉のレールが歪み、動かなくなったらどうやって閉鎖するのですか。ガーデンふ頭の入り口は電動で開閉する仕組みですが、電源が落ちたらどうするのですか。事業所の開閉管理はすべて24時間356日できるのですか。そして防潮壁本体の耐震性、強度は十分なのでしょうか。以上、防潮壁に関する現状と課題についての認識をうかがいます。

徒歩1時間圏内の10人が防潮扉閉鎖班なので閉鎖は可能。土嚢を積み上げる訓練もしている。防潮扉閉鎖自動通報システムで常時監視。液状化対策も行っている(部長)

【防災・危機管理担当部長】本組合では、万一のときに備え、非常時における職員の参集調査を行っております。ガーデンふ頭へは、徒歩1時間圏内に20人弱の職員が居住しており、そのうちの10人が防潮扉閉鎖班として編成されているため、閉鎖は可能と考えております。

また、民間に委託している防潮扉に関しましては、業務終了後の閉鎖を依頼しております。非常時には防潮扉閉鎖自動通報システムにより、24時間365日、通報する体制が整えられておりますが、今後もより短時間に閉鎖できる体制の構築を目指して検討を進めてまいります。防潮扉が閉鎖できない場合の対応として、土嚢を積み上げる訓練を毎年行っております。電動化された防潮扉については、万一に備え、手動でも開閉できる仕組みにしております。

防潮壁の耐震性、強度につきましては、「海岸保全施設築造基準」に基づき整備し、一定の耐震性及び強度を有しておりますが、液状化対策につきましては、背後地の住宅の立地状況や地盤高を考慮して、約4.4kmを優先して液状化対策を行う計画であり、平成22年度末時点で進捗率約14%、約0.6kmについて整備が完了しております。

堀川口防潮水門の津波対応はよかったのか

【山口議員】3月11日、名古屋港にも津波警報が出され、避難勧告が出されました。当然誰もが堀川口水門が閉まったものと思い込んでいたのではないでしょうか。ところが約1mの津波だったにもかかわらず堀川の水門は完全には閉じられなかったのです。

これが当日の潮位の変化と水門の開閉を示したパネルです。

気象庁から津波警報が出たのは15時30分、16時30分に1mの津波が名古屋港に来ると予測が発表されました。この警報を受けて堀川口には10名の職員が第一次非常配備に着きましたが、警報発令時、水門は開いたままです。

第一波が来たのは18時過ぎ、たいしたことがないと閉めなかったが、引き波が予想以上に大きい、災害対策本部は危険と判断して19時15分に閉鎖開始を指示し、通常の操作手順に従い、4つの水門を一門ずつ6分ずつかけて閉鎖していきました。

ところが全部の水門を閉じる前に、引き波となり水門内側の水位が急上昇、現場ではハの字型は無理に閉めると水圧で壊れるおそれもあると判断し、19時46分に水門は開放。現場は潮位が下がりきったと判断した20時35分に再び閉鎖を開始、今度は4門同時に10分で閉めきりました。

再び引き波になったとみて21時09分に開放開始、もう大丈夫と思い、次の波が来たときは閉鎖しませんでしたが、実は閉鎖しなかったこの第4波が潮位でみると2m40cmと一番高かったのです。まずいと思ったのか次の引き波で、閉鎖しかけたがすぐ中断、また閉鎖と繰り返しています。

この間、対策本部からの支持は最初の閉鎖指示だけで、あとはすべて現場の判断だったようです。結果的に効果的な閉門作業ができなかったと率直に認める必要があると思いますがいかがですか。高潮には対応できても津波による短時間の連続する潮位の変化に対して十分には対応できなかったと総括すべきではありませんか。

今回初めて引き波による開閉操作が必要になったので、現場で対応(部長)

【建設部長】今回の震災で堀川口防潮水門においては、第1回防災対策本部員会議において、予想された津波高さが、閉鎖基準であるN.P.+3.0mを超える恐れがなかったことから閉鎖できる体制で待機する判断をいたしました。津波到達後、引き波による潮位の変動の大きさを確認し、万全を期して閉鎖の決定を行い、閉鎖操作を実施しました。

一連の操作は、短時間で変動する潮位の変化に対応する中で、今回初めて引き波による開閉操作が必要になったことから、防災対策本部の了承のもとに、現場で対応を行ったものであります。

今後は、今回の結果を踏まえて、より適切な対応ができるように検討してまいります。

水門の開閉及び潮位状況の沿岸住民への情報伝達はできたのか

【山口議員】水門は津波が来るときちんと閉じるというのは「安全神話」だったのです。水門の内側は、護岸の高さが3mしかありません。水門外側の名古屋港は5mです。水門の存在が前提で護岸の高さが設計されているのに、このままでは安心できません。

当日、堀川では急な潮位と潮流の変化で係留されたボートなどが激しく揺れ、浮桟橋の損傷もあったと聞きました。しかし川沿いのみなさんには水門の開閉状況も潮位の変化も伝わっていなかった。船舶所有者からは海上保安庁に問い合わせたが「水門は閉まっているはずですよ」という答えが返ってきただけと言います。

水門の開閉状況と潮位の状況を関係機関で共有し、沿岸の住民に迅速正確に伝えることができたのですか。

水門の閉鎖状況は、関係機関及び堀川利用者に行っているが、潮位情報の提供も検討する(部長)

【建設部長】水門の閉鎖の予定、閉鎖及び開閉の連絡は、関係機関及び堀川利用者に行っております。

今後、今回の結果をふまえて、堀川利用者への閉鎖連絡の際に注意喚起を促すとともに、水門の閉鎖状況につきましては、ホームページに掲載しておりますが、潮位情報の提供を検討いたします。

堀川口防潮水門の緊急時の操作体制には問題がある

【山口議員】職員体制はどうか。水門の開閉操作には5~6人の職員が必要とのことですが、操作する堀川左岸ポンプ場は9時から5時の通常勤務、夜間は無人です。左岸にあるので、名四国道やきらく橋が地震で通行止めになったら、誰が操作に駆けつけることができるのか、私には不安です。緊急時の操作体制は現状で問題ないと考えているのか、あわせてうかがいます。

防災体制の見直しの中で、より確実な対応を目指す(部長)

【建設部長】堀川口防潮水門の緊急時の操作体制は、本組合の防災計画に基づく非常配備体制による対応を考えております。

緊急時の操作体制につきましては、本港の防災体制の見直しを行っていく中で、より確実な対応を目指して、検討しております。

水門の開閉及び潮位状況の情報伝達に問題あり(再質問)

【山口議員】答弁は「防災対策本部員会議で、予想される津波の高さが閉鎖基準であるN.P.3mを越える恐れがなかったと判断したので、本来閉める必要もなかったが、思ったより引き波が強かったので、念のために閉めた」ということでした。

津波警報が出たのは15時30分ですが、警報の発令と水門の閉鎖はまったく連動していません。ところが名古屋市地域防災計画には、「水門、閘門等の操作」という項目があり、そこには「津波警報が発表された場合、所定の水門、閘門及び高潮防潮堤陸閘の管理者は、ただちに当該水門、閘門及び高潮防潮堤陸閘を閉鎖し、以降、水位の変動及び状況に応じて門扉等の適切な開閉を行うものとする」とあります。このとおり動いてないじゃありませんか。

みんな、ただちに水門は閉まるものだと思っているのですよ。

関係機関に閉鎖の連絡は行ったということですが、確かに市消の災害対策本部には、ファックスで名古屋港管理組合危機管理情報が5回送られています。しかし第三波については情報がない。21時30分には水門開放しているのに22時10分のファックスでは20時30分閉鎖との情報だけ、21時30分水門開放とのファックスが送られたのは23時50分でした。

しかもこの情報は市の本部でストップしたままでした。港区役所では、20時45分に管理組合に電話をして、水門閉鎖完了との情報確認した、との記録があるだけです。水門が頻繁に開閉され、堀川の潮位や潮流が変化を繰り返していたことは港区役所の防災本部にすら正確に伝わっていなかったのです。

堀川口防潮水門の開閉について、市民への周知と関係機関との情報共有に問題があったとまずはっきり認めるべきではありませんか。

現場での判断を優先した。災害対策会議時にまとめて報告を受け、会議終了後、情報を関係機関に送付(部長)

【防災・危機管理担当部長】堀川水門の開閉については、災害対策本部において、津波の早い潮の満ち引きに対応するため、現場での判断を優先することにしました。そのため、水門の開閉状況については、災害対策本部員会議開催時にまとめて報告を受け、会議終了後、情報を関係機関に送付しております。

今後は、連絡体制の点検を行い、より迅速かつ正確に伝達できるようにしてまいります。また、津波警報時の対応につきましては、速やかに開閉できる体制としていくことが、急務だと考えております。

急激な変化に水門の開閉速度がついていけない、引き波には耐えられない(再質問)

【山口議員】私が水門にこだわるのは、心配される大津波ではなくて、現在想定されているN.P3.9mの津波に対しても現状では堀川口水門は対応できないのではないか、と思うからです。

台風の高潮の時はどう閉めるのか、まず潜水夫が潜って海底のヘドロなどが障害になっていない確認し、それからおもむろに4門ある水門を一つずつ閉める、そうです。地震発生時の想定は「水門操作要綱」にもなんにもない。

潮位の急激な変化に水門の開閉速度がついていけないのではありませんか。水門の強度も3.9mの津波の水圧に、とくに引き波に耐える設計になっていないのではありませんか。

NP+6.0mの高潮水圧には耐えるが、津波に対する検討調査を計上(部長)

【建設部長】水門は、高潮対策を想定した施設として整備されており、津波に対しては、4門同時操作で開閉時間の短縮を図り、引き波には、開放し、押し波が始まるときに再び閉鎖する操作で対応しております。今回、開閉時期の判断に苦慮した点を踏まえまして、水門の津波に対する検討調査を当初予算に計上しております。水門はNP+3.9mの津波による水位を上回るNP+6.0mの高潮水圧に耐える強度がありますが、この調査の中で、水門を閉鎖した状態でどれくらいの高さの津波に耐えられるかの耐波性の検証を行いたいと考えております。今後は、調査の結果により課題を抽出し、必要に応じて詳細な検討を行いながら、適切な対応を図っていきたいと考えております。

職員の参集体制の何が問題で、どう改善しようとしているのか(再質問)

【山口議員】きちんと閉じたら閉じたで津波は護岸を乗り越えて水門左右の陸地にあふれ出し、浸水する危険性も否定できません。

そして、緊急時の操作体制についても答弁はあいまいです。ガーデンふ頭の防潮扉については、徒歩1時間圏内に20人住んでおり、10人が閉鎖班となっておりいつでも駆けつけます、と詳しい答弁があったのに、堀川の水門では緊急時の操作にあたる職員の参集体制についてはっきりした答がありません。

問題意識がないのか、具体的に何が問題で、どう改善しようとしているのか、具体的に答えてください。

より確実な体制となるよう、常駐を含めた検討を行う(部長)

【建設部長】水門の操作は、施設を熟知した職員により行う必要があります。

津波の到達予想時間内に、確実に水門の閉鎖が行えるよう、体制を整えることが課題であり、より確実な体制となるよう、常駐を含めた検討を行っております。

堀川口防潮水門については、調査や検討すべき課題がいくつもある(意見)

【山口議員】堀川口防潮水門については、調査や検討すべき課題がいくつもあることがはっきりしましたね。水門の「操作要綱」も津波に関して全面的な書き換えが必要です。しっかりと検討していただきたい。

港湾で働く労働者の避難対策があいまいだ

【山口議員】津波警報が出れば、地域住民には、避難勧告や避難指示が出されます。名古屋市では津波用避難ビルの指定も検討が始まりました。

岸壁に停泊中の船舶には急いで沖に出ろ、と間髪入れず指示が出ます。

仙台港では停泊中だった太平洋フェリーは危機一髪で離岸し出港したそうですが、タンカーは舳先を津波に向けるのが精いっぱい、その姿勢で何とか凌いだそうです。しかし港内には逃げ遅れた韓国籍の5,472㌧もの大型貨物船が岸壁に乗り上げたままです。いまだ撤去の見通しは不明だそうです。

住民と船舶への避難指示はとりあえずはっきりしています。問題は港湾で働く労働者です。仙台港では、津波で少なくとも4人の方が荷役の現場などで亡くなったとお聞きしました。また多くの方が車で避難して渋滞となったところを津波に襲われたそうです。

名古屋港では、働く人たちの避難誘導はどうなっているのでしょうか。私が以前、質問した時には「災害時の避難誘導については名古屋市や飛島村の地域防災計画で決められた広域避難場所や避難所への避難計画に即し、同報無線や既存の放送設備を活用し避難誘導を行う」(2007年6月議会)との答弁でした。そこでうかがいます。

3月11日、港湾で働いている人たちには、管理組合としてどんな避難誘導指示を出しましたか。飛島村や弥冨市、名古屋市では、どこに地震や津波の時はどこに避難する計画になっており、それを港で働く人たちには誰がどう伝達し、実際にどれだけ避難したのですか。答えてください。

避難勧告は各市村が出すもの。津波警報時の避難ビルを各市村に働きかけたい(部長)

【防災・危機管理担当部長】避難勧告につきましては、地域防災計画に基づき各市村が出すものであります。3月11日の避難人数につきましては、把握しておりませんが、港内の避難対象地区である名古屋市の4地区については、同報無線、広報車による伝達を行ったと聞き及んでおります。

また、ガーデンふ頭の来港者に対しては、防潮扉を閉鎖する際に避難誘導を実施しております。

港湾労働者に対しては、今般の大震災を受け、津波警報時の避難ビルについて、積極的に各市村に働きかけたいと考えております。

その情報伝達として、飛島村においては同報無線・防災ラジオ、弥富市においては同報無線、名古屋市においては、同報無線や広報車により実施されております。

さらに、港湾管理者としても情報伝達方法について、検討してまいります。

港湾で働く人たちの避難誘導計画の位置づけを

【山口議員】はっきり申し上げて、岸壁やコンテナターミナル、荷捌き地などで働いている人々への避難誘導は、管理組合の防災計画の盲点になっています。

津波の際にすぐ避難できる強度と高さを持った建物はどこかはっきりさせておき、普段からそこへ駆けつける訓練を繰り返し行うことが必要ではありませんか。市や村の地域防災計画任せではなく、管理組合の防災計画に、港湾で働く人たちの避難誘導計画をしっかり位置づけるべきです。いかがですか。

隣接市村と調整を図っていきたい(部長)

【防災・危機管理担当部長】避難ビルについては、臨港地区においても各市村が指定するものでありますが、本組合においても隣接市村に対して積極的に働きかけたいと考えております。

また、避難誘導計画については、本組合として港湾関係者と調整をした上で、隣接市村と調整を図っていきたいと考えております。

仙台港を教訓にした名古屋港のコンテナの流出防止対策を

【山口議員】伊勢湾台風で、貯蔵してあった材木が市街地に流出し、凶器となって街を襲い多くの犠牲者を出したことは、私たちにとってはいつまでも忘れられない記憶です。さて現在では、コンテナや車などが流出する、完成自動車が火災を起こすことが新たな脅威となっています。

震災当日、仙台港はちょうどコンテナ船が来る直前で岸壁にはコンテナが山積みでした。その大量のコンテナが流されぶつかりグシャグシャにつぶれました。泊地や航路には250個以上もコンテナが沈みました。流出したコンテナは約2000個、遠くは牡鹿半島を超えて90㎞以上離れた女川付近まで流れ着いたといいます。コンテナからは名古屋港行きの自動車タイヤが出てきたそうです。数キロ以上離れた砂浜にもコンテナが打ち上げられました。

モータープールにはトヨタ車1800台、ホンダ車1600台がありましたが火災や流出でほぼ全滅です。

私は2009年11月の議会で、台風18号による高潮で三河港で空のコンテナが流出したことを踏まえて、コンテナや自動車の流出への備えについて質問しました。

当局の回答は「ヤード内のコンテナも完成自動車も流出する可能性は極めて低い」というものでした。このとき既に国などが組織した「伊勢湾高潮災害低減方策検討委員会」からは空コンテナは20cm、完成自動車も50cmの浸水で浮上し流出すると指摘されていました。今度は、空ではなく実入りのコンテナが流出したのです。

仙台港でのコンテナや自動車の流出をどう受け止め、名古屋港での流出防止策をどう考えているのか、答えてください。

流出の可能性は低いが、どのような対策がとれるのか検討する(部長)

【防災・危機管理担当部長】名古屋港においては、過去の津波や現在の想定津波高より、コンテナや自動車の流出の可能性は低いと考えております。

しかし、仙台港も想定外の津波が来襲し、流出したコンテナや自動車が被害を拡大させていることから、名古屋港においても津波による背後地へのコンテナや自動車の流出防止について、どのような対策がとれるのか検討を進めてまいります。

耐震強化岸壁の耐震性能の点検を

【山口議員】コンテナが多数流出した仙台港高砂ふ頭は水深14m、ガントリークレーン4基を備えた仙台港では最新のコンテナターミナルで、国直轄事業でつくられた耐震強化岸壁でした。ところがこの耐震強化岸壁が仙台港のいくつもある岸壁の中でいちばん被害が大きかったのです。ここは阪神淡路大震災後に整備された岸壁です。今度の地震よりももっと大きな地震(加速度や波形)を想定し、埋め立てに使った土砂も砂でなく岩質のものをわざわざ使っていたというのです。詳しい原因はまだ不明ですが、周期の長い揺れや、掘り込み型の仙台港の中でここだけが埋め立てた所というのが関係あるかも、とのお話でした。

名古屋港はすべて埋め立てです。耐震岸壁なら安心と言えるでしょうか。

ガントリークレーンは倒れませんでした。しかし地上部分にあった変電施設やクレーン本体が浸水したり、コンテナがぶつかりケーブルが切れたりで、電気系統がやられて、クレーンはいまだに動くことができません。耐震強化岸壁のこれが現実です。

そこでうかがいます。仙台港高砂埠頭の耐震強化岸壁が地震にもろかった事実をどう受け止めていますか。あらためて名古屋港の耐震強化岸壁について耐震性能などを点検する必要があると考えますがいかがですか。お答えください。

本岸壁は大きな損傷はないと考えていたが、検証結果を注視する(部長)

【建設部長】仙台港高砂埠頭の耐震強化岸壁の被災についてですが、本岸壁は「港湾の施設の技術上の基準」に基づき整備されているので、大きな損傷はないものと考えておりましたが、現地の被災状況を見る限り特殊な要因が働いたものと思われ、被災原因については、今後の検証結果を注視していきたいと考えております。

既存耐震強化岸壁の耐震性能については、今後の耐震基準の見直しに従い点検する必要があると考えております。

名古屋港の地震・津波に対する防災の課題について、どんな認識を持っているのか(再々質問)

【山口議員】管理者にも最後にうかがいたいと思います。

津波が予想される時の港湾で働くみなさんの避難誘導計画は、地域防災計画を策定する市町村がつくるもので、一部事務組合の防災計画にはそもそも直接、盛り込む対象ではないというのが防災対策の法律の考え方です。

しかし、現実には港湾地区における避難誘導計画は、管理組合が中心となってきちんとつくることが私は名古屋港の場合は合理的だと考えます。もちろん、防災の問題は管理組合と市町村の連携がほんとうに大事なのですが、その狭間で、港湾で働く人たちの避難誘導計画が置き忘れられてきたと思います。

津波の避難ビルも指定を始めるとのことですが、港湾で働く人たちの避難誘導問題や堀川口防潮水門をはじめ、名古屋港の地震・津波に対する防災について、どんな問題意識をお持ちなのか、防災力の強化に向けてどんな具体的な指示を出すおつもりなのか、最後にうかがって質問を終わります。

【管理者(名古屋市長)】観光者や港湾で働く人たちの避難誘導対策については、名古屋港管理組合が港湾関係者と調整したうえで、隣接市村と連携して対応してまいります。

観光者や港湾で働く人を含め、地域の生命・財産・産業活動を守る拠点として、隣接市村と連携しつつ名古屋港が果たすべき役割を実行していくことが大切だと考えております。

防災力の強化に向けては、各種防災施設の強化や避難誘導など防災体制の充実に向け、国の被害想定結果を待つことなく前向きに対応するよう指示してまいります。

国際戦略港湾「選択と集中」路線の見直しを

適切に分散配置することこそ必要ではないのか

【山口議員】次に、国際戦略港湾の「選択と集中」路線についてうかがいます。

仙台港は、名古屋港の内貿貨物にとって最大の提携港、移出も移入も取扱貨物がいちばん多い港です。自動車関連貨物がその多くを占めています。被災した仙台港の一刻も早い復旧を望んでいるのは、名古屋港に貨物をおくっている東北の自動車部品メーカー(タイヤメーカー)です。名古屋港の港勢にとっても仙台港の復旧、復興は他人事ではありません。しかしいま仙台港には心配事が二つあると私は感じました。

一つは国際航路の貨物船の相次ぐ抜港です。抜港の理由は津波被害ではなく原発事故による放射能への懸念です。東京電力と国の責任は極めて重大です。

もう一つは国際戦略港湾、選択と集中による港湾関連予算の配分です。東京湾と大阪湾を港湾法でも特別な地位とし、今年度では514億円の予算を集中的に投資する、2020年までに約5500億円を注ぎ込むというのが国のコンテナ国際戦略港湾方針です。名古屋港と同様の国際拠点港湾とされた仙台塩釜港には十分な予算が回ってこないのではないか、という不安です。

京浜と阪神だけに集中投資するより、被災した港湾の復旧・復興予算こそ優先すべきです。名古屋港との深い関係をみても、仙台港の復旧・復興こそが急がれるのではないでしょうか。

阪神淡路大震災で神戸港が大きな被害を受けました。関東大震災でも津波が襲いました。次は東海地震、名古屋港や清水港、四日市港が危ない。世界でも有数の地震と津波の多発地帯に細長く位置する日本列島の地理的条件を考えたとき、国際戦略と称して港湾機能を一極か二極へ集中させることは災害時のリスクが大き過ぎます。港湾の「選択と集中」路線そのものを見直すべきです。

バルクについてはどうでしょうか。「選択と集中」と言いながら、結局、絞り込めなかった。穀物をみても応募した6港は、清水港が名古屋港とセットだとすれば、事実上みんな選定されたではありませんか。名古屋港が選ばれたと胸をはる状況ではありません。

その結果、計画書通りだと全国の港に水深17m級の大水深バースをいったいいくつつくることになるのか。食糧自給率をゼロにするとでも考えない限り、需要の伸びをどんなに計算に入れても明らかに過剰です。国際競争力ではなく無意味な国内競争が強いられるだけです。

大震災の被災地でもある鹿島港も、霧島火山の噴火の影響も懸念される志布志港も選ばれています。それぞれ地域の経済を支える大事な港湾ですが、それぞれ国際戦略港湾と位置づけられたら全体で投資が過大になるのは明らかです。

管理者にうかがいます。国際戦略港湾に関わる一連の選定結果と東日本大震災による港湾の被災状況を見たら、「選択と集中」をかかげた国の港湾戦略は間違っていたとは思いませんか。バルクの選定結果をどう受け止めていますか。

日本の国土と産業、安全保障を考えれば港湾機能を極端に集中させるのではなく、むしろ適切に分散配置することこそ必要ではありませんか。

名古屋港の管理者の責務として、京浜・阪神への集中投資よりも、仙台港をはじめ被災した港湾の復旧・復興にこそ、いまは国力を傾注すべきだと国に進言するべきではありませんか。以上、答弁を求めて一回目の質問を終わります。

【管理者(名古屋市長)】「国際戦略港湾「選択と集中」路線の見直し」についてお答えいたします。

名古屋港はコンテナ貨物のみならず、バルク貨物や完成自動車も含めた総合港湾であり、過去10年間で約50兆円の留易黒字を嫁ぎ出してきた日本一の港であります。

我が国を代表する港湾に重点投資することは大事であり、今回、国際バルク戦略港湾として名古屋港が選定されたことは当然のことで、日本経済を牽引する名古屋港の重要性を国に理解していただいたものと認識しております。

また、東日本大震災の被災状況を踏まえ、地域の特性や災害時の相互補完機能を考慮した適正な港湾の配置も大事であると考えております。

被災した港湾の復旧・復興はもちろん重要でありますが、名古屋港が「国際産業ハブ港」としてこれまで以上に競争力をつけ、引き続き日本経済に貢献できるよう取組を進めることも大変重要と考えており、関係者の方々のご協力をお願いしたいと考えております。

穀物バルクの選定は適正か。国際コンテナ戦略港湾の重点投資は適正か(再質問)

【山口議員】国際戦略港湾についても、管理者に再度うかがいます。

わが国を代表する港湾に重点投資することは大事だ、とおっしゃいましたが、バルク穀物の戦略港湾の選定結果はちっとも選択と集中、重点投資になってないじゃありませんか。6港応募し、事実上名古屋港とタッグを組む清水港を入れたらすべてわが国を代表する重要港湾の扱いですよ。

穀物バルクの選定港の5(私は事実上6だと思いますが)という数字は適正な数と考えているのか?多すぎると考えているのか。お答えください。

コンテナは京浜と阪神の二つですが、わが国を代表するコンテナ国際港湾として国が重点投資すべき港は(名古屋港が入る入らないは別にして)二つが適正だと考えているのか。それとも二港では足りない、名古屋港を入れて3港は重点投資の対象とすべきとお考えなのか、答えてください。

【管理者(名古屋市長)】「穀物バルクの選定港の数」及び「国際戦略港湾として重点投資すべき港の数」についてお答えいたします。

国際コンテナ・バルク戦略港湾の数の議論ではなく、名古屋港は、京浜港、阪神港と役割が異なり、日本の経済を牽引する中部のものづくり産業を支える大変重要な港湾であります。

また、一本の航路を整備すれば、左にコンテナ、右にバルクの拠点を備えた、大変投資効果の高い港であります。

こうしたことから、日本一の取扱貨物畳、貿易黒字を出している名古屋港に相応しい重点投資を、国に対し求めていく必要があると考えております。

国の戦略にのせられてはいけない(意見)

【山口議員】国際戦略港湾の「選択と集中」路線はまちがっていると私は指摘しました。管理者からはいくつ選ぶとか数の問題ではない、名古屋港は東西2港とは役割が異なる、という答弁でした。役割が異なる港を無理やりランク分けし国の都合で特定の港湾に予算を集中投資するのがおかしいと指摘しているのです。これ以上、国の戦略にのせられてはいけない、と指摘しておきます。

キーワード: