2003年6月名港議会 一般質問

自衛艦寄港(5月16日入港)の目的について

名港管理組合への入港目的と自衛隊の寄港目的に違いがある

質問する村瀬議員の写真【村瀬議員】
 武力攻撃事態法などいわゆる有事関連法案が、6月6日衆議院に続き参議院を通過、成立しましたが、この審議のさなかの5月16日、名古屋港に自衛隊の護衛艦「しらね」「むらさめ」が入港しました。

 近くのマンションの住民から「窓を開けたら目の前に真っ黒な軍艦がいて、怖くなって窓を閉めた」とか、「有事法制を促すための寄港でないか」などの声が聞かれました。

 この2隻の自衛艦の寄港目的は何だったでしょうか。私が名古屋港管理組合からいただいた資料では、寄港目的は「艦艇の一般公開と乗員の休養及び真水の搭載」となっております。ところが、自衛隊愛知地方連絡部・渉外広報室のホームページでは、寄港目的は「名古屋港への航路及び港湾事情の調査確認並びに、接岸時における一般公開」となっています。

 これは、今後の名古屋港への寄港のために航路に慣れておき、港湾の状況や使い勝手を確認しておく地ならし的な寄港ではありませんか。いわば有事法制の発動に備えた自衛艦の名古屋港使用のための調査ではないでしょうか。

 寄港目的に食い違いがあります。自衛隊に確認すべきと考えますがいかがでしょうか、お聞きします。

【港営部長】
 名古屋港管理組合への寄港目的は艦艇一般公開となっている。

「航路および港湾事情の調査確認」も寄港の理由として認めるのか

【村瀬議員】
 「航路および港湾事情の調査確認」も寄港の理由として認めるのか。

【港営部長】
 「航路及び港湾事情の調査確認」は、船舶運航者として航行安全上必要だ。災害時の迅速な対応等にも必要だ。

 

自衛隊が目的を隠す申請を認めるのか。自衛隊の軍事作戦が目的ではないか

【村瀬議員】
 今の答弁で自衛隊からの申請による寄港目的は「艦艇一般公開」と答弁されました。しかし自衛隊のホームページの寄港目的は「名古屋港の航路および港湾事情の調査確認並びに、接岸時における一般公開」となっていてやはり食い違いがあります。

 自衛隊は寄港目的の一部を隠して寄港申請を出した、と言わざるを得ません。管理者はこういう寄港申請の仕方を認めているのですか。

 さらに、この隠された寄港目的が問題です。自衛隊が寄港目的として「名古屋港の航路および港湾事情の調査確認」するのは、自衛隊として自衛艦の作戦上名古屋港を使用する予定もしくは今後その可能性があると考えていて、その場合に備えて調査が必要となったからではないでしょうか。一般の貨物船などは、わざわざ事前に航路や港湾事情の調査には入港はしません。管理者の見解をお聞きします。

【港営部長】
 (虚偽申請には答えず…)航路等の調査は、申し出の有無にかかわらず、当然にある。

有事法制のもとでの港湾管理者の許可権限について

 港湾管理者の許可権限は武力攻撃事態対処法発動で変わるのか

【村瀬議員】
 有事法制化における港湾区域内等での行為に関する港湾管理者の権限についてお聞きします。

 従来の周辺事態法の下で国は、港湾区域の水域の占用や建設等のために港湾管理者に対して「協力を求める」ことができることになっていましたが強制力はありませんでした。5年前の1998年8月、米軍艦船が名古屋港に寄港を求めたとき、港湾管理者は、岸壁への先船が決まっているとして接岸を拒否しました。このような港湾管理者の許可権限は武力攻撃事態法発動の下で変わるのかどうか、変わるとすればどのように変わるのか、お聞きします。

【港営部長】
 港湾管理者の許可権限は、港湾法の特例規定が定められるので、法施行後は手続きが変わる。

 港湾区域内等で水域の占用等をする際に必要な港湾管理者に対する手続きが「協議」から「事前通知」に変わる。また港湾の分区内における建築等に関する規制は、防衛出動措置等を命ぜられた自衛隊の部隊等については適用除外となる。

政府による強制には、きっぱり断れ

【村瀬議員】
 今回の有事法制は、米国の要求にもとづく海外派兵国家づくりを新たな段階にエスカレートさせる重大な内容を持っています。

 国会の論戦で防衛庁長官は、「武力攻撃事態や同予測事態がアメリカの先制攻撃によるものであったからこの法律が発動できないとか、できるとか議論することは意味がない」と答弁し、この法律が「日本を守る備え」でなく、アメリカの先制攻撃による戦争でも「米軍とともに攻める備え」であることが明白になりました。すなわち、米軍が引き起こす戦争に、自衛隊が公然たる武力行使をもって参戦し、罰則付きで国民を強制動員するところにその本質があることがあきらかになりました。

 しかもこの有事法制は、自治体を戦争のための国の下請け機関にしようとしており、憲法の規定する地方自治の本旨に反する疑いもあり問題です。

地方議会での有事法案に反対もしくは慎重審議を求める意見書は638自治体で採択され、全自治体のおよそ2割に達しています。

 有事法制は成立しましたが、政府による強制があれば、自治体としてきっぱり断るべきだと考えますがいかがでしょうか。お答えください。

 北朝鮮の脅威を理由に有事法制を認める議論があります。北朝鮮が無法な行為を清算していないことは確かですが、だからこそ、隣国として「日朝平壌宣言」にもとづいて事実と道理による平和交渉を行うことが大切ではないでしょうか。

【副管理者】
 法治国家として法律が施行されれば、港湾管理者として守るべきものである。

商港としてマヒしてしまう。自衛隊に従うだけか

【村瀬議員】
 武力攻撃事態法の下では、一片の通知だけで水域の占用も港湾区域内での建築などもし放題で、それに対して文句も言えない、というわけです。港湾機能を事実上自衛隊に独占されてしまい、港湾として役割が麻痺してしまう恐れもあります。そんな状況になっても管理者は、自衛隊に何も言わないでただ従うだけのつもりでしょうか、改めてお聞きします。

【港営部長】
 法律が施行されれば、その規定に従って、対処すべきものだ。


名古屋港のSARS(サーズ)対策について

羅患防止策の実施状況は

【村瀬議員】
 来日した台湾人旅行者が、SARS(重症急性呼吸器症候群)に感染していたことが判明して大きな問題になりました。さいわい国内に感染者は出なかったものの、SARS感染は、わが国と経済的関係が深く人の往来も多いアジア地域において広がっており、国内でもいつ感染者が確認されてもおかしくない状態になりつつあります。

 名古屋市では伝播地域からの帰国者で、帰国後10日以内に、発熱、咳、呼吸困難等の呼吸器症状が現れた場合はまず医療機関に受診することを指導し、医療機関は保健所に報告するよう求めています。これは厚労省が、まず保健所に連絡を、としていることと異なっていて問題です。医療機関から連絡を受けた保健所では「疑い例」「可能性例」にわけその後の対応を決めています。

 名古屋港に入港した貨物船の乗組員が上陸し、商店や飲食店などに立ち寄ることも当然あります。先日も商店のおかみさんが「お客さんは一人でもほしいけど心配です」などと率直な気持ちを述べていました。特に名古屋港は、中国、香港、台湾などSARS伝播地域からの入港、来航の貨物船も多く、港湾管理上、万全の対策が求められることはいうまでもありません。そこで質問いたします。

 SARS伝播確認地域からの本船作業にあたっては、作業従事者に防御マスクの着用などの罹患防止策は実施されているのでしょうか。また検疫では、伝播地域からの入港船の乗組員一人一人に体温測定が必要だと思いますが実施されているでしょうか。港湾管理者としての見解をお聞きします。

【総務部長】
 入港する全ての船舶に対して、厚生労働省名古屋検疫所において検疫体制が採られている。特に、伝搬確認地域からの入港船舶に対しては、乗組員の体温測定等が行われている。その後の本船作業では、作業時の防御マスクの使用、作業終了後、薬用石鹸による手洗いとアルコール消毒が行われている。

 港湾管理者としては引き続き、名古屋検疫所、保健所を始め、港湾関係者と緊密な連携図り、安全確保に万全を期す。

乗組員に発熱者などが確認された場合の対応は

【村瀬議員】
 乗組員に発熱者などが確認された場合の対応はどうなっているのでしょうか。

【総務部長】
 入港前は、名古屋検疫による臨船検疫、保健所への連絡、医療機関への搬送、消毒等の措置が採られる。入港後は、保健所により同様の措置が採られる。

出港後に発熱者が確認された場合の対策は

【村瀬議員】
 これらの乗組員などで、出港後に発症者は確認されていないでしょうか。もしも確認された場合、その対策はどうなっているのでしょうか。

【総務部長】
 出港後に発症した例は、確認されてない。確認された場合の対応は、接触者の調査・検査・関係箇所の消毒等の措置が採られる。

空港のように1人1人の体温測定を実施するよう厚生労働省に求めるべきだ

【村瀬議員】
 、SARS対策で入港する貨物船の乗組員に体温測定が実施されているとの答弁でした。現在入港船舶の乗組員に対する体温測定は無線による検疫で体温測定の結果発熱者がなかったかどうか確認するという方法でおこなわれています。しかし、この方法では一人一人について実際に体温測定がやられているかどうかわかりません。航空機のように実際に一人一人の体温測定を実施するように厚生労働省に求めるべきだと思いますがいかがでしょうか。

【総務部長】
 港の安全は、関係者の緊密な連携のもと、それぞれが最善を尽くすことが大切である。入港船舶の検疫は、名古屋検疫所が、その権限と責任において行っている。

平和な商工業港としての発展を

【村瀬議員】
 名古屋港が平和で安全な商工業港として、市民生活の向上やこの地域の産業発展に寄与していくことはみんなの願いであります。そのために管理者にいっそうのご努力をお願いして質問を終わります。