2003年6月議会 議案外質問

保育行政について

待機児童の解消を

【かとう議員】
 名古屋市の特に待機児童が多い緑、名東、守山などの6つの区は、待機児解消のための施策が取組まれたと思います。しかし、人口急増地の緑区では、待機児童ゼロ作戦が叫ばれても、待機児童は増えるばかりです。若いお母さんたちから「保育園に入れなかった」と言う声をたくさんお聞きしました。今でも「転居の予定だが近くに保育園はあるか。入れるだろうか」と私の事務所にも問い合わせがあります。

 この2年間で緑区内に3つの保育園ができ、240名の定員が増えました。国の待機児解消策として、定員枠が拡大され、民間保育園では定員の125%まで入所を受け入れさせ、また、公立保育園でも3歳未満児の定員枠を拡大しています。その結果、どういうことになっているでしょうか。施設はそのままで子どもの人数だけ増やすのですから、昼寝の布団を少しずつ重ねないと敷けない、広くもない部屋を戸棚で仕切って2クラスにして保育するなど、明らかに寿司詰め状態で、これでは子ども達にふさわしい十分な保育は出来ません。民間保育園でも125%まで入れてしまうと、職員の負担が大きく、努力できる限界があると園長さんたちは訴えておられます。こうした定員枠の拡大では、待機児童の根本的な解消にはなりえません。

 私の調査では、緑区内の待機児童の数は昨年の2倍ぐらいに増えるものと思われます。待機児童解消のために、市の責任で保育園を新設増設をするべきだと考えますが、市長の見解をお聞きします。

【市長】
 待機児童の解消を重要な課題として位置づけ、その解消に向けて取り組んでいる。平成15年4月には、保育所2か所を新設し、既存保育所の定員増も行い、合わせて287人の入所定員の拡大を行った。基準の範囲内で実施する定員超過入所も平成14年度に引き続き実施している。今後も、待機児童の状況、地域における保育需要の動向などを見極めながら、引き続き対策に取り組みたい。

定員枠だけ拡大して、すし詰め状態

【かとう議員】
 市長の答弁は、私の質問には答えていません。私は、定員枠拡大、超過入所の元では子どもたちは大変悲惨な状況に置かれていることをお話しました。だから、市の責任として保育所を新設、増設するべきと言いました。再度、市長にお答えいただきたいと思います。

【市長】
 今後とも、待機児童の状況、地域における保育需要の動向などを見極めながら、できる限り待機児童対策に取り組みたい。

待機児は解消の見とおしがない

【かとう議員】
 超過入所を引き続きやるといわれていますが待機児があと少しで解消できるのではないんです。待機児問題は大変深刻なんです。枠拡大や超過入所では解決にはならないんです。繰り返しますが、子どもが起きている1日のほとんどの時間をすごす生活の場所のことですよ。改めて、市の責任で、保育園の新設・増設するよう強く要望いたします。

延長保育の充実を

【かとう議員】
 子どもの生活環境として、できるなら親の労働時間を短縮して親子が一緒に生活する時間を広げることを望むものです。しかし、短時間のパートでは食べていくこともできず、長時間働かざるを得ない方たちが増えています。その為には、どうしても長時間保育、延長保育を利用するしかありません。緑区などは市の中心から離れており、都心まで1時間程かかってしまいます。子どもを自宅近くの保育園に預けると長時間保育、延長保育が必要です。

 名古屋新世紀計画2010では、「子育てと仕事の両立を支えるため、保護者の勤務時間の多様化に対応した延長保育や一時保育など、多様な保育サービスを充実」という方針になっていますが、実態はどうでしょうか。緑区では、保育園は公立、民間あわせて23か園ありますが、そのうち、延長保育を実施している園で午後7時までが3か園、午後7時30分までが1か園と、計4か園しかなく、これでは安心して働くことはできません。また、北区保育団体連絡会が、公立保育園父母の会の皆さんに対して、行ったアンケートによると、「現在の保育時間で間に合わないときがありますか」の問いには、「はい」と答えた方が半分近くもあり、「延長保育が実施されたら希望します」と答えた方が4割もありました。

 ところが、全市を見ても、公立保育園での延長保育は、各区1箇所にとどまっています。延長保育を求める切実さは、地域によってさまざまです。それを各区一律に一箇所のみというのでは、市民要求に応えることはできません。今後、延長保育実施園について、要求のある地域には公立で2か園3か園と増やすべきだと考えますが、健康福祉局長の答弁を求めます。

【健康福祉局長】
 延長保育は、名古屋新世紀計画2010第1次実施計画で、実施保育所を21か所増やし、89か所にする計画を掲げ、拡充に取り組んできた。計画の最終年度である平成15年度に5か所の増を行い、3年間で21か所の増を達成し、このうち6か所が公立保育園だ。

 今後は、財政状況を勘案しつつ延長保育の需要と全市の実施状況を踏まえ、公立民間合わせて考えたい。

条件の整っている公立園での延長を増やして

【かとう議員】
 公民あわせて考えたいとお答えいただきました。要望の強い地域から請願も出されています。公立保育園は条件は整っています。是非、条件を整えた公立保育園での延長保育をふやしていただくよう要望します。

おんぼろ保育園の園舎改修を

【かとう議員】
 天白区のある保育園では、老朽化した水道管が破裂して通常は2ヶ月で300〜400立方メートルほどのところ、2800立方メートル以上もの使用量になり大規模な水漏れがあったそうです。現在、他にもいつ破裂してもおかしくないほど老朽化した給配水管のままの保育園が、たくさんあると思われます。緑区のある園では、屋根の防水シートがひび割れて大きな塊が強風で剥がれて園庭に落ちたということです。お迎えの時間でなかったため、園庭に子どもや親たちがいなかったので、事なきを得たそうです。そのほか、サッシがしまらないとか雨漏りするなどは珍しいことではありません。幼児トイレにシロアリが発生したり、木の根っこが張ってトイレが詰まってしまったとか、トイレが詰まったのでみてもらったら、鉄のサビがはがれて菅の中で詰まっている、など数えあげればきりがありません。

 中にはこんなひどい事例もあります。遊戯室の上は屋上で、そこにプールがあり排水が悪くていつも水がたまっているが、遊戯室の天井のパネルが腐って落ちたとのこと。天井パネルはすぐ張り替え、手や目を洗う水道の辺りの修理はしたとのことですが、屋上プールの回りはそのまま、水はたまった状態です。いまだに遊戯室のプールの下のあたりに時々水が落ちてくるため、子どもを昼寝させられないということです。どうしてこんなことになるのでしょうか。

 10年ほど前までは、10年ごとに内壁外壁塗装、屋根の防水工事が行われていましたし、20年では総合改修で 水周り給排水管などの取り替え、床板の張替えなどのために、1カ園あたり5千万円の予算が計上されていました。ところが、2000年以降、このような総合改修が行われなくなりました。現在、築20年以上経って、総合改修が行われていない園は、124か園中72か園にのぼります。今年度は、中規模改修事業といって1か園あたり500万円の予算が計上されましたが、10か園分だけです。そのうちのある園では、屋根の防水工事が行われるだけです。以前10年、20年を目途に行われていた修繕は、必要だから行われていたのではないでしょうか。

 子どもたちの安全にいつも配慮して、園舎管理の責任を持っている園長をはじめ現場で働く職員たちが、このままでは危険だ、と判断している個所や、目に見えない部分でボロボロになっている個所を、早急に改修すべきではないでしょうか。幸いにも、いままではケガや事故にならなかったけれど、一歩間違えたら、大事故にもつながる懸念すら感じられます。その為にも今、園舎等の中期・長期の修繕計画を作るべきではないですか。健康福祉局長の答弁を求めます。

【健康福祉局長】
 公立保育園は、施設・設備の日常的な修理、補修工事を行うため、経常修繕の予算を計上している。さらに、一定年数以上経過し、改修の必要が生じた園は、別途、予算を確保し改修を実施してきた。平成15年度は、改修の内容を点検し、10か所の保育園について予算計上し、必要な改修を行うこととした。

 今後とも、危険箇所の修繕については迅速に対応するとともに、保育園の運営に支障がないよう、厳しい財政状況の中ではあるが、順次改修に努めていく。

ボロボロ園舎の計画修繕を

【かとう議員】
 今年度についた予算は園舎の老朽化に対応する修繕のほんの一部です。以前の名古屋市の公立保育園の計画修繕については、他の自治体にうらやましがられていたと聞いています。

 財政難を理由に、おんぼろ園舎の改修についてなかなか予算がつきません。何とか使えるものを壊れるまで待っているのではなく、必要なところは改修して長持ちさせるべきではありませんか。「保育園の運営に支障がないよう」と言われましたが、コンクリートの建物なのに、雨漏りする保育園が大変多いように聞いています。改めて、全施設について雨漏りの調査を実施して、必要な修繕をするよう求めたいと思います。

【健康福祉局長】
 公立保育園の雨漏り等修繕の必要な箇所は、毎年度保育園から報告を受け調査を実施している。児童の安全確保に必要な危険箇所の修繕や適正な園運営に支障をきたす修繕についてはその都度対応をしている。

必要な予算をつけることは市長の責任だ

【かとう議員】
 予算をつけて必要な修繕をすることを強く要望します。


「敬老パス」の現行通り存続を

【かとう議員】
 次に「敬老パス」についてお尋ねします。1973年にできたこの制度。「名古屋に生まれ、大切にしてもらい、誇りである」「名古屋に住んでよかった」と市民が実感するこの制度は、その趣旨の通り「多年にわたり社会の進展に寄与してきた高齢者を敬愛」する制度として、市民の声を十分に生かした、健康福祉策のひとつです。このことは、本市の高齢者保健福祉計画の中でも、“高齢者が地域や家庭で孤立することなく、生きがいを持って生活を送ることができるよう、さまざまな活動に積極的に参加できる条件整備をはかるため”と位置づけられています。

 バスや地下鉄に乗る経験をさせようと孫を連れてお出かけのお年寄りと子どもの姿を見かけます。敬老パスがあるから、毎日夫の病院へ通うことができるといわれる方にもお会いしました。この敬老パスは、まさに名古屋市民の宝ではないでしょうか。4月の市会議員選挙で日本共産党をはじめ、この場の議員の中には選挙公報などで敬老パスを継続します、守りますと公約をされた方がいらっしゃると思います。ところが、社会福祉審議会の答申では、年齢引き上げや所得制限、自己負担制の導入という方向が示され、敬老パスが危うくなってきました。

 一方、先ごろ発表された第41回市政世論調査によると、公共交通機関を利用する理由は 60代70代の方は敬老パスをもっているからと言うことがあきらかになっています。

 ある民間団体のアンケート調査をご紹介します。市内8区で無作為抽出により、3667名の市民にアンケートを送り、1756件回収したものです。このアンケートでは、「敬老パスが役立つ」 とした人が91.3%と多数を占め、その理由は、「外出機会の増加」が一番多く、次いで「医療機関に行きやすい」、「気分転換になる」、「活動範囲の拡大になる」、「健康に良い」などがあげられています。

 また、65歳から75歳までが良く利用されることが明確になっており、元気なお年寄りには、なくてはならないものになっています。「65歳受給は、元気なうちに行動が広げられる」「健康維持に寄与している」「加齢による閉じこもりを防ぐ」「交通費の心配が要らず、寝たきりの予防になる」「国民健康保険を1年間使わず、医療費削減に貢献している」など、健康維持に敬老パスが非常に役立っていることが明らかになっています。

 今まで30年間、特に近年見直しが話題になりながら、現行制度が守り続けられてきたことは、本当にすばらしいことです。市民からこれほど喜ばれ、誇りにされる名古屋の福祉施策である敬老パスを見直すことは、高齢者を敬愛する制度から、高齢者の差別を生み出す制度に変えるものです。まさに高齢者を敬愛する敬老パスを現行制度のまま継続すべきと考えます。

 市長は、6年前の市長選挙後の本会議で「現行制度を継続する」と答弁し、2年前の再選後にも「後退しないよう努めたい」と答弁されました。

 改めて是非、現行制度を維持するという立場からの市長の答弁を求めます。

【市長】
 議会を始め幅広く意見を聞きながら、急速に進行する少子高齢社会の中で、各種の福祉施策について、持続的・安定的に維持できるよう検討したい。

市民の宝は継続すべし

【かとう議員】
 市長は、昨日、敬老パスを福祉として位置づけるといわれ、今日も持続的・安定的に維持できるようといわれました。名古屋にうまれ、65歳になれば、全員受けることのできる、市民の福祉です。改めて現行制度の継続を強く要望しておわります。