名古屋市議会の改革推進のための提言

日本共産党名古屋市議団は、「名古屋市議会の改革推進のための提言」を発表しました。

名古屋市議会の改革推進のための提言

2010年4月7日
日本共産党名古屋市会議員団

(1)提言の立場

名古屋市議会の民主的改革は昨年秋以降、急速に進展しました。費用弁償の廃止と政務調査費の領収書全面公開が実現し、「名古屋市議会基本条例」が制定されました。

こうした議会改革をすすめた原動力は、「政治を変えたい」という市民の世論と運動です。新しい政治を求める市民の力は、2009年4月の名古屋市長選挙ではわが党をのぞく「オール与党」体制をくずし、同年8月の衆議院議員選挙では自民・公明連立政権を退場させ、名古屋市議会を動かしています。

日本共産党市議団は、名古屋市議会の民主的改革に大きな役割を果たしています。政務調査費の減額と領収書全面公開、議会出席1日1万円を一律支給する議員費用弁償制度の廃止、議員報酬の引き下げ、4年に1回の慣例的な海外視察の廃止、議員の発言時間の十分な確保、議会審議の充実と市民傍聴の拡大、企業・団体献金の禁止など、議会改革の課題を提言してきました。日本共産党市議団は提言するだけでなく、政務調査費領収書の自主的な全面公開や費用弁償の受け取り拒否など、自ら率先して実行してきました。

昨年秋にはじまった名古屋市議会の自主的な改革の取り組みのなかで、委員会審議のインターネット中継の実施、費用弁償の廃止、政務調査費の領収書全面公開が議会の合意となり、今年の2月定例会では「名古屋市議会基本条例」が決定されました。日本共産党名古屋市議団は、先進的な議会基本条例になるように内容を提案し、市議会の条例検討作業は“密室”ではなく、市民公開・市民参加でおこなわれるよう努力しました。

「名古屋市議会基本条例」は、議員と市長が市民から選出され、それぞれが市民を代表するという憲法の2元代表制をあらためて確認しました。2元代表制を否定し、議会のチェック機能を弱め、市長の権限強化をはかる動向が一部にあるだけに、2元代表制という憲法原則のもとでの議会・議員の役割の発揮をめざす名古屋市議会の立場は重要です。

議会基本条例の制定は、議会改革のゴールではなく、スタートです。市民は、住民福祉と地方自治の拡充のために議会がしっかり役割を果たすよう求めています。名古屋市議会は市民の負託に応え、「日本一市民に開かれた議会」「市民の願いに応える議会」をめざし改革をさらに前進させることが期待されています。

日本共産党名古屋市議団はこうした立場から議会改革の新たな課題を提言するものです。

(2)「議会基本条例」の具体化で生かすべき教訓

この間の議会改革の取り組みから学ぶべき教訓は次の点にあると考えます。今後、「名古屋市議会基本条例」を具体化するうえで、十分に生かし発展させるべき点でもあります。

①議会経費の透明性と説明責任

教訓の第1は、市民の税を使う議会経費は住民福祉の増進のため「最小の経費で最大の効果を挙げること」(地方自治法)が要請され、その使いみちには説明責任がともない、透明でなければならないことです。
 議会出席1日1万円が交通費等として一律に支給される費用弁償制度が廃止されたことや政務調査費の領収書等の1円からの提出と公開が義務づけられたことは、この教訓の重要性を示しています。

②従来の審議の慣行打破

第2は、従来の議会慣行にとらわれず、市民公開のもとでの審議を徹底することです。

国政と地方政治の激動のもとで、国民の政治的関心はかつてなく高まり、議会の動向に注目しています。「オール与党」時代に横行した議会与党と行政の「なれあい」、「予定調和」、「密室審議」と批判されるような議会運営の慣行は改めるべきです。

「全会一致議案」についても、会派間で合意されているからと審議を省略するのではなく、市民公開の委員会での審議や本会議での質疑をおこなうことが求められます。

また、本会議だけでなく、委員会審議にも市長の出席を求め、大いに討論すべきです。

③市民公開・市民参加の拡大

第3は、「市民が主人公」の立場をつらぬき、議会活動の市民公開・市民参加を拡大することです。

「名古屋市議会基本条例」の制定をめざす超党派の研究会活動は市民公開でおこなわれ、市民公聴会(パブリック・ヒヤリング)や市民からの意見聴取(パブリック・コメント)が実施されました。

委員会審議のインターネット中継、「3分間市民発言」、市民や学識経験者の意見を直接聞く公聴会・公述人・参考人制度の活用は新しい取り組みです。

④政策提案・条例提案の活発化

第4の教訓は、議会の政策提案、条例提案の活発化です。

2月定例会では、各会派から予算の組み替え提案と動議、予算修正案、住民投票条例案などの議案が議員から提出され、議員間の政策論議が活発になりました。

(3)さらなる改革の重点課題

日本共産党名古屋市議団は、名古屋市議会が次の重点課題に取り組むよう提言します。

①議員報酬の引き下げ

第1は、市民から「高すぎる」との批判の強い議員報酬の引き下げです。
現在、名古屋市議会は、現下のきびしい市民生活や市の財政事情を考慮し条例で定められた報酬額(月額99万円)を特例措置として89万円に、10%減額しています。しかし、市民の雇用不安や所得低下は一段と深刻化しており、条例報酬額そのものを特例措置以下に引き下げることが真剣に検討されなければなりません。

地方自治法第203条は議員報酬の支給を定めています。「名古屋市議会基本条例」は議員報酬について「議員活動に専念できる制度的な保障が必要」と明記しています。市会議員は、市民の要求にもとづいて地方自治を守り発展させる任務をもっています。そのためには、議会開会中にとどまらず、日常不断に市民との結びつきを強め、調査研究や政策学習に励み、市政と市民を結ぶ活動に事実上専念しなければなりません。このような議員活動を保障する報酬は、市民の意見を市政に反映させ、市民の参政権を生かすために必要な民主主義の経費といえます。

議員を「政治ボランティア」として「無償化」すべきだとか、「報酬は低ければ低いほうがよい」という主張がありますが、それでは一定の資産のある者以外は議員になることが困難になるという事態を生み、民主政治の発展を妨げることにもなります。

議員報酬の基準は法律で決まっていません。「報酬半減」や「800万円」に合理的な根拠があるわけではありません。議員報酬の額は、市長の押し付けでも、議会のお手盛りでもなく、市民参加・市民公開で検討することが大事ではないでしょうか。

日本共産党市議団は、公募市民、学識経験者が参加した「報酬調査検討会(仮称)」を議会にもうけ、議員の役割や市の財政事情をふまえ、市民感情を十分尊重し、議員報酬の引き下げを検討することを提案します。

②参政権を保障し多様な民意を反映する定数が必要

第2は、市議定数については市民の参政権を保障し多様な民意を市政に十分反映する立場をつらぬくことです。

河村市長が2月定例会に提出した「市議定数半減」案にたいし市民から「乱暴すぎる」「議会破壊」「ファッショ」などの強い批判がおきました。当然です。市長の議会攻撃の根底には、憲法の定める2元代表制を否定する立場があります。

名古屋市議会の議員定数は現在75。「議員が多すぎる」という意見がありますが、地方自治法による名古屋市の法定上限定数は88です。これが定数を考える基準です。現行75はすでに法定上限定数を13下回っています。定数の削減は、民意の削減であり、市民の参政権を弱めることにつながります。

日本共産党市議団は、少数意見をはじめ多様な民意を切り捨てる定数の削減や小選挙区導入、2人区拡大に反対します。人口増には定数増で対応すべきと考えます。

③政務調査費の減額と使途適正化を

第3は、議員1人当たり月額50万円の政務調査費の減額と使途の適正化です。

日本共産党名古屋市議団は、かねてから政務調査費の領収書など使途を証する帳票類を自主的に全面公開し、残金を市に返還しています。

いよいよ政務調査費の1円以上の領収書の全面公開が実施されます。各会派と議員には政務調査費の使途の説明責任を果たすことが求められます。市民の批判に耳を傾け、政務調査費の使途適正化と減額にすすむべきです。

④慣例的な海外視察や委員会個人視察の廃止を

第4は、慣例的な海外視察制度や委員会の委員視察制度の廃止です。
日本共産党市議団は議会・議員の海外調査や友好親善活動のすべてを否定するものではありません。それらは必要に応じて適切におこなわれるべきです。しかし、全議員を対象にした任期中に1度の慣例的な海外視察(4年間に120万円)は廃止すべきです。

また、市議会の委員会でおこなわれている所属委員の個人視察(年間30万円)も、政務調査費を充当すればよいことであり、廃止すべきです。

⑤議会の広報活動の強化を

第5は、議会の広報活動の抜本的強化です。

議会に対する市民の最大の不満は「何をやっているのか分からない」ということです。市議会は情報公開を徹底し、「議会基本条例」の規定を速やかに具体化し、広報活動を抜本的に強化すべきです。マスメディアやインターネットを利用した議会としての広報の拡充や議員の編集委員会による「市会だより」の発行などにより「議会が変わった」と市民が実感する議会の努力が求められます。

⑥企業・団体献金の禁止・自粛

国政でも地方政治でも、政治をゆがめる大もとには政治家への企業・団体献金があります。市政でも、献金でつながった企業に公共事業受注の便宜をはかることや違法な企業献金を隠すための“回し献金”など不明朗・不公正な問題がありました。

日本共産党の市会議員は企業・団体献金禁止を主張し、いっさい受け取っていません。公正で民主的な名古屋市政を実現するため、すべての市会議員に企業・団体献金の禁止・自粛をよびかけます。

(4)ご意見、ご要望を

市民のみなさん。この「名古屋市議会の改革推進のための提言」についてご意見、ご要望をお寄せください。

日本共産党名古屋市議団は、「提言」を練り上げ、市民のみなさんと力を合わせて議会改革に取り組みます。

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